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需給動向 野菜情報 2022年7月号

1.東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年5月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万9649トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり273円、同108.8%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6673トン、前年同月比98.9%、価格は1キログラム当たり249円、同111.2%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、ばれいしょ(平年比89.4%)、さといも(同90.9%)、にんじん(同99.0%)、平年を上回ったものは、たまねぎ(同301.5%)、だいこん(同131.0%)、ピーマン(同125.7%)、ほうれんそう(同117.9%)、トマト(同117.4%)、はくさい(同116.8%)、キャベツ類(同113.5%)、きゅうり(同109.7%)、レタス類(同108.1%)、なす(同105.3%)、ねぎ(同101.7%)となった。
⃝これから本格化する高原産地や北海道産は低温や干ばつ環境ではあるが、今のところ平年並みの進捗が予想される。首都圏を中心とした7月の見通しは、5、6月と同様に平年より高めの価格推移が予想される。

(1)気象概況

 上旬は、北・東・西日本では、旬のはじめと終わりに低気圧や気圧の谷の影響を受けたが、旬の中頃を中心に移動性高気圧に覆われて晴れた日が多かった。旬間日照時間は、東日本日本海側でかなり多く、北・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側で多かった。また、旬降水量は西日本日本海側でかなり少なく、西日本太平洋側で少なかった。北・東日本日本海側と北・東日本太平洋側では平年並だった。一方、沖縄・奄美は、低気圧や前線の影響を受けたため曇りや雨の日が続き、旬降水量はかなり多く、旬間日照時間はかなり少なかった。沖縄地方は、4日ごろに梅雨入りしたとみられる。上空の寒気の影響で、期間のはじめと終わりは気温が平年を下回る日が多く、旬平均気温は東・西日本と沖縄・奄美で低く、北日本で平年並だった。
 中旬は、低気圧や前線が沖縄・奄美から本州南岸付近を通過しやすく、東・西日本と沖縄・奄美では曇りや雨の日が多かった。旬降水量は、東・西日本太平洋側で多く、特に、沖縄・奄美は平年比393%とかなり多く、1946年の統計開始以来、5月中旬として1位の多雨となった。一方、北日本日本海側と北日本太平洋側でかなり少なく、東・西日本日本海側で平年並だった。旬間日照時間は、西日本太平洋側と沖縄・奄美でかなり少なく、東・西日本日本海側と東日本太平洋側で少なかった。一方、北日本日本海側と北日本太平洋側で多かった。北日本では暖かい空気が流れ込みやすく、旬平均気温はかなり高かったが、沖縄・奄美では冷涼な空気の影響を受けやすく低かった。東・西日本で平年並だった。
 下旬は、北・東・西日本では、天気が数日の周期で変化した。東・西日本を中心に、移動性高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、26日から28日にかけては、日本海から北日本付近と本州南岸付近を東進した低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、まとまった雨となり、大雨となった所もあった。旬降水量は、北日本日本海側と沖縄・奄美でかなり多く、東日本日本海側と北・東日本太平洋側で多かった。 一方、西日本日本海側で少なく、西日本太平洋側では平年並だった。また、旬間日照時間は、東日本日本海側でかなり多く、西日本日本海側と東・西日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美で少なかった。北日本日本海側と北日本太平洋側では平年並だった。北・東・西日本では、暖かい空気が流れ込みやすく、晴れて気温が上昇した日もあり、29日に関東地方では猛暑日となった所もあった。旬平均気温は、北・東・西日本で高く、沖縄・奄美では平年並だった。旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

 5月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量は11万9649トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり273円、同108.8%となった。(表1)。

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 根菜類は、だいこんの価格が、安めに推移した前年を4割以上上回り、平年を3割以上上回った。(図2)。
 葉茎菜類は、ほうれんそうの価格が、絶対数不足から中下旬に堅調な動きとなり、安めに推移した前年を3割上回り、平年を2割近く上回った。(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、宮崎産、高知産の終了から下旬に堅調な動きとなり、前年を2割ほど上回り、平年を2割以上上回った。(図4)。
 土物類は、国産品のたまねぎは比較的順調だが、中国産のむきたまねぎが新型コロナの影響で予想より少なく、価格は引き続き高値が続き、高めに推移した前年の2.5倍以上の価格となり、平年の3倍以上となった。(図5)。

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 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

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(3)大阪市中央卸売市場

 5月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6673トン、前年同月比98.9%、価格は1キログラム当たり249円、同111.2%となった。(表3)。

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 品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした7月の見通し

 関東平野の産地は4月の低温や5月いっぱい続いた天候不順で作業は遅れている。結果的に定植が100%できず、不作傾向が続く可能性がある。これから本格化する高原産地や北海道産は低温や干ばつ環境ではあるが、今のところ平年並みの進捗が予想される。全国的に肥料の値上がりが著しく、物によっては昨年の倍になっているとのことである。さらに輸送費も高騰し、北海道の農家は遠方の関西市場の取引価格が安ければ、少しでも距離の近い東京市場へ比重を高めざるを得ないとの見解であった。市場価格が低迷すると耕作を止める農家が続出することが予想される。7月の市場動向は5、6月と同様に平年より高めの価格推移が予想される。

