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需給動向 野菜情報 2024年7月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和6年5月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1515トン、前年同月比89.9%、価格は1キログラム当たり312円、同120.5%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万4669トン、前年同月比91.5%、価格は1キログラム当たり291円、同122.3%となった。
⃝7月は、今後中心となる北海道産が天候に恵まれて総じて順調であることなどから、価格的には平年並みの展開と予想される。

(1)気象概況

 上旬は、全国的に低気圧や前線の影響を受けにくく、高気圧に覆われやすかった。気温は、期間の中頃を中心に全国的に暖かい空気に覆われ、平年を大きく上回った時期があった。一方、期間の終わり頃には低気圧通過後に寒気が流入し、西日本を中心に北・東日本でも平年を大きく下回った。このため、旬平均気温は西日本で低かった。北日本、東日本では平年並だった。旬間日照時間は北日本、東日本で多かった。西日本では平年並だった。全国的に曇りや雨の所が多く、期間の中頃には北日本付近を低気圧が、北・東・西日本付近を前線が通過し、西日本太平洋側を中心にまとまった雨が降った日があった。また、7日から8日にかけて北海道地方で雪が降った所もあった。旬降水量は北日本太平洋側と東・西日本日本海側で少なかった。北日本日本海側、東・西日本太平洋側では平年並だった。
 中旬は、日本付近は低気圧や前線と高気圧が交互に通過し、天気は周期的に変化した。低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みやすかった一方、低気圧や前線の後面には寒気が流れ込む時期もあった。気温は、寒気の影響を受けにくかった北日本でかなり高く、旬平均気温平年差が+3.3℃と1946年の統計開始以降、5月中旬として1位の高温となった。また、東日本では高く、西日本では平年並だった。旬間日照時間は高気圧に覆われた時期もあったことから、西日本日本海側でかなり多く、北日本で多かった。東日本、西日本太平洋側では平年並だった。旬降水量は低気圧や前線の影響を受けやすかった北日本日本海側と東日本で多かった。北日本太平洋側、西日本では平年並だった。
 下旬は、北・東・西日本では天気は数日の周期で変わった。気温は、暖かい空気が流れ込む日もあったため、東日本で高く、北日本、西日本では平年並だった。旬間日照時間は北日本日本海側と東日本太平洋側、西日本で少なかった。北日本太平洋側、東日本日本海側では平年並だった。旬降水量は、東日本日本海側と西日本太平洋側でかなり多く、東日本太平洋側と北・西日本日本海側で多かった。北日本太平洋側では平年並だった。27日から28日にかけては、低気圧や前線の影響で、東・西日本を中心に記録的な大雨となった所があった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
 
タイトル: p010a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1515トン、前年同月比89.9%、価格は1キログラム当たり312円、同120.5%となった(表1)。

タイトル: p010b
 
 根菜類は、にんじんの価格が、中旬以降若干落ち着いたものの、絶対量不足により堅調な動きが続き、高めに推移した前年を3割以上上回り、平年を5割以上上回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツの価格が、不足感から高値で推移し、その反動により下旬にやや落ち着いたものの、前年の2倍強となり、平年を8割強上回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、茨城産の増量に向かった中旬以降にやや落ち着きを見せたものの、堅調な動きが続き、高めに推移した前年を3割強上回り、平年を4割以上上回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が近年かなり高めの推移となっており、その中でもやや安めに推移した前年を5割近く上回り、平年を2割以上上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。
 
タイトル: p011
 
タイトル: p012
タイトル: p013

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万4669トン、前年同月比91.5%、価格は1キログラム当たり291円、同122.3%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。
 
タイトル: p014a
 
タイトル: p014b
タイトル: p015
タイトル: p016

(4)首都圏の需要を中心とした7月の見通し

 5~6月にかけての価格高は、九州産を始めとする西南暖地産が早く切り上がり、東北産が遅れたためである。6月に入り冷涼地産のキャベツの出荷が出揃い、価格高騰は沈静化の方向に向かっている。
 今後中心となる北海道産は、天候に恵まれ総じて順調である。一方で、北海道では野菜の作付けが減り、他作物への転作が進んでいるとの情報も多く聞かれ、輸送問題も含めて各市場は産地との密な情報交換が欠かせないだろう。しかしながら、関西市場へ出荷していた産地が関東市場へと出荷先を変更するといった展開はないと予想される。
 7月は、仮に猛暑の夏となっても各産地とも昨年の教訓があるため、大幅なマイナスはなく、価格的には平年並みの展開と予想される。

タイトル: p016a
 だいこんは、北海道産(ようてい)の道央の産地は6月末から出荷が始まり、例年より2~3日早い。定植は順調に行われ、特にピークはなく、10月まで定量出荷されると予想される。作付けは若干の減少が報告されている。北海道産(標茶(しべちゃ))の道東の産地は、例年と同様、7月15日から出荷が始まると予想される。作付けは6ヘクタールほど減少し、前年比95%程度である。天気は良好であるが、例年より朝晩が寒い。播種(はしゅ)作業は順調であり、最終出荷の10月中旬まで定量と予想している。青森産の現状はピークとなっており、6月下旬に減ってきて、7月いっぱいの出荷を予想しており、平年並みの状況である。
 にんじんは、青森産の出荷は例年と同様6月20日過ぎから始まり、ピークは7月いっぱいで8月上旬には切り上がると予想される。生育は順調で、L、Mサイズ中心と予想している。北海道産の出荷は6月20日前後のほぼ平年並みのスタートと予想される。出荷のピークは7月上旬で、販売は7月いっぱいまでと予想される。作付けは前年並みで、品種は「紅みのり」でLサイズ中心と予想している。

