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需給動向 野菜情報 2024年12月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和6年10月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万7372トン、前年同月比102.3%、価格は1キログラム当たり303円、同98.2%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1092トン、前年同月比102.7%、価格は1キログラム当たり271円、同98.9%となった。
⃝11月初旬時点で、夏の猛暑の影響により重量野菜と果菜類の出荷が出遅れていたが、12月にようやく回復が見込まれる。野菜全体では西南暖地産が出遅れ、全国的に出回り不足が続き、市場が価格を引き上げる展開が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、低気圧や前線が東・西日本を中心に通過することが多く、沖縄・奄美は旬のはじめに台風第18号や湿った空気の影響を受けた。旬平均気温は、北日本を中心に暖かい空気に覆われやすかったため、北日本でかなり高く、東・西日本と沖縄・奄美で高かった。旬降水量は東日本日本海側、西日本太平洋側、沖縄・奄美でかなり多かった。旬間日照時間は、北日本太平洋側と西日本日本海側でかなり少なかった。
 中旬は、全国的に暖かい空気に覆われやすく、全国914地点のうち100地点以上で真夏日となった日があるなど、全国で旬平均気温がかなり高かった。旬平均気温平年差は東日本で+2.9℃、西日本で+3.1℃となり、いずれも1946年の統計開始以降、10月中旬として1位の高温となった。旬降水量は、北・西日本日本海側と北日本太平洋側で多く、東日本太平洋側と沖縄・奄美で少なかった。旬間日照時間は沖縄・奄美でかなり多く、北・東日本で多かった一方、西日本日本海側で少なかった。
 下旬は、全国的に暖かい空気に覆われやすく、旬平均気温平年差は北日本で+2.2℃、東日本で+2.8℃、西日本で+3.2℃、沖縄・奄美で+2.8℃となり、いずれも1946年の統計開始以降、10月下旬として1位の高温となった。旬降水量は、22日に南から湿った空気が流れ込んだ宮崎県で線状降水帯が発生するなど、西日本では記録的な大雨となった地域もあった。沖縄・奄美では、期間の半ばに台風第20号や前線の影響を、また期間末には台風第21号の影響を受け、旬降水量がかなり多くなった。旬間日照時間は、北日本では多く、東・西日本では、期間後半に秋雨前線の影響を受け、少ない所が多かった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
 
タイトル: p008

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万7372トン、前年同月比102.3%、価格は1キログラム当たり303円、同98.2%となった(表1)。
 
タイトル: p009a
 
 根菜類は、だいこんの価格が、高値で推移した前年を1割以上下回り、平年を2割近く上回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタスの価格が長野産の切り上がり時期である中旬に価格を上げ、下旬に落ち着いたものの、高値で推移した前年を1割以上上回り、平年を5割以上上回った(図3)。
 果菜類は、トマトの価格が後続産地が出揃った下旬にやや落ち着きを見せ、高騰した前年を1割強下回り、平年を4割以上上回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が月間を通してほとんど動きはなく、やや高値で推移した前年をかなりの程度下回り、平年をやや下回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。
 
タイトル: p009b
 
タイトル: p010  
 タイトル: p011

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1092トン、前年同月比102.7%、価格は1キログラム当たり271円、同98.9%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。
 
タイトル: p012
タイトル: p013

(4)首都圏の需要を中心とした12月の見通し

 夏の猛暑の影響により、重量野菜と果菜類は出遅れていたが、12月にようやく回復が見込まれる。10月中は、全国的に天候不順であったことが影響した。気温高は、はくさいの締まりの悪さを招き、果菜類は花落ちが多く見られ、ねぎは豪雨の影響を受け病気が多発した。また、全国的に害虫被害も多かった。いも類はこれらの影響が少なく、一部の産地を除き順調であった。北海道産・東北産は、秋に好天が続き、10月後半の出荷が前年を上回った。今後は各地の降雪・積雪を見る必要があるが、12月上旬まで残量はあると予想される。野菜全体では12月も西南暖地産が遅れて、全国的に出回り不足が続き、市場が価格を引き上げる展開が予想される。

