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需給動向 野菜情報 2024年1月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年11月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万3872トン、前年同月比98.6%、価格は1キログラム当たり244円、同106.3%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7540トン、前年同月比97.2%、価格は1キログラム当たり236円、同109.3%となった。
⃝年末年始までは引き続き潤沢な出荷のペースが維持できるが、その後の展開は12月の雨の降り方によると見通している。重量野菜は前進が見られないため、1月は、市場にだぶつく場面はないと予想される。

(1)気象概況

 上旬は、全国的に天気が周期的に変わり、前線を伴った低気圧が日本海から日本の北を繰り返し通過したため、旬降水量は、北日本日本海側でかなり多く、北・東・西日本太平洋側と東日本日本海側で多かった。一方、沖縄・奄美で少なく、西日本日本海側では平年並だった。東・西日本付近は高気圧に覆われやすく、沖縄・奄美では寒気の影響も受けにくかったため、旬間日照時間は、沖縄・奄美でかなり多く、東・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。一方、北日本太平洋側で少なく、北日本日本海側では平年並だった。また、暖かい空気に覆われやすく、低気圧に向かって暖かい空気が流れ込んだ日もあったため、熊本では5日の日最高気温が30.0℃となるなど、各地で気温が平年を大きく上回る日があり、1946年の統計開始以降、11月上旬として、北日本(平年差+3.6℃)と東日本(平年差+3.9℃)でそれぞれ1位、西日本(平年差+3.1℃)で1位タイの高温となった。旬平均気温は、北・東・西日本でかなり高く、沖縄・奄美で高かった。
 中旬は、中国大陸で高気圧が強く、日本付近では低気圧の通過後に西高東低の気圧配置が強まったため、北・東・西日本太平洋側では晴れた日があったが、北・東・西日本日本海側や沖縄・奄美では曇りや雨または雪となった日が多く、北海道地方では旬の前半に平地でも積雪となった所があった。このため、旬降水量は、北・東・西日本日本海側と北日本太平洋側で多く、東・西日本太平洋側と沖縄・奄美では平年並だった。旬間日照時間は、東日本日本海側で少なく、北・西日本日本海側、北・東・西日本太平洋側、沖縄・奄美では平年並だった。旬平均気温は、寒気の影響を受けやすかった東・西日本と沖縄・奄美で低く、北日本では平年並だった。
 下旬は、高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かったため、旬降水量は、西日本日本海側、西日本太平洋側、沖縄・奄美でかなり少なく、北・東日本太平洋側で少なかった。1946年の統計開始以降、11月下旬として、沖縄・奄美(平年比4%)で1位タイの少雨となった。一方、北日本を中心に25日頃には西高東低の気圧配置が一時的に強まって大荒れとなった所があり、28日頃には低気圧が通過してまとまった雨が降ったため、旬降水量は、北日本日本海側で多く、東日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、沖縄・奄美でかなり多く、東・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。北日本日本海側と北日本太平洋側では平年並だった。また、旬平均気温は、寒気の影響を受けにくかった北・東・西日本では高く、沖縄・奄美では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p007a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万3872トン、前年同月比98.6%、価格は1キログラム当たり244円、同106.3%となった(表1)。

タイトル: p007b

 根菜類は、にんじんの価格が、関東産が増量した下旬にやや落ち着いたものの、堅調な動きとなり、やや安めに推移した前年を4割近く上回り、平年を3割近く上回った(図2)。
 葉茎菜類は、ねぎの価格が、東北産の減少に関東産の増量が追いつかず、高値が続き、前年を6割以上上回り、平年を5割以上上回った(図3)。
 果菜類は、トマトの価格が、高値反動はあったものの、高めに推移した前年をわずかに上回り、平年をかなりの程度上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、数量不足から堅調な推移となり、前年を8割以上上回り、平年を8割近く上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。

タイトル: p008
 
タイトル: p009
タイトル: p010

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7540トン、前年同月比97.2%、価格は1キログラム当たり236円、同109.3%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

