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需給動向 野菜情報 2023年10月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年8月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万988トン、前年同月比98.2%、価格は1キログラム当たり272円、同104.9%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8391トン、前年同月比100.4%、価格は1キログラム当たり240円、同103.9%となった。
⃝8月の高温・干ばつにより、品目によっては11月頃に豊作になることが予想されるが、果菜類は高温障害により9~10月の回復は望めない。西南暖地産も促成物は遅れると予想される。引き続き市場間の引き合いが強まり、10月は平年を上回る価格水準が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、北・東日本を中心に太平洋高気圧に覆われやすく、晴れた時期があったため、旬降水量は東日本日本海側で少なく、北日本太平洋側では平年並だった。南西諸島付近を通過し九州の西を北上した台風第6号や、東・西日本太平洋側を中心に暖かく湿った空気が流れ込みやすかった影響で、東・西日本と沖縄・奄美で曇りや雨となり、記録的な大雨となる所があった。このため、旬降水量は北・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。旬間日照時間は、北日本太平洋側と東日本日本海側で多く、北・西日本日本海側と東日本太平洋側では平年並だった。また西日本太平洋側で少なかった。北日本を中心に暖かい空気に覆われやすく、また南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、旬平均気温は北・東・西日本でかなり高かった。
 中旬は、15日に和歌山県に上陸した台風第7号の影響で、大量の暖かく湿った空気が流れ込んだため、東・西日本を中心に記録的な大雨となった所があり、旬降水量は北・東・西日本太平洋側で多かった。15日には鳥取県で大雨特別警報が発表されるなど、各地で土砂災害や河川の増水・氾濫、浸水の災害が発生した。一方、期間のはじめや終わりには、太平洋高気圧に覆われ東日本を中心に晴れた日が多かったため、旬間日照時間は、北・東日本日本海側と東日本太平洋側で多く、北・西日本太平洋側、西日本日本海側では平年並だった。旬降水量は、北・東日本日本海側で少なく、西日本日本海側と沖縄・奄美では平年並だった。旬平均気温は、南から暖かい空気が流れ込みやすく、日本海側ではフェーン現象も発生したため、北・東日本でかなり高く、西日本で高かった。特に、北日本の旬平均気温平年差は+3.1℃となり、1946年の統計開始以降、8月中旬として1位の高温となった。
 下旬は、北・東日本を中心に太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、旬降水量は、北日本太平洋側でかなり少なく、北・東・西日本日本海側で少なかった。東日本太平洋側では平年並だった。湿った空気の影響を受けた西日本太平洋側の旬降水量は多かった。また、旬間日照時間は、北・東日本日本海側と北日本太平洋側でかなり多く、東日本太平洋側と西日本日本海側で多かった。西日本太平洋側では平年並だった。特に、北日本日本海側の旬間日照時間平年比は158%となり、1961年の統計開始以降、8月下旬として1位の多照となった。南から暖かい空気が流れ込みやすく、日本海側ではフェーン現象も発生したため、旬平均気温は北・東日本でかなり高く、西日本で高かった。旬平均気温平年差は、北日本で+5.3℃、東日本で+2.6℃となり、1946年の統計開始以降、8月下旬として北日本で1位、東日本で1位タイの高温となった。旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p010a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万988トン、前年同月比98.2%、価格は1キログラム当たり272円、同104.9%となった(表1)。

タイトル: p010b

 根菜類は、にんじんの価格が、数量減少から堅調な動きとなり、高めに推移した前年をやや上回り、平年を1割以上上回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタスの価格が、業務需要の回復などから月間を通して安定した動きとなり、安めに推移した前年をやや上回り、平年を1割以上下回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、月間を通して堅調な推移となり、安めに推移した前年を2割近く上回り、平年を1割以上上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、高めに推移した前年を2割近く下回り、平年をわずかに上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

タイトル: p011

タイトル: p012
タイトル: p013a

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8391トン、前年同月比100.4%、価格は1キログラム当たり240円、同103.9%となった。(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