タイトル: p030a
 だいこんは、神奈川産の出荷は開始しているが、高温と乾燥の影響により、例年より遅れている。12月は通常通り、Lサイズ中心で出荷できる見込みである。「三浦大根」の作付けは前年並みで、12月23日頃から販売される見込みである。千葉産は3~7日程度の遅れはあるが、11月中旬頃には回復し、11月20日頃にピークを迎え、12月は横ばいで推移することが予想される。作付けは前年並みで、Lサイズ中心を予想している。徳島産は11月7日頃から開始し、11月末頃に本格化し、ピークは12月最終週となる見込みである。中心サイズは当面Lで、作付けも前年並みである。
 にんじんは、千葉産の選果が例年どおり11月6日から開始されたが、播種(はしゅ)時期の高温や水分不足から生育は良くない。12月にピークを迎え、2月まで続く。作付けは前年並みで、中心サイズはMAである。埼玉産は、8月末から9月上旬の降雨で種が流される被害もあり、播種作業の開始が遅れ、その後の肥大も遅い。12月中旬頃には出荷がピークとなるも、生育は遅れている。そのため、年内は昨年を下回る出荷と予想される。品種は「冬ちあき」「アロマ809」である。香川産の「金時人参」は10月30日から選果が始まり、例年よりやや遅い。東京市場では例年並みの11月10日過ぎから開始し、95%を年内には販売する見込みである。現状はLサイズ中心であるが、やや細めである。

タイトル: p030b
 キャベツは、愛知産はこれから増えるところであるが平年に比べ遅れ気味で、10月の実績は前年比30%と大幅に少なかったが、11月下旬には追いつき、11月下旬から12月にかけてピークが見込まれる。冬系中心で、12月には春系も増えてくると予想される。8玉のLサイズ中心である。千葉産は、猛暑と干ばつの影響で7日程度の遅れとなっている。10月の日照不足もあり、11月いっぱいは平年の20~30%少なく、12月に入り例年並みの回復が見込まれる。神奈川産は10月も高温障害が発生し、生育が遅れ気味であるため、11月中旬から出荷の開始が見込まれる。12月にはピークとなり、Lサイズ中心と予想される。
 はくさいは、茨城産は徐々に増えてきているものの、猛暑の影響により早期出荷分の作付けを遅らせたことからスタートが4~5日遅れたが、12月には例年並みの出荷ができると見込まれる。
 ほうれんそうは、埼玉産は例年どおり出荷されているが、害虫の影響がある。11月に入り増えてくるが、気温高の影響を受け、仕上がりが軟弱気味である。出荷のピークは12月26日以降と見込まれる。群馬産は、暑さの影響で伸びが悪く平年を下回って推移した。12月には平年並みに回復すると見込まれるが、1月には寒さから伸びが止まり12月よりも減少が予想される。
 ねぎは、千葉産は、作況が悪かった前年並みに出荷が少なく、猛暑の被害で欠株も見られ、10月の多雨も影響している。12月には増えてピークを迎え前年を上回ると予想されるが、それでも平年に届かない見込みである。茨城産は出荷が少なく、予想よりも回復が遅れている。猛暑と9月の降雨で圃場廃棄が多かった。10月に圃場に残ったねぎは細く、箱数が伸びなかった。11月も生育の回復に時間がかかり、出荷が少ないまま推移しており、本格的な回復は12月に入ってからと見込まれる。群馬産の「下仁田ねぎ」は10月27日から例年並みに出荷を開始した。出荷のピークは12月~1月であるが、猛暑の影響で遅れており、12月の出荷は前年を下回ると予想している。作付けは前年並みである。埼玉産は2週間遅れで出荷が始まり、12月がピークと予想されるが、前年を下回ると予想される。青森産は昨年は、雪解けも遅く春の定植の遅れにより全体として後半にずれ、その後の太りも悪く20%以上の減収となった。今年は積雪の前(12月上旬)までに収穫を終え、保存しながら年内いっぱいの販売が予想される。
 レタスは、香川産は暑さの影響により、例年より定植作業が遅れている。11月に入り出荷は徐々に増え、11月中旬から年内いっぱいがピークとなる見込みである。虫害が多く、圃場廃棄も多くなっている。作付けは前年並みである。兵庫産は11月中旬から12月いっぱいがピークとなり、1月も続くがやや落ち着いてくると見込まれる。害虫が多いことが懸念されるが、暖かく程よい降水から前進傾向であり、当面Lサイズ中心と見込まれる。雨が続くと採り遅れて2Lサイズが多くなると予想される。静岡産は、高温傾向と適度の降雨により、生育は良好であるが11月2日の大雨により一部で葉が傷んだ。12月は遅れもなく、2Lサイズ中心に平年並みの出荷が予想される。

