10月初旬の時点では、秋冬野菜はおおむね平年並みで始まったものの、猛暑の影響を受けて、10月の生産は少なめとなっている。意図して定植を遅らせる産地もあるなど、状況は一様ではないものの、11月には平年並みに回復すると予想している。農業では昔から苗半作(苗の出来によって作柄の半分が決まるという意味)という言葉が伝わるが、この言葉を踏まえると、年内いっぱいは猛暑の影響を受けると見込まれる。購入苗でもばらつくとの報告もあり、名人級の農家がそろった現場でも作柄に困惑する場面が多いと予想される。寒暖の差が激しく、果菜類には難しい場面であり、11月下旬には一気に生育が進んで、採り遅れといった展開も想定される。物価高がメディアで喧伝されるが、青果物の高騰は全般的な出回り不足によるためである。
だいこんは、千葉産(銚子)は、10月5日前後からの出荷開始となるが、例年より5~7日程度の遅れになっている。11月には増えて例年並みの出荷が予想され、生育そのものは順調である。千葉産(鎌ヶ谷)は、例年通り10月中旬から出荷が始まり、11月中旬をピークに下旬で切り上がると見込まれる。作付けは前年の90%と減っている。神奈川産は、現状は春物の
播種作業をしている。秋冬物は早い生産者が10月後半から出荷し始めるが、全員がそろうのは11月後半からとなり、作付けは前年並みである。台風による雨風はあったが、生育上の問題はなかった。青森産は、夏に続き9~10月と出荷は続いているが、暑さの影響で出荷は少なめとなっている。大幅に少なかった前年よりは多くの出荷が見込まれる。今後徐々に増え、10~11月がピークとなり、12月には減ると見通している。
にんじんは、北海道産は、例年に比べ10日早く10月中旬で終了する。作付けの減少が大きく影響したもので、収量は平年並みであった。千葉産は、例年並みに10月末頃から出荷が始まると予想される。夏の天候の影響があり、雨で流された
圃場も一部あった。また猛暑の熱風により若苗がとろけるなどの被害も報告された。播種のし直しで対応しており、一回目のピークは11月後半から12月上旬、その次は1月中旬頃を予想している。11月としては例年並みの出荷を予想している。品種は「ベータ441」である。青森産は、10月10日過ぎからの出荷となるが、生育順調で前年より7日程度早い。スタートからすぐにピークで11月15日頃までの出荷が予想される。品種は「紅福」で、M・Lサイズが中心となる。
キャベツは、千葉産が、10月5日過ぎから徐々に出荷が始まり、20日後から増え始めると予想している。気象の影響は特別なく、順調である。愛知産は10月10日前後から例年通り始まる見込みである。7月、8月の猛暑の影響により、定植は遅れ気味であり、10月出荷についてはやや少なめであるが、11月には増えて例年並みに追いついてくることが予想される。茨城産は、10月下旬から始まり11月がピークと予想しており、平年並みであるが、豊作傾向である。神奈川産は11月が出始めとなるが、現状は平年並みの生育である。前年は暖秋の影響により前進し多く出荷されたが、今年も前年並みに前進する可能性が予想される。
はくさいは、茨城産は10月下旬から例年通り始まるが、定植時期の天候不順から当初は少なめの出荷で推移し、11月に入り本格化し、順調に推移することが見込まれる。
ほうれんそうは、群馬産は10月10日頃から増えて来るが、夏の暑さでピークが遅れ、露地物と重なる11月上中旬に多くなると予想される。作付けは例年と同様である。栃木産は、日光高原の産地から始まる。本来であれば9月にいったん端境を迎え、10月に再び増えて来るパターンであるが、近年はそのようにならず、日照不足が影響し、さらに朝晩は寒く、細くて短く仕上がるようになっている。そのため10月以降もピークは無く、11月には早めには切り上がるという前年のようなパターンが見込まれる。岩手産は、9月の出荷は平年の70~80%と少なく、出荷は年明けまで続くが、10月以降はピークらしく増えることなく、平年を下回ると予想している。
ねぎは、千葉産は、猛暑の影響で必ずしも順調でないが、前年ほど悪くない。現状では、適度の降雨があり、さらに気温も下がって回復過程にある。昨年より1カ月早く、11月後半から12月には回復してくることが見込まれる。青森産は、10月はにんにくの植え付けに忙しいため、11月に入ってから本格的に増えてくる予想である。今年は猛暑や盆前後の降雨が多かった影響により、
軟腐病が蔓延している。そのため少なかった前年をさらに下回る出荷と予想され、さらに11月いっぱいの出荷は難しいと予想される。茨城産は、秋冬物は軟腐病により品質が悪く、10~11月はレタスに注力するため、少なめとなる予想である。前年も少なかったので、前年比では微減である。北海道産は、降雪や積雪がなければ11月いっぱい出荷できる。今年の作柄は平年作であった。