タイトル: p013b

タイトル: p014
タイトル: p015

(4)首都圏の需要を中心とした10月の見通し

 本州・北海道を中心に8月いっぱい高温・干ばつが長く続いた。台風の接近や線状降水帯の発生もあったが、全般に雨不足が報告されている。9月初旬に平年並みの天候に戻れば、今後本格化する秋冬野菜は正常な生育を保つと予想される。北海道産・東北産の夏野菜は、9月初旬に降雨があったとしても回復しきれないと予想される。
 一般的に「干ばつに不作無し」と言われるが、品目によっては11月頃に豊作になることが予想される。全国の野菜産地はほぼ潅水設備が整っており肥培管理が行き届いているが、果菜類は高温障害により9~10月の回復は望めない。西南暖地産も促成物は遅れると予想される。
 引き続き市場間の引き合いが強まり、10月は平年を上回る価格水準が予想される。

タイトル: p016a
 だいこんは、北海道産(ようてい)は、現状までの出荷実績は例年の3分の2かそれ以下となっている。例年にない暑さによって、細物や病気の発生などがあり少なくなっている。最終出荷は10月中旬を予想しているが、回復は難しいと予想される。青森産は例年にない気温の高さにより、圃場(ほじょう)での廃棄が多くなっている。収穫後の洗いの段階で虫害や腐れが見つかるなど、出荷は伸びていない。今後降雨があれば9月中旬から回復し、10月出荷物から平年並みに回復すると予想される。通常は9~10月をピークに11月中旬までの出荷となる。
 にんじんは、北海道産の現状は出荷のピークが続いている。高温の影響で地上部が弱ったことにより、全体的に小振りで収量が下がっている。10月いっぱいで切り上がると予想され、生産量は例年の80~90%と予想している。青森産の秋にんじんは10月下旬から11月上中旬をピークに、11月いっぱいと計画している。播種(はしゅ)は終わっており、高温下である程度の発芽不良が予想される。機械播きを主力に、一部シーダーテープ(種子の入った紐)での播種を行っており、作付面積は増えている。

タイトル: p016b
 キャベツは、群馬産の現状はほぼ平年並み、前年並みの出荷が続いている。6玉サイズ中心で、大きさも特に問題ない。9月も引き続き例年どおりピークが続き、10月中旬に減ると予想される。岩手産の現状も平年並みの出荷となっており、高温・干ばつでも収量は減っていない。9月いっぱいは現状のペースが続き、10月には減ってきて中旬で切り上がる見込みである。
 はくさいは、長野産の現状は、厳しい干ばつが続いているが生育は順調である。9月に入りやや小さめのサイズとなって出荷は平年を下回ると予想される。中旬から回復して10月には平年並みとなり、11月中旬には切り上がると予想される。
 ほうれんそうは、群馬産(利根沼田)の現状は高温・干ばつにより単収は減っているが、例年と同様9月に入り出荷が増えてきて、10月も例年並みの出荷を予想している。露地物も9月下旬に始まってくるが、高温下の播種であったことから、遅れや品質への影響が心配される。群馬産(薮塚)の現状も出荷は続いているが例年より少なめである。伸びが緩慢であったり、発芽不良も見られるなど苦戦している。10月に入るとこまつなの作業が終了してほうれんそうに注力するため出荷が増えると予想される。露地物も始まり、作付けの微増もあって前年並みに追いついてくると予想される。
 ねぎは、茨城産は秋冬ねぎとなり、出荷量は8~9月よりも減ってくるが前年並みと予想される。高温下ではあるが、生育には問題ない。新潟産は9月に入ると稲刈りが始まり、10月初め頃まで水田作業に注力するため、ねぎの出荷は10月中旬から本格化すると予想される。猛暑が続いて雨が少ないことにより、肥大が悪く細物が多くなると予想している。11月に入ってピークを迎え、12月の積雪の頃に切り上がると予想される。青森産は高温の影響により伸び、肥大ともに悪く、今のところ平年の半分程度の出荷となっている。9月の稲刈り後、9月下旬から12月が出荷のピークだが、例年の80%程度と予想される。
 レタスは、長野産の出荷は準高冷地からとなり、今後増えて最後の最盛期を迎えると予想される。高温・干ばつが続いていることから、葉の「焼け」の発生が心配される。現状は潅水(かんすい)作業をまめに行い、発生を防いでいる。9~10月も作業が順調で、平年並みの出荷を予想している。兵庫産は例年どおり、早い物は9月下旬から10月初め頃には出荷が始まり、本格的に増えてくるのは11月に入ってからと予想される。年内のピークは11月下旬と予想される。作付けはやや減少する見込みである。群馬産の現状は、例年同様、出荷が減ってきている。9月上旬に降雨があれば、9~10月と盛り返してくると予想される。10月いっぱいまでの出荷であるが、例年より少なくなると予想している。茨城産は例年同様9月25日頃から始まり、播種作業も順調であったことから、10~11月がピークと予想される。定植後も潅水を怠ることなく、10月も平年並みの出荷と予想される。