タイトル: p031
 きゅうりは、宮崎産は曇天が続き日照不足のため生育はやや悪く、花落ちなどの影響により例年の半分程度の出荷となっている。当面のピークは12月で、1月下旬頃には天候の回復により平年並みに戻ると予想している。埼玉産は、加温物と無加温物の出荷で、例年に比べると少なめであり、12月は加温物のみとなるが、例年を下回ると予想している。高知産は、若干少な目の出荷であるが、11月中下旬には平年並みとなることが予想される。11月にいったんピークがあり、12月に再び増加するパターンが予想されるが、量は前年並み・平年並みであると見込まれる。
 なすは、高知産は平年並みであるが、前年比では少なめの出荷となっており、10月の夜温が高く、一部で花が少ないとの報告もあり、10月下旬の曇天と気温の急激な低下により、肥大が悪くなっている。12月は前年よりやや減少の可能性が高く、年末から年明けに多少の増減はあるが、特別大きなピークは無いと予想される。福岡産は11月は前年を下回るが、12月にはやや回復に向かうことが予想される。
 トマトは、愛知産は高温で花落ちするなどの影響を受け、出荷が少なくなっているが、11月下旬には回復し、12月は前年並みで29日まで販売されると見込まれる。中心サイズはMである。熊本産は出荷量が伸び悩んだものの、裂果の発生は収束してきている。主力の「りんか」が減り「プリマドンナ」が増えている。品種構成の変化も影響し、11月下旬から若干数量は伸びるが、12月に大きなピークは来ないと予想される。
 ミニトマトは、熊本産は、猛暑の影響で生育が遅れている。大玉からミニへの転換は、ここ2~3年は収まっており、品種は「千果」と「小鈴」である。12月は年末をピークに、ほぼ平年並みの出荷と予想される。
 ピーマンは、茨城産は11月いっぱいで終わる秋物は、猛暑の影響で少なかった。12月は温室物となるが、作付けの減少や燃料費の高騰などから前年の80~90%程度を予想している。高知産は出荷が始まっており、台風もなく定植作業も順調であった。高温の影響により実の付きは悪かったが、11月には例年並みに回復しいったんピークとなり、12月には気温も下がり日照時間も短くなるため、やや減少しながら推移すると予想される。宮崎産は猛暑と10月の曇天で例年の60%程度の出荷となっている。12月の初めには回復してくるが、平年に届かない見込みである。大きなピークは2~3月と見込まれる。

