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需給動向 野菜情報 2023年1月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年11月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万5515トン、前年同月比93.9%、価格は1キログラム当たり229円、同106.7%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8620トン、前年同月比96.0%、価格は1キログラム当たり216円、同105.9%となった。
⃝1月の見通しについて、関東から北に強い寒波が入っており、九州まで及べば、野菜は出回り不足となり価格が上昇に転じると思われる。年末から年明けは平年より安めの展開と予想される。

(1)気象概況

 上旬は、北・東・西日本では、旬のはじめは低気圧や前線の影響で曇りや雨となった所があったが、西日本を中心に高気圧に覆われて晴れた日が多かった。このため、西日本日本海側では旬降水量はかなり少なく、旬間日照時間はかなり多かった。旬平均気温は、全国的に平年並だった。旬降水量は、北・東日本日本海側と北・東・西日本太平洋側で少なかった。旬間日照時間は、西日本日本海側でかなり多く、北・東日本日本海側と北・東・西日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美でかなり少なかった。
 中旬は、北・東・西日本では、天気は短い周期で変わったが、本州付近は高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、旬間日照時間は北・西日本日本海側と北日本太平洋側でかなり多く、旬降水量は東・西日本日本海側で少なかった。旬平均気温は、寒気の影響が弱かったため、全国的に高く、北・東・西日本で高かった。旬降水量は、北日本日本海側と北・東・西日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、東日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。
 下旬は、北日本から西日本にかけての太平洋側と沖縄・奄美では、低気圧や前線の影響をたびたび受けたため、天気は短い周期で変わった。東・西日本太平洋側と沖縄・奄美では、旬のはじめと終わりを中心にまとまった雨となったため、旬降水量はかなり多かった。一方、寒気の影響が弱く、曇りや雨の日が少なかった北・東・西日本日本海側の旬間日照時間は多かった。寒気の影響が弱く、低気圧の前面で南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、旬平均気温は全国的にかなり高く、旬平均気温平年差は、北日本+3.4度、東日本で+3.7度、西日本で+3.5度、沖縄・奄美で+2.1度となり、1946年の統計開始以降、11月下旬として北日本では1位タイ、東・西日本と沖縄・奄美では1位の高温となった。旬降水量は、北日本日本海側と北日本太平洋側で多かった。一方、東・西日本日本海側では平年並だった。旬間日照時間は、北・東日本太平洋側で少なかった。西日本太平洋側と沖縄・奄美では平年並だった。

 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

 11月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万5515トン、前年同月比93.9%、価格は1キログラム当たり229円、同106.7%となった(表1)。

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 根菜類は、だいこんが下旬に向け価格を下げ、大幅に安めに推移した前年を3割以上上回り、平年をわずかに下回った(図2)。
 葉茎菜類は、はくさいが下旬に向け価格を下げたものの、大幅に安めに推移した前年を5割近く上回り、平年を1割以上上回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、下旬に向け落ち着きを見せたものの、安めに推移した前年を3割近く上回り、平年をやや上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、大幅に高めに推移した前年を4割弱下回り、平年をやや上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

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(3)大阪市中央卸売市場

 11月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8620トン、前年同月比96.0%、価格は1キログラム当たり216円、同105.9%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした1月の見通し

 12月になって寒波が入ってきたが、秋冬物は現状も前進傾向で豊作である。市場でのだぶつきから、年明けは物が無くなるかとの心配もあるが、圃場(ほじょう)には出荷を控えた野菜があるため、しばらくの間は急減することは予想されていない。荷動きの悪さの改善のため、生産者側は小売り段階でもっと安く販売して欲しいと願っているが、現在の小売りでは、安売りよりも利益を確保する傾向が強い。業務用の注文はコロナ禍前の60~70%程度と、まだまだ低迷している。市場出荷や直売も含めた生産者の総売上は年々減っており、それだけ肥料や資材など、経費がかかっていると思われる。
 1月の見通しについて、関東から北に強い寒波が入っており、これが九州まで及べば、野菜は出回り不足となって価格が上昇に転じると思われる。年末から年明けは平年より安めの展開と予想される。

根菜類 

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 だいこんは、千葉産の現状は11月の気温高と適度の降雨の影響で7~10日の前進となっている。1月の出荷見通しでは、現在肥大し始めており、急な寒さが来ても出荷が減少することはないと予想される。2Lサイズ中心に前年並みの出荷が予想される。神奈川産は11月は上旬に多く出て、中旬に減り、下旬にまとまった雨で再び増えて、12月も例年を上回ると予想される。年明けも順調で例年を上回る出荷と予想される。
 にんじんは、千葉産は好天が続いて生育は順調で、現状は平年並みの出荷となっている。年明けも1月5日から平年並みの出荷が予想される。Lサイズ中心で肥大も良好である。