根菜類 

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 だいこんは、北海道産(ようてい)は6月27日から出荷が始まるが、ほぼ例年と同様のペースである。5月末頃までは雨不足であったが、現状は降雨もあって生育順調である。7月にピークを迎え、Lサイズ中心の出荷と予想される。同産(標茶(しべちゃ))が出揃うのは7月中旬頃からで、天候の影響もなく例年並である。干ばつ傾向であるが、現状は寒さから生育停滞している。作付けは微増で、当面の出荷のピークは8月の盆以降と予想している。青森産は7月も問題なく平年並みに出荷されるが、8月にはやや減ってくると予想される。5月までは干ばつ気味に推移したが、生育の遅れは特別ない。
 にんじんは、千葉産は例年に比べると7日程度の遅れで、6月下旬から7月上旬をピークに20日頃に切り上がると予想している。作付けは前年の70~80%と減っているが、かんしょの作付けを増やしているためである。品種は「彩誉」などで、サイズはL中心である。北海道産は例年通り6月20日過ぎに共選を開始し、下旬には東京市場での販売が始まると予想される。7月上旬をピークに同月いっぱいで切り上がる見込みである。現状までは干ばつ傾向で、5月末以降も降雨があったが、完全に解消している訳でない。

葉茎菜類

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 キャベツは、群馬産は6月3週目に出揃い、7月も順調に出荷されると予想される。干ばつや偏った雨などの気象上の問題はなく順調である。Lサイズ中心で、増えながら推移すると予想される。岩手産は5月下旬まで続いた干ばつで生育は遅れ気味だったが、5月末頃の降雨で回復し、例年どおり6月25日から出荷が始まると予想している。7月10日過ぎには出荷者が出揃って増えてきて、その後10月まではほぼ横ばいで推移すると予想される。今年は実習生が入っており、人手の確保から作付けは増えている。
 はくさいは、長野産が例年並みに6月20日頃から出荷が始まると予想している。標高900メートル地帯の圃場(ほじょう)からとなるが、最大のピークは8~9月上旬と予想される。高齢化により作付けは前年比95%に減っている。4~5月にかけて雨が多かったが、その後持ち直して生育は順調である。7月としてはやや前年を下回る出荷と予想される。
 ほうれんそうは、群馬産は5~6月は露地物が不作で前年を下回った。7月は6月より増えて雨除け物が中心になって、例年並みの出荷となろう。露地作は伸びにばらつきが大きく、圃場によっては採り遅れもあって70%程度の出荷となった。栃木産の夏ほうれんそうは現在出荷が始まっているが、例年になく雪解けが遅れ、さらにその後の寒さで例年より遅れている。6月中旬に出揃ってきて7月がピークとなるが、下旬から減少すると予想される。
 ねぎは、北海道産が7月20日過ぎから始まり、8月20日過ぎからピークで11月上旬までと予想される。作付けは前年の105%と増えているが、定植作業は前進気味になっている。青森産は7月下旬から始まるが、干ばつ傾向で遅れている。7~8月は増えながら推移し、9~10月がピークとなろう。作付けは昨年の価格安の影響により減っている。茨城産の夏ねぎは圃場に残量が多く、6月の出荷よりやや減る程度と予想される。次の作物の準備もあり7月いっぱいで切り上がり、量的にはほぼ前年並と予想される。
 レタスは、長野産は天候に恵まれ6月に続き7月も順調に出荷されると予想している。期間を通して7月が最大のピークである。Lサイズ16玉中心の見込みである。群馬産は雨が多く、5月は前年を下回る出荷となった。定植作業がスムーズに行われていないため、8月後半頃に減ってくる可能性もある。6月20日頃から増えて7月もそのままピークが続くと予想している。7月は、順調に進んだとしても例年並の出荷と予想している。