タイトル: p011a

タイトル: p011b
タイトル: p012
タイトル: p013

(4)首都圏の需要を中心とした1月の見通し

 9月8日頃に全国的な大雨があり、秋冬野菜の定植時期の終盤であったため、圃場(ほじょう)によっては不安定になった所もあった。しかしその後の気温が高めで例年になく安定し、実際は干ばつ傾向であった。
 「干ばつに不作無し」と言われる通り、物不足による混乱は回避された。年末年始までは引き続き潤沢な出荷のペースが維持できるが、その後の展開は12月の雨の降り方によって決まるとの声が多く聞かれた。重量野菜は前進が見られないため、1月は市場にだぶつく場面はないと予想される。


タイトル: p017a

 だいこんは、千葉産が年内に1度ピークが来て、その後やや落ち着くと予想される。1月は寒波が予想されるが、例年、年内より減少する傾向である。現状のサイズは2L中心であるが、年明けはL中心となる可能性もあると予想される。神奈川産の生産者は早めに収穫しており、12月の出荷はやや少なくなると予想される。年明けも2Lサイズを中心に出荷のピークとなると予想され、さらに大きなサイズは出荷を控えると予想される。静岡産は夏場の乾燥の影響が残っていることから、肥大が遅れ気味で出荷のペースはゆっくり気味である。ピークは1月に入ってからで、2月中旬には減ると予想される。今年の出荷は特別多くないと予想される。
 にんじんは、千葉産は12月に入ってピークとなり、平年並みの状況である。播種(はしゅ)作業も問題なく終了しており、年明けから2月まで例年と同様の出荷ができると予想している。品種は「ベータ系」で、Lサイズ中心の見込みである。埼玉産は年明けの出荷が中心で、2月に入って減ってくると予想される。現在出荷されているのは夏の高温期に播種したもので、品質はそれほど良くないが、今後徐々に回復すると予想される。中心サイズはL、次に多いのが2Lである。作付けは前年の150%と大幅に伸びている。

タイトル: p017b
 キャベツは、愛知産は適度の降雨もあるなど天候に恵まれ、現状の出荷は例年を上回っている。年明け以降も順調で、出荷の谷間がなくほぼ定量で2月まで推移すると予想される。8玉サイズが中心で、今年は6玉サイズも多く豊作型である。千葉産の生育は順調で、平年並みの出荷であるが、若干前進気味である。降雨は少ないが朝露があり、肥大も問題なく8玉サイズが中心である。1月の出荷量は、クリスマス寒波が強ければ生育全般が遅れて少なくなると予想される。逆に暖冬となれば、1月の出荷は多くなると予想している。神奈川産は、猛暑により7月まで播種できなかった。8月に播種したものは順調で、現状は10月の降雨もあって平年並みかやや多くなっている。この早春キャベツは2月まで順調に出荷されると予想される。
 はくさいは、茨城産は出荷開始当初は遅れたが、11月後半にはかなり増えてきた。遅れて定植したものが高温・干ばつで追いついた。12月から1月にかけても問題なく順調に出荷されると予想される。1月後半から減り始め、切り上がりが早まることも予想される。
 ほうれんそうは、群馬産の出荷の現状は平年と同様であるが、寒さが継続すれば特別前進することはないであろう。当面のピークは年末年始で、例年と同様1月に若干減り、2月には増えるといった展開と予想される。作付面積は前年並みで、播種も順調に行われている。埼玉産の現状は7~10日前進しているが、12月に入って気候も締まり、出荷のペースは緩むと予想される。10月末頃に播種した年末年始の出荷ものに前進はなく、1月は平年並みの出荷と予想している。栃木産の現状は、生育期の気温が高かったため、2Lサイズが多く出荷されている。11月下旬から天候が締まって、出荷はある程度抑えられると予想される。年明けはトンネルもの(トンネル状に被覆資材を掛けて栽培したもの)が始まるため、数量は横ばいで減少することはないと予想される。「ちぢみほうれんそう」の作付けは前年並みで、12月15日頃から始まって、1月は前年並みの出荷を予想している。
 ねぎは、千葉産は現状徐々に増え始めているが、1~2月も前年を上回る出荷は望めない。年内は前年の50%、年明けは80%程度と予想される。降雨が少ない影響によりLサイズ中心の出荷と予想される。埼玉産の夏ねぎは高温と少雨により太りが悪く、害虫の発生もあり少なかった。11月初めから始まった秋冬ものは、出荷当初はダメージが残っていたが、12月に入りかなり回復してきた。今後は例年と同様、太物を中心にほぼ平年並みに回復すると予想される。茨城産は予想より早く平年並みに回復してきた。11月の温暖な天候が幸いした。12~翌1月をピークに、Lサイズ中心で、2Lが少なくMサイズが多い出荷と予想される。
 レタスは、静岡産の現状は出荷が始まって間もないが、量的にはピークに向かっているところである。12月中旬には量的にかなりまとまって安定し、年明けから2月中旬まで同水準の数量で推移すると予想される。乾燥気味の天候のため、多湿を嫌うレタスにとっては10年に1度と思われるほど生育環境が良い。出荷量は大玉に仕上がった前年を箱数では下回ると予想される。長崎産の現状は前倒しの出荷であるが、定植時期の高温の影響により結球不良などが見られ、出荷量は伸びていない。年末年始頃になって品質は回復してくると予想している。それでも年末年始は一旦減少傾向となり、1月下旬頃~2月にかけて増える見込みである。サイズは12玉入りの3L中心で平年並みである。香川産は暖冬の始まりで、7日程度前倒しで出荷されている。定量出荷されており、このピークは2月まで続く見込みである。サイズはLが60%、2Lが20%であり、夏場の乾燥の影響により若干小さめである。

