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需給動向 野菜情報 2022年9月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年7月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

 ⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万0165トン、前年同月比90.7%、価格は1キログラム当たり252円、同109.3%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5599トン、前年同月比88.9%、価格は1キログラム当たり225円、同111.9%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、ばれいしょ(平年比59.1%)、さといも(同74.3%)、レタス類(同76.5%)、なす(同87.0%)、はくさい(同87.5%)、きゅうり(同92.6%)、ピーマン(同92.7%)、キャベツ類(同97.2%)、ねぎ(同98.5%)、平年を上回ったものは、たまねぎ(平年比153.0%)、だいこん(同148.1%)、にんじん(同115.9%)、ほうれんそう(同104.6%)、トマト(同103.6%)となった。
⃝今年は梅雨明けが早く、全国的に6月は高温に見舞われ、8月に入って再び全国的に猛暑となった。夏秋野菜と高原野菜はシーズンが終わってみれば不作年の結果となっていると予測される。市場到着後にダメージ(傷み)の発生が多くなることも心配される。市場では一般的に「品物が悪いから高値になる」といわれる。8月から9月にかけても、想定した品質でない場合が多いと予想され、出回り量が少なく高値の展開が続くと予想している。

(1)気象概況

 上旬は、東・西日本太平洋側は、旬のはじめは、太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、旬の中頃からは、台風第4号や低気圧、気圧の谷の影響で曇りや雨の日があった。また、5日は高知県で線状降水帯が発生するなど、旬の中頃は、西日本太平洋側を中心に大雨となった。北・東・西日本では、暖かい空気に覆われやすかったため、旬平均気温はかなり高く、特に北日本では平年差が+3.2℃となり、1946年の統計開始以降、7月上旬として1位の高温となった。また、旬のはじめは、東・西日本を中心に広い範囲で猛暑日となり、1日は群馬県桐生市で40.4℃など、アメダスを含む6地点で 40℃以上の日最高気温を観測した。旬平均気温は、北・東・西日本でかなり高く、沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側でかなり少なく、北日本太平洋側と東・西日本日本海側で少なかった。一方、西日本太平洋側で多かった。東日本太平洋側と沖縄・奄美では、平年並だった。旬間日照時間は、北・東日本日本海側でかなり多く、北・西日本太平洋側と西日本日本海側で多かった。東日本太平洋側と沖縄・奄美では、平年並だった。
 中旬は、北・東・西日本と奄美地方では、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が多かったため、旬降水量は北・東日本太平洋側でかなり多かった。暖かく湿った空気が流れ込んで、大気の状態が不安定となった日があり、各地で雷雨や大雨となり、猛烈な雨が降った所もあった。旬平均気温は、沖縄・奄美でかなり高く、北日本で高かった。東・西日本では、平年並だった。旬降水量は、北・東日本太平洋側でかなり多く、北・東・西日本日本海側と西日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美で少なかった。旬間日照時間は、北・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側で少なかった。東日本日本海側と沖縄・奄美では、平年並だった。
 下旬は、東北北部では、26日ごろに梅雨明けしたとみられる。東・西日本では、高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、旬のはじめは低気圧や前線の影響で曇りや雨となり、その後も湿った空気が流れ込んで大気の状態が不安定となって、雷雨や大雨となった所があった。旬平均気温は、東日本と沖縄・奄美で高かった。北・西日本では、平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側でかなり少なく、西日本日本海側で少なかった。一方、沖縄・奄美で多かった。東日本日本海側と北・東・西日本太平洋側では、平年並だった。旬間日照時間は、北日本日本海側と北・東日本太平洋側で多かった。東・西日本日本海側、西日本太平洋側と沖縄・奄美では、平年並だった。旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

 7月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量は11万0165トン、前年同月比90.7%、価格は1キログラム当たり252円、同109.3%となった(表1)。

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 根菜類は、だいこんが入荷減から中旬以降価格を上げ、安めに推移した前年を5割以上上回り、平年を5割近く上回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタス類の価格が、やや安めに推移した前年を2割ほど下回り、平年を2割以上下回った(図3)。
 果菜類は、トマトが中旬以降に価格を上げ、前年をわずかに上回り、平年をやや上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎが一時の高値からは落ち着いたものの、引き続き高値基調が続き、高めに推移した前年を4割近く上回り、平年を5割以上上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