果菜類

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  きゅうりは、福島産の現状はハウス物の出荷となっており、ピークは6月10日から。その後6月下旬から7月上旬は雨よけ物のピークで、7月に入り露地物も始まってきて、全体では特別大きなピークはないと予想される。露地物は6月初めに定植しているが、全体の作付けはやや増えており、生育はやや遅れている。出荷のピークは8月中旬を予想している。
 岩手産は現状やや天候不順となっており、ハウスの出荷のピークは6月の3週目頃と予想される。主力の露地物は同4週目に始まり、ピークは7月下旬から8月初め頃と予想している。生育はおおむね順調であり、作付けは前年並である。
 なすは、栃木産が6月に入り露地物への切り替わりの時期を迎えているが、生育はやや遅れている。7月は露地物主体となり、作付けは前年並である。ピークは7月20日頃から8月の盆頃までである。天候に特別な問題なければ前年並の出荷と予想される。福岡産の現状は5月までが少なかったため例年より多く出ている。生育順調で7月中旬まで出荷されると予想している。
 トマトは、北海道産の作付面積は今年5ヘクタール程度減少したが、実習生を確保できなかったことや離農などが影響している。Lサイズ中心の出荷で、当面の1回目のピークは6月末頃、その後、盆前頃に2回目のピークが来ると予想している。7月は前年の95%程度の出荷を予想している。品種は「桃太郎ネクスト」が中心である。青森産は高温気味でやや進んでいる。6月2週目には寒くなり、元に戻る可能性もある。燃油代の高騰で育苗は遅い始まりとなり、収量は減少すると予想される。作付けも前年の90~95%と減っており、7月は前年の90%程度の出荷と予想される。中心品種は高温耐性の「りんか409」で、Lサイズ中心と予想される。ミニトマトは、北海道産が6月中下旬から出荷が始まるが、例年に比べ生育は進んでいる。ピークは例年と同様8月の盆前頃と予想している。高齢化や人出不足により作付けは減少しており、7月の出荷は前年の95%程度と予想している。
 ピーマンは、福島産は例年より早く5月末頃からハウス物の出荷が始まった。このハウス物の当面のピークは7月中旬で、トンネル物は6月中旬から始まり7月下旬から8月上旬がピークと予想される。
 茨城産の7月は春ピーマンの最終となるが、早い農家は6月いっぱいで切り上がる。4月に入り雨が多く、日照不足の影響で落花が見られ、これまでの出荷は少なかった。6~7月に持ち直しを期待したいが前年並には届かないと予想している。岩手産のトンネル物も始まってきて、ハウス物と合わせて量的に増えてくると予想される。当面のピークである7月20日前後を目指して日々増量しながら推移すると予想される。作付けは前年より2ヘクタール程度増えている。

土物類

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 ばれいしょは、長崎産の現状は平年並みのペースで出荷されている。本年産はLサイズ以上が60~70%と大玉傾向で豊作である。収穫作業は天候次第であるが6月で終了し、出荷は7月上旬までと予想される。静岡産の男爵は6月中下旬から出荷が本格化し、7月上旬がピークで7月15日過ぎから徐々に減ってくると予想される。2Lサイズ中心の大玉傾向であるため、出荷量は平年比、前年比ともやや多いと予想している。
 たまねぎは、兵庫産の現状は平年作で、当面のピークは6月末頃から7月上中旬と予想している。作柄は前年並みに豊作である。Lサイズ中心で、品質良好である。雨は多くなく、収穫作業も順調である。8月に入り減り始めると予想される。佐賀産の現状は中生の収穫中であるが、天候に問題なく作業は進んでおり、7月いっぱいの出荷である。本年産は平年作であるが、個人差があり小振りの物が多い農家もいる。7月は貯蔵物が出回るが、6月の出荷の状況によって前年を下回る貯蔵量となることも予想される。

その他

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 ブロッコリーは、北海道産は例年と同様6月20日頃から出荷が始まると予想している。4~5月は干ばつが続いたが、5月28日のまとまった降雨により遅れを取り戻すと予想している。低温の影響により出荷開始時の量は少な目で、東京市場に出荷が始まる7月上旬には急増すると予想している。作付けは価格不振の影響により前年の90%台に減っている。
 アスパラガスは、佐賀産が夏芽の出荷となるが、ピークは7~8月と予想している。ここ数年気象災害が続いた影響でやや土壌障害の影響を受けて減少気味である。今年は平年並みの出荷と予想している。
 かぼちゃは、栃木産は生育順調で、例年と同様に7月の初めからの出荷と予想している。品種は「ほっこり133」「ETかぼちゃ」である。作付けは前年の90%に減っている。
 とうもろこしは、茨城産は3月の晩霜や低温の影響により例年より一週間程の生育遅れとなっており、6月13日頃からの出荷を予想している。6月20日頃にトンネル物のピークが来てその後やや少なくなり、7月上旬にもう一度露地物のピークが来ると予想される。品種は「味来」で、作付けは前年の95%程度である。千葉産の露地の早い物は6月20日頃から出荷が始まるが、量的にまとまるのは7月15日から8月10日頃まで。定植期に天候不順が続き作業が出来なかったため作付けは前年の85~90%に減っている。品種は「ゴールドラッシュ」である。
 えだまめは、群馬産(中山間地)は寒さの影響で生育はやや遅れ気味で、6月10日頃にまとまってくると予想している。全員揃うのは7月下旬から8月で、後半になるにしたがって規模の大きい農家の物となるが、作付けは5%程度増えている。同産(平野地)のトンネル物のピークは6月中旬であるが、主力の露地物は6月中旬から始まってきて、7月2~3週がピークと予想される。作付けは前年並で、出荷量も前年並を予想している。
 いんげんは、福島産は7月上旬にピークとなるが、現状は5~7日程度遅れている。収量が減少する心配があるが、病気によるロスが少なく、出荷量は前年並を予想している。
 すいかは、長野産は7月4日から出荷が始まるが、初めはやや少なめの状況が続くが、15日頃から本格化してくると予想される。交配が開始した時期に低温が続いたが、その後は問題なく順調である。山形産は早い物は7月10日頃から始まろう。出荷のピークは7月25日から8月5日頃でほぼ平年と変わらない。天候は5月に雨が少なく、6月に入り低温気味であるが、これも例年並の状況である。作付けは前年並である。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)


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