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需給動向1 野菜情報 2022年11月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年9月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は12万790トン、前年同月比104.4%、価格は1キログラム当たり265円、同93.1%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万113トン、前年同月比106.2%、価格は1キログラム当たり241円、同93.1%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、キャベツ類(平年比74.6%)、はくさい(同76.7%)、なす(同77.5%)、ピーマン(同82.5%)、きゅうり(同96.4%)、ほうれんそう(同98.2%)、平年を上回ったものは、にんじん(平年比175.8%)、だいこん(同139.4%)、たまねぎ(同127.2%)、ばれいしょ(同110.5%)、ねぎ(同110.3%)、トマト(同104.8%)、レタス類(同104.6%)、さといも(同104.5%)、となった。
⃝ここ数年、11月は重量野菜の価格低迷の印象が強く、全般的に出荷を後ろにずらす意向がみられる。輸入に注力してきた青果卸が国内産地からの仕入れを強化する動きもみられ、市場価格は平年を上回る推移が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、沿海州から千島付近で高気圧の勢力が強く、北海道は高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、北日本日本海側の旬間日照時間はかなり多かった。台風第11号は、8月末から9月上旬前半にかけて沖縄付近で停滞し、大型で非常に強い勢力となって5日から6日にかけて東シナ海を北上した。このため、沖縄・奄美と九州地方、四国地方を中心に、大雨や大荒れとなった所があった。沖縄・奄美では、台風の影響で旬降水量平年比は277%と、1946年の統計開始以降、9月上旬として1位の多雨となり、旬間日照時間はかなり少なかった。旬平均気温は、南から暖かい空気が流れ込みやすかった北・東・西日本で高くなった。旬降水量は、東・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。一方、北日本日本海側と北日本太平洋側で少なかった。旬間日照時間は、東・西日本日本海側と東・西日本太平洋側で少なかった。一方、北日本日本海側でかなり多く、北日本太平洋側で多かった。
 中旬は、台風第14号が18日に鹿児島県に上陸し、台風を要因とする特別警報が発表された。また、19日から20日にかけて山陰から東北地方を通過したため、西日本から東北地方にかけて大雨や大荒れとなった所があった。暖かい空気に覆われやすかったため、旬平均気温は、北・東・西日本でかなり高く、西日本の旬平均気温平年差は+2.5度と、1946年の統計開始以降、9月中旬として1位の高温を記録した。旬降水量は、沖縄・奄美でかなり多く、西日本日本海側と西日本太平洋側で多かった。北・東日本日本海側と北・東日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、北・東日本日本海側と東日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美で少なかった。西日本日本海側と北・西日本太平洋側では平年並だった。
 下旬は、北日本では、24日に前線が通過した影響でまとまった雨となったほかは、高気圧に覆われて晴れた日が多かった。23日から24日にかけては、東海道沖を北東進した台風第25号の影響で東日本太平洋側を中心に大雨となり、記録的な大雨となった所もあった。旬平均気温は、旬の中頃以降、全国的に暖かい空気に覆われやすく、晴れて気温が上昇した日もあったために高かった。旬平均気温は、全国で高かった。旬降水量は、北・東・西日本日本海側、西日本太平洋側、沖縄・奄美で少なかった。一方、東日本太平洋側で多く、北日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、北日本日本海側、北・東・西日本太平洋側、沖縄・奄美で多かった。東・西日本日本海側では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

 9月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は12万790トン、前年同月比104.4%、価格は1キログラム当たり265円、同93.1%となった(表1)。

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 根菜類は、にんじんの価格が、不足感から月間を通して堅調な動きとなり、安めに推移した前年を9割近く上回り、平年を7割以上上回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツ類が潤沢な入荷から価格の動きが鈍く、下旬に向けやや上昇したものの、高めに推移した前年を3割以上下回り、平年を2割以上下回った(図3)。
 果菜類は、なすの価格が関東産のピークを過ぎて減少に向かう月後半に上昇したものの、高めに推移した前年を3割近く下回り、平年を2割以上下回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が1カ月を通して堅調な動きが続き、やや高めに推移した前年をかなりの程度上回り、平年を3割近く上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

 9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万113トン、前年同月比106.2%、価格は1キログラム当たり241円、同93.1%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした11月の見通し

 秋冬野菜の播種(はしゅ)時期に台風の襲来があったが、心配されたハウスの倒壊といった被害はなく、関東の露地野菜産地も大幅な定植のやり直しといった報告はなかった。九州のにんじんやだいこん、ブロッコリーなどの露地野菜については、大雨で流されるなどの被害があり、急ぎまき直している物もある。そのため年内出荷は半減や皆無に近いといった報告もあった。ただ、市場出荷よりも契約物が多く、その不足分を賄うため市場への注文が増えて、西日本の市場の価格が高くなる展開が予想される。
ここ数年、11月は重量野菜の価格低迷の印象が強く、全般的に出荷を後ろにずらす意向がみられる。輸入に注力してきた青果卸が国内産地からの仕入れを強化する動きもみられ、市場価格は平年を上回る推移が予想される。

