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需給動向 野菜情報 2022年5月号

1.東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年3月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万7046トン、前年同月比96.4%、価格は1キログラム当たり268円、同112.5%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5904トン、前年同月比91.4%、価格は1キログラム当たり254円、同118.7%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、にんじん(平年比63.0%)、はくさい(同88.5%)、きゅうり(同90.2%)、なす(同91.9%)、さといも(同95.2%)、トマト(同96.7%)、ねぎ(同96.8%)、平年を上回ったものは、たまねぎ(平年比207.3%)、ばれいしょ(同135.4%)、レタス類(同126.4%)だいこん(同121.9%)、キャベツ類(同118.4%)、ピーマン(同104.8%)、ほうれんそう(同102.4%)となった。
⃝首都圏の需要を中心とした5月の見通しは、3月下旬から4月上旬にまとまった降雨があり、遅れていた春野菜が平年並に追い付いてきているため、今後供給不足による市場での価格高騰の場面はないと予想される。また供給過剰による価格低迷もなく、バランスのとれた値動きが予想される。

(1)気象概況

 上旬は、中国大陸から進んできた高気圧に覆われやすかったため、ほぼ全国的に旬降水量が少なく旬間日照時間が多くなり、特に、東・西日本の旬降水量はかなり少なく、東日本太平洋側と西日本の旬間日照時間はかなり多かった。東日本太平洋側の旬間日照時間は平年比135%で、1946年の統計開始以来3月上旬として1位の多照となった。5日には、日本海を低気圧が発達しながら通過したため、関東甲信地方と東海地方では春一番が吹き、西日本では黄砂を観測した地点があった。旬平均気温は、北日本で高く、東・西日本と沖縄・奄美で平年並だった。旬降水量は、東・西日本でかなり少なく、北日本太平洋側と沖縄・奄美で少なかった。北日本日本海側で平年並だった。旬間日照時間は、東日本太平洋側と西日本でかなり多く、北日本、東日本日本海側、沖縄・奄美で多かった。
 中旬は、全国的に天気が数日の周期で変化し、期間の中頃は日本海から北日本を繰り返し低気圧が通過したため、北日本や東・西日本日本海側を中心に曇りや雨の日が多かった。18日から19日には、本州付近を低気圧が発達しながら通過したため、東・西日本を中心にまとまった雨となり、北日本は太平洋側でも大雪となった所があった。寒気の影響を受けにくかったことから、東・西日本を中心に期間の中頃まで、日本海を進む低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んだ日が多かったため、旬平均気温は東・西日本と沖縄・奄美でかなり高く、北日本で高かった。東日本と西日本の旬平均気温は、それぞれ平年差+3.2度、+3.7度で、いずれも1946年の統計開始以来3月中旬として1位の高温となった。旬降水量は、北・東日本太平洋側でかなり多く、東・西本日本海側で多かった。北日本日本海側、西日本太平洋側、沖縄・奄美で平年並だった。旬間日照時間は、沖縄・奄美でかなり多く、東・西日本太平洋側で多かった。一方、北日本でかなり少なく、東・西日本日本海側で少なかった。
 下旬は、全国的に天気が数日の周期で変化し、22日には前線を伴った低気圧が本州南岸を通過して東・西日本を中心に雨となり、東日本太平洋側の平地でも雪となった所があった。また、旬間日照時間は沖縄・奄美でかなり少なく、東日本太平洋側と西日本で少なかった。南から暖かい空気が流れ込んだ日があったため、全国的に旬平均気温が高かった。北日本と東日本日本海側では平年並だった。旬降水量は、気圧の谷や前線の影響を受けやすかったため、西日本と沖縄・奄美で多かった。一方、東日本日本海側では少なかった。北日本と東日本日本海側では平年並だった。(図1)。

図1 気象概況

(2)東京都中央卸売市場

 3月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量は11万7046トン、前年同月比96.4%、価格は1キログラム当たり268円、同112.5%となった(表1)。

表1 東京都中央卸売市場の動向(3月速報)