レタスは、茨城産は、前年7月から8月初めに播種した物は、暖秋でとう立ちが目立った。今年は8月5日頃から播種を開始した。そのためピークはやや後ろにずれて、10月15日過ぎから11月いっぱいとなり、11月としては前年を上回ることが見込まれる。兵庫産は、10月末頃から始まり、11月に入って出荷量がまとまってくることが見込まれる。ほぼ例年通りで、当面のピークは11月下旬を予想している。静岡産は、10月20日頃から始まり、12月上旬から本格的に増えてピークとなる見込みである。気象の影響は特別なく順調で、作付けも例年並みの出荷が予想される。
きゅうりは、埼玉産は、抑制物の出荷が9月下旬から始まったが、例年より遅い。例年は10月にはピークとなるが、今年は天候の影響により遅れており、抑制物は11月がピークとなり12月中旬までと予想される。中心の越冬物は9月15日頃に定植し、10月13日頃から出荷が始まり、年明けの1月いっぱいとなり、10月下旬から11月がピークと予想される。高知産は、ほぼ例年並みに始まっており、気象の影響は特別なく、生育は順調である。現在までは少なめの出荷となっているが、定植を平年の時期より後ろにずらしている影響であり、当面のピークは11月下旬である。作付けは前年よりも2~3%減少している。
なすは、高知産は、平年並みに始まったが、天候による影響は極力抑えられており、単為結果性の品種となったことで、花落ちはある程度抑えられている。ピークは10月中旬から11月中旬と例年並みが見込まれ、作付けは前年並みである。岡山産は、出荷は始まっているが、例年より数日の遅れとなっており、気温高の影響により果実の品質はやや悪い。雨が少なく、虫の発生も多い。当面のピークとなる11月には回復してくることが見込まれる。福岡産は、9月6日から始まり、出荷量は問題ないが下級品が多くなっている。苗からの影響もあろうが、11月には回復してくることが見込まれる。11月初め頃に小さなピークが来て、年末までは横ばいで推移すると見込まれるが、10月に入り気温も下がり、回復を後押しすると予想される。作付けは若干の減少がある。
トマトは、群馬産は、気温が下がってきており、11月中旬まで出荷できると見込まれる。前年より作付けが増えて、前年を若干上回る出荷を予想している。当面日量4000ケースのペースを維持できる。千葉産は、抑制物は現状では例年の70%程度と少なく、今年は特に
黄化葉巻病(タバココナジラミによって媒介されるウイルス病)が目立っている。9月下旬にピークとなり、減少しながら推移し、11月いっぱいで早めに切り上がることが予想される。Mサイズ中心になると見込まれる。福岡産は養液栽培物が始まっている。9月定植の土耕物は10月に入ってからで、11月中旬から増えてくると予想される。当面11月がピークとなるが、高温で玉の仕上がり小さく、花落ちするなど少なめとなる予想である。青森産は、今年の出荷は10月いっぱいか、11月の第一週までとなることが見込まれる。選果場が統合したこともあり、前年より多く出ている。
ミニトマトは、熊本産は、9月21日から始まったが、ほぼ例年と変わらない。作型が分散しているが、11月には出そろってくると予想される。購入苗がほとんどであるが、それでも苗にはばらつきがある。早期物は小玉果が多かったり、花質が悪かったりといった状況が見られた。供給に特別大きな影響は出ず、12月上旬には年内のピークを迎えると予想される。愛知産は、10月中旬までやや少なめを予想しているが、猛暑で花付きが悪かった。11月には例年並みのペースに戻ると予想される。品種は「小鈴クィーン」である。
ピーマンは、茨城産は、11月は秋ピーマンの中盤から終盤へ向かう時期である。温室物は10月下旬から始まるが、年内はまだまだ少ない。11月としては前年比ではやや少ないと予想する。岩手産は、露地物が終わりハウス物のみの出荷になっている。9月の出荷は前年を上回ったが、トータルでは減っており、夏の猛暑よりも春の干ばつが影響した。ハウス物は11月20日頃までは出荷量がまとまるが、その後は天候に左右されつつ減って来るものの、暖冬の場合はさらに延びると予想される。高知産は、9月18日から始まったが、現状は猛暑の影響で花落ちするなどやや少なめである。11月には平年並みに回復することが見込まれる。面積は前年並みである。
さといもは、愛媛産は「
女早生」は現在出荷が始まっている。東京市場へは10月10日頃から本格化し、12月から年明け1月がピークになると予想される。今年は
夜盗虫が多発し、前年と同様に作柄は悪い。夏の暑さもあるが、植え付け時期の2~5月の多雨が響き、今シーズンは前年の80~90%と予想している。