根菜類

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 だいこんは、神奈川産が11月上旬から例年並のスタートになると予想される。生育は順調で作付けは平年並、12月中旬のピークに向けて増えながら推移すると予想される。千葉産(ちばみどり)は10月上旬から始まってきたが、作付けの前倒しもあり、やや前進傾向である。11月から年明けまでピークは続くと予想される。作付けは前年並である。同産(鎌ヶ谷)は10月下旬から例年並に始まるが、生育は順調でやや早まる可能性がある。秋だいこんは安値が続いており、作付けは減少傾向にある。播種後に台風の強風に遭ったが、傷みの報告はない。ピークは11月上旬で11月下旬には切り上がると予想される。
 にんじんは、千葉産(八街)は11月上旬から例年どおり始まる見込みで、9月下旬から10月にかけての好天で肥大は良好である。播種時期の大雨で種が流され、作付けは例年の90%程度と予想している。その後の台風による影響はほとんどない。埼玉産は10月末頃から例年どおりの販売開始と予想している。生育は順調で、作付面積は前年並である。12月のピークに向けて増えながら推移すると予想される。肥大は10月の天候次第であるが、低温が続くと抑えられるであろう。北海道産は今年は雨が多く、播種面積は計画の90%であったが、8月16日の豪雨で実割れや芯腐れが発生した。収穫量は計画の80%と不作年になった。切り上がりの時期は例年と変わらず11月の1週目、中心サイズはL・Mで例年どおりである。

葉茎菜類

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 キャベツは、愛知産が10月中下旬から始まり、11月に入って本格出荷になると予想される。台風15号による大きな被害はなく、一部坂下や窪地の園地はまき直ししたが、出荷に影響はない。来年3月まで出荷のピークが続き、4月にはいったん減って、5月に夏キャベツで再び増えると予想される。作付面積はほぼ前年並である。
 神奈川産の定植作業は順調に行われており、11月には出荷が始まってくると予想している。作付けは前年並であり、当面11月から年明け2月までピークで、量的には前年並を予想している。千葉産は現在、出荷が始まり、10月20日頃に量的にまとまってくると予想され、当面は11月から12月にピークとなり、11月は前年並と予想している。茨城産は現在出荷が始まり、本格出荷は10月20日以降と予想される。中心サイズはLで、極端な大玉にはならないであろう。作付けは例年並で、12月中旬で切り上がると予想される。
 はくさいは、茨城産(北つくば)は例年通り10月20日前後から始まると予想される。11月20日過ぎから本格的に増えてきて、自然災害の影響はなく生育順調である。同産(常総ひかり八千代)の現状は例年と同様に始まっており、自然災害の影響はなく、定植は順調に行われた。作付けは前年並で、当面の出荷のピークは10月末ごろから11月と予想している。12月には春野菜の作業でいったん少なくなると予想している。長野産は10月いっぱいがピークで、11月2週目から減ってきて下旬まで出荷できると予想される。現状は前進傾向であるが、気温が下がれば10月下旬物の出荷が多くなると予想される。
 ほうれんそうは、群馬産はハウスと露地の出荷となるが、生育は順調である。当面のピークは10月中旬で11月には寒さからやや減ってくると予想している。岩手産は生育順調で、現状は出荷が減り始めているが、11月20日頃までまとまった量が出荷できると予想している。
 ねぎは、青森産は8月の豪雨の被害があり、出荷は例年の70%程度と減少している。今後も回復は期待できず、11月いっぱいまで同程度の出荷と予想している。埼玉産の現状は夏ねぎの出荷となっている。大きな自然災害の影響はないが、例年より虫の害が多く見られている。10月後半はブロッコリーに注力するため減るが、11月に入って秋冬物となり、再び増えると予想される。作付けは前年並で、ピークは11月下旬から12月初め頃と予想している。千葉産は9月1日から秋冬物に切り換わったが、自然災害の影響もなく順調である。本格的に増えるのは11月中旬からで、年明けが最大のピークである。作付けは高齢化の影響で若干前年を下回っている。
 レタスは、香川産は前年よりやや遅く、10月10日前頃から始まると予想される。台風による直接の被害はないが、大雨の影響で遅れた圃場も一部ある。年内出荷については前年を下回ると予想される。作付けは、資材の高騰により止める農家もいるため前年の90%と減少している。兵庫産は現状始まったところであるが、前年よりやや遅く平年並である。当面のピークは12月で徐々に増えながら推移すると予想され、作付けは前年を若干下回っている。茨城産はスタートが早く現状1回目のピークとなっている。気温が高めで降雨も多かった影響で前進傾向となっている。11月いっぱい例年どおり出荷できるが、量的にまとまるのは20日頃までで、今シーズンの価格安で、早めに切り上げる農家がいると予想している。