葉茎菜類

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 キャベツは、愛知産は12月に入り冷え込んできたが、11月の高温で生育は進んだため、1月に入ってもよほどの寒波がない限り、平年並みに出荷できると予想される。千葉産の現状はLサイズ中心で、順調である。1月も引き続き順調で、前年並みの出荷が予想される。神奈川産は11月までは前年を大幅に下回る出荷となった。12月に入り例年並みに追いついて、1月は例年と同様にピークを迎えると予想される。
 はくさいは、茨城産は11月までは遅れ気味であったが、12月に入り中生品種となって、水分も充分で肥大は回復傾向にある。年明けは9月定植の晩生物となるが、作業が遅れて根の張りが悪い。1月は再び小ぶりになって深箱(6玉入箱)での出荷が多くなると予想している。
 ほうれんそうは、栃木産の現状の出荷物は10月上旬に播種(はしゅ)したもので、2週間ほど前進している。まだ降霜もなく、数量が多くなっている。12月に入り本格的に寒くなると、年明けには出荷のペースも落ち着いてくるが、トンネル物になるため大幅な数量減はなく、前年並みの出荷と予想される。寒じめほうれんそうも始まるが、作付けは減っている。群馬産の現状は2週間程度の前進となっている。年内は前進傾向が続くと予想される。1月はやや少なくなるが、例年と同様で前年並みの見込み。
 ねぎは、千葉産は年末にピークとなるが、1月も引き続き多い見込みである。ここ2~3年は天候不順で少なかった。台風の影響もなく前年を上回る出荷が予想される。中心サイズはLであるが、2Lも多い。埼玉産の冬ねぎは現状出始めた時期であるが、12月中旬以降ピークになってくると予想される。今後極端な強風や降雪がなければピークは1月いっぱい続き、1月としては前年をやや上回ると予想している。茨城産の秋冬ねぎは過去2年不作であったが、年末から1月は前年より大幅に上回る出荷と予想される。年間を通しては初夏ねぎほど多くないが、年内から年明けも潤沢に出荷できると予想される。中心サイズはLで、窒素肥料を抑えた影響である。
 レタスは、兵庫産の現状は前進出荷が続いており、12月10日頃まではこのペースが続くと予想している。温暖で推移すれば1月以降も全体が前進して問題ないが、寒波が続くと年末か年始頃に谷間ができると予想している。いずれにしても高品質物の出荷が続くと予想される。静岡産の天候は適度な降雨もあり順調で、平年並みの出荷で12月がピークと予想される。年明けは厳寒期で例年と同様に減り、現状では平年並みの出荷と予想している。1月は前年を上回る出荷が予想される。香川産の1月も例年並みと予想されるが、全体が前進傾向である。強い寒波が来ると減少が予想される。作付けは前年と同様である。長崎産の現状は前倒し気味の出荷で前年を上回っている。12月に入りややペースは落ち、1月は良くて平年並みだが、後の物が追いつかなければ谷間の時期があると予想される。現状も春物の播種が続くが、全体の作付面積は前年並みである。

果菜類

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 きゅうりは、千葉産の冬春物の生育は順調で病気の発生もなく、A品の発生が多くなっている。年末から年明けにかけて増加し、1月は前年並みを予想している。施設の加温のタイミングのずれにより、場合によっては前年を下回ることも予想される。群馬産は年明けも例年と変わらず、1月20日頃に出揃い、2月上旬に当面のピークを迎えると予想される。作付けも作型も例年と変わらない。高知産は11月~翌6月までは冬春物となるが、現状は悪天候の後で出荷は減少している。回復するのは12月上旬後半と予想される。1月は厳寒期であるが、施設を充分加温することにより例年並みの出荷と予想している。生産者が5%、面積は3%ほど減少すると見込まれ、その分出荷は前年を下回ると予想される。
 なすは、高知産の現状は日照量が多く生育順調である。むしろ天気が良すぎて害虫の発生が多かった。一旦ピークは過ぎて12月上旬まで少なめで、中旬から1月にかけて徐々に増えて、1月は12月の1.5倍程度の増加と予想される。福岡産の現状は前年並みの出荷であるが、平年よりも多い。前倒し気味であるが、厳寒時期となり年末に向けて減少が予想される。年明けは横ばいで推移し、年間で最も少なくなると予想される。樹勢に問題なく、1月としては前年を若干上回る出荷と予想している。
 トマトは、愛知産の現状はやや少なめの出荷となっているが、年内は回復しながら推移すると予想される。年末から急増し、1月には前年並みに一定の落ち着いたペースでの出荷が予想される。L・M・Sの比率は、それぞれ3割ずつ程度とサイズに偏りがない。福岡産は生育順調で、着色が早まるなど豊作年である。12月に入って気温が下がり、例年並みに落ち着くと予想される。1月についても問題ないが、中玉トマトの栽培に切り替えた生産者がいるため前年をやや下回るが、「フルティカ」(250グラムパック)は前年を上回ると予想される。熊本産は年末に向けて増加傾向で、1月も前年並みに多い見込みである。現状1月に出荷される木(6段目)には実がしっかり付いている。黄化葉巻病は前年のように多くなく、Lサイズ中心の見込みである。
 ピーマンは、茨城産の現状は抑制物の終盤を迎えており、少なめの出荷となっている。12月からは温室ピーマンのみとなるため年間を通して少ない時期を迎える。生育は特別悪いわけではないが、花落ちの部分もあるなど、多くない数量での一定の出荷が予想される。作付けの減少もあり前年を下回る出荷と予想される。高知産は台風が近くを通った影響もあり、スタートが遅れた。そのため現状は少なめの出荷となっている。1月は長期予報で厳しい寒さが予想されること、また前年が多かったことから引き続き少なめの出荷が予想される。作付けは前年並み、中心品種は「みおぎ」である。宮崎産は台風の影響で、県内産地によっては11月は少なかった。12月に入り寒波の影響で少なくなっており、再び増えるのは1月中旬からと予想される。2月は再び減少し、3~4月に本格的なピーク迎えるといった流れが予想される。