タイトル: p032a
 さといもは、埼玉産は年内は12月24日売りを一区切りとする出荷体制である。高温でも潅水(かんすい)できており、今年の作柄は平年作かやや良である。中心サイズは2LとLとなり、全体の30%が越年して販売される。新潟産は「五泉の里芋」が例年どおり10月2週目から始まった。作柄は干ばつで少なかった前年を上回り、平年よりもやや多いと見込まれる。年内は12月25~27日まで出荷があり、年明けも販売が続く。
 ばれいしょは、北海道産(道南)の「今金男しゃく」は前年並みで、平年比で3~5%増である。道内は全般的に干ばつ傾向であったが、大きな影響は受けておらず、年明け1月で共選は終了する。LとLMサイズが中心で、やや小ぶりである。北海道産(道央)の「きたあかり」の収量は前年と変わらないが、今年は品質が前年よりも良好である。北海道の秋の天気は安定し、11月初旬時点で60%以上を販売したが、4月まで販売が継続すると見込まれる。長崎産は12月に入ってから出荷開始の見込みである。作付後の前半は暖かくて生育が悪かったため、その後の降雨も影響し、やや不作気味である。1月に入っても収穫があり、1月いっぱいは出荷すると見込まれる。作付けは前年並みであり、「ニシユタカ」はM中心とやや小ぶりを予想している。
 たまねぎは、北海道産(道北)は今年の収穫量は前年並みで、平年比では若干少なく、12月は前年並みにLとL大が中心となる見込みである。北海道産(道央)は、猛暑で少なかった前年の10%増の収穫量となっている。今年の天候は適度の降雨があり、Lサイズ中心であった。年明け3月いっぱいまで出荷されると見込まれる。北海道産(道北)の商系によると、晩生(おくて)品種ほど玉が小さく仕上がり、その「北もみじ」は全体の40%を占める。()()品種のL大中心から、一階級小さめのLサイズが中心となっている。全道で見通すと、平年比では10%程度下回ると予想される。



タイトル: p032b
 ブロッコリーは、香川産は、気温高と雨や乾燥が交互にあった影響により苗が枯れるなどの被害が出た。11月中旬には出荷が平年並みに追いつくと予想されるが、出荷に波が生じ、ピークは年末から2月中旬までと見込まれる。作付けは前年並みである。群馬産は、気温高と天候不順により生育に時間がかかっている。11月中旬には出荷量が平年並みに戻り、年内のピークは12月10日前後と予想されるが、暖冬となる場合は、本来の年明け出荷分が前倒しとなり、ピークが続くことも予想される。

 カリフラワーは、福岡産は例年より10日程度遅れの11月10日から出荷が始まると予想される。定植した苗が暑さで溶けたため植え直し、さらに必要な時に降雨がなかったことも影響した。当面の出荷のピークは12月中旬から年明けになる見込みである。

 ごぼうは、青森産の収穫は終盤を迎えている。本年産は平年並みで、12月の出荷は平年より少ないものの、12月をピークに1月までの販売と予想される。例年よりやや細めの仕上がりであるが、作柄としては良い。茨城産は、例年どおり出荷を開始し、年末にかけてピークとなる見込みである。生育は順調で、前年並みかやや多めの出荷が予想される。泥付きの4kg袋で、M・Lサイズが中心となる見込みである。熊本産の新ごぼうは、洗いの2本詰め、135gパックが基本となっている。播種期の猛暑により、半分ほどまき直す必要があった影響により、一週間後ろ倒しとなることが見込まれる。その後の生育は順調に持ち直し、12月中旬から年明け頃がピークになると予想される。

 れんこんは、茨城産の出荷は、前年の93%であり、11~12月も、前年比で少なめの出荷と予想される。自然災害の影響はなく、激減することはない。例年と同様、Mサイズが中心と予想される。

 かんしょは、徳島産は平年作で、大きさも平年並みである。12月に入ってからピークとなる見込みである。千葉産は「べにはるか」「シルクスイート」が中心となり、作柄は前年並みで、12月26日頃までの出荷となる見込みである。

 ながいもは、青森産の掘り採りは、ほぼ平年通り、早くて11月中旬からとなるが、今年は前年ほど細長くない。平年作を予想しており、積雪まで作業を続け、その後貯蔵して販売すると見込まれる。

 くわいは、広島産は例年どおり11月11日に初出荷を迎える。作付けは前年の82%で、地上部分は育っているものの、試し掘りをすると、やや小ぶりであると報告されている。東京市場へは週4回の計画で販売され、12月21日の出荷で切り上がると見込まれる。

 七草は、佐賀産は、例年どおり1月1日市場着の物から始まり、その他は4日売りから始まることが予想される。量的に前年並みを予想しており、各野菜とも生育は順調であるが、収穫の人手集めは、これからの勝負である。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
 
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