野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年6月)

需給動向 野菜情報 2021年8月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年6月)

印刷ページ
野菜振興部 調査情報部

【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は11万6676トン、前年同月比93.1%、価格は1キログラム当たり261円、同98.7%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6622トン、前年同月比96.1%、価格は1キログラム当たり229円、同95.8%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、ほうれんそう(平年比89.6%)、ねぎ(同91.4%)、にんじん(同93.0%)、きゅうり(同98.6%)、平年を上回ったものは、ピーマン(平年比131.7%)、レタス(同115.7%)、たまねぎ(同111.3%)、ばれいしょ(同110.6%)、だいこん(平年比110.5%)、さといも(同110.3%)、トマト(同107.3%)、はくさい(同104.9%)、キャベツ(同102.9%)、なす(同100.8%)となった。
⃝首都圏の需要を中心とした8月の見通しは、例年盆前後や月末頃に物が少なくて高いといった展開は想定し得るが、7月の気象に影響を受けるところであり、現状までは各産地とも順調で、極端な自然災害が東北・北海道を襲わなければ、天候不順で少なかった昨年を上回る出荷と予想される。

(1)気象概況

 上旬は、本州付近は高気圧に覆われやすく晴れた日が多かったため、旬間日照時間は、北日本でかなり多く、東・西日本で多かった。北日本太平洋側の旬間日照時間平年比は156%で、1961年の統計開始以降で6月上旬として1位の多照だった。一方、3日から4日に前線を伴った低気圧が通過したため、全国的にまとまった雨が降り、北日本を中心に大荒れの天気となった。このため、北日本と東・西日本日本海側の旬降水量は多かった。期間の終わりは、北・東・西日本では暖かい空気に覆われやすく、晴れて強い日射の影響を受け、9日には猛暑日となった所もあった。旬平均気温は、北・西日本ではかなり高く、東日本と沖縄・奄美で高かった。旬降水量は、北日本、東・西日本日本海側、沖縄・奄美では多く、東・西日本太平洋側で平年並だった。旬間日照時間は、北日本ではかなり多く、東・西日本で多かった。沖縄・奄美では平年並だった。
 中旬は、北日本では期間のはじめを中心に、高気圧に覆われやすく晴れた日が多かったため、北日本日本海側の旬降水量は少なく、旬間日照時間は多かった。気圧の谷の影響を受けやすかった東日本日本海側や、九州付近から日本の南海上に停滞した梅雨前線の影響を受けやすかった西日本の旬間日照時間は少なかったが、湿った空気が流れ込みにくかった沖縄・奄美の旬降水量は少なかった。関東甲信地方では14日ごろ、北陸地方は18日ごろ、東北南部と東北北部は19日ごろに梅雨入りしたとみられる(速報値)。旬平均気温は、全国的に高かった。旬降水量は、北日本日本海側と沖縄・奄美では少なく、北日本太平洋側と東・西日本で平年並だった。旬間日照時間は、北日本日本海側では多かった。一方、東日本日本海側と西日本では少なかった。北・東日本太平洋側と沖縄・奄美で平年並だった。
 下旬は、沖縄・奄美の旬降水量平年比は650%で1946年の統計開始以降、旬間日照時間平年比は33%で1961年の統計開始以降、それぞれ6月下旬として1位の多雨と寡照となった。一方、北・東・西日本では、梅雨前線の影響を受けにくく、高気圧に覆われて晴れる日があった。このため、北日本太平洋側、東日本日本海側、西日本の旬降水量はかなり少なく、西日本日本海側の旬間日照時間はかなり多かった。旬平均気温は、沖縄・奄美でかなり低く、北日本で高かった。東・西日本では平年並だった。旬降水量は、沖縄・奄美でかなり多く、北日本太平洋側、東日本日本海側、西日本でかなり少なく、北日本日本海側と東日本太平洋側で少なかった。旬間日照時間は、西日本日本海側でかなり多く、北日本、東日本日本海側、西日本太平洋側で多かった。一方、沖縄・奄美でかなり少なかった。東日本太平洋側では平年並だった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

図1

(2)東京都中央卸売市場

 6月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、11万6676トン、前年同月比93.1%、価格は1キログラム当たり261円、同98.7%となった(表1)。

表1

 根菜類は、にんじんの価格が、千葉産の増量から各産地潤沢な出回りとなり、高めに推移した前年を3割近く下回り、平年を下回った(図2)。
 葉茎菜類は、レタスの価格が、中旬以降入荷量増に伴い苦戦し、大幅に価格を下げたものの、安かった前年を3割近く上回り、平年を1割以上上回った(図3)。
 果菜類は、トマトが気温の上昇により需要は回復、業務用需要低迷で引き続き厳しい展開ではあるが、やや安めに推移した前年を1割ほど上回り、平年を上回った(図4)。
 土物類は、ばれいしょの価格が高値反動と気温による需要減退のため、大幅に高かった前年を4割近く下回ったものの、平年を1割ほど上回った(図5)。
 なお、品目別の詳細については表2のとおり。