タイトル: p018
 きゅうりは、群馬産の最も早い出荷は12月から始まるが、1月15日から増え始め、2月10日頃に出揃い、出荷のピークは3月に入ってからと予想される。作付けは前年並みである。現状までは天候も含めて生育上のマイナス要因はない。高知産の生育は順調で、平年並みの出荷となっている。11月までは早まることも遅くなることもなかった。年内の12月下旬にピークが来て、さらに3~4週間後の1月下旬に再びピークが来ると予想される。
 なすは、高知産は10月に前進した影響により11月の出荷は少なかった。現状気温は高く、12~翌1月は盛り返してくると予想している。前年は12月と1月に寒波が入り、出荷は大きく減少した。今年は寒波がなければ、前年を上回る出荷と予想される。福岡産の現状は7日以上前進している。年末から年始にかけて減り始め、1月は出荷の谷間となり、2月に入り再び増えると予想される。作付けは前年並みである。
 トマトは、千葉産は引き続き抑制もので、12月末頃まで多く、1月まで出荷されると予想される。量的に前年の80%程度と不作傾向である。12月末頃から越冬の半促成物も始まり、生育は順調で、2月下旬からがピークと予想される。愛知産の現状は若干少なめの出荷となっているが、12月に入り回復してくると予想される。生育そのものは順調であるが、1月中旬以降は若干減ってくると予想している。作付面積は前年並みで、M・Lサイズ中心の出荷と予想している。熊本産の現状は平年並みの出荷となっている。ピークは年末年始に1度来て、その後2月までは平年並みと予想している。現状のLサイズ中心から、年明けはMサイズ中心と予想される。ミニトマトは、熊本産は10~11月の降雨が少なかったが、当初の遅れは回復してきている。11~12月はピークが続き、1月中旬まで潤沢なペースが続くと予想される。その後やや落ち着いて、4~5月になって再び多くなると予想している。
 ピーマンは、高知産の最初のピークは一旦終了し、再び増えるのが12月中旬頃と予想している。年明けは1月上旬に多く、その後減少すると予想している。樹勢の状態は問題なく、例年と同じような推移と予想される。宮崎産は例年通り始まり、11月は前年を上回った。12月15日以降クリスマスにかけてがピークと予想される。年明けは15日前後から下旬に向けて再びピークとなると予想される。成り疲れも懸念されるが、天候が安定しているため1月も順調な出荷と予想される。茨城産の現状は例年より少なめであるが、12~翌2月は前年の90%ペースと予想される。単収は変わらないが、面積の減少や担い手不足が見られる。出荷増は2月後半の半促成栽培ものが始まってからと予想される。

