野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和6年7月)

需給動向 野菜情報 2024年9月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和6年7月)

印刷ページ
野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は10万5846トン、前年同月比95.7%、価格は1キログラム当たり285円、同105.3%となった(表1)。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万4432トン、前年同月比94.4%、価格は1キログラム当たり268円、同109.8%となった(表3)。
⃝猛暑の影響により本州の産地では定植した物が枯れ、播種(はしゅ)した物の発芽不良などが報告されているため9~10月は出回り不足になると予想される。果菜類は盆前に集中して9月はかなり少なくなる状況が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、太平洋高気圧に覆われて日射が強かったことに加え、梅雨前線に向かって南から暖かい空気が流れ込んだ影響で、旬平均気温は全国的にかなり高く、旬平均気温平年差は東日本で+3.3℃、西日本で+2.9℃、沖縄・奄美で+1.4℃となり、いずれも1946年の統計開始以降、7月上旬として1位の高温となった。7日は静岡で日最高気温40.0℃を記録するなど、各地で記録的な高温となった。旬間日照時間は、前半は移動性高気圧に覆われて晴れた日もあったため、北日本太平洋側で多かった。後半、太平洋高気圧が西日本付近に張り出し、東・西日本太平洋側や沖縄・奄美を中心に晴れの日が多かったため、東日本太平洋側、西日本、沖縄・奄美で多かった。北日本日本海側で少なく、東日本日本海側では平年並だった。降水量は、前半は平年並みであったが、後半は梅雨前線が東北地方に停滞することが多かったため、北日本日本海側を中心に曇りや雨の日が多く、北・東日本日本海側で多く、北日本太平洋側、西日本日本海側では平年並だった。東・西日本太平洋側で少なかった。
 中旬は、北日本ではオホーツク海の低気圧に向かって暖かい空気が流れ込みやすかったことから旬平均気温は高くなった。沖縄・奄美では太平洋高気圧に覆われて日射が強かったことなどにより、旬平均気温平年差は+1.8℃と1946年の統計開始以降、7月中旬として1位の高温となった。東・西日本では平年並だった。旬間日照時間は、北日本日本海側と沖縄・奄美でかなり多く、北日本太平洋側で多かった一方、西日本で少なく、東日本では平年並だった。降水量は、移動性高気圧が北日本を覆うことが多く、梅雨前線は期間の中頃にかけて東・西日本に停滞し、14日は長崎県で線状降水帯が発生した。また、太平洋高気圧が沖縄・奄美を覆うことが多かったことから、北日本太平洋側でかなり少なく、北日本日本海側で少なかった一方、東・西日本で多く、沖縄・奄美では平年並だった。期間の終わりには次第に太平洋高気圧が東・西日本太平洋側に張り出し、九州南部では17日頃、関東甲信地方と東海地方では18日頃、四国地方では19日頃に梅雨明けした。
 下旬は、東日本太平洋側と西日本を中心に太平洋高気圧に覆われて日射が強く、北日本を中心に低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、旬平均気温は、北・東・西日本でかなり高く、沖縄・奄美では高かった。旬平均気温平年差は東日本で+2.8℃、西日本で+2.2℃となり、いずれも1946年の統計開始以降、7月下旬として1位の高温となった。29日は佐野(栃木県)で日最高気温41.0℃を記録するなど、各地で記録的な高温となった。太平洋高気圧が東日本太平洋側や西日本を覆うことが多く、中国地方と近畿地方では21日頃に、九州北部地方では22日頃に梅雨明けした(速報値)ため、旬間日照時間は、東日本太平洋側と西日本でかなり多く、北日本太平洋側と東日本日本海側では平年並、北日本日本海側で少なかった。降水量は、西日本太平洋側でかなり少なく、東日本太平洋側と西日本日本海側で少なかった。一方、梅雨前線は東北地方に停滞することが多く、北日本を中心に低気圧や湿った空気の影響を受けやすかった。25日頃には山形県で線状降水帯が発生し、大雨特別警報が発表されるなど記録的な大雨となった所もあった。このため、北日本でかなり多く、東日本日本海側では多かった。沖縄・奄美では、期間の中頃に台風第3号の影響で大雨や大荒れとなった所もあったため旬降水量がかなり多く、旬間日照時間は少なかった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p008a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は10万5846トン、前年同月比95.7%、価格は1キログラム当たり285円、同105.3%となった(表1)。

