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需給動向 野菜情報 2022年2月号

1.東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年12月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

○東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は12万3111トン、前年同月比96.3%、価格は1キログラム当たり239円、同113.3%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万920トン、前年同月比95.3%、価格は1キログラム当たり216円、同117.4%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、はくさい(平年比55.0%)、キャベツ類(同59.6%)、きゅうり(同69.3%)、だいこん(同71.9%)、ピーマン(同76.7%)にんじん(同79.8%)、レタス類(同81.0%)、ねぎ(同82.2%)、なす(同83.5%)、ほうれんそう(同85.4%)、さといも(同96.5%)、平年を上回ったものは、たまねぎ(平年比206.7%)、ばれいしょ(同166.9%)、トマト(同103.2%)となった。
⃝首都圏の需要を中心とした2月の見通しは、例年通りであれば2~3月は業務需要が価格を引っ張る時期であるが、今年は新型コロナウイルス感染症の第6波到来の懸念により、価格引き上げが困難となることが確実視されている。3年目のコロナ禍となるが当面価格が高くなる要素はなく、暴落の危機だけは確実に巡ってくるといった弱気な見通しをせざるを得ない。重量野菜は価格安による出荷減で低迷から脱出できないであろう。ばれいしょやかんしょは出回り不足から引き続き高い見込みである。

(1)気象概況

 上旬は、期間のはじめに、日本海から北海道の北を低気圧が続けて通過し、7日から8日には、本州南岸を気圧の谷が通過したため、北・東日本でまとまった雨が降った日があった。東日本太平洋側では湿った空気が流れ込み、大雨となった所もあった。また、低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込み、期間の後半は移動性高気圧に覆われた日があった。旬平均気温は、北日本でかなり高く、東日本では高かった。西日本と沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北・東日本太平洋側でかなり多く、北・東日本日本海側で多かった。一方、沖縄・奄美でかなり少なく、西日本では少なかった。旬間日照時間は、北日本日本海側と西日本太平洋側でかなり多く、西日本日本海側と沖縄・奄美で多かった。北日本太平洋側と東日本では平年並だった。
 中旬は、日本海から北日本付近を低気圧が通過しやすく、低気圧の通過後には気圧配置となり、記録的な大雪となった所もあったため、北日本日本海側の旬降水量はかなり多く、日照時間はかなり少なかった。一方、大陸から進んできた高気圧に覆われて晴れる日が多かったため、旬間日照時間は東日本太平洋側でかなり多く、西日本太平洋側で多かったが、17日頃に、低気圧が西日本から本州南岸を通過し、まとまった雨が降ったため、東日本太平洋側と西日本日本海側の旬降水量は多かった。旬間日照時間はかなり多く、平年比204%で12月中旬として1961年の統計開始以来で1位タイの多照となった。旬平均気温は、北・東・西日本で高かった。沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側でかなり多く、東日本太平洋側と西日本日本海側で多かった。一方、沖縄・奄美でかなり少なく、北日本太平洋側で少なかった。東日本日本海側と西日本太平洋側では平年並だった。旬間日照時間は、東日本太平洋側と沖縄・奄美でかなり多く、西日本太平洋側で多かった。一方、北日本日本海側でかなり少なく、北日本太平洋側で少なかった。東・西日本日本海側では平年並だった。
 下旬は、期間のはじめに、北日本では北海道付近を低気圧が通過した後に冬型の気圧配置となったため、日本海側を中心に曇りや雨となったが、東・西日本では高気圧に覆われて晴れた日が多かった。期間の後半は、大陸から強い寒気が流れ込んだため、北・東・西日本の日本海側を中心に、太平洋側の一部でも交通機関などに影響がでるような記録的な大雪となった所があり、旬降雪量は北・東・西日本日本海側でかなり多かった。旬平均気温は、北日本でかなり低く、東日本で低かった。西日本と沖縄・奄美では平年並だった。旬降水量は、北日本日本海側でかなり多く、東日本日本海側で多かった。一方、西日本太平洋側で少なかった。北・東日本太平洋側、西日本日本海側、沖縄・奄美では平年並だった。旬間日照時間は、北・東日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美ではかなり少なく、北日本日本海側で少なかった。東日本日本海側と西日本では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