図2-5
 
表2
表2-2

(3)大阪市中央卸売市場

 6月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6622トン、前年同月比96.1%、価格は1キログラム当たり229円、同95.8%となった(表3)。
 品目別の詳細については表4の通り。

表3

表4

(4)首都圏の需要を中心とした8月の見通し

 6月は全国的に梅雨入りが早まる中でレタスや果菜類の価格がしっかりし、価格は平年並かやや高い水準であった。7月以降は東北や北海道産さらに高原産地が中心になると予想されるが、各地とも潤沢な出回りが予想される。そのため、価格が高騰する場面は想定されないところである。
 8月の気象について、長期予報では気温は高めと予想されている。消費地での歩留まりも心配され、各小売店は仕入れに慎重にならざるを得ないであろう。東北産の露地のピーマン、きゅうり、なすは充実の仕上がりが予想される。
8月は例年、盆前後や月末頃に物が少なくて高いといった展開は想定し得るが、7月の気象の影響を受けるところであり、現状までは各産地とも順調で、極端な自然災害が東北、北海道を襲わなければ、天候不順で少なかった昨年を上回る出荷と予想される。
 
根菜類だいこん
 だいこんは、北海道産(道東の標茶(しべちゃ))の播種(はしゅ)作業は順調に行われており、例年通りの進捗状況であれば最大のピークは盆前頃と予想される。出荷は6月末から始まったが、7月20日頃に揃うと予想され、作付けは昨年の83%前後と減っているが、後継者不足で離農する人もいるためである。同産(道央のようてい)からの出荷は、ひげ根の発生は少なく、高品質の仕上がりである。7月中下旬に一旦ピークが来て、8月はやや落ち着いた展開となろう。9月上中旬に再びピークが来る、ほぼ例年通りの出荷パターンと予想される。青森産は干ばつの時期もあったが、大きな問題もなく順調である。Lサイズ中心に前年並みの出荷が予想される。
 にんじんは、北海道産(道東の斜里)が7月20日過ぎから始まり、8~9月がピークと予想している。最終は10月いっぱいであるが、歩留まりのよい前半出荷物のウエイトが増してきている。作付けは前年並である。同産(道央のようてい)は、盆前から始まり9~10月がピークの出荷となると予想される。作付けは前年並みである。
 
葉茎菜類キャベツ
 キャベツは、群馬産の現状は例年と同様の進捗状況にある。今年は気温の低い時期もあったが問題なく乗り切り、8玉サイズを中心に9月のピークに向けて増えながら推移するであろう。8月は前年を上回る出荷が期待できる。岩手産が6月下旬から出荷が始まったが、7月10日頃から10月末までピークが続くと予想される。今年は実習生が入らず、10~20ヘクタールほど面積減となっている。自然災害はなく順調で、前年並の出荷が予想される。
 はくさいは、長野産の生育は順調で8月も前年を上回るペースでの出荷が予想される。現状は大玉基調であるが、7月に入ってからの雨の影響を受けて肥大は若干抑えられることも予想される。
 ほうれんそうは、岐阜産は6月前半が空梅雨気味で日照もあったことから、現状は例年を上回る出荷となっている。8月の高温の時期は現状の70~80%に出荷量が減少し、9月下旬に再び増えてくると予想している。8月の出荷量は今後の天候によるが、生育は順調で平年並みかやや多めの出荷と予想される。群馬産は雨よけものとなるが、生育は順調である。盆明け頃には高温の影響を受け減ってくると予想される。播種は順調で、ほぼ例年並みの出荷が予想される。
 ねぎは、北海道産の現状の生育は順調で、7月下旬から8月にかけて増え、ピークは9~10月となると予想される。作付けは前年並である。青森産は盆明けから9月2日にかけてピークの出荷となろうが、稲刈りで一旦減ることも予想される。作付けは前年並である。品種は「夏扇パワー」で、切り上がり時期は積雪がからむ11月いっぱい頃と予想している。
 レタスは、長野産の現状は生育順調で大玉傾向となっており、さらに歩留まりが良好で箱数も増えている。7月下旬から8月は高温の影響でやや少なくなる見込み。それでも少なかった前年を上回ると予想される。群馬産は生育順調で7月後半から8月盆前までピークが続くと予想される。盆明けには作業の遅れが影響して量的には少なくなると予想している。
 
