野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 >  1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年3月)

需給動向 野菜情報 2023年5月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和5年3月)

印刷ページ
野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1367トン、前年同月比95.1%、価格は1キログラム当たり266円、同99.0%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6547トン、前年同月比101.8%、価格は1キログラム当たり237円、同93.3%となった。
⃝5月は初夏物が始まり、引き続き前進傾向と報告されている。果菜類も越冬作を中心に気温の変動が大きい中で、生産者の努力によって引き続き大幅な減少もなくピークを迎えるが、豊作ではないと予想される。

(1)気象概況

 上旬は、高気圧に覆われやすく、西高東低の気圧配置となりにくかったため、ほぼ全国的に旬降水量は少なく、旬間日照時間は多かった。特に、東・西日本太平洋側、西日本日本海側、沖縄・奄美では旬降水量がかなり少なく、旬間日照時間がかなり多かった。旬間日照時間平年比は、東日本日本海側で188%、西日本日本海側で176%、東日本太平洋側で140%、西日本太平洋側で158%で、それぞれ1961年の統計開始以降、3月上旬として1位の多照となった。北・東・西日本では、大陸からの寒気の影響を受けにくく、暖かい空気が流れ込んだ日もあったため、旬平均気温はかなり高かった。旬平均気温平年差は、北日本で+3.7℃、東日本は+3.3℃で、それぞれ1946年の統計開始以降で3月上旬として1位の高温となった。旬降水量は、北日本日本海側と北日本太平洋側で少なかった。東日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、北日本日本海側と北日本太平洋側で多かった。

 中旬は、全国的に天気は数日の周期で変わった。旬間日照時間は全国的に多く、特に北・東・西日本日本海側と西日本太平洋側でかなり多かった。旬降水量は、まとまった雨が降った日があった東日本太平洋側で多かったが、西高東低の気圧配置となりにくかった北・東・西日本日本海側で少なかった。全国的に南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、気温は北・東・西日本でかなり高かった。旬平均気温平年差は北日本で+2.9℃で、1946年の統計開始以降で3月中旬として1位の高温となった。旬降水量は、北・西日本太平洋側では平年並だった。

 下旬は、本州南岸に前線が停滞したため、東日本太平洋側から西日本、沖縄・奄美を中心に曇りや雨の日が多かった。南からの暖かい空気が流れ込みやすかっため、全国的に旬平均気温はかなり高く、旬平均気温平年差は、東日本で+3.8℃、西日本で+3.1℃で、1946年の統計開始以降、3月下旬として東日本は1位タイ、西日本は1位の高温となった。 旬平均気温は、全国的にかなり高かった。旬降水量は、東・西日本太平洋側で多かった。北・東・西日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、移動性高気圧に覆われやすく、西高東低の気圧配置となりにくかった北日本日本海側でかなり多く、北日本太平洋側と東日本日本海側で多かった。東・西日本太平洋側で少なかった。西日本日本海側では平年並だった。

 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

(2)東京都中央卸売市場

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万1367トン、前年同月比95.1%、価格は1キログラム当たり266円、同99.0%となった(表1)。



 根菜類は、にんじんが、徳島産が増量となった中旬以降に価格を上げ、大幅に安かった前年を4割以上上回ったものの、平年をわずかに下回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタスの価格が、数量が十分であったことから下旬に向けて軟調となり、大幅に高かった前年をやや下回り、平年を2割近く上回った(図3)。
 果菜類は、トマトの価格が、小玉傾向であった上中旬から下旬に向けて回復し、やや安めに推移した前年を1割以上上回り、平年を1割強上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、大幅に高かった前年を4割以上下回り、平年をやや上回った(図5)。

 なお、品目別の詳細については表2のとおり。




(3)大阪市中央卸売市場

 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6547トン、前年同月比101.8%、価格は1キログラム当たり237円、同93.3%となった(表3)。