タイトル: p008b
 
 根菜類は、だいこんの価格が、中旬以降落ち着き、安めに推移した前年をやや下回り、平年をかなり大きく下回った(図2)。
 葉茎菜類は、ほうれんそうの価格が、品質が不安定だった平坦地からの出荷がほぼ終了した下旬以降に上がり、やや高めに推移した前年をかなりの程度上回り、平年をかなり大きく上回った(図3)。
 果菜類は、きゅうりの価格が、関東産が切り上がった中旬以降から堅調な推移となり、前年を3割近く上回り、平年を3割強上回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が、高温の影響により消費は停滞しているものの絶対数不足から高値が続き、前年を4割以上上回り、平年を4割近く上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。

タイトル: p009
 
タイトル: p010
タイトル: p011

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万4432トン、前年同月比94.4%、価格は1キログラム当たり268円、同109.8%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

タイトル: p012a
 
タイトル: p012b
タイトル: p013
タイトル: p014

(4)首都圏の需要を中心とした9月の見通し

 猛暑の影響により本州の産地では定植した物が枯れ、播種(はしゅ)した物の発芽不良などが報告されており、このため9~10月は出回り不足になると予想される。果菜類は昨年と同じ展開で、盆前に集中して9月はかなり少なくなる状況が予想される。このため冷涼産地からの出荷に期待がかかる展開が予想される。


タイトル: p030a
 だいこんは、北海道産(標茶(しべちゃ))の現状は計画通りで徐々に増えてきている。8月にピークを迎え、9月は引き続き多いが、下旬には少なくなると予想される。天候は干ばつ気味だったが、7月下旬後半になって解消された。北海道産(()寿()())は、これまでは平年並みの出荷で、2Lサイズ中心である。7月下旬にやや降雨が多かったことから、その後に高温になり過ぎると歩留まりが悪くなる可能性があるとみている。出荷量は8月まで現状のペースで推移するが、9月はばれいしょの収穫作業に時間を割くため、やや減ると予想される。青森産の夏だいこんは7月に前進し、8月はかなり少なく、9月中旬から再び増えて、10月の秋だいこんにつながっていくと予想される。作付けは前年並みである。
 にんじんは、北海道産の作柄は平年より多く豊作気味を予想している。干ばつ気味で、にんじんにとっては良好な環境であった。現状はLサイズ中心でほぼ定量出荷で推移するが、9月にはやや大きくなると予想している。11月の初め頃には切り上がると予想される。

タイトル: p030b
 キャベツは、群馬産の現状の出荷は平年並みで、梅雨明け後は気温高となっているが、生育には特別影響はない。8月は増加傾向で推移し、9月に入ってピークとなると予想される。出荷は前年並みで、数量が大きく変動することはないと予想される。岩手産も現状では順調であり、7月下旬後半の降雨も問題なかった。8月に入ってピークとなり、9月まで横ばいで順調に推移すると予想される。
 はくさいは、長野産が盆明けから増え始め、9月下旬から10月がピークと予想される。現状は特別暑さの影響はない。今年は作付けを減らした分、少なくなると予想される。
 ほうれんそうは、岩手産の現状は盛夏期を過ぎて、出荷は6月の80%まで落ちてきた。播種作業は順調であり、盆明け頃から再び増えて、9月にピークが来ると予想される。7月下旬の後半に降雨が続き、その後は病気が出やすく、害虫が発生する懸念はある。8月の天気は回復する予報のため、それ程心配は要らないと予想される。群馬産は、高温の影響により細く、伸びも止まっている。現状は例年を下回る出荷になっているが、回復は早く、9月には平年並みを予想している。播種作業は順調である。岐阜産の現状は平年よりもやや少なめの出荷となっている。8月はさらに減り、増え始めるのは9月下旬から10月にかけてで、ほぼ前年と同様の展開が予想される。栃木産は8月に入り減り始めるが、最も減少するのは9月中旬で、下旬も再び増えることはないと予想される。夜温が高く、発芽不良であることが影響している。前年は引き続き10月も少なかったことから、前年に似た動きになると予想される。
 ねぎは、青森産の早出し物は8月初めから始まるが、通常作は9月に入ってから増えると予想される。9月が全体のピークであり、12月中旬まで出荷は続くと予想される。作付けは前年並みで、主力品種の「夏扇パワー」は2Lサイズ中心と予想している。天候は今のところ問題はないが、湿度が高すぎると軟腐病の発生の心配がある。北海道産の現状は始まったばかりで、9月に入ってから本格化し、ピークは10月まで続くと予想される。作付面積は前年並みで、11月いっぱいで切り上がると予想される。生育は順調で、前年は特別暑さの影響で少なくなることはなかった。
 レタスは、長野産は標高650~700メートル地帯にある園地は8月中下旬から再びピークになると予想される。定植もしており、時々降雨があるため大きな問題はない。前年のこの時期はやや減ったが、今年は平年並みに9月にピークが来て10月中下旬に切り上がると予想される。作付けは若干減少している。群馬産は7月末の段階で、降雨続きと高温の影響により例年の半分程度まで激減した。定植は引き続き行われているが、苗の焼けも見られ9月上旬まで少なめの展開で、9月中旬から例年並みに回復すると予想される。