 根菜類は、にんじんの価格が、大幅に高めに推移した前年を5割近く下回り、平年を4割近く下回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツ類の価格が、月間を通して安定しており、大幅に安めに推移した前年を8割ほど上回り、平年を2割近く上回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、時期的に少ないこともあって堅調に推移し、下旬に向け落ち着いたものの、前年をわずかに上回り、平年をやや上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、絶対数不足から引き続き引き合いが強く、堅調な動きが続き、やや安めに推移した前年の2.3倍となり、平年の2倍以上となった(図5)。

図1、2、3、4 品目別の入荷量と卸売価格の推移

 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

表2 品目別入荷量・価格の動向(東京都中央卸売市場)

(3)大阪市中央卸売市場

 3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万5904トン、前年同月比91.4%、価格は1キログラム当たり254円、同118.7%となった(表3)。

表3 大阪市中央卸売市場の動向(3月速報)

 品目別の詳細については表4の通り。

表4 品目別入荷量・価格の動向(大阪市中央卸売市場)

(4)首都圏の需要を中心とした5月の見通し

 首都圏の需要を中心とした5月の見通しは、3月下旬から4月上旬にまとまった降雨があり、遅れていた春野菜が平年並に追い付いて きているため、今後供給不足による市場での価格高騰の場面はないと予想される。また供給過剰による価格低迷もなく、バランスのとれた値動きが予想される。今年は東北・北海道の雪解けが一週間以上遅れており、6~8月に徐々に影響が出てくることが予想される。東京の青果商(路面店)によると、諸物価の高まりから買い物に来る頻度が低下しているとされる。販売店にはさまざまな食べ方を提案していただき、野菜の滋養で元気に過ごすことを提案して欲しい。

だいこんのイラスト
 だいこんは、千葉産は3月下旬に適度の降雨があり、生育は順調である。Lサイズ中心で平年並である。ピークは5月中旬と予想され、6月上旬には切り上がろう。青森産の主力産地は奥入瀬町で、トンネルものは雪解けの遅れの影響もなく平年並の始まりを予想している。5月はL、2Lサイズが半々となり、前年並の出荷を見込んでいる。
 にんじんは、徳島産のピークは4月中下旬と予想される。その後、連休中も大きく減少することなく、10日をめどに減りながら推移し、切り上がりは6月上旬の見込みである。サイズはMとLが半々で、寒さで肥大は抑えられた。春にんじんはほぼ平年作である。静岡産は平年並かやや遅い4月5日から販売が始まる。4月18日の週に出揃い、5月13日頃には切り上がろう。「ベータリッチ」は、やや小ぶりの仕上がりが予想される。

キャベツのイラスト
 キャベツは、愛知産の3月の出荷実績は前年比96%と、天候の影響を受けた。5月に入り夏キャベツになるが、大きな気象災害もなく順調に入荷すると予想している。作付けも前年並である。千葉産は3月まではやや少なめの展開であったが、4月10日頃から本格的に増え始めよう。現状では5月は前年並を予想している。茨城産は4月下旬からやや早めのスタートとなり、量的にまとまるのは5月15日過ぎからと予想される。ピークは5月下旬から6月いっぱいと予想され、作付けは前年並である。
 はくさいは、茨城産のピークは4月3~10日の週に来ると予想される。5月に入って減りながら推移するが、寒波と干ばつ傾向によりやや遅めの展開が予想される。5月いっぱいで切り上がり、平年を下回る出荷と予想される。長野産はほぼ例年並に5月中旬から始まり、ピークは6月上中旬と予想している。圃場(ほじょう)は800~1000メートル地帯である。作付けは前年並で、5月の出荷は前年並を予想している。
 ほうれんそうは、群馬産(新田みどり)の生育は順調であるが、3月上中旬に前進してその後少なめの出荷となった。4~5月には気温も上昇して、再び増えてくると予想している。同産(利根沼田)の高原産地の露地は現状遅れている。作付けは前年並みで、5月の連休がらみで増えてこよう。5月下旬までは多いがその後減って、6月中下旬から雨除けものとなる。
 ねぎは、茨城産は5月から初夏ねぎとなるが、平年を上回って前年比でも105%程度の出荷が予想される。3月下旬にまとまった降雨もあって、干ばつによる遅れを取り戻してきた。現状最終の土あげ作業も進み、害虫の被害も見られず出来の良いねぎに仕上がっている。千葉産の春ねぎは前年と同様に4月中旬から始まり、5月中旬にピークとなり6月に入り減ってこよう。「坊主知らず」はやや遅れて5月後半から出始め、ピークは5月末から6月と予想される。埼玉産の春ねぎはほぼ平年並みの4月15~20日の間に始まると予想される。作付けはほぼ前年並で、出荷は6月いっぱいであるが、ほぼ平準ペースで出荷されると予想される。
 レタスは、長野産が4月25日からの出荷となろうが、例年並かやや遅い始まりである。前年はかなり早かったが、今年は残雪で植え付けが遅れた圃場があった。始めはトンネルものでその後、露地被覆ものとなり、ピークは連休明け頃から。露地ものも連休明け頃に始まり、5月の出荷は前年並を予想している。群馬産は4月3週目から出荷が始まるが、ほぼ例年並みの展開である。5月は連休がらみで一挙に増えてくるが、最大のピークの6月に向けて増えながら推移しよう。茨城産の北つくば管内では結城地域が5月いっぱい出荷すると予想される。その他の岩井地域は4月いっぱいで切り上がるが、今年の販売実績について農家は満足している。兵庫産は連休前頃に出荷のピークと予想している。5月は減りながら推移し、下旬いっぱいで切り上がると予想している。