図1 気象概況

(2)東京都中央卸売市場

 12月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量は12万3111トン、前年同月比96.3%、価格は1キログラム当たり239円、同113.3%となった。(表1)。

表1 東京都中央卸売場の動向(12月速報)
 

 根菜類は、だいこんの価格が、月間を通して苦しい展開が続き、下旬に向け回復したものの安めに推移した前年をやや下回り、平年を3割近く下回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタス類の価格が、前進傾向の影響から、下旬需要期に向けた品薄感により価格を上げ、大幅安めに推移した前年を3割以上上回ったものの、平年を2割近く下回った(図3)。
 果菜類は、トマトの価格が、熊本産の入荷減から堅調に推移し、安めに推移した前年を3割以上上回り、平年をやや上回った(図4)。
 土物類は、たまねぎの価格が、絶対数不足から引き合い強く、在庫確保の動きからさらに強まり、安めに推移した前年の約2.4倍の価格となり、平年の2倍以上の価格となった(図5)。

図2、3,4,5 各品目の入荷量と卸売価格の推移
 

 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

 

表2 品目別入荷量・価格の動向(東京都中央卸売市場)

(3)大阪市中央卸売市場

 12月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万920トン、前年同月比95.3%、価格は1キログラム当たり216円、同117.4%となった。(表3)。

表3 大阪市中央卸売市場の動向(12月速報)

 品目別の詳細については表4の通り。

表4 品目別入荷量・価格の動向(大阪市中央卸売市場)

(4)首都圏の需要を中心とした2月の見通し

 例年通りであれば、2~3月は業務需要が価格を引っ張る時期である。今年は新型コロナウイルス感染症の第6波到来の懸念により、価格引き上げが困難となることが確実視されている。3年目のコロナ禍となるが当面価格が高くなる要素はなく、暴落の危機だけは確実に巡ってくるといった弱気な見通しをせざるを得ない。
 個別で見ると重量野菜は価格安による出荷減で低迷から脱出できないであろう。ピーマンは潤沢で、価格を下げる可能性がある。トマトは大幅な減少から価格を上げる可能性がある。きゅうりは、恵方巻需要についてはほぼ産地は期待していない。ばれいしょやかんしょは出回り不足から引き続き高い見込みである。

根菜類だいこんのイラスト

 だいこんは、神奈川産は生育順調で前進傾向である。12月の価格安から緊急出荷調整を行い抑え気味の出荷となった。年明けも圃場(ほじょう)には十分あって、秀品のみの出荷から優品の出荷も始まっている。引き続き2月までは潤沢に出荷できると予想している。千葉産の生育は順調で前進傾向となり出荷調整も行った。2月も例年通りの出荷となろうが、市場価格が上向けば、平年を上回る出荷となると予想される。静岡産は1月後半から始まり、2月20日前後がピークとなろう。前年は暖冬で数量が伸びた。今後厳冬となれば干ばつとなり、数量は抑えられるであろう。引き続き2Lサイズ中心で出荷されると予想される。徳島産は年末頃までは前進気味で豊作傾向となっている。当面2月いっぱいの計画であるが、下旬には量的に少なくなると予想している。
 
にんじんは、千葉産は年末年始は前年並の出荷となったが、1~2月はピークらしいピークはない出荷が続くと予想している。2月までは前年並の出荷で、3月に入り減ってくると予想している。鹿児島産の産地は南九州市頴娃えい町が中心で、1月に出荷が始まり2月がピークである。生育は順調で、品種は「向陽2号」など。出荷は名古屋から西の市場向けである。

