秋冬野菜の
播種時期に台風の襲来があったが、心配されたハウスの倒壊といった被害はなく、関東の露地野菜産地も大幅な定植のやり直しといった報告はなかった。九州のにんじんやだいこん、ブロッコリーなどの露地野菜については、大雨で流されるなどの被害があり、急ぎまき直している物もある。そのため年内出荷は半減や皆無に近いといった報告もあった。ただ、市場出荷よりも契約物が多く、その不足分を賄うため市場への注文が増えて、西日本の市場の価格が高くなる展開が予想される。
ここ数年、11月は重量野菜の価格低迷の印象が強く、全般的に出荷を後ろにずらす意向がみられる。輸入に注力してきた青果卸が国内産地からの仕入れを強化する動きもみられ、市場価格は平年を上回る推移が予想される。
根菜類
だいこんは、神奈川産が11月上旬から例年並のスタートになると予想される。生育は順調で作付けは平年並、12月中旬のピークに向けて増えながら推移すると予想される。千葉産(ちばみどり)は10月上旬から始まってきたが、作付けの前倒しもあり、やや前進傾向である。11月から年明けまでピークは続くと予想される。作付けは前年並である。同産(鎌ヶ谷)は10月下旬から例年並に始まるが、生育は順調でやや早まる可能性がある。秋だいこんは安値が続いており、作付けは減少傾向にある。播種後に台風の強風に遭ったが、傷みの報告はない。ピークは11月上旬で11月下旬には切り上がると予想される。
にんじんは、千葉産(八街)は11月上旬から例年どおり始まる見込みで、9月下旬から10月にかけての好天で肥大は良好である。播種時期の大雨で種が流され、作付けは例年の90%程度と予想している。その後の台風による影響はほとんどない。埼玉産は10月末頃から例年どおりの販売開始と予想している。生育は順調で、作付面積は前年並である。12月のピークに向けて増えながら推移すると予想される。肥大は10月の天候次第であるが、低温が続くと抑えられるであろう。北海道産は今年は雨が多く、播種面積は計画の90%であったが、8月16日の豪雨で実割れや芯腐れが発生した。収穫量は計画の80%と不作年になった。切り上がりの時期は例年と変わらず11月の1週目、中心サイズはL・Mで例年どおりである。
葉茎菜類
キャベツは、愛知産が10月中下旬から始まり、11月に入って本格出荷になると予想される。台風15号による大きな被害はなく、一部坂下や窪地の園地はまき直ししたが、出荷に影響はない。来年3月まで出荷のピークが続き、4月にはいったん減って、5月に夏キャベツで再び増えると予想される。作付面積はほぼ前年並である。
神奈川産の定植作業は順調に行われており、11月には出荷が始まってくると予想している。作付けは前年並であり、当面11月から年明け2月までピークで、量的には前年並を予想している。千葉産は現在、出荷が始まり、10月20日頃に量的にまとまってくると予想され、当面は11月から12月にピークとなり、11月は前年並と予想している。茨城産は現在出荷が始まり、本格出荷は10月20日以降と予想される。中心サイズはLで、極端な大玉にはならないであろう。作付けは例年並で、12月中旬で切り上がると予想される。
はくさいは、茨城産(北つくば)は例年通り10月20日前後から始まると予想される。11月20日過ぎから本格的に増えてきて、自然災害の影響はなく生育順調である。同産(常総ひかり八千代)の現状は例年と同様に始まっており、自然災害の影響はなく、定植は順調に行われた。作付けは前年並で、当面の出荷のピークは10月末ごろから11月と予想している。12月には春野菜の作業でいったん少なくなると予想している。長野産は10月いっぱいがピークで、11月2週目から減ってきて下旬まで出荷できると予想される。現状は前進傾向であるが、気温が下がれば10月下旬物の出荷が多くなると予想される。
ほうれんそうは、群馬産はハウスと露地の出荷となるが、生育は順調である。当面のピークは10月中旬で11月には寒さからやや減ってくると予想している。岩手産は生育順調で、現状は出荷が減り始めているが、11月20日頃までまとまった量が出荷できると予想している。
ねぎは、青森産は8月の豪雨の被害があり、出荷は例年の70%程度と減少している。今後も回復は期待できず、11月いっぱいまで同程度の出荷と予想している。埼玉産の現状は夏ねぎの出荷となっている。大きな自然災害の影響はないが、例年より虫の害が多く見られている。10月後半はブロッコリーに注力するため減るが、11月に入って秋冬物となり、再び増えると予想される。作付けは前年並で、ピークは11月下旬から12月初め頃と予想している。千葉産は9月1日から秋冬物に切り換わったが、自然災害の影響もなく順調である。本格的に増えるのは11月中旬からで、年明けが最大のピークである。作付けは高齢化の影響で若干前年を下回っている。
レタスは、香川産は前年よりやや遅く、10月10日前頃から始まると予想される。台風による直接の被害はないが、大雨の影響で遅れた圃場も一部ある。年内出荷については前年を下回ると予想される。作付けは、資材の高騰により止める農家もいるため前年の90%と減少している。兵庫産は現状始まったところであるが、前年よりやや遅く平年並である。当面のピークは12月で徐々に増えながら推移すると予想され、作付けは前年を若干下回っている。茨城産はスタートが早く現状1回目のピークとなっている。気温が高めで降雨も多かった影響で前進傾向となっている。11月いっぱい例年どおり出荷できるが、量的にまとまるのは20日頃までで、今シーズンの価格安で、早めに切り上げる農家がいると予想している。