きゅうりのイラスト
 きゅうりは、埼玉産が3月21日から無加温ものが始まり、連休がらみでピークに入り5月中旬まで多く、その後梅雨に入り減ってくると予想される。昨年は梅雨入りが大幅に早かったため5月は少なめとなった。平年並の梅雨入りとなれば、前年を上回る出荷と予想される。宮城産の地元市場への出荷は3月10日から始まったが、前年より10日遅らせている。東京市場へは4月10日から始まり、ピークは無加温ものも始まる5月の連休がらみと予想される。2回目のピークは6月上中旬である。福島産の早い生産者は現在地元に出荷しているが、東京市場へは5月に入ってから。ほぼ前年と同じペースでの展開と予想している。最大のピークは雨除けものと露地ものが揃う7月下旬からであり、作付けは前年並と予想している。
 なすは、群馬産のハウスものは4月後半から徐々に増えて、連休頃からピークとなって5月いっぱいは多いと予想される。6月の梅雨入りでやや減って少なくなろう。露地ものは6月後半から始まるが、全体の作付けはトマトからの転作でやや増えている。高知産は3月に好天が続いたこともあり、現状は順調な出荷が続いている。最大のピークは5月であるが、前年は5月中旬から雨が続いて急減した。今年は平年並の天候であれば前年を上回ろう。福岡産の当面のピークは4月下旬であるが、7月中旬まで出荷が続くと予想される。昨年は4~5月に特に多く出たため、5月は順調であっても前年並の見込み。
 トマトは、熊本産は前年の苗の時期の天候不順の影響で、昨年10月~今年3月までの量は前年の80%程度で少なかった。4~5月はピークに入り、平年並に回復してこよう。最終の出荷は6月20日までと予想される。佐賀産は厳寒期に施設の加温不足だった影響がここに来て出ている。それでも4~5月には増えて、連休前後にはピークとなろう。作付けはミニトマトなどへの転作の影響もあり、前年の95%程度であるが、この10年近く長期的に減少傾向である。愛知産の生育は順調で、Lサイズ中心に5月が最大のピークとなろう。最終は7月下旬と予想される。
 ピーマンは、茨城産の春ピーマンは4~5月が最大のピークとなるが、天候に恵まれ前年を上回る出荷が続いている。作付けは労働力の確保が難しく、若干減少している。今後はうどんこ病の発生がなければ、前年を上回る出荷が続こう。宮崎産は天候に恵まれ生育は順調である。ピークは連休の前頃から5月中旬までで、5月下旬から減りながら推移すると予想される。