 7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5599トン、前年同月比88.9%、価格は1キログラム当たり225円、同111.9%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした9月の見通し

 今年は梅雨明けが早く全国的に6月は高温に見舞われ、7月に入って一旦気温が下がり、8月に入り再び全国的に猛暑となった。果菜類の農家は非常に難しかったと思われる。梅雨がないとされる北海道だが、6月は曇天多雨の日が多かった。夏秋野菜と高原野菜はシーズンが終わってみれば不作年の結果となっていると予測される。農家が最善を尽くして出荷しても、市場到着後にダメージ(傷み)の発生が多くなることも心配される。市場では一般的に「品物が悪いから高値になる」といわれる。8月から9月にかけても、想定した品質でない場合が多いと予想され、出回り量が少なく高値の展開が続くと予想している。

根菜類

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 だいこんは、北海道産(道央ようてい)が6月下旬から始まったが、計画より少なめの出荷となっている。8月も6月に播種(はしゅ)できなかった影響で少なめの出荷が続くが、9月に入り例年並に回復してくると予想される。同産(道東標茶(しべちゃ))は7月21日から始まったが、例年の80%程度の出荷となっている。天候不順によりやや小ぶりの仕上がりとなっている。また、抽苔(ちゅうだい)の発生や9月出荷物の播種が完全でなく、平年並に回復することなくシーズンを終えると予想している。シーズン後半は2Lサイズ中心のLサイズ出荷と予想される。
 にんじんは、北海道産(道央ようてい)は8月5日から選果開始と予想される。現状は肥大不足で、出荷始まりはやや小ぶりのMサイズ中心と予想される。出荷は11月の初め頃まで、ピークのない平準ペースの出荷と予想される。同産(道東斜里)は7月25日から始まり、天候は問題なく計画通りに出荷ができている。干ばつで少なかった前年比の120~130%の出荷のぺースとなっている。11月の初め頃まで平準出荷で、大きなピークはないと予想される。品種は「晩抽天翔」。

葉茎菜類

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 キャベツは、群馬産の7月までの実績は前年の100%で、平年並の出荷ペースである。長雨や日照不足の時期もあったが、特に問題はない。盆明けから9月は最大のピークとなり、Lサイズ中心の出荷と予想される。岩手産は長雨や曇天、高温の影響で出荷は少な目になってきた。巻きが甘くなって軽く、規格に合うものが少なくなっている。ただ、日数が経ち過ぎると腐れになり易い。8月の出荷は波があって定まらないが、8月末頃か9月の初め頃には平年並に回復すると予想している。
 はくさいは、長野産の()(じょう)は開田高原と小木曽地区にあるが、降雨や高温による影響もなく順調である。ピークは8月末から9月上旬と予想している。作付けはやや減少している。
 ほうれんそうは、群馬産は高温により細く仕上がって出荷数量は減少しているが、例年と同様である。9月中下旬から増えてきて、10月に入って露地へ切り替わると予想される。作付けは前年並であり、雨によるダメージの報告はない。栃木産は、6月の猛暑が影響して平年よりも少なめの出荷となっている。7月下旬に土砂降りの雨が3日間続き、雨除けハウスの周辺に雨水が溜まった。圃場は標高800~1200メートル地帯にあって安定した出荷は期待できるが、この後の晴天で病気の発生も心配される。8~9月も平年をやや下回る出荷と予想される。岐阜産は8月初めの段階では例年と同様に減っているが、高温でより鈍くなっている。9月中下旬から再び増えてくると予想している。
 ねぎは、茨城産の夏ねぎは現在も圃場に残っており、品質も良く9~10月は少なかった前年を上回る出荷と予想している。青森産は、天候が悪く現状収穫作業は進んでいない。盆明けから連日出荷され、9月が最大のピークと予想される。現状は品種特性もあるが、6~7月の長雨と、晴天の日の異常高温により、市場到着後にダメージが発生している。現時点では天候の回復が待たれるが、9月は平年並に戻ると予想している。北海道産は7月10日過ぎから始まったが、定植を早めたため例年より若干早まっている。5~6月の函館地方は干ばつで、7月に入り雨が多くなって肥り始めた。生育は順調で、盆明けから9月上旬にピークが来て、その後9月下旬から10月上旬に再度緩やかなピークが来ると予想される。
 レタスは、長野産は7月末から8月初めにかけて3日間ほど降雨があり、多くの圃場で影響を受けた。出荷に影響が出てくるのは8月下旬から9月上旬と予想している。それでも9月は平年をやや下回る出荷と予想される。群馬産の現状は高温により出荷は減っている。9月に入り中下旬にやや増えるものの、10月の3週目に切り上がると予想される。7~8月の降雨の影響は心配ない。茨城産は8月1日から播種作業が開始し、9月下旬からの出荷と予想される。本格的には10月5日頃からであり、作付けは微減を予想している。

