ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年9月)
上旬は、北日本では、オホーツク海高気圧が張り出して晴れた日が多かったため、旬降水量は少なく、旬間日照時間は、北日本日本海側でかなり多く、北日本太平洋側で多かった。一方、東・西日本では、前線が停滞しやすく、曇りや雨の日が多くなり、旬降水量は多く、旬間日照時間は東日本太平洋側でかなり少なく、東日本日本海側と西日本で少なかった。気温は、北・東日本では、オホーツク海高気圧からの冷たい空気の影響を受けやすかったため低く、特に東日本では、寡照の影響もあってかなり低くなった。一方、沖縄・奄美では暖かい空気に覆われて晴れた日が多く、高かった。
中旬は、北日本と東日本日本海側では、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化したが、日本の北から高気圧が張り出して晴れた日が多く、旬間日照時間は北日本日本海側でかなり多く、北日本太平洋側で多かった。旬降水量は、北・東日本日本海側で少なかった。東日本太平洋側と西日本では、旬の中頃までは前線や17日から18日にかけて通過した台風第14号の影響で、曇りや雨の日が多くなり、西日本太平洋側を中心に大雨となった所もあったが、旬の終わりは高気圧に覆われて晴れた所が多かった。このため、旬降水量は西日本太平洋側で多く、旬間日照時間は、西日本太平洋側でかなり少なく、東日本太平洋側と西日本日本海側で少なかった。気温は、北日本では、北からの冷たい空気の影響を受けやすく低かった一方、沖縄・奄美では暖かい空気に覆われて高かった。
下旬は、北・東・西日本では、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化したが、移動性高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。22日から23日にかけては北日本を通過した低気圧の影響で雨が降った。26日頃は、上空の寒気や湿った東よりの風の影響で東日本を中心に雨が降り、大雨となった所があった。30日は、北日本を通過した低気圧や日本の南を北上した台風第16号の影響で、北日本と東日本太平洋側を中心に雨が降った。沖縄・奄美では、高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。このため、旬間日照時間は、沖縄・奄美でかなり多く、北日本日本海側と東・西日本で多かった。沖縄・奄美の旬間日照時間は、平年比151%で、9月下旬として1961年の統計開始以降1位タイの多照となった。また、旬降水量は、西日本太平洋側でかなり少なく、北・東日本太平洋側、西日本日本海側、沖縄・奄美で少なかった。気温は、北・東日本では、旬のはじめと終わりに南から暖かい空気が流れ込んだため高かった。西日本と沖縄・奄美では、暖かい空気に覆われやすく、かなり高かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
根菜類は、にんじんの価格が、不足感も解消され、安めに推移した前年をやや下回り、平年を2割以上下回った(図2)。
葉茎菜類は、レタスの価格が、9月上旬以降の低温、日照不足により生育が遅れ、業務用の低迷もあって大幅に安めに推移した前年の2.5倍近い価格となり、平年を6割以上上回った(図3)。
果菜類は、きゅうりの価格が、下旬の入荷量増と高値疲れから反落したものの、高めに推移した前年をやや上回り、平年を2割以上上回った(図4)。
土物類は、ばれいしょの価格が、絶対数不足から安めに推移した前年を6割以上上回り、平年を5割以上上回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2のとおり。
果菜類
きゅうりは、宮崎産は現在出始めの時期で、台風の被害もなく順調である。11月下旬から12月がピークとなる。11月は前年並の見込みであり、作付けも前年並である。埼玉産は8月の曇天の影響で、根の張りが悪い。現状は予想より出荷量は伸びておらず、病害虫の発生が多いことも影響している。10月11月も前年を下回るが、加温物も始まることや天候が回復すればかなり挽回できると予想している。