 品目別の詳細については表4の通り。




(4)首都圏の需要を中心とした5月の見通し

 1~2月の寒さが厳しく、秋冬野菜は一部産地では(とう)立ちの発生もあるなど豊作でなく、切り上がりが早まった。一方、4月からの春野菜は3月の気温高と適度な降雨により、前倒し気味の入荷となった。市場価格は全般に平年並みであったが、消費者には各野菜とも値頃感があった。小売りでは、食品全般が値上がりする中で、生鮮品の価格を抑えながら販売するといった努力が見られる。
 5月には初夏物も始まってくるが、引き続き前進傾向と報告されている。果菜類も越冬作を中心に気温の変動が大きい中で、生産者の努力により引き続き大幅な減少もなくピークを迎えるが、豊作ではない。市場側としては3月までの価格を維持し、集荷に努力したいところである。

013a

 だいこんは、千葉産は4月いっぱいピークが続き、5月に入り徐々に減りながら推移すると予想される。気温の上昇により2Lの比率が徐々に高まり、採り遅れも影響している。5月いっぱいでほとんど切り上がると予想される。青森産はトンネル物であり、定植作業は順調であった。雪解けが早かった分、作業の開始が早まり、出荷も例年の5月20日よりやや早まる見込みである。6月は露地物になり数量的に安定してくると予想される。
 にんじんは、徳島産は4月がピークの前半であり、5月15日前後から徐々に減りながら推移すると予想される。春にんじんは3月が少なかったものの、平年並みかやや微増と予想される。冬の気温が平年並みで干ばつ気味であったことから、やや後ろにずれている。今後徐々にLサイズの比率が高まると予想される。静岡産は4月6日の取引から始まるが、前年よりも3日程度遅い。ピークは14日から4月いっぱいで、5月に入り減りながら推移すると予想される。「ベータリッチ」については、前半はLサイズ中心であるが、後半は2L中心になると予想される。生産量は農家の減少により、前年の90%程度と予想している。千葉の春夏にんじんは例年4月下旬後半から始まるが、播種時期に干ばつが続いたことによる蒔き遅れから、やや後ろにずれると予想される。特別ピークはなく、連休明けから増えてきて6月20日前後までの計画である。

014a
 キャベツは、愛知産の4月までは春キャベツで、5月からは夏キャベツとなり、4月以降の出荷量は3月の半分程度になると予想される。5月も横ばいで推移し出荷量は前年並みと予想される。茨城産は5月上旬から始まるが、例年よりやや早い。出荷のピークは5月下旬から6月と予想され、寒玉系品種で、作付けは前年並みである。千葉産の「初恋キャベツ」は天候に恵まれ生育は順調である。4月よりも増えて5月20日から6月10日頃がピークであるが、やや前進気味であり、作付けは前年並みである。
 はくさいは、長野産は5月15日の週からの出荷となるが、生育は大変順調で例年より5~7日程度早いと予想している。作付けは前年の105~110%と増えている。
 ほうれんそうは、埼玉産は高温と適度な降雨により前進出荷となっているが病気の報告はない。播種は順次行われており、5~6月と出荷は続くが、5月20日以降はえだまめの作業に忙しく急減すると予想される。岩手産は5月初めから出荷が始まるが、例年に比べるとやや早い。5月中旬に1回目のピークが来て、6月が最大のピークとなり、7月にはやや減ってくると予想される。作付けはやや減っている。群馬産の12月に播種した物は3月で終了し、次の作が4月中旬に増えて、連休頃から5月いっぱいピークになると予想される。露地作であり、生育は順調で前年並みの見込みである。