果菜類

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 きゅうりは、福島産の7月までの出荷実績は前進して多かった前年の90%程度であるが、平年並みの状況である。猛暑が続いているが、現状までは木の勢いは落ちていない。9月には木に疲れが出ることも想定されるが、農家の肥培管理により10月上旬までの出荷と予想される。群馬産の抑制物は9月初めから出荷が始まるが、出揃うのは9月20日頃からと予想される。盆前後に購入苗を定植するが、面積は例年と変わらない。栃木産は夕立に見舞われているが、特別問題なく生育は順調である。最大のピークは盆前後で、9月には減りながら推移すると予想される。9月は平年並みの出荷を予想している。
 トマトは、北海道産の現状までの出荷実績は曇天が続いたことが影響し、前年の87%と少なかった。ピークは盆前後と予想している。Mサイズ24玉入りが中心で、9月の完全な回復を期待している。青森産の現状は出荷のピークに入っている。この後は6月初旬の長雨で花が飛んだ影響で、盆前に少なくなると予想される。現状の花付きも決して良くなく、8月下旬から9月前半にかけて出荷が少な目になると予想される。生産者の減少により作付けも前年の90%程度で、9月の出荷は前年を下回ると予想される。群馬産は現在、実は付いているが、色回りが遅く少なめの出荷となっている。6月の猛暑の時期に花落ちしたため盆明け頃に一旦減ると予想される。9月に入って回復し、下旬には減り始めて10月には切り上がると予想される。
 ミニトマトは、北海道産は気象の影響なく生育順調で、例年通り盆前後にピークが来ると予想している。品種は「キャロル10」で、切り上がりの10月中旬に向けて徐々に減少するが、9月は量的に潤沢と予想される。
 ピーマンは、福島産は7月18日までは前年の80%程度だったが、7月下旬後半になって前年の130%と急増した。このペースは8月の盆前まで続き、下旬も量的にはまとまると予想される。9月10日頃には再びピークとなって潤沢なペースが続くと予想される。全体の70%が露地物で残りはトンネル物などであり、雨の被害はなく、平年の出荷と予想される。岩手産の露地物は7月下旬後半にピークを迎え、梅雨明けの遅れが影響し例年より5~6日の遅れになっている。8月に入りやや急減し、盆前後に再び増えると予想される。9月は8月よりも減り、ほぼ9月いっぱいの出荷と予想される。ハウス物は盆頃にやや多くなるが、9月も問題なく通常のペースで出荷されると予想される。8~9月は前年と比べやや減の出荷を予想している。

土物類

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 さといもは、愛媛産の「女早生」は例年どおり9月10日前後から出荷が始まると予想している。6月の高温・干ばつで潅水した圃場の物にヤケの被害が見られている。圃場によるばらつきが大きく、作柄は悪い見込みである。年明け3月までの出荷予定ある。静岡産の石川小芋は例年通りであれば、8月20日過ぎから始まり11月までと予想される。九州各県産は、やや小ぶりの仕上がりと予想している。
 ばれいしょは、北海道産(十勝芽室)は現在、「メークイン」のマルチなどで被覆した物の収穫は始まっており、10~14日程度風乾した後に出荷が始まる。盆前の8月10日前後に市場に到着すると予想している。農家は小麦の収穫作業も行っていて忙しく、本格的に増えるのは8月下旬以降と予想される。Lサイズ中心で収穫量は平年を若干上回る見込みである。同産(道央ようてい)の「男爵」の出荷は盆明けから始まるが、おおむね平年並みと予想されている。9~11月をピークに、Lサイズ中心の2Lの出荷と予想される。
 たまねぎは、北海道産は7月末の段階では若干始まっているが、本格的な収穫の開始は8月に入ってからとみられる。本年産は気象の被害もなく順調で、平年作を予想している。玉の肥大も平年並みである。