タイトル: p016b
 キャベツは、群馬産の出荷は例年並みのペースで、嬬恋村の東部は6月15日頃からと予想される。7月から盛期に入り、9月まで徐々に増えながら推移し、通常通りの8玉サイズと予想される。岩手産は6月25日頃から出荷が始まり、東京市場へは7月5~10日頃からの入荷と予想される。出荷開始後すぐにピークとなり、10月いっぱいまで続くと予想される。作付けは前年並みで、前年は猛暑と干ばつにより30~40%の減収になったが、順調に推移すれば今年の出荷は前年を大幅に上回ると予想される。
 はくさいは、長野産は5月下旬に出荷が始まり、6月16日の週に出揃い、20日頃からピークに入って7月もピークは続き、定量で出荷されると予想される。8月には暑さで減ることも予想される。6玉サイズ中心と予想され、作付けは前年並み、作業も順調である。
 ほうれんそうは、栃木産の出荷は標高800~1400メートルの高原地帯からスタートし、6月中旬に出揃うと予想される。ピークは今後の天候によるが、全体的に雨除け栽培であることから、10月中旬まで安定して出荷できると予想している。群馬産は6月に続いて雨除け物であり、ここ数年、暑くも寒くもない天候であることから、例年並みかやや多めの出荷が予想される。圃場(ほじょう)は標高300~700メートル地帯で、作付けは前年並みである。
 ねぎは、茨城産の夏ねぎのピークは7月下旬の初め頃までで、その後はレタスなどの次作の準備に入る。肥大不足が影響し、現状までの実績では前年の95%と少なめとなった。青森産はハウス物が6月20日から、露地物が7月末から始まり、作付けは例年並みである。
 レタスは、長野産は6月に入ってピークを迎えつつあり、現状までは適度の降雨もあり順調である。本格的なピークに入るのは6月中旬からで、7月も続く。昨年は猛暑の影響により不結球などもあったが、大きな減収に至らなかった。7月としては例年並みの出荷が予想される。群馬産の現状は肥大良好で、傷みも少ないことから例年をやや上回る出荷となっている。7月は例年価格が低迷しがちのため、当該月分の作付けを減らしている。前年比および当年の6月比とも、少なくなると予想している。

タイトル: p017a
 きゅうりは、福島産の無加温物は4月定植物の出荷が5月中旬から始まった。6月には出揃ってピークを迎え、6月下旬から7月中旬に特に多くなると予想される。露地物は6月いっぱい定植されて、7月には出荷が出揃い、8月の盆前頃が最大のピークと予想される。岩手産の現状はハウス物で、9月まで出荷が続くと予想される。露地物は定植中であり、6月後半から出荷が始まって、7月にピークとなると予想している。
 なすは、栃木産は夜温が低いことにより例年より7日程度遅れて露地物の出荷が始まった。雨も少ないが、潅水(かんすい)するため問題ない。海の日(7月15日)頃からがピークで、当面は例年並みの出荷を予想している。茨城産の露地物は6月中下旬にピークとなり、7月中旬以降は減りながら推移して、9月いっぱいまでと予想される。作付けは前年並みで、現状の生育は順調である。
 トマトは、青森産の三戸の出荷は始まっているが、田子は6月からと予想される。5月末頃には低温気味となったが、総じて気温が高めで推移しており、全体としては前進気味である。ピークは盆前頃と予想している。品種はいずれも「桃太郎系」である。福島産は7月2週目から出荷が始まるが、その後、出揃うのはやや遅れる見込みである。作付けは前年を若干下回っており、昨年は秋口の低温により収量が落ちた。品種は高温下での生育に適した「桃太郎みなみ」である。北海道産は道北の産地からとなり、平年よりやや遅れて6月中旬から始まり、ピークは7月に入ってからと予想される。作付けは例年並みで、「桃太郎」の糖度を高めて仕上げている。
 ピーマンは、岩手産のハウス物は始まっており、10月までと予想される。主力の露地物は7月上旬から始まり、ピークは7月末から8月上旬の見込みである。中心品種は「京鈴」「京ひかり」で作付けは増えている。

