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需給動向 野菜情報 2023年6月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年4月)

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野菜振興部・調査情報部

要約

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万653トン、前年同月比93.2%、価格は1キログラム当たり275円、同101.1%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5178トン、前年同月比95.8%、価格は1キログラム当たり251円、同96.5%となった。
⃝6月は西南暖地産が終盤を迎え、関東産から東北産へ、さらに平野から高原へと産地が移動していく重要な時期である。ここ10年、初夏の気候の振れ幅が広がりやすくなっており、野菜の出回りが不安定になり価格が高止まりする傾向にある。今年の6月についても、4~5月と同様に、平年より価格が高い展開が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、6日から7日頃に前線を伴った低気圧が日本海を進んだため、全国的に曇りや雨の天気となり、低気圧の影響を受けた北日本日本海側や、湿った空気が流れ込みやすかった西日本太平洋側では、まとまった雨が降り、旬降水量は多かった。期間のはじめと終わりは、高気圧に覆われて晴れた日が多く、湿った空気の影響を受けにくかった東・西日本日本海側と沖縄・奄美の旬間日照時間は多かった。北日本から西日本にかけて暖かい空気が流れ込みやすく、また、北日本を中心に上空の暖かい空気に覆われやすかったため、北・東・西日本の旬平均気温はかなり高く、北日本の旬平均気温平年差は+2.9℃で、1946年の統計開始以降、4月上旬として最も高かった。一方、沖縄・奄美では、期間の終わりに大陸から進んできた冷涼な高気圧に覆われて気温が平年を下回る日があり、旬平均気温は、北・東・西日本でかなり高く、沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側と西日本太平洋側で多かった。一方、東日本太平洋側と沖縄・奄美で少なく、北日本太平洋側と東・西日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、東・西日本日本海側と沖縄・奄美で多く、北日本日本海側と北・東・西日本太平洋側では平年並だった。

 中旬は、15日頃には前線を伴った低気圧が本州付近を通過して全国的にまとまった雨が降り、19日には沖縄・奄美で大雨が降った所があったため、旬降水量は、沖縄・奄美でかなり多く、北・西日本日本海側と北・西日本太平洋側で多かった。東日本日本海側と東日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、期間の前半を中心に高気圧に覆われやすかった沖縄・奄美ではかなり多かった。一方、北日本日本海側で少なく、北・東・西日本太平洋側と東・西日本日本海側では平年並だった。旬平均気温は、南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、北・東日本と沖縄・奄美でかなり高く、西日本で高かった。

 下旬は、低気圧や前線と高気圧が日本付近を交互に通過し、低気圧や前線の通過に伴い本州付近ではまとまった雨も降ったため、旬降水量は、西日本日本海側と西日本太平洋側でかなり多く、北日本日本海側で多かった。一方、沖縄・奄美で少なく、北・東日本太平洋側と東日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、低気圧や前線の影響を受けた西日本日本海側や西日本太平洋側と、湿った空気の影響で曇りの日が多かった沖縄・奄美で少なかった。一方、高気圧に覆われやすい時期があった北日本太平洋側で多く、東日本日本海側と東日本太平洋側では平年並だった。旬平均気温は、高気圧に覆われやすい時期があった北日本で高く、東・西日本と沖縄・奄美では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

タイトル: p010a

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万653トン、前年同月比93.2%、価格は1キログラム当たり275円、同101.1%となった(表1)。

タイトル: p010b

 根菜類は、にんじんの価格が、月間を通して堅調な動きとなり、大幅な安値で推移した前年を3割以上上回り、平年を1割強上回った(図2)。
 葉茎菜類は、ねぎの価格が、夏ねぎの出荷が開始した下旬に上がり、やや安めに推移した前年をわずかに上回り、平年をやや下回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、入荷量の減少に伴い下旬に上がり、前年を2割以上上回り、平年を3割近く上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、大幅な高値で推移した前年を6割強下回り、平年を1割以上下回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

タイトル: p011

タイトル: p012
タイトル: p013a

(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5178トン、前年同月比95.8%、価格は1キログラム当たり251円、同96.5%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