その他

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 ブロッコリーは、北海道産(道東女満別)の現状は端境期が終わったところであるが、気候の影響で出荷がかなり偏っている。出荷始まりは遅れたが、7月上中旬に一気に出て、低温により下旬に入って少なくなり、下旬後半から天気が安定して、8月に入って再び増えてようやく平準的な出荷に戻ると予想される。10月いっぱいの出荷となり、9月は平年並の出荷を予想している。同産(十勝木野)は、7月下旬に少なくなり、8月に入り再び増えて9月いっぱいとなるが、7月ほどは多くない見込み。大雨による圃場廃棄も一部あったが、トータルでは平年作と予想している。長野産は8月も出荷が続くが、本格的に増え始めるのが9月中旬からで、当面のピークは9月下旬と予想している。標高1200メートルの原村は、降雨の影響で一部傷みや生理障害も発生している。8~9月は前年並みかやや少なめを予想している。
 かんしょは、徳島産の鳴門金時は7月から例年並みに始まっているが、掘り取りしながらの出荷で10月まで現状維持の出荷ペースと予想される。現在のところ生育は順調で、豊作傾向を予想している。石川産は例年どおり8月23日から共撰が開始されると予想される。現状は試し掘り前で予断を許さないが、過去の経験から判断すると5月定植の前半物が大きく後半物が期待したほど肥大しないといった展開も想定される。9月の出荷は活発で、10月は一旦減る見込みである。
 ごぼうは、群馬産の他に青森産の新ごぼうも始まると予想される。冬季の天候不順が春掘りを難しくさせるため、この秋の段階から活発な出荷になると予想される。各産地とも生育は問題なく、平年を上回る出荷が予想される。
 れんこんは、茨城産が9月に入り新れんこんに切り替わる。今年は梅雨明けが早く猛暑になったことから、圃場によりばらつきが大きいとされ、現状では作況の判断が難しい。9~10月と徐々に増えて、その後に豊凶の判断ができるであろう。
 えだまめは、山形産は8月20日頃から9月が出荷のピークと予想される。9月の出荷は晩生品種であるが、作付けの増反で前年の110%程度の出荷と予想される。青森産は7月までの極早生物は6月の低温とその後の極端な高温の影響で半作だった。8月の早生になって回復し、9月の晩生は前年並と予想される。作付面積は生産者の高齢化により10年前の半分と大幅に減っている。
 いんげんは、福島産(ふくしま未来)の夏秋ものは6月下旬から始まり、8月に入り本格化してくると予想され、涼しくなる9~10月がピークである。品種は「いちず」で、作付けは前年並みである。同産(会津)が増えてくるのは9月に入ってからで、ピークは中下旬と予想される。平莢の「ビックリジャンボ」と丸莢の「かもがわ」などが半々である。今のところ順調であるが、高温により害虫の発生が懸念される。9月は前年並の出荷を予想している。
 とうもろこしは、北海道産(十勝芽室)の出荷のピークは盆明けから9月上旬で、量的にまとまるのは15日頃までと予想される。6月の天候不順で発芽が悪く小ぶりであることから、作付けは増えているが出荷は前年を下回ると予想される。同産(道央ようてい)は現在始まっているが、やや小ぶりの仕上がりとなっている。ピークは盆明けから9月10日頃までで、作付けは前年比微減の95%前後である。
 にんにくは、青森産の現状は収穫作業が終了してセンチュウ対策を施しており、市場出荷は8月末頃から開始すると予想される。収穫量は前年の110%程度で、平年比でもやや多い。全般に大振りの仕上がりであるが、外観はやや悪い。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

 
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