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需給動向 野菜情報 2021年10月号

1  東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年8月)

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野菜振興部・調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万7907トン、前年同月比99.3%、価格は1キログラム当たり242円、同78.6%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9219トン、前年同月比101.2%、価格は1キログラム当たり211円、同77.3%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、キャベツ(平年比72.0%)、ピーマン(同77.3%)、はくさい(同78.9%)、さといも(同85.1%)、だいこん(同88.6%)たまねぎ(同89.1%)、ねぎ(同89.9%)、レタス(同97.3%)、ほうれんそう(同97.7%)、トマト(同98.7%)、平年を上回ったものは、きゅうり(平年比100.1%)、なす(同102.8%)、にんじん(同111.8%)、ばれいしょ(同117.3%)となった。
⃝首都圏の需要を中心とした10月の見通しは、北海道産の干ばつによる不振や、盆前後の天候不順によって果菜類の出荷が鈍ったことなどが影響して出回り不足となっている。秋雨による天候不順などが続き徐々に供給の不安定要素になっている。小売業者からの情報によると野菜のダメージが早いことや重量不足などのクレームが多く届くようになっているとされる。9月から10月は供給不足の基調で推移し、また九州など西の産地の立ち上がりが遅れることも予想され、東京市場は価格高の展開で推移すると予想している。

(1)気象概況

 上旬は、北・東・西日本では、期間の中頃にかけて東から太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、期間のはじめは、対流活動が活発な日本の南や沖縄付近に熱帯低気圧が多い状態が続き、大雨となったところもあった。期間の終わりにかけては、台風や温帯低気圧の影響により、島根県では線状降水帯も発生し、北・東・西日本では日本海側を中心に各地で大雨、大荒れの天気となり、太平洋側にも突風による家屋などの被害があった。旬平均気温は、北日本でかなり高く、東日本で高かった。一方、沖縄・奄美で低かった。西日本では平年並だった。旬降水量は、北・東日本太平洋側と西日本日本海側でかなり多く、東日本日本海側と西日本太平洋側で多かった。北日本日本海側と沖縄・奄美では平年並だった。旬間日照時間は、沖縄・奄美でかなり少なかった。北・東・西日本では平年並だった。
 中旬は、北海道付近は、オホーツク海に中心を持つ高気圧が張り出して晴れたところもあった。東・西日本付近では前線が停滞し、太平洋高気圧の縁辺や中国大陸からの湿った空気も流れ込んで、雨の日が続いた。このため、東・西日本で旬間日照時間がかなり少なく、旬降水量はかなり多かった。断続的に非常に激しい雨や猛烈な雨が降った所もあり、西日本では線状降水帯も発生して特別警報が発表された府県もあり、各地で記録的な大雨となった。西日本日本海側、太平洋側の旬間日照時間はそれぞれ平年比23%、10%で、8月中旬として1961年の統計開始以来1位の寡照となり、東日本太平洋側、西日本日本海側、西日本太平洋側の旬降水量はそれぞれ平年比483%、768%、766%で、8月中旬として1946年の統計開始以来1位の多雨となった。旬平均気温は、北・東・西日本でかなり低く、沖縄・奄美で低かった。旬降水量は、東・西日本でかなり多く、北日本太平洋側で多かった。一方、北日本日本海側で少なかった。沖縄・奄美では平年並だった。旬間日照時間は、東・西日本でかなり少なかった。一方、北日本日本海側で多かった。北日本太平洋側と沖縄・奄美では平年並だった。
 下旬は、期間の前半は、中国華北付近の上空に気圧の谷が停滞した影響で日本海では前線を伴った低気圧が繰り返し通過し、北・東・西日本ではこの前線や湿った空気の影響で曇りや雨の日が多かった。期間の後半は、西日本太平洋側を中心に太平洋高気圧に覆われやすかった一方、日本海やサハリン付近を低気圧が繰り返し通過したため、本州付近は南から暖かい空気が流れ込みやすく、北日本付近や東・西日本日本海側は、低気圧や前線の影響を受けて曇りや雨の日があった。旬降水量は、前線でまとまった雨が降らなかった北日本日本海側と東日本、西日本太平洋側で少なかった。北日本太平洋側と西日本日本海側、沖縄・奄美では平年並だった。旬間日照時間は、太平洋高気圧に覆われた沖縄・奄美でかなり多かった。北・東・西日本では平年並だった旬平均気温は、北・東・西日本で高かった。沖縄・奄美では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

図1 気象概況

(2)東京都中央卸売市場

 8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、11万7907トン、前年同月比99.3%、価格は1キログラム当たり242円、同78.6%となった(表1)。

表1 東京都中央卸売市場の動向(8月速報)

 根菜類は、にんじんの価格が、不足感から堅調に推移し、大幅に高値推移した前年を1割以上下回ったものの、平年を1割以上上った(図2)。
 葉茎菜類は、キャベツの価格が、月間を通じてコロナ禍の家庭需要で大幅に高値推移した前年の半額以下となり、平年を3割近く下回った(図3)。
 果菜類は、ピーマンの価格が、数量減から下旬に高騰したものの、高めに推移した前年を3割以上下回り、平年を2割以上下回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が高めに推移した前年をわずかに下回ったものの、平年を2割近く上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