土物類  

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 さといもは、埼玉産は現在も収穫は続いているが、令和4年産は、数年に1度と言われるレベルの豊作年となった前年に近い豊作であった。1月からは貯蔵物となるが、前年並みか若干下回る程度と予想される。
 ばれいしょは、北海道産の「男爵」の入荷量が、大幅に不作だった前年の127%となっており、作柄は平年並みである。4月中旬まで計画的に出荷していくが、1月は前年を上回る出荷が予想される。「きたあかり」は例年並みの収量と大きさであり、貯蔵品を4月まで出荷していく。
 たまねぎは、北海道産の令和4年産の収量は、干ばつの影響で少なかった前年を上回った。収穫時期の雨が多く、農家によっては歩留まりが低下しているケースもあるが、12月~翌1月も前年を上回ると予想している。Lサイズ中心に4月まで計画的に販売していく。静岡産の「ホワイト」「黄色」は例年と同様に初市から始まる。生育順調で、寒さの影響はない。「ホワイト」のピークは1月下旬~2月いっぱい、「黄色」は2月で、出荷は3月いっぱいを目途にしている。作付けは前年並みで、1月に降雪があると少なくなる可能性もある。

その他

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 ブロッコリーは、香川産の生育は順調で、現状は2週間程度前進している。寒波が厳しくなると年内は少なくなると予想される。中心サイズは20玉(Lサイズ)で、肥大良好である。愛知産の現状は寒さが本格化して少なくなっているが、12月中~下旬には増えて充実した物が出荷されると予想される。定植時の雨が多かった影響で、年明けはやや前年を下回ると予想している。群馬産の生育は順調で、前進傾向で現状ピークとなっている。このまま全体が前進して年末年始も減ることなく出荷できると予想している。量的に多いのは1月の後半までで、その後減ってくると予想される。作付けは減少傾向で、ここ数年の単価の伸び悩みが影響している。
 カリフラワーは、福岡産の秋冬物のピークは1~2月で、年内は増えながら推移すると予想される。現状は生育順調で、1月は平年並みの出荷を予想している。作付けはほぼ前年並みである。
 セルリー(セロリ)は、静岡産の現状は生育順調で、例年を上回る出荷となっている。この状況は1月まで続き、2月に入って少なくなって来ると予想される。作付けは生産者の高齢化により前年の90%と減っており、その影響で12月~翌1月は前年を若干下回る可能性もある。
 かぼちゃは、沖縄産の県内出荷は12月から始まるが、県外出荷は年初から。「えびす」を中心に2~3月と産地リレーしながら出荷していく。現状生育は順調で、作付けは前年並みである。
 かんしょは、千葉産の令和4年産は豊作気味であり、年明けも前年を上回る出荷が予想される。品種は「ベニアズマ」「シルクスイート」中心であるが、「べにはるか」が徐々に増えると予想される。
 れんこんは、茨城産の現状は潤沢ペースで出荷が進んでいる。前年が極端に不作であったが、一昨年と同程度の出荷となっている。年明けは年末より少ないが、平年並みの出荷が予想される。
 ごぼうは、青森産は12月に入り降雪して年明けは貯蔵物になるが、大幅な不作で前年を下回る出荷と予想される。品質も例年ほどでない。九州産の新ごぼうは予想より多くなく、台風の影響がある程度出ていると予想される。
 豆野菜は、鹿児島産の「スナップえんどう」が10月下旬から始まり、生育順調で12月と同じ程度で横ばいで推移すると予想される。「そらまめ」は11月下旬から始まり、平年並みのペースである。露地物で12月から本格化し、1月に出荷が出揃い、最大のピークは3月で、作付けは前年並みである。「グリーンピース」は10月上旬から徐々に増えてくるが、例年通りの推移と予想される。1月は12月よりもやや増えるが、ほぼ横ばいで推移すると予想される。作付けは前年並みである。
 菜の花は、千葉産は発芽不良の時期もあったが、暖冬傾向もあり生育順調で前年を上回っている。12月~翌1月の出荷も寒波の影響で少なかった前年を上回ると予想される。結束タイプが中心である。
 山菜は、山形産の「たらの芽」は1月中下旬から始まると予想される。「うるい」は1月下旬から。市況が安かった影響で栽培農家が減っているため、量的には前年を下回ると予想される。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

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