タイトル: p019a
 さといもは、埼玉産のいるま野農協管内の園地は、潅水設備がほぼあるため問題ないが、設備がない園地は不作である。1月は前年を下回る可能性があると予想される。
 ばれいしょは、北海道産の「男爵」は平年作であったが、年内の処理がやや遅れたため、年明けの出荷はやや多くなる可能性がある。中心サイズはLである。ねっとり系で、煮物に適している「きたかむい」は平年作であるが、作付けは増えてきている。鹿児島産(出水)の早春ばれいしょ「ニシユタカ」の販売が年始から始まるが、凍害もなく生育順調である。ピークは2月上旬と予想され、肥大は順調と予想している。作付けは前年を上回っている。鹿児島産(徳之島)は高温により植え付け遅れとなり、例年1月下旬から始まるが、10日程度の遅れで2月初めからと予想される。「ニシユタカ」は問題なく順調である。
 たまねぎは、北海道産の通常の倒伏(収穫時期が近付くと葉が倒れる)の始まりは、早生ものが7月中旬からとなるが、今年は夏の猛暑により8月初めに一斉に倒伏が始まる異例の展開となった。そのため晩生品種に後期の肥大がなく、小玉の仕上がりとなっている。現状の生産予想量は、やや豊作であった前年の90%前後である。静岡産は「ホワイト」が順調で12月から始まっている。1月いっぱいで終了するが、作付けは前年並みで前年を上回ることはないと予想される。「黄玉」は年明けすぐの出荷となるが、生育は順調で、作付けも増えて前年を上回ると予想され、1月後半から2月中旬過ぎまでがピークと予想している。「ホワイト」は2Lサイズ中心に、「黄玉」はLサイズ中心の出荷と予想される。

タイトル: p019b
 ブロッコリーは、愛知産は雨で定植が遅れた分の出荷が終わり、11月末頃から増えて12月には回復すると予想される。干ばつではないため、()(らい)の大きさは平年並みである。1月は12月よりさらに増えて3月までこのピークが続く見込みである。熊本産は暖冬で前進したことにより11月初め頃までがピークとなった。年明けはどこかで出荷の谷間となる時期も想定されるが、引き続き潤沢な出荷のペースが維持されると予想される。3月中旬から少なくなって、4月に端境期となると予想される。香川産は12~翌1月はピークがなく、寒さで落ち込む時期がある可能性もあるが、平年並みの出荷と予想される。1月出荷分が年内に前倒しされることも予想されるが、大きな前進は見られない。サイズはL中心と例年並みである。
 カリフラワーは、福岡産は現状までのものは夏の猛暑の影響を受けたが、12月には回復すると予想される。ピークは1月~2月中旬で、前年並みの出荷を予想している。
 セルリーは、静岡産の生育は順調であるが、現状は減っている。12月下旬から増えて1月までピークを維持し、2月に入り減ってくると予想され、ほぼ例年と同様のパターンである。
 かんしょは、千葉産の年明けは「紅はるか」が中心になるが、「紅あずま」が減った分、多くなると予想している。貯蔵ものの出荷となるが、形状の乱れなど高温の影響が若干あったものの、平年作である。サイズはL中心と予想される。石川産の「五郎島金時」はほぼ例年並みの出荷となっている。1月前半は生産者の正月休暇で出荷が少なくなるが、中旬ごろから増えて2月いっぱいがピークと予想される。今年は干ばつの影響により、弓なりなど形状に乱れが見られ下位等級品が多いが、かんしょそのもののサイズは例年どおりL中心の見込みである。
 たけのこは、熊本産の2024年は裏年で、全体として少ない予想である。12月20日には出荷開始の予定であるが、前年より遅い。年明け1~2月の早期ものはほぼ前年並みの出荷を予想している。
 ナバナは、千葉産の現状は降雨が少ないことにより例年の70%程度と少ない。1月も雨次第である。当面のピークは節句を前にする2~3月である。出荷の荷姿は、結束、パック、袋、バラであるが、量販店にはパックと袋入りが受け入れられやすい。
 グリーンピースは、鹿児島産は12月中旬から増えて1~2月中下旬にかけてピークと予想される。「スナップえんどう」は12月にピークが来て、1~2月と多く、横ばいで推移すると予想される。天候に恵まれ例年並みの出荷と予想される。
 そらまめは鹿児島産が12月初めから始まり、年明けから量がまとまり、2月に増えて3月中下旬から4月がピークと予想される。
 さやいんげんは、沖縄産は気温高が生育にマイナスとなり、出荷は後ろにずれて12月中下旬からと予想される。生産者の高齢化により作付面積は減少している。ピークは3月中下旬と予想される。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
 
タイトル: p018a

タイトル: p018b
 
タイトル: p019a

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