果菜類きゅうり
 きゅうりは、宮城産の春きゅうりは7月20日頃切り上がり、夏秋の露地ものとハウスものとなるが、量的には半々である。各作型ともに作付けは前年を若干上回っている。生育は順調で平年並みの天候であれば、少なかった前年を上回ると予想している。秋田産のハウスものは7月いっぱいで終了し、8月は露地もののみとなる。7月に入り露地も始まってきたが、盆前にピークが来ると予想している。現状は生育順調で、作付けは前年並みである。
 トマトは、青森産の出荷は例年よりやや早く6月10日から始まった。作付けは前年の90%と減っている。当面のピークは7月15日頃から8月盆前まで。品種は前年と同様で「桃太郎セレクト」が中心となっている。茨城産は、抑制ものの大玉が8月に入って盆明け頃から始まると予想している。作付けは前年並でピークは9月に入ってからと予想される。岐阜産は生育順調で、ピークは7月下旬から8月下旬となる見込み。品種は「麗月」で、作付けはやや前年を上回っている。福島産の当面のピークは8月の盆前後と予想される。面積は昨年を下回っているが、豪雪によるハウスの損壊の修復が遅れた影響である。中心品種は桃太郎系である。群馬産は低温気味と降雨の影響で若干病気も散見されるが、ピークは7月下旬から8月中旬と予想される。量的には平年並みと予想される。品種は「りんか」のみである。
 ピーマンは、岩手産の生育は順調で、露地ものは7月26日頃から盆前後にピークとなると予想される。作付面積の増加もあり、8月は前年を上回ると予想される。福島産は、ハウスもの、トンネルもの、露地ものと3タイプが揃う8月がピークとなるが、いずれも生育順調である。特に上中旬が多くなると予想している。今年は降雨も続くが適宜晴れており天候に恵まれている。そのため前年を上回る出荷が予想される。
 
土物類ばれいしょ
 たまねぎは、兵庫産は8月は貯蔵ものの販売となる。出荷量は前年並みで、肥大も良好で前年と同程度である。病気もなく、歩留まりが良好で安心して仕入れることができる。佐賀産は貯蔵ものの出荷となるが、量的には平年を上回ると予想している。肥大も良好でLサイズ中心の見込みである。北海道産は例年通りであれば8月上旬から始まるが、今年の出荷開始時期は未定である。現状は生育順調で、大きな気象災害もない。作付けも前年並みである。
 ばれいしょ類は、北海道産の「メークイン」は昨年と同様に8月下旬から始まると予想している。作付けは種芋の確保が難しく、前年の90%程度となっている。自然災害がなく、生育は順調である。同産道央の「男爵」は8月第一週から収穫が始まり、盆明けから選果を開始し、市場出荷は8月20日前後からと予想される。出荷のピークは9~10月で、ほぼ例年と同様のペースである。天候は悪くなくL中心の仕上がりが予想され、平年作を予想している。同産道央の「きたあかり」は早いものは7月末から収穫が始まる。気象が平年並みだったため、生育は順調で現時点では平年作を予想している。
 
その他アスパラガス
 アスパラガスは、佐賀産は立茎ものの出荷となるが、7月に入りピークとなっている。昨年は7月の豪雨で中旬から出荷が大幅にダウンした。今年は8月に入っても問題なく出ると予想される。株が充実していることもあるが、夏芽は肥大も味も良好である。引き続き10月いっぱいの出荷となろう。
 かぼちゃは、北海道産の露地ものは8月末か9月初めごろから始まり、ピークは10月中下旬と予想される。初期の干ばつの影響で定植が遅れたが、生育そのものは順調である。作付けは微減となっており、「くり将軍」「くりゆたか」が中心品種である。ハウスものは盆前の8月10日過ぎから始まるが、品種は「味平」で量的には少なく前年並である。
 とうもろこしは、北海道産の出荷は8月上旬から始まるが、5~10日に急増し、盆前後が最大のピークとなると予想される。作付けは昨年並で、出荷は9月第一週まで。品種は「ゴールドラッシュ」中心に「サニーショコラ」などである。千葉産の出荷はややペースを早めており、ピークは7月15日~20日に来て、8月に減りながら推移し盆前に切りあがる見込みである。今年の作は自然災害の影響がなく、さらに6月の好天もあって順調である。群馬産は例年通り7月25日頃から2週間ピークが続き、盆前にはピークが終わる。獣害が多く、作付けは全般に減っている。
 えだまめは、山形産が7月末から始まるが、ほぼ例年と同じペースである。生育順調で8月20日前頃から9月中旬までがピークと予想される。面積は前年の90%と減少しているが、休作中や他品目への切り替えがあるため。
 さやいんげんは、福島産は8月は「ひらさやいんげん」と「どじょういんげん」の二つのタイプの2番成りの出荷となる見込み。引き続き需要が高まる時期であり、農家の肥培管理で例年以上の出荷を期待したい。
 メロンは、茨城産のアールスメロンが7月1日から始まるが、盆前までピークとなろう。その後一旦落ち着いた出荷となり、9月10月に再びピークが来ると予想している。作付けは前年並である。らいでんクラウンメロンは北海道産が7月中旬から始まるが8月中旬から末頃までがピークと見込まれる。作付面積は前年比微増である。そのほか赤肉系は全体として面積は減少しているが、「ルピアレッド」は現状始まっており8月中旬まで。「ティアラ」は7月10日~8月中旬、「レッド01」は8月下旬から9月中旬まで。「レッド113」は9月に入ってから11月まで。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)


東京

大阪