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需給動向 野菜情報 2023年8月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年6月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

〇東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万5977トン、前年同月比100.5%、価格は1キログラム当たり266円、同99.8%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7024トン、前年同月比104.0%、価格は1キログラム当たり235円、同98.3%となった。
⃝8月は、果菜類を中心に作付けの減少は報告されるものの、前進気味で平年を上回る出荷が予想される。11月初め頃まで西日本の市場からの引き合いが強まると予想され、全国的に市場価格は堅調と予想される。

(1)気象概況

 上旬は、北日本では天気は数日の周期で変化したが、低気圧の影響でまとまった雨の降った日があったため、旬降水量は、北日本日本海側と北日本太平洋側でかなり多かった。旬間日照時間は、北日本日本海側で少なく、北日本太平洋側では平年並だった。東・西日本では、梅雨前線の影響を受けやすく曇りや雨の日が多かったため、旬間日照時間は、西日本日本海側と東・西日本太平洋側で少なく、東日本日本海側では平年並だった。また、関東甲信地方では、8日ごろに梅雨入りしたとみられる。前線に向かって台風第2号から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、太平洋側では線状降水帯が発生し、2日から3日にかけて記録的な大雨となった所もあったため、旬降水量は、東・西日本日本海側と東・西日本太平洋側でかなり多かった。特に、東日本太平洋側では旬降水量の平年比が600%となり、1946年の統計開始以降、6月上旬として1位の多雨となった。気温は、北・東日本では暖かい空気が流れ込みやすく、平年を上回る日が多かったため、旬平均気温は高かった。一方、西日本と沖縄・奄美では平年並だった。
 中旬は、旬の前半では北日本で気圧の谷の影響を受けやすく、東・西日本は梅雨前線や湿った空気の影響を受けやすかったため、曇りや雨の日が多かった。旬の後半は高気圧に覆われやすく、この時期としては晴れた日が多かった。このため、旬間日照時間は、北・西日本日本海側と北・東日本太平洋側で多く、東日本日本海側と西日本太平洋側では平年並だった。旬降水量は、北・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で少なく、東日本日本海側と北日本太平洋側では平年並だった。なお、北陸地方、東北南部、東北北部では11日ごろに梅雨入りしたとみられる。旬平均気温は、北日本を中心に暖かい空気に覆われ平年を上回る日が多かったため、北日本でかなり高く、東・西日本で高かった。特に、北日本の旬平均気温の平年差は+2.2℃となり、1946年の統計開始以降、6月中旬として1位タイの高温となった。
 下旬は、旬の前半は高気圧に覆われて晴れた日もあったが、旬の後半は北日本では気圧の谷の影響を受けやすく、東・西日本は梅雨前線や湿った空気の影響を受けやすかったため、日本海側を中心に曇りや雨の日が多く、30日は西日本で大雨となった所もあった。そのため、旬降水量は、北・東・西日本日本海側で多く、旬間日照時間は、西日本日本海側で少なかった。北・東日本と西日本太平洋側では平年並みだった。一方、東・西日本太平洋側では、まとまった降水とならなかった所が多く、旬降水量は少なかった。北日本太平洋側では平年並だった。沖縄地方では25日ごろに、奄美地方では26日ごろに梅雨明けしたとみられる。気温は、北日本を中心に暖かい空気に覆われやすかったため、旬平均気温は、北日本でかなり高く、東・西日本で高かった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p028a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万5977トン、前年同月比100.5%、価格は1キログラム当たり266円、同99.8%となった(表1)。

タイトル: p028b

 根菜類は、だいこんの価格が、千葉産が終了した中旬以降上がったものの、高めに推移した前年を1割以上下回り、平年をかなりの程度下回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツの価格が中旬以降底上げとなり、前年、平年とも1割以上上回った(図3)。
 果菜類は、きゅうりの価格が、西南暖地、関東産の終盤となった下旬に向けて上がり、大幅な安値で推移した前年を3割強上回り、平年をかなりの程度上回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が、5月までの高値の反動があったものの、大幅な安値で推移した前年を2割以上上回り、平年をわずかに上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。


 
タイトル: p030
タイトル: p031

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7024トン、前年同月比104.0%、価格は1キログラム当たり235円、同98.3%となった(表3)。
 
品目別の詳細については表4の通り。
 

タイトル: p032a
 
タイトル: p032b
タイトル: p033
タイトル: p034

(4)首都圏の需要を中心とした8月の見通し

 6月の初めに台風2号が停滞前線を刺激し、全国的に長雨に見舞われた。関東でも水田に近いハウスが水に漬かるなどの被害が発生した。斜面のかんしょなどの苗なども圃場(ほじょう)によっては流亡し、秋の収穫に影響が出そうだとの声も聞かれた。
 6月は西南暖地産や関東産地の平野物の切り上がりが早まる傾向で、後続の東北産地の露地作も前進気味と報告される。ここ10年、北海道と東北は5~6月は干ばつ傾向で、7月に豪雨に見舞われる展開が多かった。
 6月下旬に東京市場の価格は高騰気味となったが、市場の仕入れ担当によると、消費の動きが良くなったことによる高値ではなさそうだとの声が聞かれた。
 8月は、果菜類を中心に作付けの減少は報告されるものの、前進気味で平年を上回る出荷が予想される。11月初め頃まで西日本の市場からの引き合いが強まると予想され、全国的に市場価格は堅調と予想される。

