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需給動向 野菜情報 2022年4月号

1. 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和4年2月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は10万5344トン、前年同月比91.9%、価格は1キログラム当たり264円、同113.7%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万2303トン、前年同月比88.8%、価格は1キログラム当たり242円、同118.6%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、にんじん(平年比66.1%)、はくさい(同67.0%)、ねぎ(同87.4%)、さといも(同91.5%)、キャベツ類(同93.6%)、なす(同96.0%)、トマト(同97.1%)、平年を上回ったものは、たまねぎ(平年比186.6%)、ばれいしょ(同166.0%)、レタス類(同132.5%)、ほうれんそう(同118.1%)、だいこん(同110.9%)、ピーマン(同110.5%)、きゅうり(同110.1%)となった。
⃝首都圏の需要を中心とした4月の見通しは、春物が回復して急増し、果菜類も3月の好天で一部急増も予想される。通常の4月は降雨が定期的に巡ってくるが、干ばつ傾向となると春の露地野菜の入荷は伸び悩むであろう。例年であれば4月は新年度の始まりで業務需要が価格を引っ張るはずであるが、今年はコロナの収束が見えず需要の盛り上がりに欠けると予想される。こうした中で家庭での消費の盛り上がりを期待したい。

(1)気象概況

 上旬は、北日本を中心に冬型の気圧配置が強まりやすかったが、東シベリアで気温が高かったため、旬平均気温は、北日本で平年並で東・西日本で低かった。期間の中頃には強い冬型の気圧配置となったため、6日に北・東・西日本の日本海側や内陸で記録的な大雪となった所があった。旬降水量は、冬型が続いて湿った空気の影響を受けにくかった北日本太平洋側と、低気圧の影響を受けにくかった西日本日本海側でかなり少なく、西日本太平洋側で少なかった。一方、冬型の気圧配置で雪の日が多かった東日本日本海側と、低気圧や前線の影響を受けやすかった沖縄・奄美で多かった。北日本日本海側と東日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、湿った空気の影響を受けにくかった北日本太平洋側で多かった。一方、日本の南や本州南岸の低気圧や前線の雲が広がりやすかった沖縄・奄美と西日本太平洋側で少なかった。北・西日本日本海側と東日本では平年並だった。
 中旬は、期間の前半を中心に、日本の南をたびたび通過した低気圧や前線の影響で、沖縄・奄美では旬降水量がかなり多く、北日本太平洋側と東日本で多かった。北日本日本海側と西日本では平年並だった。旬間日照時間は少なく、東日本太平洋側では旬降水量は多かった。期間の後半は、上空の寒気を伴った低気圧が日本海北部をゆっくり進んだ後、北日本付近を高気圧が通過し、さらに日本海北部と本州南岸から三陸沖にかけて、それぞれ低気圧が北東進した。高気圧が通過して冬型が解消し、晴れた期間があったため、旬間日照時間は、北日本日本海側でかなり多かった。一方、北日本太平洋側と沖縄・奄美で少なく、東・西日本では平年並だった。日本海をゆっくり進んだ低気圧の影響で、西日本で寒気が流れ込み、旬平均気温は、西日本で低く、北・東日本と沖縄・奄美では平年並だった。
 下旬は、期間のはじめは、発達した低気圧が千島からアリューシャン近海に進み、冬型の気圧配置が強く、北・東日本の日本海側を中心に大雪や暴風となった所があった。北日本では、その後も冬型の気圧配置となりやすく、27日には津軽海峡付近を低気圧が通過したため、旬間日照時間は、北日本日本海側でかなり少なく、北日本太平洋側と東日本日本海側で少なかった。一方、東日本太平洋側と西日本でかなり多く、沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側で多かった。一方、東日本太平洋側と西日本でかなり少なかった。北日本太平洋側と東日本日本海側、沖縄・奄美では平年並だった。東日本太平洋側で平年比2%、西日本太平洋側で平年比1%となり、1946年の統計開始以来2月下旬として1位、西日本日本海側でも、平年比25%で1位タイの少雨となった。旬平均気温は、大陸からの寒気が流入した東・西日本と沖縄・奄美で低く、北日本では平年並だった(図1)。

図1 気象概況

(2)東京都中央卸売市場

 2月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量は10万5344トン、前年同月比91.9%、価格は1キログラム当たり264円、同113.7%となった(表1)。