葉茎菜類キャベツのイラスト

 キャベツは、神奈川産の生育は順調で、今後も出荷調整の可能性はあるが2月についても平年並に出荷できると予想している。2月末頃には「金系201」がわずかではあるが始まってきて、3月後半から本格化してくると予想される。千葉産の出荷は2月に入り1月よりも増えると予想される。価格によっては抑制の効いた出荷も予想されるが、生育そのものは順調で引き続き潤沢なペースと予想している。愛知産は12月中下旬は例年よりも過去に例がないほどの出荷となった。年明けも引き続き前倒し傾向で、2月まで平年を上回る出荷となることが予想される。基本的に豊作傾向が終盤まで続くと予想される。寒玉が70~80%である。
 はくさいは、茨城産が2月に入り現状よりも出荷は減ってくると予想される。現状は圃場には十分あるが、寒さで傷みが進んでいる。価格が低迷しており、農家は出荷を急がない様子である。
 ほうれんそうは、埼玉産の出荷が年末に増えたが計画通りであった。今のところ寒波の影響はない。2月の出荷についても1月と同様のペースで平年並の出荷と予想している。
 ねぎは、千葉産の現状は夏季の猛暑の影響が残り、欠株も一部見られる。それでも生育は順調であり、前年並の出荷となっている。2月も引き続き前年並の出荷となろうが、ピークはなく横ばいで推移すると予想される。特に11月の気候安定の影響もあり、太物が多くなっている。期間を通しての生産量は、前年を下回ると予想される。茨城産の現状の秋冬ねぎは生育順調で前年並の出荷となっているが、1月上旬の降雪の影響が残れば葉の損傷から下等級が増えると予想される。2月は前年並の出荷を予想している。
 レタスは、静岡産は寒さの影響で年末年始の出荷は平年を下回る出荷となった。1~2月は引き続き天候に影響されるが、2月いっぱいまで潤沢に出荷できると予想している。例年より寒さが厳しいと感じている。兵庫産の年末年始の出荷は12月初めの降雨の影響でやや少なめとなった。冷え込みは予想したほど厳しくなく、生育は順調で問題ない。2月の出荷は1月よりも増えてくるが、最大のピークはゴールデンウィーク時期である。大きさはLサイズ中心で例年並である。香川産は年明けがメインの出荷時期となるが、現状の生育は順調である。天候により遅れる可能性もあるが、ほぼ前年並に出荷できると予想している。茨城産はここ2年ほど価格が低迷しており、4月までのトンネル作の春レタスの作付はやや減っている。出荷は前年比微減で推移すると予想される。寒波からやや小ぶりの仕上がりも予想されるが、品質は良好である。
 

果菜類 きゅうりのイラスト

 きゅうりは、群馬産は1月20~25日に出揃ってきて、2月15~20日頃に生産者全員の出荷が揃うと予想される。日照時間は長いが、夜の冷え込みが厳しいため暖房費がかかっている。2月は前年並に出荷できると予想している。高知産は天候の安定で生育は順調である。長期作のため、当面一定のペースで出荷され、5~6月に最大のピークを迎えると予想される。2月は前年並の出荷と予想される。宮崎産は冬春きゅうりとなるが年内は豊作気味で順調な出荷となった。年明けは成り疲れの影響もあり、2月は前年を下回る出荷と予想される。作付は前年並である。
 なすは、高知産の出荷が12月中旬から年末にかけて増えた。年明けには落ち着いてきている。今後は実の太りが抑えられると予想しているが、何よりも加温が十分でなくなると予想している。2月下旬頃から日長もあって温かくなり、増えてくると予想している。福岡産の長なすは生育順調で多めの出荷となっており、年明けも多く出荷されると予想される。木の出来が良く、当面2月にピークが来ると予想している。晴れの日が多く、燃料費が高騰している折ではあるが、敢えて暖房の温度を高くして収量を確保する方針である。2月も前年を上回る出荷と予想している。
 トマトは、愛知産の年末年始の出荷は、寒波の影響もあり例年よりも少なめとなっている。花芽は順調についており、2月は平年並に出荷できると予想している。当面出荷は横ばいで推移し、Mサイズ中心と予想している。熊本産は年末から年始は例年並の出荷となったが、2月にかけては重油の高騰もあって出荷は前年を下回ると予想される。作付けの減少もあるが夜間の冷え込みが特に厳しく、着色が鈍り小玉に仕上がっていることもある。福岡産は抑制トマトの出荷となるが、ここ数年の価格安の影響でいちごやなすに品目転換され生産が減ってきている。現状の生育は順調で2月までは横ばいで推移し、4月下旬が最大のピークになると予想している。2月は作付けの減少もあり、多かった前年同月を下回る出荷と予想している。品種は「桃太郎系」でMサイズ中心の見込みである。中玉の「フルティカ」も出荷されるが、現状維持で2月は前年並であり、4月下旬から5月がピークと予想される。
 ピーマンは、宮崎産が年末から年始まで出荷が多かった。年明けは成り疲れも心配されるところである。2月は寒波もありやや落ち込んで少なめの出荷と予想される。ほぼ例年並と予想されるが、やや前年を下回る可能性もある。高知産の現状は晴れの日が多く多めの出荷となっている。成り疲れの懸念が残るが2月も平年並かやや多めの出荷が予想される。最大のピークは4月だが、しっかり加温して計画的出荷を達成できるようにしたいところである。
 