タイトル: p035a
 だいこんは、北海道産(標茶(しべちゃ))は道東産地から、例年と同様に7月上旬から始まると予想され、8月に入って出荷のピークを迎えると予想される。今年は干ばつはなく、Lサイズ中心に例年並みの出荷を予想している。同産(ようてい)の道央産地は6月29日から選果を開始した。6月は降雨が少なかったが、末頃にあった降雨により生育は順調でやや前進気味である。肥大はLサイズ中心だが2L寄りということで問題ない。10月上旬までほぼ計画通り出荷していくと予想される。青森産は8月に入って減り、7月の70%程度となると予想される。9月には再び増えて、秋のピークは10月と予想される。
 にんじんは、北海道産(美幌)は7月20日から出荷開始予定であるが、前年より2日程度遅い。それでもほぼ平年並みであるが、干ばつ気味のため現状はやや細めに仕上がっている。6月末頃の降雨により、肥大は回復してくると予想している。同産(斜里(しゃり))は7月25日から始まり、10月いっぱいまでほぼ一定のペースで出荷されると予想される。作付けは前年並みで、中心サイズはM・Lと予想される。同産(新函館)の現状は出荷のピークで、7月20日頃まで続くと予想される。8月第1週で切り上がる予定だが、やや早まっている。少雨によりやや細めに仕上がっており、作付けは少なめでも、出荷は歩留まりが悪かった前年を上回ると予想している。

タイトル: p035b
 キャベツは、群馬産の現状は平年並みの出荷となっている。梅雨に入っても晴天が続き、作柄も良く作業も進んでいる。8玉サイズ中心で、最大のピークである8~9月も順調と予想している。岩手産は、梅雨入りして降雨も適度にあり、生育順調である。現状は出始めで、7月中旬に向けて増え、9月いっぱいまで一定ペースで出荷できると予想される。作付けは前年並みである。
 はくさいは、長野産は標高1300メートル地帯の圃場からとなるが、7月中下旬から増え、8月がピークと予想される。6月初めの豪雨の影響により生育は不揃いであるが、7月には回復して、8月は平年並みと予想している。
 ほうれんそうは、群馬産の雨よけ物は生育順調であり、8月も例年並みの出荷と予想している。栃木産の現状は平年並みの出荷であり、8月の盆前が当面のピークと予想している。標高800~1200メートル地帯の圃場であり、作付けは前年並みで8月の出荷も前年並みを予想している。岐阜産の出荷は8月に入って7月の80%程度と減ってくるが、9月下旬から再び増えてくると予想される。作付けは微減であり、現状は生育順調で、8月は平年並みと予想される。
 ねぎは、北海道産の「軟白ねぎ」は7月初めから始まるが、出荷者が揃うのが8月の末頃であり、作付けは平年並みで、ピークは11月まで続くと予想される。青森産の現状はハウス物の出荷であり、露地物が始まるのは7月20日頃からで、当面のピークは8月の盆明けから9月いっぱいと予想される。その後、稲刈り作業が優先されるため一旦途切れ、10月後半に再びピークと予想される。作付けは前年並みである。
 レタスは、長野産は空梅雨気味で多く出荷された前年より、現状は少なめとなっている。それでも平年並みで、6月下旬から7月の海の日明け頃がピークと予想される。現状の定植作業が順調であることから、8月も引き続きピークを維持できると予想している。群馬産は7月に入り少なめになっているが、上旬後半から中旬に向けて増えて、8月の盆過ぎまでほぼ一定のペースで出荷できると予想される。作柄は良好で、9~10月には再び増えると予想される。

タイトル: p036a
 きゅうりは、福島産は8月に露地物が増え、施設物と約半々になると予想される。現状は露地物が始まったところであり、生育は順調である。ピークは7月下旬から8月であり、8月の出荷は例年並みを予想している。
   なすは、栃木産の現状は平年並みに露地物の出荷が始まり、ピークは8月に入ってから盆頃までと予想される。全体の生育は順調であるが、天候の変動が激しいことによる農家の負担増から、作付けは微減である。
 トマトは、北海道産(平取)の現状は、適度の降雨と晴天が続いているためトマトにとっての環境は良好であり、7月中旬から8月がピークと予想される。「桃太郎」はL、Mサイズ中心と予想される。同産(新小樽)の現状は、ミニトマトの出荷が順調に増えている。品種は「ミニキャロル」を中心に「アイコ」である。生育は順調で8月の盆前後がピークと予想される。その他に中玉トマトも出荷されると予想される。同産(留萌(るもい))のミニトマトの品種「キャロルセブン」は例年並みに6月下旬から始まった。生育は順調で盆前後にピークになると予想している。作付けは前年並みである。その後イエロー品種、中玉トマトの出荷がほぼ前年並みに始まると予想している。青森産(田子)の現状は出始めであり、ほぼ例年と同様のペースで、7月下旬から8月初め頃がピークと予想している。中心品種の「りんか」はLサイズ中心の出荷と予想している。同産(つがるにしきた)の現状は生育順調で、8月中旬にピークとなり、Lサイズ中心の見込みである。福島産は7月中旬から始まり、8月中旬にピークと予想しており、例年並みの状況である。生産者の高齢化により作付けは前年の90%程度と減っている。桃太郎系品種が中心で、8月はLサイズ中心と予想される。
 ピーマンは、岩手産の現状はハウス物の出荷で、主力の露地物は7月上旬からと予想される。露地物のピークは8月上旬で、作付けは増えており、施設物も含めると、8月の出荷は多雨の影響により少なかった前年を上回ると予想される。福島産の現状はハウス物とトンネル物の出荷で、露地物は7月10日頃から始まると予想される。全体の80%が露地物であり、8月中旬がピークと予想される。現状の生育は順調で、8月は前年をやや上回る出荷と予想している。