ばれいしょのイラスト
 さといもは、埼玉産の植え付けの最終は5月上旬までであり、引き続き量的には前年を上回ると予想している。
 ばれいしょは、鹿児島産が4月2日から平年並に始まり、出荷のピークは4月20日頃から連休明けの10日頃まで。その後は減り始め6月10日頃までと予想される。Lサイズ中心であるが、前半は全般的に小振りの物が多いと予想される。長崎産は4月下旬から始まると予想しているが、例年並かやや遅れる見込みである。今年は気象災害もなく順調で、ピークは5月で始めの物はやや小ぶりと予想している。「ニシユタカ」の作付けは前年並である。静岡産は例年とほぼ同じ連休明けから始まるが、現状までは寒さの影響も受けることなく順調である。ピークは5月下旬から6月上旬となろう。
 たまねぎは、佐賀産の4月初めは極早生(ごくわせ)の最盛期から終盤に向かうところである。早生は4月10日から収穫が始まり、出荷が本格化してくるのは4月下旬からとなろう。5月にピークとなるが、現状は平年作を予想している。Lサイズ中心と予想される。

ブロッコリーのイラスト
 ブロッコリーは、愛知産の現状はやや少なめの出荷となっているが、干ばつと低温の影響を受け、引き続き5月も前年をやや下回る出荷が予想される。最終は6月の初め頃を予想している。埼玉産の現状は若干遅れ気味であるが、出荷は平年並である。最大のピークは4月18日の週から5月の連休明け頃まで。中心サイズはLである。茨城産の春ブロッコリーは例年どおり始まってくるが、5月の連休明けからピークとなり、5月いっぱいでほぼ切り上がると予想される。作付けの減少から、例年を若干下回る出荷と予想される。
 アスパラガスは、長野産のハウスものは4月20日頃から始まり、5月5日頃には露地も始まって15~20日がピークになると予想される。株の充実は問題なかったが、現状までの出荷は70~80%と少なく、低温や干ばつが影響したと思われる。5月は、気温次第で前年並まで回復してくると期待している。
 かぼちゃは、鹿児島産の現状は交配中で、出荷の始まりは5月10日前後からと予想しているが遅れ気味である。7日程度遅れてピークは6月上旬の見込みである。品種は「えびす」と「栗五郎」である。沖縄産は二期作ものとなるが、4月下旬から始まり5月中旬までと予想される。現状着果は問題なく順調で、前年並みの出荷が予想される。中心品種は「栗五郎」と「えびす」である。
 とうもろこしは、沖縄産の現状は出荷が始まったところで、ピークは4月中下旬、5月に入り減ってきて中旬で切り上がる見込みでやや早めの展開となっている。品種はバイカラーの「グラビス」である。
 えだまめは、千葉産のハウスものは連休明けの7日か8日頃から始まるが、ほぼ例年並で5月中下旬がピークと予想される。トンネルものは6月に入ってから。作付けや出荷量は前年並である。
 きぬさやえんどうは、福島産が5月中旬から始まってくるが、雪解けが大幅に遅れ作業に影響が出ている。スナップえんどうへの転作によりきぬさやは減っている。スナップえんどうは5月下旬から、グリーンピースは6月上旬から出荷となろう。天候は回復してきているが、気温が低いことも生育遅れの原因である。
 そらまめは、愛媛産が4月中旬から始まるが、ピークは5月の連休がらみとなり、22日の週で切り上がると予想され、平年作と予想している。
 らっきょうは、鳥取産は今後の試し掘りや協議会で出荷日は変化するが、現時点では5月21日頃からの出荷を予想している。出荷のピークは5月末頃から6月の一週目と予想しているが、ほぼ平年と同様であろう。昨年は一部生育不良があり、販売期間を後ろにずらした。 2022年産については前年を上回ると予想している。
 貴味メロンは、茨城産の早いところは5月20日頃から始まるが、ピークは6月10日過ぎとなろう。農家の作業は遅れがちであり、研修生を確保できないことが響いている。作付け減よりも作業の遅れにより量的に前年を下回ると予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

 
(参考) 指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)




(参考) 指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)