果菜類

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 きゅうりは、埼玉産は安定した天候により10月に入り前倒し気味に増えている。10月中旬にやや減るが、11月には加温物となって量的には平年並に安定してくると予想される。作付けは前年並で、量的にも前年並を予想している。千葉産は現状の夏秋物は終盤を迎え、9月1日定植の冬春物が10月中旬から始まると予想される。生育は順調であり、作付けは例年と変わらず、11月中下旬に本格化して12月から翌1月が最大のピークと予想している。宮崎産の台風の被害は、一部のハウスが破れたりしたが甚大でなく問題ない。現状は定植のピークである。出荷は平年並に10月下旬から11月上旬に出揃ってきて、11月中下旬にピークと予想される。作付けは前年並である。
 なすは、高知産の現状は8月に定植した物が増えてきている。天候の安定により生育順調で、10月に1度ピークが来る可能性もあるが、例年通りであれば、11月にピークが来るであろう。12月には気温が下がって数量はいったん減少すると予想される。作付けは前年並である。福岡産は例年と同様に10月3日から始まり、台風によるハウスが倒壊するなどの被害はなかった。現状の生育は順調で、当面のピークは11月で、12月は寒さからやや減少すると予想される。作付けは微減であるが、出荷は例年並を予想している。
 トマトは、熊本産は台風の影響もなく、ほぼ例年並の出荷となっている。出荷のピークは当面11月下旬と予想している。作付けはミニトマトが増えて、大玉が減っている。愛知産の現状は降雨が多く、日中の高温もあって着果不良となっている。この影響により10月下旬から11月初め頃に数量が伸び悩むと予想される。作付けは前年並である。福岡産は11月に入り本格的に増えてくると予想される。現状は定植作業も続いている。大玉が減って「フルティカ」などの中玉が増えている。トマト全体では3~5%作付けが減少している。
 ピーマンは、茨城産の現状は秋ピーマンの出荷となっており、生育順調で、11月も平年並で12月に入り減ってくると予想される。ハウスの越冬物は現状定植が終わったところであるが、面積は昨年を下回っている。10月下旬から出荷が始まり、11月には増えながら推移すると予想される。11月は面積減の影響で昨年を下回ると予想している。岩手産の本年度は天候不順による不作で、実績としては80%作であった。切り上がりも例年より早く11月上旬と予想している。福島産の今年は作柄として天候に恵まれ豊作であった。11月は終盤だが、ほとんどが露地であるため、霜が降りると切り上がるであろう。11月10日頃まで出荷できると予想している。

土物類

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 さといもは、埼玉産の現状は例年より小ぶりの仕上がりとなっている。後期肥大も期待できるため例年並まで回復の可能性もある。10月に入って本格出荷が始まり、当面は11月上旬にピークになると予想している。作付けは前年並で、量的にも前年並を予想している。
 ばれいしょは、北海道産(道央ようてい)は男爵の出荷となり、作柄は平年並を予想している。大きさはLサイズ中心で、小玉に仕上がった前年より肥大が良く平年並の仕上がりを予想している。10月から年明けの3月まで計画的に出荷していく。同産(十勝芽室)のメークインは収穫を終えて、現状出荷のピークを迎えている。今年は玉数が多く、やや小ぶりの仕上がりになっているが、大きさについては問題なく、総じて平年作である。長崎産のニシユタカは例年と同様に12月に入ってから本格化すると予想される。台風で若干遅れたが減収はない。作付けは例年並である。
たまねぎは、北海道産の現状は収穫作業を80~90%程度終了したところであるが、平年並の状況である。サイズもL大が中心と予想される。現状も出荷のピークではあるが、年明け5月まで計画出荷していく。

その他

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 ブロッコリーは、福島産の出荷のピークは10月中下旬で、11月には減りながら推移すると予想される。作付けは年々減少傾向にある。埼玉産は9月下旬から例年並に始まったが、今年は病気の発生が例年より少なく順調である。11月にピークを迎え、12月には減ってくると予想される。作付けは例年並である。長野産のピークは9月下旬に来て10~11月は減少してくるが、11月いっぱいは例年並に出荷できると予想している。
 かぼちゃは、北海道産の現状は入庫がまだ続いており、豊作傾向のため、作付けは前年を下回っているが収穫量は前年並かやや多いと予想している。出荷は10月がピークで11~12月と徐々に減りながら推移すると予想される。品種は「くりゆたか」「栗将軍」などである。
 ごぼうは、青森産の掘り採りは9月に入り始まった。8月の豪雨の影響で20%程度減少する圃場(ほじょう)もある。中心サイズはL・Mと予想される。収量は平年を下回ると予想している。
 かんしょは、千葉産は当面は「ベニアズマ」と「シルクスイート」の出荷となり、現状は平年よりやや多いと予想している。中心サイズはLと肥大も問題ない。徳島産の現状は90%程度収穫が終わったところであり、平年並で少なった前年を上回ると予想される。自然災害がなく、順調に仕上がった。出荷は今後増えて11月がピークと予想され、12月から翌1月はやや減ってくると予想される。
 ながいもは、青森産の掘り採り開始は11月10日からで、出荷は20日頃からと予想される。圃場によっては、豪雨による水害で品質低下も懸念される。順調に仕上がった圃場では太さも問題なく、全体では平年作が予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

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