表1 東京都中央卸売市場の動向(2月速報)

 根菜類は、だいこんの価格が、数量の落着きから下旬に向けて底上げとなり、安めに推移した前年を3割以上上回り、平年を1割強上回った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツが安定した数量から価格も月間を通して安定しており、大幅に安く推移した前年を6割弱上回ったものの、平年をかなりの程度下回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンが時期的に数量が少ないこともあって価格は堅調に推移し、前年を1割近く上回り、平年を1割強上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎが絶対数不足から引き合いが強く価格は堅調な動きが続き、やや安めに推移した前年の2倍弱上回り、平年を8割以上上回った(図5)。

図1,2,3,4 品目別の入荷量と卸売価格の推移

 
なお、品目別の詳細については表2のとおり。

表2 品目別入荷量・価格の動向(東京都中央卸売市場)

(3)大阪市中央卸売市場

 2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万2303トン、前年同月比88.8%、価格は1キログラム当たり242円、同118.6%となった(表3)。

表3 大阪市中央卸売市場の動向(2月速報)

 品目別の詳細については表4の通り。

表4 品目別入荷量・価格の動向(大阪市中央卸売市場)

(4)首都圏の需要を中心とした3月の見通し

 首都圏の需要を中心とした4月の見通しは、春物が回復して急増し、果菜類も3月の好天で一部急増も予想される。通常の4月は降雨が定期的に巡ってくるが、干ばつ傾向となると春の露地野菜の入荷は伸び悩むであろう。例年であれば4月は新年度の始まりで業務需要が価格を引っ張るはずであるが、今年はコロナの収束が見えず需要の盛り上がりに欠けると予想される。こうした中で家庭での消費の盛り上がりを期待したい。
 
根菜類 だいこん
 だいこんは、千葉産(ちばみどり)は順調で引き続き4月もピークが続くと予想される。Lサイズ中心に2Lも含まれ、入荷は前年並みと予想される。同産(鎌ヶ谷)は3月27日頃から始まると予想される。最初はややスローペースであるが、4月後半から一気に進み、下旬から5月にピークを迎えると予想される。神奈川産の4月は残量であるが、4月20日前後には切り上がると予想される。
 にんじんは、徳島産が3月に続き4月も順調で前年並の出荷が予想されるが、数量的にまとまるのは5月中旬までと予想される。3月から始まった春ものは平年作である。静岡産は前年よりやや遅く4月4日頃から始まると予想している。ピークは4月18日の週から4月いっぱいで、5月に入り減ってくると予想される。
 
葉茎菜類 キャベツ
 キャベツは、千葉産の春もの(若潮キャベツ)は3月20日頃から本格化すると予想されるが、気温が低めであることから例年より遅れている。前進して出荷量の多かった前年比95%と予想している。愛知産は2月上旬までは前進し、3月に入り若干少なめだが中旬には回復すると予想している。現状は8玉Lサイズ中心であり、平年並みとなっている。4月は前年並の出荷となり、冬もの(冬のぼり)が中心と予想される。5月に入り一旦減って、連休明けには夏キャベツが始まると予想される。神奈川産ほぼ前年と同じ3月1日から「金系201」が始まった。ピークは4月上中旬と予想される。雨が少なく現状の肥大は若干遅れが見られるが、4月には平年並みに回復すると予想される。量は前年並の出荷を予想している。
 はくさいは、茨城産(北つくば)の春ものは例年より早めに定植したが、寒波と干ばつで、始まりは若干遅れ、例年と同じ4月5日頃からと予想される。ピークは4月下旬から5月の連休に絡む頃で、10日には減ってくると予想される。量はほぼ前年並と予想している。同産(八千代)の春はくさいは寒さから現状は肥大不足である。3月に入って気温が上がれば3月14日の週から出荷は始まると予想している。ピークは4月、5月である。
 ほうれんそうは、埼玉産が3月に入り暖かくなって生育順調で、それまでの遅れを取り戻しつつある。4月は前年並の出荷と予想している。岩手産は3月上旬に入り播種(はしゅ)作業が始まった。出荷は4月中旬から増え始めると予想している。現状雪は残っているが、圃場(ほじょう)が凍るほどではなく、平年並みに出荷できると予想している。作付けは生産者の高齢化によりで若干減少している。
 ねぎは、茨城産は春ねぎが始まる時期である。4月は年間を通して少ないが、連休明けから夏ねぎとなって量的に増えてくると予想される。春ねぎの中心サイズはLである。千葉産の4月1日から出荷が始まる春ねぎの生育は順調である。出荷の初めからピークを迎え5月前半まで続く見込みである。肥大良好であることから、多く出荷された前年並を予想している。
 レタスは、茨城産は引き続き生育は順調で、4月いっぱいピークが続くと予想される。4月は前年並であるが、サイズはL中心の2Lで、やや小ぶりと予想される。5月の連休頃から減ってくると予想される。香川産の生育は遅れているが、3月に入ってから回復し、月末頃には春レタスに切り替わると予想される。作付けは前年並で、Lサイズ中心に前年並の出荷と予想される。
 