タイトル: p013b

タイトル: p014
タイトル: p015

(4)首都圏の需要を中心とした6月の見通し

 6月は西南暖地産が終盤を迎え、関東産から東北産へ、さらに平野から高原へと産地が移動していく重要な時期である。ここ10年、初夏の気候の振れ幅が広がりやすくなっており、野菜の出回りが不安定になり、価格が高止まりする傾向にある。夏本番の大産地である北海道産の干ばつと、関東以西の猛暑がリスクとなっている。この3月から4月にかけての温暖で、一部では生育が進んだが、4月下旬に入り、全国的な低温により生育にブレーキがかかって出回り不足になった。5月の高温は西南暖地の果菜類にとってはダメージは大きいと予想され、その分、東北産が前進した結果、その先の7月に出回り不足を招くといった不安定要因となりがちである。6月についても4~5月と同様に、平年より価格が高い展開が予想される。

タイトル: p016a
 だいこんは、青森産は4月28日頃からハウス物が始まっているが、本格的には連休明けからと予想され、トンネル物に切り換わるのは5月中旬で、ピークは5月21日~6月上旬と予想される。その後は露地物となるが、市況を見ながらの販売となり、当面の予想では6月いっぱいの出荷と見ている。作付けは微減と予想しているが、人手不足により計画を達成できない可能性もある。2Lサイズ中心に出荷したいが、現状までの干ばつの影響により、やや細めの仕上がりである。北海道産の露地物(マルチがけ)が6月25日から始まるが、ほぼ平年並みのペースである。早い雪解けと3月の好天もあり、早まることが予想されたが、4月に入って一転、晴天が少なくなり、気温も低く、生育は足踏みしている。
 にんじんは、千葉産の夏にんじんは5月20日以降に出荷開始となるが、ほぼ平年通りと予想される。「(あや)(ほまれ)」は6月にピークとなり、7月10日頃に切り上がると予想される。作付けは前年並みで、Lサイズ中心の見込みである。茨城産はハウス物が5月10日頃から始まるが、本格的には6月のトンネル物からと予想される。出荷は7月中旬までで、作付けは若干増えている。品種は「紅ひなた」である。

タイトル: p016b
 キャベツは、千葉産の現状は2週間ほどの前進となっている。3月下旬まで多く、4月上中旬は少なくなり、4月下旬に量的に回復した。5月上中旬はまた少な目となり、その後下旬に回復して6月は多くなり、7月10日頃には例年並みに切り上がると予想される。群馬産は6月に入って標高700、1000、1300メートルの()(じょう)からの出荷となり、現状は生育順調である。今年の天候は平年並みであり、生産環境は特別問題ない。徐々に増えながら推移し、大きさも例年並みと予想している。茨城産の現状は例年よりやや早めに始まっているが、ピークは5月20日過ぎ頃から6月いっぱいと予想している。寒玉系の品種で、生育は順調で肥大も問題ない。
 はくさいは、長野産は標高1000~1200メートル地帯からとなり、早い物は5月下旬から始まると予想される。最大のピークは10月で、6月は徐々に増えながら推移し、6月としては前年並みを予想している。
 ほうれんそうは、岩手産の現状は3月に播種(はしゅ)した物が出始めている。秋に播種した冬越し物は4月いっぱいで終了し、5月からは新物のみとなる。この作は天候に恵まれ、平年並みかやや多いと予想している。今後、強風被害や極端な低温がなければ、順調に推移すると予想される。岐阜産は例年よりやや早く、4月末頃から始まった。5月の連休明けから増えて、6月まで多く出荷でき、7月に入り減ってくると予想される。作付けは高齢化によりやや減っている。群馬産は6月中旬まで露地物、その後は雨除け物となり、生育は順調で、量的には前年並みを見込んでいる。
 ねぎは、千葉産の初夏ねぎは6月いっぱいの出荷と予想される。4月の段階ではベト病の発生から品質低下し、出荷も少なくなっている。6月には病気もなくなり、ほぼ前年並みの出荷と予想される。茨城産は6月下旬から夏ねぎに切り換わるが、7月20日頃まで潤沢なペースが続く見込みである。中心サイズはL、2Lと太りも良好である。6月は前年より微増と予想している。埼玉産は5月までは初夏ねぎで、6月からは夏ねぎとなって7~8月をピークに9月までと予想される。作付けは微増で、品種は「(なつ)(おうぎ)」である。
 レタスは、長野産は塩尻市の標高600~700メートル地帯の産地からとなる。5月の連休始め頃からピークとなり、5月中旬に最も多く、6月には横ばいで推移すると予想される。同産の川上・南牧、野辺山の1200メートル地帯からの出荷は、6月に一度ピークが来て、7月は横ばいで推移すると予想される。若干早まる気配があるが、6月は前年並みの出荷を予想している。群馬産は生育順調で、連休頃に増えてきて、5月20日過ぎから6月がピークと予想される。