タイトル: p031
 きゅうりは、福島産は梅雨入り前に多く出荷された影響により7月末の段階では少なくなっている。樹勢が弱ったところで梅雨入りしたため、回復に時間を要している。ハウス物は8月下旬に回復し、9月にかけて再度ピークが予想される。露地物は8月上旬にピークが来て中下旬には減ってくるが、9月いっぱいは出荷できると予想される。生育は順調で、干ばつが厳しく8月下旬に切り上がった前年を上回ると予想される。群馬産の抑制物は、早い物では8月末頃から始まると予想される。9月20日頃に全生産者の出荷がそろうため、例年と同様、9月に急増し、その後は一定のペースで10月まで続くと予想される。作付けは例年並みである。
 なすは、栃木産の現状は高温で花落ちしているため予想出荷量の70%と少ない。このまま回復せず、少なかった前年をさらに下回る展開も予想される。今後の天候によっては9月には増える可能性もあるが、ほとんど期待できないであろう。切り上がりは降霜で決まる。茨城産は高温の影響により数量は伸び悩んでいる。夕立が多く、雨に打たれて傷みが出ている。8月は横ばいか減りながら推移し、9月はさらに減ると予想される。雹害(ひょうがい)で少なかった前年を上回ると現時点では予想される。福岡産の長なすは8月末から夏秋物が始まり、10月には冬春物となるが、作付けはやや減少している。梅雨の降雨はそれ程でもなく、生育は順調である。
 トマトは、青森産の現状は平年並みの展開で、盆前頃にピークが来て8月下旬から9月も例年並みの展開と予想される。7月下旬は降雨が続いたが、その後は回復すると予想される。愛知産は例年並みに9月20日前後から出荷が始まり、9月の市場出荷はまだまだ少なく、本格的には10月に入ってからと予想される。年内は11月後半に急増する時期があると予想される。群馬産の夏秋トマトは現状、例年並みの出荷となっている。8~9月は暑さの影響による花落ちや尻腐れなどにより、例年を下回る出荷が予想される。例年であれば11月中旬まで出荷できるが、今後の天候次第である。北海道産のミニトマトは現状、例年並みの出荷となっている。前年の9月は大幅な前進と成り疲れにより30%程度の減収となった。今年も高温であれば少なめの出荷になると予想されるが、今のところは通常通りを想定している。品種は「キャロル10」である。
 ピーマンは、岩手の県北の産地の露地物は、7月下旬に梅雨終盤の降雨が多くなっているものの、それなりに収穫はできている。8月にピークとなり、9月は前年を上回る出荷が予想される。前年は尻腐れが多く出たが、今年は今のところ問題ない。ハウス物も順調である。茨城産の抑制物(秋ピーマン)は9月に入って本格的に始まると予想される。7月に入って定植が開始し、その後の生育は順調である。この抑制物は11月まで続くと予想され、今のところ大きな問題はないが、前年は暑さの影響により10%程度の減収となった。


