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需給動向 野菜情報 2024年10月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和6年8月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1428トン、前年同月比100.4%、価格は1キログラム当たり310円、同114%となった(表1)。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7867トン、前年同月比98.6%、価格は1キログラム当たり281円、同117.2%となった(表3)。
⃝台風の影響などによる大雨の影響、日照不足、残暑などから生育の回復が遅れ、中央市場への出荷が集中する露地野菜を中心に、地方市場では品不足となっており、全体的に高値が続くことが見込まれる。

(1)気象概況

 上旬は、北海道地方では低気圧や前線の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かった。一方、東北地方から沖縄・奄美にかけては太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多く、東北南部では1日頃に、東北北部では2日頃に梅雨明けした。
 旬平均気温は、暖かい空気に覆われやすかったことに加え、晴れて強い日射の影響を受けたことにより、9日は三重県の桑名で日最高気温40.4℃を観測するなど、各地で記録的な高温となった。このため、東・西日本と沖縄・奄美でかなり高く、北日本で高かった。特に、西日本では旬平均気温平年差が+2.0℃となり、1946年の統計開始以降、8月上旬として1位の高温となった。旬間日照時間は、西日本、沖縄・奄美でかなり多く、東日本太平洋側で多かった一方、北日本日本海側で少なかった。旬降水量は、北・西日本、東日本日本海側、沖縄・奄美で少なかった。
 中旬は、西日本や東日本太平洋側を中心に太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、沖縄・奄美では期間の後半を中心に湿った空気や台風第9号などの影響を受けやすく曇りや雨の日が多かった。12日は台風第5号が岩手県に上陸し日本海へ進み、北日本太平洋側を中心に大雨や荒れた天気となった所があったほか、16日は台風第7号が接近した関東地方で大雨や荒れた天気となった所があった。また、西日本太平洋側を中心に期間の終わりに湿った空気が流れ込んだため、大雨となった所があった。旬平均気温は、全国的に暖かい空気に覆われやすかったことや晴れて強い日射の影響で気温が上昇したこともあり、東・西日本でかなり高く、北日本と沖縄・奄美で高かった。岐阜県の美濃では16日に40.0℃を記録するなど、東・西日本を中心に猛暑日となった所があった。旬間日照時間は、東日本太平洋側と西日本で多かった一方、沖縄・奄美で少なかった。旬降水量は、北・西日本太平洋側、沖縄・奄美で多かった一方、北・東・西日本日本海側で少なかった。
 下旬は、北日本では、低気圧や湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かった。東・西日本では、期間の前半は太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かった。
 旬平均気温は、暖かい空気が流れ込みやすかったことや西日本を中心に太平洋高気圧に覆われて強い日射で猛暑日になった所が多かったため、北・西日本と沖縄・奄美でかなり高く、東日本で高かった。旬間日照時間は、北・東日本太平洋側で少なかった。
 旬降水量は、東日本日本海側で少なかったが、東・西日本太平洋側と西日本日本海側でかなり多く、北日本日本海側と北日本太平洋側で多かった。東日本太平洋側の旬降水量は平年比422%で、1946年の統計開始以降、8月下旬として1位の多雨となった。期間の後半は台風第10号が29日に鹿児島県に上陸し、31日にかけて西日本から東海道沖に進んだため、大荒れとなった所があった。また、台風周辺や太平洋高気圧の(ふち)を回る暖かく湿った空気の影響で、西日本を中心に線状降水帯が発生し、各地で記録的な大雨となった。静岡県の網代(あじろ)では72時間降水量が1976年の統計開始以降で最も多い608.0mmを記録した。沖縄・奄美では、高気圧に覆われて晴れた日もあったが、台風第10号に加えて熱帯低気圧が接近したため、曇りや雨の日があった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p010a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1428トン、前年同月比100.4%、価格は1キログラム当たり310円、同114%となった(表1)。