 ねぎは、茨城産は気温が高く適度な降雨もあったことにより生育は順調で、太りも良好である。4月は計画を上回る微増を予想しているが、5月からの初夏ねぎも潤沢で同様のペースと予想される。7月20日過ぎには急減すると予想される。千葉産の5月20日までの春ねぎは、1~2月の低温が影響し、花芽の出るのが早く4月下旬にはかなり減ってくると予想される。初夏ねぎは、5月の連休中明け早々に出荷開始できると予想される。4月下旬がやや少なめであるが、5月には例年通り潤沢なペースを維持できると予想される。
 レタスは、茨城産の現状は、岩井地域は55%終わったところで、今後ピークの後半へ向かい、5月の連休明けが終盤である。結城地域は5月いっぱいピークが続くと予想される。現状は7日程度の前進で、切り上がりは早まる可能性もあろう。長野産は5月中旬に始まり、下旬から川上村の標高1200メートル地帯の物の出荷が始まると予想される。ピークは7~8月であり、現在の生育は順調で、例年並みの推移が予想される。群馬産は4月6日売りからスタートするが、例年に比べると10日程度早く、連休明けにピークに入ると予想される。現在は生育順調であるが、天気により増減も想定される。

013b

 きゅうりは、埼玉産の現状は例年通りの出荷となっているが、4月10日頃から増えて5~6月がピークと予想される。作付けは前年並みで、5月の出荷量も前年並みを予想している。宮城産の現状は出荷が始まったところであり、高騰する燃料代の節約から定植を後ろにずらしたが、3月の好天により例年並みに追いついてきた。5月上旬に1回目のピークが来て、6月中旬に再びピークが来ると予想される。福島産は4月10日前後からとなるが、若干遅らせている。ハウス物のピークは6月中旬で、5月には徐々に増えながら推移すると予想される。生育は順調で、5月は前年並みを予想している。高知産は越冬物となり、当面のピークは5月末頃に来て、6月いっぱいの出荷を予想している。12月~翌1月の降雪や2~3月の日照不足が影響し、今年は前年の90%程度の出荷が続き不作であった。4月以降の回復を期待し、5月は前年並みを予想している。
 なすは、高知産が4月に入り出荷のピークを迎えている。生育は順調で前年より多めの出荷が予想されており、新品種導入の効果が出ているとともに生産者も増えている。5月の連休頃に最も多く、6月中旬になって急減すると予想される。福岡産は3月の好天により生育は順調である。4月下旬から5月上旬がピークと予想され、5月としては前年並みを予想している。群馬産の現状は、ハウス物が始まっており、5月の連休頃から本格化すると予想される。このまま好天で推移すると、前年をやや上回ると予想される。6月10日頃には露地物が始まるが、作付けは増えている。

 トマトは、福岡産の越冬物は4月末から連休にかけて増え、5月にピークを迎えると予想される。1~2月に降雪があり、3月には降雨の影響でカビ病が発生するなど万全の環境でなかった。それでも徐々に回復し、5月は前年を上回ると期待しているが、生産者が減少しているため、前年並みにとどまると予想される。「桃太郎ホープ」が70%を占め、MSサイズ中心とやや小ぶりである。熊本産は促成物であり、1月の低温もあって3月は減少した。現状、着果は問題なく、4~5月は回復して、MSサイズ中心の小玉傾向と予想される。出荷は7月に入り急減すると予想される。愛知産は3~4月がピークとなり、5月はピークの後半である。越冬物を中心に、1月定植の抑制物となるが、現状は順調である。中心品種の「かれん」はやや大玉傾向で、LMサイズ中心と予想される。出荷は6月いっぱいか7月上旬までと予想される。栃木産は越冬物と促成物の春トマトが半々と予想される。5月は促成物のピークで、越冬物は6月中旬がピークの見込み。昨年と異なる天候により、生産者の対応によって量にばらつきが出ている。病気が散見され、4~5月は平年を下回る出荷と予想される。
 ピーマンは、茨城産は2月までは寒さとハウスの温度を十分に上げられなかった影響で肥大が遅れ、少なめの出荷になったが、3月にはようやく増えてきた。定植をやや後ろにずらした無加温ハウス物は4月末頃から本格化し、天気の回復もあって5月には平年並みの出荷と予想している。宮崎産は3月の天候不順の影響により4月10日前後から一時減少するが、20日前後には回復してくると予想される。5月が最大のピークであるが、大きな増減はなく順調に入荷し、5月の最終週には減ってくると予想される。鹿児島産は前年10月から始まった冬春物が5月いっぱいの出荷と予想される。4月の初頃がピークで、5月は減りながら推移すると予想される。