なすは、高知産の現状は生育順調で、出荷量も増えてきている。10月に入り1回目のピークが来て、11月はやや落ち着いた出荷と予想される。12月から1月に再びピークとなると予想される。台風の被害はなかったがやや遅れは見られる。作付けは前年並である。福岡産の長なすは冬春物となるが、一部で水害などもあって定植が遅れた。定植後は順調で、11月に1回目のピークが来ると予想される。生産者の人数は減っているが全体の作付けは前年並である。
トマトは、熊本産が10月1日から選果を開始し、ほぼ例年並みのスタートである。定植は順調に行われ、現状の着果についても問題ない。11月中旬に1回目のピークが来て、12月に再びピークが来ると予想している。品種は「かれん」が増えているが、引き続き桃太郎系が中心である。全体としては、大玉からミニトマトへの切り替えも見られる。愛知産の現状は小玉傾向で、障害果の発生も多い。10月初めから天候が安定すれば11月には平年並みに回復すると予想している。12月にピークとなると予想され、品種は例年と同様の桃太郎系である。栃木産は越冬トマトとなるが、現状は若干遅れており、出揃うのは11月上旬を予想している。作付けは若干減少している。品種は「かれん」が中心である。北海道産は10月11月は減りながら推移し、ほぼ例年どおり11月中旬で切り上がると予想される。気温が高ければ量的に伸びるが、早めに寒波が襲来すると少なめのまま終了すると予想される。
ピーマンは、茨城産は秋ピーマンが中心となろうが、定植時期の天候不順が影響しやや不作気味である。波崎地域は中旬から温室ピーマンも本格化してこよう。神栖地域は12月の植え替え時期を迎えるが、終盤の11月にはやや盛り返してくると予想している。高知産の生育はやや遅れが見られたが、生育は順調で平年並みで出荷は9月14日から始まった。当面のピークは11月初めから年明け頃までで、その後減って3月に再びピークがくることが予想される。作付けは前年並である。福島産は今年は例年よりやや早めの11月の初め頃に切り上がると予想される。今年度は面積も増えて数量が伸びたが、終盤は木の疲れもありペースダウンした。
土物類
さといもは、埼玉産の現状は始まりの時期である。現段階では平年作で、不作気味であった前年を上回る出荷を予想している。現在の出荷はL・Mサイズ中心であるが、11月12月はさらに肥大すると予想される。
たまねぎは、北海道産の収穫はほぼ終了したが、生産量は平年および前年と比べて少ない見込みである。Lサイズ中心であるが、ここ数年では小振りの仕上がりである。来年の5月まで計画販売していく。
ばれいしょ類は、長崎産のニシユタカは、11月下旬から12月をメインに年明けにも出荷されると予想される。作付けは前年並で、大雨などで若干の遅れはあるが被害はない。出荷は前年並を予想している。北海道産は現在は収穫が終わっているが、生産量は平年並みと予想している。年明け1月まで出荷していくが、ピークは10月から12月である。
その他
れんこんは、茨城産は台風16号により葉の損傷も見られ、出荷に多少の影響が出ることが予想されるが、生育遅れで少なめの出荷となった前年を上回るペースで11月も出荷はあると予想される。
ごぼうは、青森産は8月9月に好天が続いたことで、作業の始まりが1カ月以上早い。10月から12月の出回りは平年を上回って潤沢と予想される。その分年明けに出回りが薄くなる可能性がある。
ブロッコリーは、埼玉産は9月に入っても低温の日があるなど現状の生育は遅れているが、11月は平年並のペースに回復してこよう。昨年は暖冬により出荷が急増し価格が低迷したことから、今年は品種を選び、出荷時期の分散を模索している。11月は例年と同様にピークとなるが、前年ほど多くないと予想している。香川産は9月20日から始まったが、若干早めの展開になっている。定植作業も順調に終了し、出荷は11月にピークとなり12月まで続くと予想される。
かんしょは、千葉産は11月も「ベニアズマ」「シルクスイート」中心の見込みで、現在収穫作業が続いているが、平年作を予想している。石川産は「五郎島金時」となるが昨年は梅雨が長く続き、肥大不足から不作であった。今年は現状は順調で、豊作気味を予想している。10月初め頃に多く出て、その後収穫に注力して一旦減るが11月から徐々に増えてくると予想される。最大のピークは年明け1月下旬から2月と予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)