土物類ばれいしょのイラスト
 さといもは、埼玉産は農家で貯蔵した物をJAで選果して出荷する。昨年末と同様に前年を上回る出荷が2月も続く見込みである。サイズは2Lを中心に3L、Lとなっている。
 たまねぎは、北海道産の現状の産地在庫の推定量は前年の70%程度と予想している。最終の5月いっぱいまで計画的に出荷していくが、小玉傾向から2月については前年の60%台になると予想している。静岡産は年初の出荷は大幅に少なかったが、圃場で十分に大きくしてから出荷する方針である。ホワイト系品種は1月でほぼ終了し、2月は黄たまねぎのみであるが順調で、例年を上回る出荷と予想される。L・2Lサイズ中心と予想している。熊本産は葉つきの「サラタマちゃん」の出荷になろうが、2月初めから始まって中旬がピークの見込みである。作付はやや減少しているが、病気の発生はなく生育順調である。昨年は暖冬で肥大が良かったが、今年はやや抑えられてその分減少すると予想している。
 ばれいしょは、北海道産は3月末まで計画的に出荷していくが、例年が4月までであることから1カ月早めに切り上がることになる。産地在庫は前年の70%と予想しているが、生産量は前年の75%とやや不作であった。鹿児島産の春ばれいしょ(赤土)の出荷は2月中旬から本格的に増えて、3月上中旬が最大のピークである。現状は寒波の被害もなく生育順調で、「ニシユタカ」はこれからも肥大が期待できる。計画の5000トンは達成できるであろう。
 
その他れんこんのイラスト
 れんこんは、茨城産の2021年産は、5月と盆明けの低温により、例年と異なる異常気象が重なって不作となった。年内は例年の80%と少なく価格が高騰した。年明けは年内よりも少なくなるが、2月も75%程度と少ない見込みである。5月までさらに先細り、正常化するのは6月のハウス作になってからと予想される。
 たけのこは、熊本産は裏年であるが、福岡産や鹿児島産は表年で2月も多いと予想している。熊本産の出荷は12月から始まったが、前年比ではかなり少なかった。3月に入って本格化するが、切り上がりは早いと予想している。2月も前年より大幅に少ないと予想している。
 なばなは、福岡産の「博多な花」は前年の10月から出荷が始まっているが、農家の高齢化の影響で作付面積は前年の80%である。2~3月がピークで前年の70%の出荷と予想しているが、寒波でさらに少なくなっている。千葉産の出荷は1月より増えて2月にピークを迎えるが、100グラムの結束物中心で出荷されると予想される。1月6日の積雪の影響が心配されるが、現状では例年並に出荷できると予想している。
 豆野菜は、鹿児島産は寒さの影響で出始めは遅れ気味であった。日照は問題なく、生育そのものは順調で凍害については軽微である。スナップえんどうもそら豆も露地ものとなるが、スナップえんどうのピークは1~2月である。そら豆は1~2月には徐々に増えて、3月からピークとなる平年並の展開を予想している。
 かんしょは、千葉産は「べにはるか」が増えて「ベニアズマ」が減るなど品種構成が変わってきているが、総体の生産量は前年並である。2月に入り「べにはるか」中心になるが、貯蔵物のため選果されたものはLサイズの高品質物が中心になってくると予想している。「ベニアズマ」は形状が揃わず、農家の選果の手間がかかることも減る理由である。茨城産は2月は「べにまさり」中心になってくる。作付面積の増加もあり、生産量は前年を上回っている。Lサイズ中心、次いで2Lと、肥大は問題ない。徳島産は4月までの計画であるが、前倒し気味に出荷されている。現状の在庫量は前年並であり、2月は前年並の出荷となると予想している。

 (執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)


参考グラフ 指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

参考グラフ 指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)