タイトル: p010b
 
 根菜類は、にんじんの価格が、高めに推移した前年を2割以上下回り、平均を1割下回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツの価格が、やや安めに推移した前年を2割近く上回ったものの、平年をやや下回った(図3)。
 果菜類は、きゅうりの価格が、堅調推移となり前年を2割以上上回り、平年を3割近く上回った。(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、下旬に向けて落ち着いたものの、平年並みであった前年を3割近く上回った。(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。

タイトル: p011

タイトル: p012
タイトル: p013
 

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、 入荷量は3万7867トン、前年同月比98.6%、 価格は1キログラム当たり281円、同117.2% となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

タイトル: p010b
 
タイトル: p011
タイトル: p012
タイトル: p013

(4)首都圏の需要を中心とした10月の見通し

 8月中~下旬に台風が2つ上陸し、9月初めまで全国的に豪雨に見舞われたが、九州や四国産地については、今のところ大きな被害は報告されていない。果菜類は10月には夏秋産地からスムーズなバトンタッチが行われるだろう。それでも予期せぬ雨の影響で、露地野菜を中心に地方市場では品不足となっている。東日本や北日本では日照不足と残暑が厳しく、生育の回復を遅らせている。そういった全般的な出回り不足の影響から、中央市場への出荷が集中することにより価格高の局面が長く続くだろう。また、この時期は秋冬野菜の播種(はしゅ)時期で、特別大きな被害は報告されていないが、各産地とも若干の圃場(ほじょう)で蒔き直しなどが行われており、11~12月になって出荷が遅れることが予想される。猛暑対策では、昨年の(てつ)を踏まないといった積極的対策が功を奏している産地もある。

タイトル: p030a
 だいこんは、北海道産(道央)は8月後半に降雨が続き、病気が見られる。作付けが減っており、9月の出荷は前年を下回り、10月の出荷はない見込みである。北海道産(道東・標茶)は出荷が若干減ってきたが、平年並みの状況であり、10月に入り出荷は減少し、東京市場への出荷は10月20日頃で切り上がる見込みである。千葉産は、作付けは前年並みで、播種作業は早いと8月5日、多くは8月20日過ぎから行い、出荷は9月20日過ぎから始まり、10月20日頃に出揃う見込みである。青森産は9月に入り出荷が増え、9月中旬~10月2週目までは多いがその後減少し、切り上がりは11月初め頃と予想される。今年は、圃場での廃棄は昨年より少ないが、作付けが減少したため生産量は前年並みと予想される。
 にんじんは、北海道産(道央)は病気が見られ、10月にはかなり減ってくると予想される。北海道産(道北・美幌)の出荷のピークは平年どおり9月から10月上旬まで続き、その後、中下旬には出荷量が減少する見込みである。前年は10月いっぱいで切り上がった。品種は「向陽2号」「天翔5寸」で中心サイズは例年並みのMである。北海道産(十勝・富良野)は干ばつの影響により曲がりや虫食いが発生し、歩留まりが悪くなっている。Mサイズ中心だが、やや小さめである。生産量は前年比減となり、切り上がりも早くなることが予想される。