015a
 ばれいしょは、長崎産のトンネル物は4月上旬から始まっているが、本格出荷は4月下旬から。早い物は1月24日前後の寒害の影響でやや少なめである。その後の天候の回復で、遅れを取り戻しつつあり、生産量は大きな減収にはならないと予想している。5月前半をピークに、6月に入り徐々に切り上がってくると予想される。静岡産の三方ヶ原男爵は例年よりやや早く、5月初め頃からと予想され、気象災害もなく生育は順調である。ピークは6月上中旬であるが、やや早まる可能性もある。中心サイズはLから2Lと予想される。
 たまねぎは、兵庫産は4月いっぱいは極早生、5月の連休明けからは早生になると予想される。極早生はLサイズ中心であったが、若干小玉傾向であった。早生からは平年並みの大きさに回復すると予想される。6月に中生と晩生となって全体のピークとなると予想される。天候に恵まれ生育は順調である。佐賀産の極早生は4月5日後に出荷が増えて、4月15~20日に早生に切り換わり、晩生は5月20日過ぎからと予想される。極早生、早生ともに肥大良好で、生産量は前年を上回ると予想される。


アスパラガス
 長野産の現状は10日から2週間前倒し気味である。出荷は連休明けから始まり、ピークは5月中旬から6月上旬と予想される。本年は株が充実しており、前年を上回る出荷を予想している。

ブロッコリー
 埼玉産は例年3月末から4月初めは出荷の谷間になる時期である。現状は10日程前進出荷となり、前年同時期をかなり上回っている。5月は元々多くないが、今年は前進した分、連休頃から減り始めると予想される。茨城産の現状は秋冬物が終わったところである。すす病の発生があってやや不作であった。春ブロッコリーの出荷開始は5月に入ってから始まると予想され、作付けは前年並みである。

かぼちゃ
 沖縄産の二期作物は4月下旬から始まり、5月いっぱいの入荷と予想される。ほぼ例年並みで、「えびす」「栗五郎」はそれぞれ5玉、6玉中心で肥大も問題ない。茨城産は例年通り5月20日頃から始まるが、作付けは前年の90%と減っている。ピークは6月中旬で、品種は前年と変わらず「栗将軍」である。

スイートコーン
 宮崎産のハウス物は3月29日から出荷が始まっているが、露地物は例年より3~4日早めの5月10日頃からの出荷を予想している。品種は「ゴールドラッシュ」で、作付けは生産者の高齢化により若干減少している。6月いっぱいで切り上がり、5月としては前年並みを予想している。

えだまめ
 千葉産のハウス物は4月中旬からであるが、5月の連休中や連休明け頃から露地物に切り換わり、今のところ生育は順調である。埼玉産は2月末頃に定植したトンネル物は5月20日前後から始まり、生育は順調である。作付けは前年を上回っている。

らっきょう
 鳥取産は例年より若干早く、5月20日頃から始まり、ピークは5月末頃に来て、6月10日頃までの出荷と予想される。葉の状態から判断すると、今年は平年並みと予想される。鹿児島産は例年並みに4月下旬から出荷が始まると予想される。当初の生育は遅れ気味であったが、天候に恵まれ回復してきた。5月上中旬がピークで6月上旬まで出荷は続き、5月としては前年を上回ると予想している。

すいか
 千葉産のハウス物は連休明けから始まるが、ほぼ例年と同様のペースである。ピークは5月下旬を予想している。トンネル物が始まるのは6月中旬と予想される。生産者の高齢化により、作付けは微減となっている。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)