果菜類
きゅうりは、埼玉産は安定した天候により10月に入り前倒し気味に増えている。10月中旬にやや減るが、11月には加温物となって量的には平年並に安定してくると予想される。作付けは前年並で、量的にも前年並を予想している。千葉産は現状の夏秋物は終盤を迎え、9月1日定植の冬春物が10月中旬から始まると予想される。生育は順調であり、作付けは例年と変わらず、11月中下旬に本格化して12月から翌1月が最大のピークと予想している。宮崎産の台風の被害は、一部のハウスが破れたりしたが甚大でなく問題ない。現状は定植のピークである。出荷は平年並に10月下旬から11月上旬に出揃ってきて、11月中下旬にピークと予想される。作付けは前年並である。
なすは、高知産の現状は8月に定植した物が増えてきている。天候の安定により生育順調で、10月に1度ピークが来る可能性もあるが、例年通りであれば、11月にピークが来るであろう。12月には気温が下がって数量はいったん減少すると予想される。作付けは前年並である。福岡産は例年と同様に10月3日から始まり、台風によるハウスが倒壊するなどの被害はなかった。現状の生育は順調で、当面のピークは11月で、12月は寒さからやや減少すると予想される。作付けは微減であるが、出荷は例年並を予想している。
トマトは、熊本産は台風の影響もなく、ほぼ例年並の出荷となっている。出荷のピークは当面11月下旬と予想している。作付けはミニトマトが増えて、大玉が減っている。愛知産の現状は降雨が多く、日中の高温もあって着果不良となっている。この影響により10月下旬から11月初め頃に数量が伸び悩むと予想される。作付けは前年並である。福岡産は11月に入り本格的に増えてくると予想される。現状は定植作業も続いている。大玉が減って「フルティカ」などの中玉が増えている。トマト全体では3~5%作付けが減少している。
ピーマンは、茨城産の現状は秋ピーマンの出荷となっており、生育順調で、11月も平年並で12月に入り減ってくると予想される。ハウスの越冬物は現状定植が終わったところであるが、面積は昨年を下回っている。10月下旬から出荷が始まり、11月には増えながら推移すると予想される。11月は面積減の影響で昨年を下回ると予想している。岩手産の本年度は天候不順による不作で、実績としては80%作であった。切り上がりも例年より早く11月上旬と予想している。福島産の今年は作柄として天候に恵まれ豊作であった。11月は終盤だが、ほとんどが露地であるため、霜が降りると切り上がるであろう。11月10日頃まで出荷できると予想している。
土物類
さといもは、埼玉産の現状は例年より小ぶりの仕上がりとなっている。後期肥大も期待できるため例年並まで回復の可能性もある。10月に入って本格出荷が始まり、当面は11月上旬にピークになると予想している。作付けは前年並で、量的にも前年並を予想している。
ばれいしょは、北海道産(道央ようてい)は男爵の出荷となり、作柄は平年並を予想している。大きさはLサイズ中心で、小玉に仕上がった前年より肥大が良く平年並の仕上がりを予想している。10月から年明けの3月まで計画的に出荷していく。同産(十勝芽室)のメークインは収穫を終えて、現状出荷のピークを迎えている。今年は玉数が多く、やや小ぶりの仕上がりになっているが、大きさについては問題なく、総じて平年作である。長崎産のニシユタカは例年と同様に12月に入ってから本格化すると予想される。台風で若干遅れたが減収はない。作付けは例年並である。
たまねぎは、北海道産の現状は収穫作業を80~90%程度終了したところであるが、平年並の状況である。サイズもL大が中心と予想される。現状も出荷のピークではあるが、年明け5月まで計画出荷していく。
その他
ブロッコリーは、福島産の出荷のピークは10月中下旬で、11月には減りながら推移すると予想される。作付けは年々減少傾向にある。埼玉産は9月下旬から例年並に始まったが、今年は病気の発生が例年より少なく順調である。11月にピークを迎え、12月には減ってくると予想される。作付けは例年並である。長野産のピークは9月下旬に来て10~11月は減少してくるが、11月いっぱいは例年並に出荷できると予想している。
かぼちゃは、北海道産の現状は入庫がまだ続いており、豊作傾向のため、作付けは前年を下回っているが収穫量は前年並かやや多いと予想している。出荷は10月がピークで11~12月と徐々に減りながら推移すると予想される。品種は「くりゆたか」「栗将軍」などである。
ごぼうは、青森産の掘り採りは9月に入り始まった。8月の豪雨の影響で20%程度減少する
圃場もある。中心サイズはL・Mと予想される。収量は平年を下回ると予想している。
かんしょは、千葉産は当面は「ベニアズマ」と「シルクスイート」の出荷となり、現状は平年よりやや多いと予想している。中心サイズはLと肥大も問題ない。徳島産の現状は90%程度収穫が終わったところであり、平年並で少なった前年を上回ると予想される。自然災害がなく、順調に仕上がった。出荷は今後増えて11月がピークと予想され、12月から翌1月はやや減ってくると予想される。
ながいもは、青森産の掘り採り開始は11月10日からで、出荷は20日頃からと予想される。圃場によっては、豪雨による水害で品質低下も懸念される。順調に仕上がった圃場では太さも問題なく、全体では平年作が予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)