ばれいしょは、北海道産(道東)は、玉数が多く、Lサイズ中心と大きさも例年並みとなっている。来年の4月まで、全体として前年を上回る出荷を予想している。品種はシストセンチュウ抵抗品種の「はるか」「きたかむい」などが市場出荷品種である。「ゆめいころ」も増えており、「ポロシリ」はポテトチップ用の品種で、収量が多いのが特長である。北海道産(道央)の「男爵」は11月まで収穫作業が続くが、今年は平年作を予想している。出荷のピークは10~11月で通常通りとなっており、玉の大きさもLサイズ中心と平年並みである。
たまねぎは、北海道産(道北)は、現在では収穫作業がほぼ終わったところであり、収量は平年作で少なかった前年の110%と予想している。10月から出荷のピークに入り、年明けて5月まで、玉のサイズはL大中心で、平年と変わらないと予想される。北海道産(道央)は、収穫は終わっている。数量的には平年を若干上回っており、12月まで多く、年明けは減ってくると見込まれる。年内の出荷は、少なかった前年の110%と予想している。
ブロッコリーは、愛知産は、10月中下旬からの出荷となるが、ほぼ例年と変わらない。天候の影響もなく、作業は順調である 。作付けはやや減少している。品種は例年と変わらず「ボルト」である。埼玉産は、秋のブロッコリーは例年と同様に10月1日売りから始まった。前年と同様か、さらに作柄は悪い。高温障害で病気が出て下等級品が多くなった。箱数はそれ程減っていない。10月過ぎには回復してきて、11月には例年並みに品質が回復した物が出荷されると見込まれる。
カリフラワーは、新潟産が始まっており、10月中旬ピークに11月いっぱいの計画である。高温と長雨の影響により平年の60~70%作と少ないが、かなり少なかった前年を上回り、11月は回復の可能性が残されていると予想される。
かぼちゃは、北海道産は、11月も出荷は続くが10月のピーク時に比べると減ってきて、12月16日販売で切り上がることが見込まれる。全体として遅く出荷する作型が増えて、11月も前年を上回る出荷と予想される。
ごぼうは、青森産は始まっており、ピークは10月末頃となる見込みである。11月については積雪まで掘り取りして出荷を行う。作付面積は減っている。
かぶは、千葉産は周年産地であるが、現状は稲刈りに注力して少ない。11月に入ると増えながら推移し、下旬から12月がピークと予想している。
れんこんは、茨城産は、8月から4月に植えた露地物が始まってきたが、花が咲くのが早く生育が進み、一部に傷みが出始めた。これまでの出荷実績は前年の90%となっており、年末まで少なめで推移すると予想している。
かんしょは、徳島産は現在までのところ平年作であり、前年比でも100%かやや多いと予想している。12月中旬の最大のピークに向けて、10月中旬以降は徐々に増えながら推移すると見込まれ、Lサイズ中心である。千葉産は、現在は収穫作業のピークに入っているが、出荷物は「シルクスイート」と早掘りの「ベニアズマ」である。「べにはるか」は11月の末頃から出荷を始める。ベニアズマの中心サイズはL・2L、シルクスイートはL・M中心でやや小ぶりである。茨城産は、収穫作業は順調に進んでいるが、平年作を予想している。「紅優果(べにはるか)」は2月までの計画である。
いちごは、栃木産は「とちあいか」となるが、例年と同様に10月中旬頃からの出荷が始まると予想される。この品種は冷蔵処理のいらない早生品種であるが、期時をそろえるために冷蔵処理するケースがほとんどである。例年通り12月前半に一度ピークが来ると予想している。福岡産の「あまおう」は例年より遅く11月13・14日からと、例年より7日程度の遅れで出荷となっている。これは夏の猛暑で株冷(低温暗黒処理)・夜冷(夜間に比較的低温で管理)とも、冷蔵処理を遅らせた影響であり、当面のピークは12月上旬である。佐賀産は、「いちごさん」の出荷となるが、夏の猛暑により花落ちや花芽の付きが遅く前年より遅い始まりとなる見込みである。出荷の始まりは12月に入ってからとなることが予想される。熊本産は早生の「ゆうべに」(熊本県の奨励品種)・晩生の「恋みのり」(久留米の試験場育成生品種)の2品種の出荷となる。気温高から花芽が動かず、定植は10日程遅れ、11月25日頃の出荷開始が予想される。一回目のピークは12月下旬に来るため、クリスマスの時期に小玉をそろえるのは難しいシーズンになると予想している。
ナバナは、千葉産は、例年と同じ10月20日前後から出荷が開始し、11月は前年並みを予想している。生育は順調で、12月にはまとまってくると予想している。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)