図2~図5 品目別の入荷量と卸売価格の推移


表2 品目別入荷量・価格の動向(東京都中央卸売市場)

 

(3)大阪市中央卸売市場

 8月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9219トン、前年同月比101.2%、価格は1キログラム当たり211円、同77.3%となった。(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

表3 大阪市中央卸売市場の動向(8月速報)

表4 品目別入荷量・価格の動向(大阪市中央卸売市場)

 

(4)首都圏の需要を中心とした10月の見通し

 外食産業の不振は深刻な状況にあるが、北海道産の干ばつによる不振や、盆前後の天候不順によって果菜類の出荷が鈍ったことがなどが影響して出回り不足となっている。小売業者からの情報では、野菜のダメージが早いこと、製品の重量不足などが散見されるとのことである。9月から10月は供給不足の基調で推移すると予想される。また九州など西の産地の立ち上がりが遅れることも予想され、東京市場は価格高の展開で推移すると予想される。

根菜類
だいこんのイラスト

 だいこんは、北海道産(道央のようてい)の現状は出荷量・品質ともに例年並に回復してきている。9~10月は計画通り出荷できるが、10月15・17日の選果で切り上がると予想される。青森産の作柄は回復して品質も例年並となってきており、2Lサイズ中心に10月いっぱいの出荷と予想される。千葉産の出荷は10月中旬から11月下旬までと予想される。初期の生育は降雨もあり順調である。作付けは若干減少すると予想している。
 にんじんは、北海道産(道東の美幌)は平年並の出荷状況となっている。出荷は10月いっぱいとなるがこの分は発芽率が悪く、量的には前年を下回ると予想している。肥大も問題なく、Lサイズ中心となる。同産(道央のようてい)は盆前の前半は小振りであったが現状は平年並のサイズになっている。本来の出荷のピークは9月末から10月であるが、10月に入ると発芽不良の影響から例年を10~20%程度下回ると予想している。

葉茎菜類
キャベツのイラスト

 キャベツは、群馬産の生育は順調で、引き続き8玉サイズ中心と予想されるが、9月後半には減少に転じると予想される。10月は少なめの出荷となった前年を上回ると予想される。千葉産は10月20日過ぎから例年通り出荷が始まる予定で、定植も順調に行われている。
 はくさいは、長野産の盆の長雨で数量は減っている。9月中旬には回復し10月にピークとなるが、例年並の出荷を予想している。同県産は標高900~1000メートル地帯での生産で、11月15~20日の間に切り上がると予想している。
 ほうれんそうは、岩手産は気温が下がってきたこともあり、出荷量は増え始めている。今後9月中旬まで増えて10月前半まである程度潤沢なペースが続くと予想される。農家の高齢化により10人程度が離農し、量的には前年の80~90%と予想している。群馬産は10月初めには雨除けから露地に切り替わる。播種は順調に行われており、前年並の出荷を予想している。
 ねぎは、青森産の生育は順調で、出荷のピークは9月中旬から11月初め頃まで。盆前の長雨で、収穫が遅れた。最初はLサイズ中心であるが、徐々に肥大してくると予想される。茨城産は盆の時期に一週間曇雨天が続いた影響で、軟腐が多発した。少なかった前年並の出荷が今後も続くと予想している。千葉産は夏ねぎが終わり、10月に入ると秋冬ねぎとなる。一部8月の降雨の影響で病気が見られるが、10月は微減と予想している。
 レタスは、茨城産が10月に入り出荷のピークを迎えると予想され、順調に潤沢なペースが続く見込みである。全量露地のマルチで施設ものはない。群馬産は生育順調で9月中旬から増え始め、10月上旬までピークが続くと予想される。10月は前年並および平年並を予想している。長野産は8月中旬に降雨が続いて播種ができず、その後に播種が集中した影響で、9月下旬から10月上旬の出荷がやや多くなると予想される。切り上がりは10月下旬か11月上旬になると思われるが、10月としては前年並の出荷を予想している。