タイトル: p036b
 ばれいしょは、北海道産(今金)の「男爵」の早出し物は前年と同じく8月上旬から始まると予想される。例年、この時期は干ばつに遭いやすいが、今年は晴天が続くが適度に降雨もあり、生育は順調である。このまま推移すると豊作傾向とも予想され、早出し物のピークは9月上旬と予想される。同産(芽室)の「メークイン」の早出し物は8月8日から出荷が始まり、生育は順調で豊作傾向と予想している。通常栽培物は9月1日からの出荷が予想される。その他の品種「マチルダ」「洞爺」のうち、前者は作付けが増えている。
 たまねぎは、北海道産は7月から出荷が始まっているが、本格化するのは8月に入ってからであり、天候に恵まれて基本的には豊作傾向と予想している。L大サイズ中心と肥大も問題ない。佐賀産は7月までは農家で貯蔵しているものの出荷がメインとなり、その後は農協で貯蔵しているものがメインで、それも盆前までと予想される。10~20年前に比べると出荷はかなり少なくなっている。

タイトル: p037a
 ブロッコリーは、北海道産の現状は干ばつにより全体的に遅れているが、潅水できる圃場は順調である。現在定植している物は9月に出荷不足となる可能性もある。7月10日過ぎからピークとなり、8月の出荷は平年並みを予想している。
 セルリーは、長野産の現状は露地物に切り替わっており、10月中旬まで出荷が続くと予想される。作付けも前年並みで、8月の出荷も前年並みと予想される。
 かぶは、青森産は干ばつの影響により肥大が遅いなど、作柄は前年より悪い。梅雨入りして降雨はあるが、7月もやや少なめの出荷と予想している。8月は今後の天候によるが、播種は順調で徐々にピークとなると予想される。
 かぼちゃは、北海道産(きたはるか)は9月上旬から出荷が始まり、ピークは10月上旬からで、現状の生育は順調である。同産(新函館)は、7月24~25日から出荷が始まり、ピークは盆前で、品種は「みやこ」が70ヘクタール、加工向けの「えびす」も70ヘクタールで、生育順調である。
 スイートコーンは、千葉産の出荷のピークは7月15日~8月5日と予想される。10日頃から減り始め、盆休みの前半で切り上がると予想される。作付けは微増で、天候の激変がなければ出荷は伸びると予想される。北海道産は、8月5日からほぼ例年並みに出荷が始まると予想している。ピークは盆前から20日頃までと予想され、作付けは前年の95%である。青森産は8月10日前後から出荷が始まり、ピークは9月初め頃と予想される。作付けは前年並みであり、品種は「恵味」が中心である。
 えだまめは、山形産の「だだちゃ豆」の出荷は7月最終週からとなるが、生育は順調で例年よりやや早めである。ピークは8月中旬で、8月の第2週にはかなり少なくなってくると予想される。作付けは前年並みである。青森産の早生物は7月の第2週から始まり、7月下旬から8月上旬がピークと予想される。8月下旬には晩生の茶豆が始まり、9月がピークと予想している。
 にんにくは、青森産は6月末の段階でほぼ収穫は終わっており、全般に小振りの仕上がりで、出荷は平年並みかやや下回ると予想している。7月は加工向けの出荷が開始され、市場へは8月から半乾燥物の出荷となる。最大のピークは11~12月であるが、価格安の影響により作付面積は減少している。
 メロンは、北海道産は品種「ルピアレッド」は8月盆近くまでの出荷と予想され、「ティアラ」は7月5日から8月いっぱい、「らいでんクラウンメロン」は6月28日から10月いっぱい、「レッド01」は盆明けから10月上旬、「レッド113」は9月1日から11月上旬と予想される。作付けは180.2ヘクタールで、生産者の高齢化により規模縮小しているため、前年より11ヘクタール減少している。
 すいかは、長野産のハウス物は6月から始まっており、露地物は7月3日から選果を開始した。ピークは7月の海の日の週から8月の盆前までで、最終の選果は9月2週までを計画している。作付けは前年並みで、生育順調である。
 (執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
 
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