果菜類 きゅうり
 きゅうりは、埼玉産は寒さと燃料代の高騰で加温が足りず、スタートは遅れたが、好天が続いたため生育は順調である。ピークは連休頃を予想しているが、3月末から4月初めに小さなピークがくると予想される。群馬産は2月10日に定植されたものが3月15日頃に揃ってきて、ピークに入ると予想している。現状は特段の増減の要因は見当たらず、ほぼ前年並の出荷と予想される。宮崎産の現状はまさに増え始めた時期である。ペースは例年と同様であるが、3月末頃から作型の切り替えものが始まり、4月が出荷のピークでほぼ平年並みの推移になると予想される。
 なすは、高知産の現状は気温の高まりで実も太り、収量が伸びてきている。花も実も付いており4月には徐々に増えてくると予想している。ただ天候不順が4日続くと花落ちするなど状況は変わってくるが、そうしたことがなければ例年並の出荷が予想される。4月下旬から5月が最大のピークと予想される。福岡産は1月は前年比110%と多く出荷され、2月は同99%と減って3月に入っても前年を下回っている。今後は日照時間も増えて前年を上回る出荷が予想される。4月下旬から5月上旬がピークと予想される。
 トマトは、熊本産は2月の低温により3月に入っても増えておらず、3月下旬まではこのまま横ばいで推移すると予想される。4月に入っても小玉傾向と予想され、現状と同様に横ばいで推移すると予想される。5月に入って大きなピークになると予想している。愛知産の2月の出荷は冷え込みもあって少なめで、前年を下回る出荷となった。生育そのものは順調で、最大のピークである5月中下旬に向けて増えながら推移すると予想される。M、Lサイズが中心で、平年並の大きさと予想される。福岡産は、3月上旬の前半までは花の止まりが悪かった影響から肥大不足で、少なめの出荷となった。今後は増えて3月下旬から4月上旬にピークになると予想される。中玉の「フルティカ」も同様で、3月中下旬から4月がピークと予想される。
 ピーマンは、茨城産の主力の春ピーマンは2月から始まり、生育は順調である。4月は増えながら推移し5月にピークになると予想される。残り3割程度の越冬ピーマンは作付けが若干減少している。また、一部病気も見られるものの、4月は多く出荷された前年並の見込みである。高知産は木の状態が良好で生育順調であり、現状は前年を上回る出荷となっている。出荷のピークは5月であり、4月は増えながら推移して前年を上回る出荷と予想される。
 
土物類 ジャガイモ
 さといもは、埼玉産は貯蔵ものの出荷となり、種いもの残りである。植え付け作業は3月~4月中旬までとなり、その間は少なめ出荷と予想される。4月としては前年を上回ると予想される。
 ばれいしょは、鹿児島産の県北(いずみ)の早春ものは2月いっぱいで終了した。春ものは4月に入ってから始まると予想している。昨年や一昨年は出荷が早く3月下旬から始まったが、今年は今のところ早まることはないであろう。試し掘り前で情報は少ないが、霜の被害は多少あると予想される。同産の県南(きもつき)の春ものは例年並みに始まっているが、ピークは4月上中旬と予想している。今年は玉数が少なめであるが、肥大良好で揃っている。寒さはあったが、特別問題なくほぼ前年並の出荷が予想される。長崎産の春ばれいしょは早い物が4月上旬から始まるが、揃ってくるのが中下旬で、ピークは5月と予想している。現状までは一部で霜害はあったが、出荷に影響なく例年並と予想される。試し掘りはまだ行っていないが、大きさも例年並みと予想している。
 たまねぎは佐賀産の現状は超極早生が始まっているが、例年より7~10日遅れている。寒さよりも干ばつの影響が大きい。極早生は4月いっぱい、早生は4月中旬から始まって5月いっぱいと予想している。作付けは前年並と予想しているが、一部で苗に昨夏の高温の影響が見られる静岡産の現状は遅れている。通常は出荷の80%が終わっているところであるが、60%の進捗である。そのため4月も例年より多く出荷されると予想される。品質は極めて良好あるが、若干小ぶりの仕上がりである。切り上がりは連休の前頃と予想している。兵庫産は4月中旬から主力の早生が本格的に出荷になると予想される。干ばつ気味であるが生育順調で遅れはなく、出荷のピークは5月と予想している。
 