タイトル: p017
 きゅうりは、福島産の促成物は4月から始まり5月中旬にピークが来ると予想され、次のピークは6月上旬で、6月としては前年並みを予想している。作付けは前年並みで、生育は順調である。宮城産は定植を遅らせたことの他に、気温の寒暖差が大きいことなどが影響して例年より遅れており、3月から出荷が始まったがまだ大きなピークは来ていない。5月の連休後半頃にようやく本格的に増えてくると予想される。例年通りであればピークは6月中旬で、7月上旬から減ってくると予想される。高知産の越冬作は終盤を迎え、7月にはかなり少なくなる。当面のピークは5月中下旬で、6月に入り徐々に減りながら推移すると予想される。今年の作は全般的に不作気味であったが、5~6月は前年並みの出荷を予想している。宮崎産は4月の連休前から連休にかけて曇天だったため、5月に入って量的に現状よりも減ってくる可能性がある。それ以降もピークは来ず、6月まで横ばいで切り上がりが早まる可能性もある。
 なすは、栃木産のハウス物は前倒しで始まり、ピークは5月中下旬でさらに6月も続くと予想される。露地物は5月の連休明けから始まってくるが、4月の低温により花に影響が出ている可能性がある。ピークは7月下旬から8月の盆頃で、5~6月はそれほど多くないと予想される。作付けは前年の95%である。福岡産は4月中旬に一度ピークが来て、現状はやや減っている。5月中旬に再びピークとなり、6月には減りながら推移すると予想され、1月の低温が影響して前年を下回っている。6月いっぱいで切り上がるが、若干の生産者は7月第一週まで出荷できると予想される。高知産は例年5月中旬に最大のピークを迎えるが、連休の降雨により、ピークが下旬にずれることが予想される。6月には切り上がる生産者も出て、徐々に減りながら推移すると予想される。
 トマトは、山形産が5月下旬から始まるが、例年よりやや早めである。ピークは6月15日から20日頃と予想される。品種は「りんか」でサイズはL中心、作付けは前年並みである。青森産は6月10日過ぎから例年並みに始まると予想される。作付けは高齢化により前年比微減であり、ピーク時期に比べると半分に届かない。品種は「桃太郎系」がメインであるが、今年は「りんか」が増えている。愛知産の出荷は6月末までを計画しており、品種「桃太郎ファイト」の生育は順調で、Mサイズ中心の見込みである。群馬産は標高700~1000メートルの圃場から、早い物は6月に始まると予想される。例年通りであれば8月がピークで、徐々に増えながら推移すると予想される。
 ピーマンは、茨城産は2月までの低温が影響し、現状までは例年より少なめの出荷が続いている。4月に入っても低温の日が続き、やや膨らみが足りない。今後は春ピーマンのピークであり、5月の連休明けからの回復を期待している。越冬物は6月には終盤となり、7月上旬には切り上がると予想される。岩手産のハウス物は例年と同様6月上旬からであり、主力の露地物が始まる7月下旬から8月上旬が当面のピークと予想される。作付けは若干増えている。高知産は5月の連休前頃から6月中旬までピークであり、切り上がるのは7月10日頃と予想している。冬春ピーマンは12月の低温が影響し、やや不作気味であった。

タイトル: p018a
 ばれいしょは、長崎産は寒波の被害により早い作型の出荷が少なかった。連休前頃から出荷となる物は被害もなくピークを迎えると予想される。現状はMサイズも多いが徐々に肥大し、全体では豊作で平年を上回ると予想している。天候は悪くなく、作業も順調であるが、今後の降雨や市場価格次第では、出荷量に変化も出てくると予想される。千葉産の現状までの生育は順調である。品種はすべて「メークイン」で、例年通りであれば5月下旬から収穫を始めて風乾し、6月中旬後半から出荷開始の見込みである。静岡産は5月20日過ぎから始まるが「三方原ばれいしょ」より1旬以上遅れての開始である。今年の計画は生産者の減少により前年比2割減の予想である。ピークも「三方原ばれいしょ」より遅れて6月中旬から7月上旬で、出荷は7月いっぱいと予想される。
 たまねぎは、佐賀産の収穫は6月中旬で終了し、その後は貯蔵物を選果して販売する。早生まではL、2L中心であったが、その後はL・M中心でそれ程大玉でない。作柄としては平年並みで、7月にはかなり減ってくると予想される。兵庫産の本年産は大玉傾向で、前年を上回る収量と予想される。現状は早生の収穫の最中であるが、雨で圃場に入れない。6月後半からは貯蔵乾燥した物の出荷となるが、出荷量は前年を上回ると予想している。千葉産は4月16日から始まり、例年より10日程早まっている。5月の連休明け頃にピークを迎え、6月中旬までの出荷と予想される。1月の寒さで心配したが、3~4月の好天によりその後適度の降雨もあって肥大している。今後の市況によるが、量的には平年並みを予想している。