タイトル: p017a
 きゅうりは、群馬産は抑制物となり、盆前に定植した物が9月15日から、盆明けに定植した物は10月10日~15日頃にピークとなると予想される。猛暑ではあるが、十分な日射量で例年通り順調に入荷すると予想される。異例の暑さにより、その後急な長雨となれば、生育に問題が出てくることも予想される。高知産の現状は出荷が始まっているが、主力シーズンの物はこれからが定植であり、10月末頃から量的にまとまってくると予想される。最初のピークは12月始め頃と予想している。福島産の露地物は9月いっぱいでほぼ切り上がると予想される。抑制物は現状始まっているが、下位等級品がやや多い。10月がピークで、11月上旬までの出荷と予想される。
 なすは、高知産の出荷は9月末頃から始まり、10月中下旬から11月いっぱいくらいまでが年内のピークと予想される。定植作業も順調に始まっており、特に遅れは見られない。高温下であったが、単為結果品種(受粉しなくても果実が肥大する品種)に切り替えているため結実に心配はない。栃木産は盆前後に出荷のピークとなり、現状は成り疲れと猛暑により花落ちしたことから出荷は少なめである。これまでの出荷実績は作付面積の減少もあり92~93%と前年を下回っているが、不作年ではない。まとまって多く出荷されるのは9月上旬までで、10月は例年同様に減って、霜が降りる11月中下旬に切り上がると予想される。福岡産は9月1日から始まり、現状異常気象などの影響はない。10月の出荷は増加傾向で推移し、11月が年内のピークと予想している。品種は「PC筑陽」であり例年と変わらない。
 トマトは、熊本産の選果の開始が10月1日で、全国に出荷が広がるのは中旬以降と予想している。生育そのものは順調であるが、大玉の生産が若干減ってミニトマトの作付けが増えている。大玉品種は「桃太郎」のほか「かれん」、ミニトマトは「小鈴」である。茨城産の抑制物の茎は伸びているが着果は少ない。出荷は11月いっぱい降霜の時期までと予想される。例年は9~10月がピークであるが、8月末の段階では出荷は伸びてきていない。10月に回復しても、やや小ぶりな仕上りと予想される。群馬産の高原産地の夏秋物は、現状までで前年の110%以上の出荷実績である。猛暑もあり前倒し気味であったが、8月下旬に入って減ってきた。8月末にはやや増えたが、作付けが前年並みであることから、全体の生産量は前年並みと予想している。そのため9~10月は前年を下回ると予想される。品種は「りんか」がほとんどで、M・Sサイズが中心と見込まれる。青森産は8月末の段階では例年と同様減ってきているが、出荷量は例年の60~70%と少ない。暑さによる着果不良で今後の回復は期待できず、切り上がりは例年と同様の11月上旬と予想される。愛知産は例年と同様9月下旬から始まり、11月20日前後からピークを迎えると予想している。作付けはほぼ前年並みで、品種は「桃太郎」のほか「りんか」も増えている。
 ミニトマトは、北海道産の出荷は全体的に前倒し傾向だが、8月末の出荷実績は前年比100%である。北海道でも夏日が30日以上続いたことなどから着果不良で、今後も大きなピークはなく10月いっぱい出荷は続くが、例年をかなり下回ると予想される。
 ピーマンは、茨城産の現状は抑制物の秋ピーマンで、猛暑により「焼け」の発生はあるものの平年並みの出荷となっている。ピークは9月下旬から10月までで、出荷は霜が降りる11月上旬まで。温室物は10月下旬以降出荷が始まるが、燃油価格の高騰により作付けは減少すると予想している。岩手産の露地物は高温・干ばつにより果実の尻腐れ(果実の先端部分の傷み)が発生するなど、現状は圃場での廃棄が増えている。梅雨明け後の降雨はなく、8月の盆頃にようやく降雨があり下旬の出荷は増えた。9~10月は、今後の降雨次第では平年並みまで回復すると予想される。11月上旬までの出荷であるが、切り上がりのタイミングは降霜次第でもある。福島産は暑さの影響により尻腐れがやや見られ、現状はやや減少傾向となっている。例年より早めの10月には切り上がると予想され、10月としてはやや少なめと予想している。