タイトル: p030b
 キャベツは、群馬産は9月に入りピークとなっており、現状までは順調に出荷されている。10月上旬までこのペースで続き、中旬から減少し、11月に入り切り上がることが予想される。愛知産は10月中旬から例年通り出荷の開始が見込まれ、天候不順で作業開始が遅れた圃場もあるが、開始時期の遅れはないと予想される。千葉産は9月20日頃から出荷が始まり、10月20日頃から出荷量も増える見込みである。台風10号による被害は、ごく一部の圃場で種が流された程度であった。岩手産は、定植が出来なかったことや雨の影響により9月は出荷が一旦減り、10月には再度増加し前年を上回り、11月中旬に切り上がる見込みである。
 はくさいは、長野産は8月下旬頃より出荷は増えてきており、9月中下旬に入ってさらに増えてくる。作業はキャベツと同時進行しており、キャベツが終わるとはくさいは増えてくるが、病気での圃場廃棄も相当数あると見込まれる。それでも前年の干ばつと比較して、今年は適度な降雨があり、前年を上回る出荷が予想される。
 ほうれんそうは、栃木産は例年と同様に、出荷は少なめである。前年は、夏の生育停滞から伸び切らないうちに出荷され、ピークはなかった。今年は前年より状況は良く、10月は多めに出荷され、年内いっぱいの出荷が予想される。群馬産は高温と日照不足の状況が続くなど、出荷量は少なめである。雨除け物は9月2週目から増えてその後は終盤を迎えると予想される。10月中旬から露地物が出始まり、下旬から本格化する見込みである。播種作業は場所によっては蒔き直しもあろうが、順調である。
 ねぎは、茨城産は8月後半に入り、雨天が続き、軟腐病(なんぷびょう)が散見される。防除は徹底しているものの、気温が高く、9月の出荷量は前年の90%程度と見込まれるが、10月は回復し前年並みとなる見込みである。青森産は例年9月初旬頃が出荷のピークとなるが、今年は天候不順により出荷量は80%程度となっている。天候が回復次第、出荷は10月に前年並みに追いつき、12月上旬まで続くことが見込まれる。北海道産(道南・新函館)は6月からハウス物、7月中旬から露地物が始まり、9月に入り出荷量が増え10月が最大のピークとなろう。11月20日頃まで数量的にまとまった出荷が見込まれる。前年は猛暑で出荷は減ったが、今年は順調に出荷されている。
 レタスは、茨城産は前年も猛暑で、9月の出荷物は一部(とう)()ちした。今年はスタートを抑え気味にして、10月に入り一斉に開始するといった作付けにしている。現状の作業は順調で、台風10号の雨の影響はない。兵庫産は、圃場では台風10号の特別な影響はなく、10月に入り平年並みに出荷され、12月に向けて徐々に増えて来ると予想される。群馬産はやや少なめの出荷となっているが、9月中旬から増え始め、その後は早めの展開で10月2週目まで続き、その後はかなり減少することが見込まれる。長野産は9月に入ってからの出荷はやや少なめで推移し、10月に入ってから減り始め、10月中下旬に切り上がることが見込まれる。

タイトル: p031
 きゅうりは、群馬産は猛暑の影響がないわけではないが、農家の管理によりほぼ順調である。盆前の定植物が9月15日から20日頃に一回目のピークが来ると予想している。その後も引き続き多く、10月に入っても継続して出荷がある見込みである。埼玉産の抑制きゅうりは9月下旬から出荷が見込まれ、当面のピークは10月上旬となるが、猛暑でやや生育が遅れており、引き続き11月中旬まで出荷量は多い見込みである。
 なすは、高知産は台風の影響もなく、例年並みに始まっている。主力は8月末から9月上旬に定植されており、これが10月初旬頃から出荷が始まり、その後、年末に向けて徐々に増えながら推移するが、冬至の頃にいったん減るといった展開も予想される。昨年から本格的に切り替わってきた品種「お竜」は、今年は全体の80%を占めている。栃木産は、猛暑で花落ちしたことが影響し出荷量は前年の70%台となっている。それでも9月中下旬には盛り返して来ると予想している。10月には平年並みとなるが、徐々に減りながら推移し、降霜の11月上旬頃までの出荷が見込まれる。福岡産は例年並みに9月10日のやや前頃から出荷の開始が見込まれている。前年は9月6日からでやや早かった。台風10号の影響は特になく、年内は11月のピークに向け、増加傾向で推移する見込みであり、作付けは前年並みである。
 トマトは、北海道産は高温による着果不良のため、現状までは平年を下回る出荷となっている。切り上がりは11月中旬頃が見込まれ、今後の出荷量は農家の管理次第である。熊本産は例年と同様に9月下旬から始まろう。台風10号では、ハウスの倒壊といった被害はなかったが、一部高温の影響によりハウス物で(しお)れが見られる。作付けは一部ミニトマトへの転作はあるが、全体では前年と同様である。群馬産は7月は多かったが、8月は少なめの出荷となった。9月、10月についてはほぼ前年並みを予想している。青森産は猛暑で花落ちし、少なめの出荷となっている。前年同様、10月には前年を上回る出荷が予想される。早い人は10月に切り上がるが、全体としては11月初め頃までと見込まれる。茨城産は前年は猛暑の影響で少なかったが、今年についても似た展開となっており、9~10月がピークで、11月いっぱい出荷されるが、平年作を下回るであろう。
 ピーマンは、茨城産は暑さで花落ちした影響で少なめの出荷となっており、さらに変形果が多く、A品率が低下している。回復は気温が下がってからと予想され、10月には回復して平年並みの出荷に戻ると予想している。岩手産は露地物は9月で終了するが、前年と比較して減収となった。ハウス物は8月後半に取り戻したが、日照不足と降雨が多く、例年を下回る出荷と予想される。10月20日頃までの出荷となる見込みである。