タイトル: p017b
 ばれいしょは、静岡産の湖西の「男爵」は現状始まっており、ピークは6月下旬から7月上旬で、7月いっぱいで切り上がると予想される。3~4月の低温の影響により、例年よりも小玉傾向である。長崎産は例年であれば7月上旬まで出荷があるが、今年は6月で切り上がると予想される。3~4月の悪天候により肥大が悪く、圃場での傷みもあり平年の80%作と不作である。
 たまねぎは、兵庫産の現状は早生(わせ)の収穫が終わって中早生(なかわせ)の収穫中であり、平年並みの収量・進捗状況である。6月末からは貯蔵物となり、8月いっぱいまでと予想される。前年は肥大良好で豊作傾向であったため、今年は前年比やや減と予想している。佐賀産は5月末の段階で出荷の中盤を迎え、6月は後半に入る。7月には貯蔵物となり、8月上旬で切り上がると予想される。雨が多いことが影響し、生産量は前年比やや減、平年比でも下回っている。Lサイズ中心である。北海道産は昨年、夏の高温により例年の85%作となった。今年の収穫は例年通り7月20日前後に始まると予想される。出荷の最大のピークは例年11月であり、東京での販売の始まりは7月25日頃と予想している。

タイトル: p018
 ブロッコリーは、北海道産がほぼ例年と同様、6月20日前後から始まる。ここ数年この時期は、干ばつと突発的な高温が襲う傾向があり、昨年は8~9月には収穫物がなくなった。今年は雨が多く低温傾向であるが、生育に影響はなく順調で、7月10日以降にピークとなり、その後も切れ目のない出荷になると予想される。長野産の現状はハウス物の出荷で、6月5日頃から露地物も始まり、10日過ぎから7月中旬がピークと予想される。8月も減りながらも出荷は続き、9月には再び増えると予想される。

 セルリー(セロリ)は、長野産の現状は加温物であり、6月には無加温物になると予想される。露地物は6月の終わり頃から始まり、7月いっぱいがピークと予想している。生育は順調である。
 
 アスパラガスは、福島産は3月から出荷が始まり、4月中下旬にピークが来た。その後は一定ペースで10月中旬まで出荷され、量的には前年並みを予想している。
 
 スイートコーンは、千葉産は6月15日頃から「ピュアホワイト」が始まり、主力の「ゴールドラッシュ」は7月10日過ぎからと予想される。ピークは7月20日前後で、盆前までの出荷と予想される。作付けは前年並みである。茨城産の現状はハウス物と、一部のトンネル物が始まった。主力は露地物で6月中旬から本格化し、ピークは6月下旬から7月上旬で、7月いっぱいで切り上がると予想される。品種は「味来(みらい)」で「夏祭り」のブランド名で販売している。5月下旬に強風はあったが、影響はなかった。
 
 すいかは、長野産の「アルプスすいか」はほぼ平年と同様、東京市場で7月4日から始まり、7月20日頃にピークとなり、8月10日頃まで続くと予想される。出荷は9月13日頃までの計画で、現状の着果は順調である。山形産は平年より2~3日早く、7月10日から始まり、7月25日~8月5日がピークと予想している。品種は引き続き「祭ばやし777(スリーセブン)」である。一部で「()(おう)ザ・スイート」も新規に導入している。神奈川産は例年と同様に6月20日前後からで、ピークは7月下旬と予想される。千葉産の5月のハウス物は着果が悪く、少なめの出荷となった。現状はトンネル物となって回復し、潤沢になってきた。7月15日頃で切り上がると予想される。品種は「春のだんらん」「祭ばやし」「味きらら」などである。
 
 こだますいかは、茨城産は2~3月の曇天続きの中での交配となったため、農家は苦戦した。そのため遅れて例年の70%程度の出荷となっている。5月下旬後半から増えて、6月中旬にピークとなり、7月いっぱいまでと予想される。2番果、3番果は8~9月まで出荷され、10月には抑制物になると予想される。品種は「スィートキッズ」である。7月5日頃には盛夏期の定番品種「黒小玉」も始まり、7月中下旬がピークと予想される。神奈川産の品種は「姫甘(ひめかん)(せん)」が中心で、7月5日頃からの出荷と予想している。
 
 えだまめは、青森産の県南産地は例年よりも7日程度の前進となっており、7月3日頃から始まると予想される。出荷のピークは8月の盆を挟んだ時期で、8月まで多く、9月10日で切り上がると予想される。作付けは白毛系と茶豆系が半々で、茶豆系の出荷は盆明けからと予想される。品種は「湯あがり娘」「ゆかた娘」である。山形産は例年並みに7月下旬から始まり、8月がピークで9月上旬まで出荷は多いと予想される。昨年は猛暑と干ばつにより平年の80~90%作と少なかった。作付けは例年と変わらない。
 
 さやいんげんは、福島産は5月13日から始まったが、平さやいんげん・どじょういんげんともに7月5日頃からがピークで10月いっぱいまでと予想される。作付けはやや減少している。
 
 かんしょは、香川産は苗の配給がやや遅れた影響が心配され、前年よりやや遅く、6月下旬に出荷が始まると予想される。出荷のピークは7月中旬から8月上旬で、盆明けには減ると予想される。作付けは前年よりやや増えている。
 
 れんこんは、茨城産は6月に入り令和6年産のハウス物が始まると予想される。7月中旬から露地物が始まり、台風などの風害がなければ平年並みの出荷が予想される。昨年は猛暑・干ばつの影響により1割程度の減収があった。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

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