タイトル: p018a
 さといもは、埼玉産は高温による被害はなく、例年どおり9月上旬から順調に始まると予想される。主要な産地は潅水施設があるため問題ないが、山間地寄りの産地には設備がなく、やや小ぶりの仕上がりと予想される。作付面積は前年並みである。宮崎産の産地(小林市)の夏は、雨が多く日照が少なかった。現状は「石川」品種のピークで9月中旬までと予想される。10月に入って出荷される「()(たれ)」は年明け1月頃までと予想される。「筍芋(たけのこいも)」は12月と予想される。現状では各品種ともに平年作で、作付けも例年並みである。愛媛産は「女早生(おんなわせ)」の出荷が例年より3~4日遅く始まった。翌4月までの計画であるが、今のところ玉付きがやや悪くやや不作気味と予想している。当面の出荷のピークは12月であり、年内の出荷量は前年並みで、作付けも前年並みである。
 ばれいしょは、北海道産(今金町)の「男爵」の現状は早出し物が70%終わったところで、秋物は9月8日から出荷が開始すると予想される。例年より若干早めで、現在のところ玉付きは良く豊作を予想している。雨不足からそうか病(いもの表面にかさぶたのような斑が出る病気)が散見される。北海道産(留寿都(るすつ))の「キタアカリ」は干ばつの影響により収穫作業が7~10日遅れている(土が乾燥しているため収穫時に傷が付いてしまうため)。生育は問題なく、出荷は翌4月までと予想される。
 たまねぎは、北海道産は圃場によりばらつきがあるが、特に天候の影響はなく、平年作を予想している。9月から11月がいったんのピークであり、サイズはLが中心と予想される。

タイトル: p018b
 ブロッコリーは、長野産の秋ブロッコリーは9月中旬頃から増えて、11月いっぱいくらいまでと予想される。暑い時期に定植したが、平年並みに推移しており、ピークは9月末頃から10月15日頃と予想される。埼玉産は9月下旬から10月上旬にかけて始まるが、早く定植した苗が特にダメージを受けており、後作の品種に切り替えたため面積の減少はない。出荷の始まりの時期は少なめと予想され、11~12月には回復してピークとなると予想される。青森産は9月に入って出荷が始まり11月上旬までと予想される。雨不足により定植した苗が焼けたため、例年の20~30%少ない出荷と予想している。北海道産の現状はかなり出荷が少なく、9月に入り、花蕾(からい)形成の時期に高温・干ばつを避けられれば、やや回復すると予想される。10月中旬までは量的にはまとまるが、下旬には急減して終盤を迎えると予想される。
 セルリー(セロリ)は、長野産は10月中旬に露地物からハウス物に切り替わると予想される。現状は遅れ気味で、高温の影響により圃場でのロスが多くなっている。9~10月はほぼ前年並みの出荷と予想される。
 かぼちゃは、北海道産の現状は出荷が始まっており、10月末までと予想される。着果は良かったが、高温・干ばつにより日焼けやうどんこ病、降雨による浸水被害があるなど、平年を下回る出荷となっている。品種は「味平」などで、6玉・7玉サイズ中心である。
 ごぼうは、九州産は台風の影響により品質が悪かった。青森産の新物は気温高により生育は順調で、例年にない早い展開で8月末から収穫が始まり、品質も良好である。気温高により店舗での鮮度が維持できないことが懸念される。
 かんしょは、千葉産の現状は出荷が始まったところであり、猛暑と干ばつの中での生育であったため、果形に乱れが見られる。9月に入り出荷量が増えて当面のピークは9月下旬と予想される。10月には貯蔵作業に注力し、出荷はやや減ってくる。年内の品種は「シルクスイート」「ベニアズマ」と予想される。徳島産は出荷の始めは小振りの物が多かったが、現状は平年並みのサイズとなっている。天候の影響もなく、9~10月はLサイズを中心に順調に出荷されると予想される。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

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