タイトル: p032a
 さといもは、埼玉産は、共同選果は9月23日にスタートするが、個人選果の市場出荷は開始している。作柄としては前年を上回る出荷が予想され、昨年は無潅水(かんすい)圃場が大幅に減産したが、今年は問題なく、生産量は前年を上回ることが見込まれる。
 ばれいしょは、北海道産(芽室・十勝)の「メークイン」のピークは10~11月で、出荷は年明けの2月中旬から3月にかけて続くことが見込まれる。生産量は干ばつの影響もあり平年を下回ると予想される。本年産については、8月に入り雨が多く、二次生長して変形果が多く、さらにライマン価(でん粉価)も下がっている。北海道産(道央・ようてい)は9月から12月が年内のピークになるが、出荷量は前年並みである。Lサイズ中心で、大きさも平年並みである。
 たまねぎは、北海道産(道央・岩見沢)は中生(なかて)から晩生(おくて)種の収穫に取り掛かっている。前年は廃棄なども多かったが、今年は肥大も品質も良好である。適度の雨があったことも幸いした。年内の出荷がピークで、年明けは少なくなろう。

タイトル: p032b
 ごぼうは、青森産は8月下旬から出荷が始まり、積雪の前まで続く見込みである。その後は貯蔵した物の出荷となり、収穫できなかった物は雪解け後の春掘り物となることが予想される。作柄は良好で、前年並みの出荷と予想される。
 
 れんこんは、茨城産は前年と同様に豊作傾向である。猛暑の影響は若干あるが、出荷に影響ない。
 
 ブロッコリーは、北海道産は例年と同様に出荷量は少なくなっている。今年は生育そのものは順調に推移したが、8月終盤から9月にかけての雨で病気が出る可能性がある。10月末までの出荷となるが、10月に入り減少する見込みである。例年の10月と比べれば収量はあるものの、作付面積の減少が影響して、生産量は90%程度と予想している。長野産の秋ブロッコリーは現状増えてきている。9月中旬から10月初め頃をピークに、11月には少なくなるが、出荷は続き、10月としては前年並みを予想している。埼玉産は例年並みで10月に入ってからの出荷と予想している。福島産は9月20日過ぎから始まり、ピークは10月中旬で、切り上がりは11月末頃と予想される。現状は生育順調で、作付けはやや伸びている。
 
 かぼちゃは、北海道産は収穫が始まったところであるが、雨が多くやや遅れている。そのためかぼちゃの葉茎部などが黄変するといった心配がある。日焼け果が多くなれば貯蔵して一旦休み、12月に再び出荷するというスタイルとするか再検討中とのことである。
 
 かんしょは、千葉産の収穫は始まっているが、10月の出荷は前年並みである。現在の主要な品種は「シルクスイート」であり、「紅はるか」は11月に入ってからと見込まれる。石川産は「五郎島金時」となるが出荷のピークは年明け1月下旬で、年内は9月の出荷開始から一定程度の出荷が予想される。
 
 にんにくは、青森産は6月に収穫が終わっている。7月中旬まで風乾し、その後ほとんどが氷温貯蔵庫で出荷を待つ。9月の段階では風乾物が販売されている。氷温物は10月10日から出荷開始である。やや小ぶりであることから、出荷量は平年を若干下回る見込みである。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
 
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