その他 ブロッコリー
 ブロッコリーは、埼玉産の現状は冬物の残りでやや小ぶりで出荷されている。4月は3月より増えて、肥大も回復しLサイズが中心と予想される。春ブロッコリーの作付けは前年並である。香川産は3月、4月がピークであるが、現状は寒さの影響で生育は遅い。3月に入って気温が上昇すれば4月は前年並まで回復すると予想される。熊本産は3月に入って気温が緩んで出荷が増えてきている。今後も寒の戻りで増減が繰り返されると予想され、ピークは4月下旬から5月上旬の見込みである。
 たけのこは石川産が4月8日頃から始まると予想している。試し掘りは3月下旬のため現状ははっきりとした見通しはできないが、今年は表年であるため昨年の2倍程度出荷できると予想される。ピークは4月29日前後、最終の出荷は5月20日頃で、価格を見ながら早まる可能性もある。
 豆野菜は、愛知産のスナップえんどうは例年より遅れている。ピークは3月後半から4月上旬であるが、4月いっぱいはしっかり出荷できると予想される。きぬさやは3月までがピークで4月上旬までは続き、中旬には減ってくると予想している。豆野菜全般、寒さで遅れはあるが、基本的には天候に恵まれこれから順調に出荷されると予想される。愛媛産は4月10日頃から始まり5月10日頃までピークと予想される。3月下旬以降に大きな寒の戻りがなければ、順調に生育すると予想される。沖縄産は通常3月に入ってピークとなるが、2月の天候不順で遅れており、3月20日から回復してピークとなって4月中旬から減ると予想される。いんげんは3月10日以降始まり、中下旬にピークとなり4月には減りながら推移すると予想される。出荷は5月までの見込みである。
 らっきょうは、徳島産が4月20日過ぎから漬物用が、25日から泥つきものが始まると予想され、洗いものは連休頃の出荷となろう。着球数は問題なく、例年並みの出荷と予想している。鹿児島産の露地ものは4月下旬から始まり、ピークは5月いっぱい続くと予想している。定植は昨年の9~10月上旬に行われ、10月に雨が少なかったため生育は遅れ気味であったが、現状はかなり回復してきている。
 かぼちゃは、 ニュージーランドからの輸入ものは3、4月がピークで、5月まで販売が続くと予想される。当初は前年より少なめの入荷と予想されたが、現地は豊作傾向で状況は変わってきている。今年も前年と同様に船の乱れから入港日が決まらないなどの混乱があり、数量や品質が乱れる懸念が残る。その後はメキシコン産の出回りとなる。
 ごぼうは、宮崎産は新ごぼうとなるが、4月10日前後のトンネルものに始まり、その後は不織布で防霜対策をした作型の出荷と予想される。ピークは6、7月で、今のところ生育順調である。農家サイドからの聞き取りでは増反傾向と予想している。
 メロン類は、茨城産が4月中旬のオトメメロンから始まると予想している。主力の「アンデス」と「クインシー」は4月過ぎ頃からと予想される。出荷のピークは連休明けから5月中旬と予想している。初めはやや小ぶりの仕上がりであり、作付けは前年を若干下回っている。
 すいか類は、熊本産の最大のピークは5月であり、4月は徐々に増えながら推移すると予想される。生産者が4~5人減ったことから4月は昨年を下回る出荷と予想される。品種は「朝ひかり」で、Lサイズ中心と予想される。現状は着果も順調で、高品質な仕上がりと予想される。群馬産は小玉すいかで、早い人は2月20日前頃から始まった。出荷のピークは5月、6月で3~4月は増えながら推移すると予想される。品種は「まな娘」が中心で「ひとりじめ」は一部残っている。
                        (執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)