タイトル: p032a
 さといもは、静岡産の「石川小芋」は例年と同様に8月20日過ぎから始まると予想される。3月の定植後、発芽がやや遅かったため、地上部の背丈が例年より小さめで、芋の仕上がりは例年より小粒になることが予想される。本格的に増えるのは9月に入ってからで、業務用需要に応えるため、11月末まで計画的に出荷されると予想される。中心サイズはLを予想している。千葉産の「石川()()」のスタートは前年より遅く、7月下旬の後半から始まった。空梅雨傾向と高温により、やや小ぶりの仕上がりである。ピークは盆明けから9月中旬で、9月いっぱいで切り上がると予想される。2Lサイズが中心である。
 ばれいしょは、北海道産(ようてい)の「男爵」は平年並みに8月3日から出荷開始の予定である。選果は8月2日開始で、肥大については未だ把握できていないが、全般に干ばつ傾向であったことから、小ぶりの仕上がりが予想される。北海道産(芽室)の市場出荷は「とうや」が盆明けから、「メークイン」は例年と同様8月下旬から開始すると予想される。作柄は前年のような豊作ではなく、若干の小振りの仕上がりを予想している。
たまねぎは、北海道産は8月に入ってから始まるが例年よりやや早い見込みである。作柄は平年作よりも良く、豊作気味で、中心サイズはL大である。ピークは9月から年内いっぱいと予想される。


タイトル: p032b
 ブロッコリーは、北海道産(十勝)は現状は干ばつが続いており、例年の半分程度と少なくなっている。7月下旬の降雨でやや回復するも、苗が枯れるなどしているため、8月下旬から9月上旬は少なくなり、回復は9月中旬以降と予想される。作付けは前年の90%と減っている。最終出荷は10月末までと予想される。北海道産(女満別)は7月末に出荷のピークは過ぎたが、8月上旬までまとまって多く、盆明けには減ると予想される。9月は少ないまま推移し、20日頃から増えてきて10月10日前後にボリュームを盛り返し、その後は月末に向けて減ると予想される。作付けは前年の60%と減っており、量的には前年を下回ると予想される。比較的低温傾向で、病害は見られない。7月にはゲリラ豪雨もあり、土壌水分は問題ない。長野産は9月中旬から再び増え始め、10月初め頃にはピークを迎えると予想される。作付けは前年並みで、11月初め頃に切り上がると予想される。
 
 カリフラワーは、新潟産は9月中旬から例年と同様に始まり、12月まで続くと予想される。作付けは前年並みだが、前年の出荷は猛暑により少なかった。
 
 セルリー(セロリ)は、長野産の露地物は8月にピークとなるが、やや安定性に欠け、9月に入り増えると予想される。8月に特に減り、9月に平年並みとなった前年と似た展開になると予想される。
 
 かぼちゃは、北海道産は例年と同様に9月上旬から始まり、11月に出荷の休みに入り、12月には冬至の需要に向けてピークになると予想される。品種は引き続き「くりゆたか」で、作付けは前年比微増である。定植時期から天候に恵まれて順調で、やや干ばつ気味であるが着果に問題はない。
 
 かんしょは、千葉産は8月上旬から例年並みに始まり、9月は増えながら推移し、10月にピークになると予想される。品種は「紅あずま」と「シルクスイート」である。作柄は、7月後半に降雨が少なかったことが懸念材料である。徳島産は現状では平年並みの出荷状況である。若干小振りで、一階級程小さめであるが、8~9月と収穫が進むに連れて肥大は追いついてくると予想される。その後収穫はピークとなるが、9月には貯蔵作業やだいこんの準備で出荷量が落ちるというほぼ例年と同様の展開になると予想される。茨城産は盆明けから出荷が始まるが、増えるのは9月に入ってからと予想される。出荷開始頃の品種は「紅ゆうか(べにはるか)」である。平年作を予想し、出荷開始時は小振りと予想される。
 
 さやいんげんは、福島産の4~5月の定植物は8月にかなり少なくなって、端境期を迎える。7月の定植物は9月中旬から増えて9月下旬にピークを迎えると予想される。前年は()き直しなど大幅に遅れて半作程度となったが、今年は早めに定植することでリスクを減らすようにしている。品種は(ひら)(さや)のジャンボタイプが中心である。
 
 にんにくは、青森産の収穫後乾燥した物の販売は8月下旬か9月初め頃からと予想される。今年の作柄は平年作であり、大きさも平年並みである。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
 
タイトル: p018a
タイトル: p018b
 
タイトル: p019a
タイトル: p019b