果菜類
きゅうりのイラスト

 きゅうりは、埼玉産の抑制もの(無加温と加温)は10月出荷がピークであるが、盆の時期の長雨の影響で一週間程度の遅れがみられる。農家数の減少もあるが、10月としては前年並を予想している。群馬産は盆の時期の天候不順と9月に入っての低温の影響で、増量ペースが例年より鈍っている。例年は9月10日前後から増えてくるが、やや後にずれ、天候の回復によって10月は潤沢ペースが続くと予想される。
 なすは、栃木産のピークは過ぎ、10月後半から11月上旬に徐々に切り上がると予想される。今年産は7月、8月と降雨が多く、作柄は良くなかった。今後天候によって再び出荷が増えることも予想されるが、木の状況から平年を下回ることも予想される。高知産は8月の天候不順で着花が遅れたが、8月末頃に着花したものが出揃うのが9月下旬となろう。10月には若干遅れがあるが、1回目のピークが来ると予想される。作付けは前年並であるが、その後の出荷のピークは天候によって変わると予想される。
 トマトは、愛知産は例年どおり9月20日から出荷が始まる見込みである。盆の時期に一週間続いた曇雨天の影響で、木の状態は良くない。9~10月の出荷は、長梅雨で生育が乱れた前年並みに少なく、平年を下回ると予想している。茨城産は盆の天候不順の影響で小振りの仕上がりとなっている。9月に入り回復傾向となり10月は平年並の出荷を予想している。北海道産は朝晩の冷え込みが強まり、減ってきている。9~10月は今後の天候次第であるが、平年並の出荷を予想している。
 ピーマンは、茨城産は主力の秋ピーマンが平年並の出荷であるが、8月は前年より少なかった。現状膨らみは順調であり、9~10月の出荷は伸びて前年を上回ると予想している。また10月中旬から温室物も例年どおり始まると予想される。岩手産はハウス物が中心になるが、露地は10月も一部残ると予想される。現状は2回目のピークを迎えているが、その後は減りながら推移し、トータルでは110%程度の出荷に落ち着くと予想される。福島産は9月に入り早くも低温となって収穫のタイミングが遅れ、さらに規格外も増えると予想される。10月まで前年を下回る出荷と予想される。

土物類
ばれいしょのイラスト

 さといもは、埼玉産が9月2日から出荷が始まったが、やや早めである。品種は「土垂」で、10月中旬には量的にまとまってくると予想している。作付けは前年並で「蓮葉系」も10月には始まると予想される。静岡産の石川小芋は9月に入って出荷のピークだが、11月までゆっくりしたペースで長く出荷されると予想される。9月に長雨となれば病気の心配もあるが、今のところは順調である。愛媛産の「女早生」は8月の多雨で一部疫病も見られたが、おおむね生育順調である。9月10日頃から出荷が始まるが、年内中心に年明け4月までの出荷となると予想される。
 たまねぎは、北海道産(道北のJAきたみらい)は8月末の段階で収穫の30~40%が終わったところである。干ばつの影響で肥大不足となり、平年を下回るとみられている。Lサイズ中心であるが、ここ数年では小ぶりである。10月の出荷は前年比では微減ペースで、品質は良好である。同産(道央の岩見沢)の現状は平年作にやや届かないと予想され、全道同様、小玉傾向であることが影響している。出荷は10~11月をピークに年明け4月までと予想される。Lサイズ中心であるが、例年よりMサイズが多いと予想される。
 ばれいしょ類は、北海道産(道央のようてい)は収穫作業が続き、干ばつの影響が残り、かなり小振りとなっている。玉数は変わらないが、過去最低の収量も予想される。本来10~11月がピークの出荷であるが、細く長く出荷していく方針である。同産(道東の芽室)の「メークイン」は出荷が始まっているが、当初心配したほどの収量減はなく、平年並かやや下回る程度と予想される。出荷のピークは10~11月で、サイズはやや小ぶりでLサイズと特Mサイズが中心となろう。

その他
さつまいものイラスト

 かんしょは、茨城産は10月は「ベニユウカ」(紅はるか)中心となるが、平年作と予想している。ピークは12月~翌2月となると予想される。千葉産は本年産は豊作傾向と予想している。10月は「べにあずま」を中心に「シルクスイート」が出回り、Lサイズを中心に前年並の出荷と予想している。徳島産は本年産は平年作と予想している。10月は他品目(だいこん)の作業で一旦出荷が落ち着いて、11~12月に最大のピークとなることが予想される。
 ブロッコリーは、埼玉産が例年通り10月上旬から始まり、定植も例年通り行われたが、農家数が若干減り、量的には前年の95%程度と予想している。当面のピークは10月下旬から11月上旬と予想される。北海道産(道東の女満別)の干ばつによる品質のばらつきは、8月に入っての降雨で8月いっぱいで回復してきた。定植後の枯れた苗は植え替えをしておらず、今後の出荷は10~20%程度少なくなると予想している。10月いっぱいの出荷で切り上がる見込みである。長野産は9月に入り気温が下がって生育は鈍っている。10月に入り増えてきて10月下旬をピークに11月までの出荷となると予想される。定植は終了しており、平年並の出荷を予想している。愛知産は10月中旬から徐々に始まってくるが、例年とほぼ同様のペースである。11月に入って量的にまとまり、12月に倍増し、最大のピークは年明け2~3月である。
 かぼちゃは、北海道産の出荷は9月中旬から。8月に入り寒暖差が大きくなり、味は乗ってきている。出荷は12月中旬まで続くが、個人での出荷がある10月中下旬が多く出荷されると予想される。定植が順調に行われて生育順調である。中心品種は「くりゆたか」である。
 にんにくは、青森産の収穫は平年並で、冷蔵庫に貯蔵した物は10月10日以降の販売となると予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)


指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)


指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)