タイトル: p018b
 アスパラガスは、新潟産が連休明け頃から増えてきて、15日頃に一度ピークが来ると予想される。6月10日頃に2度目のピークが来て、6月いっぱいでほぼ切り上がると予想される。前年と前々年がそれ程多くなかったことから、本年は前年を上回る出荷を期待したい。昨秋に行った調査では株の充実は平年並みである。北海道産は4月に入っての低温により、例年並みの5月20日頃からと予想される。5月25日から6月上旬をピークに、6月いっぱいで切り上がると予想される。前年の調査では株の充実は例年並みである。今年の収量は特別多くなく、また不作もないと予想される。
 ブロッコリーは、青森産は雪解けが早かったため作業も順調で、6月初めから出荷が始まると予想される。ピークは10日頃からで、6月いっぱいで切り上がると予想される。作付面積は前年並みである。北海道産は例年通り定植は始まっている。出荷は6月に入ってからで、最大のピークは7月と予想される。作付けは離農などにより前年を下回ると予想している。
 かぼちゃは、神奈川産は6月上旬から始まるが、3月の好天により前進したが4月の朝晩の低温で平年並みに戻った。また、一部で結実が流れた可能性がある。連休時期に交配する物が6月20日頃ピークになると予想している。鹿児島産は5月8日から収穫開始の予定であり、例年よりやや早めである。出荷のピークは5月下旬であるが、6月も多く出荷されると予想している。作付けは前年並みで、品種は「えびす」が90%、残りは「栗五郎」である。
 とうもろこしは、山梨産のトンネル物の早い物は5月10日過ぎから始まり、天候に恵まれて全体が前進している。ピークは6月4日頃からで、前年よりも4日程度早い。6月20日頃からは露地物も始まって7月10日頃までと予想される。作付けは前年並みで、品種は「ゴールドラッシュ」である。宮崎産は例年よりやや早めに始まっており、ピークは6月24日の週で、6月に入りやや減ってくるが、7月初め頃まで多く出荷されると予想される。作付けの減少と5月下旬の出荷物が霜害により減少しており、出荷量は前年を下回ると予想している。
 えだまめは、群馬産は標高300~700メートルの中山間地からとなるが、6月上旬から始まり10月上旬までと予想される。茶豆系の品種は「味緑」それ以外は「新緑」でいずれもこだわり商材である。3~4月の好天により初期の生育は順調で、作付けは前年並みである。千葉産は例年より一週間程度早まって、ハウス物は5月いっぱいまでと予想される。トンネル物は5月下旬に始まり、6月に入ってピークとなり、6月下旬には露地物に切り換わると予想される。作付けは前年並みである。
 そらまめは、宮城産の蔵王地域は5月22日頃から始まるが、例年よりやや早い。ピークは出始めから10日後ほどの6月に入ってからで、6月15日には切り上がると予想される。作付面積は増えている。
 にんにくは、香川産は5日程早く、早生品種が4月10日から始まった。通常品種はマルチ物が5月15日頃から始まり、5月いっぱいまでピークと予想される。生果の出荷は6月10日頃までで、その後は貯蔵・乾燥した物の出荷となる。生育は順調で中心サイズは2L・3Lと予想され、作付けは前年よりも若干増えている。
 すいかは、鳥取産の出荷の始まりは例年並みの5月下旬からであるが、年々早まる傾向にある。ピークは6月25日から2週間で、この時期はトンネル物も始まりハウス物と併売されると予想される。全体の作付は前年並みで、中心サイズは3L・4Lである。

 (執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

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