ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年4月)
●東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は12万8101トン、前年同月比102.8%、価格は1キログラム当たり235円、同91.4%となった。
●大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1600トン、前年同月比109.1%、価格は1キログラム当たり213円、同93.0%となった。
●東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、はくさい(平年比45.5%)、キャベツ(同67.2%)、レタス(同69.3%)、たまねぎ(同71.9%)、だいこん(同72.3%)、ほうれんそう(同88.6%)、トマト(同92.7%)、にんじん(同99.6%)、平年を上回ったものは、ばれいしょ(平年比170.1%)、ねぎ(同146.0%)、さといも(同119.7%)、ピーマン(同108.1%)、きゅうり(同106.0%)、なす(同100.6%)となった。
●首都圏の需要を中心とした6月の見通しは、南から北への産地リレーはスムーズであると予想され、価格についても末端の動きは良く、平年並の展開と予想される。
上旬は、前半は高気圧に覆われたことと南西からの暖気の影響で全国的に気温が高く、西日本で夏日となったところもあった。後半は全国的に高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。旬間日照時間は全国的に多く、特に東日本日本海側の平年比は144%で、1961年の統計開始以来、4月上旬として1位の多照となった。旬平均気温は、全国的に高く、西日本ではかなり高かった。旬降水量は、北・東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美で少なかった。旬間日照時間は、北日本と東・西日本日本海側ではかなり多く、東・西日本太平洋側と沖縄・奄美で多かった。
中旬は、低気圧と高気圧が本州付近を交互に通過し、天気は数日の周期で変わった。前半と後半に、前線を伴った低気圧が発達しながら日本海からオホーツク海へ進み、北・東・西日本では雨が降った日があった。旬降水量は北日本でかなり多く、特に北日本日本海側の平年比は227%で、1961年の統計開始以来、4月中旬として1位の多雨となった。旬平均気温は、北日本で高く、東・西日本と沖縄・奄美で平年並だった。旬降水量は、北日本でかなり多く、東日本では多かった。一方、沖縄・奄美ではかなり少なかった。西日本では平年並だった。旬間日照時間は、東日本太平洋側、西日本日本海側、沖縄・奄美で多く、北日本、東日本日本海側、西日本太平洋側で平年並だった。
下旬は、北・東・西日本では高気圧に覆われて晴れる日が多かった。前半は、日本海から南海上にかけて張り出した高気圧から暖気が流れ込み、西日本を中心に高温となり、真夏日となったところもあった。25日から27日にかけては、北から寒気が流れ込んだ影響で、北・東・西日本では広い範囲で気温が低くなった。28日から30日にかけては、低気圧が発達しながら本州付近を北東に進み、広い範囲で雨となった。旬平均気温は、西日本で高かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
4月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、12万8101トン、前年同月比102.8%、価格は1キログラム当たり235円、同91.4%となった(表1)。
根菜類は、だいこんが気温の上昇で需要減退から数量が落ち着き価格は前年、平年とも大幅に下回った(図2)。
葉茎菜類は、潤沢な入荷となり、キャベツの価格が、家庭需要特需に支えられて高かった前年の半額以下となり、平年を3割以上下回った(図3)。
果菜類は、トマトが気温の上昇により需要はやや回復するも関東産の増加と業務需要低迷で引き続き厳しい販売となった(図4)。
土物類は、ばれいしょの絶対数不足で月間を通して価格が高騰した(図5)。
なお、品目別の詳細については表2のとおり。
4月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1600トン、前年同月比109.1%、価格は1キログラム当たり213円、同93.0%となった。(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
3月以降晴れの日が多く続いたが、4月と5月に入り寒暖の差が激しかった。これは関東から北の産地に厳しく、西南暖地の果菜類にプラスになったと推測している。東京市場は北の産地が遅れても、地場物や西南暖地産は切り上がりが早まることなく、価格の高騰はないであろう。高原産地のレタスなど、ゴールデンウィーク前後の低温の影響を心配する声も聞かれた。それでも今後は回復も早いとされ、南から北の産地へのリレーはスムーズであると予想している。価格についても末端の動きは良く、平年並の展開と予想される。
根菜類
だいこんは、青森産は6月末からトンネル物となって東京市場へ出荷始まる。生育のペースは平年並の状況にある。作付けはトンネル栽培ものが減ったがべた掛け栽培ものが増え、全体としては前年並である。ピークは関東産の切り上がりに合わせての6月以降となる見込み。北海道産は昨年並みの7月2日から撰果開始を予想している。適度な降雨もあり、播種作業も順調である。
にんじんは、千葉産の現状はほぼ平年並の生育状況であるが、出荷のピークは5月後半から6月となる見込み。主力品種は「彩誉」で、6月いっぱいの出荷と予想される。肥大は順調でMサイズ中心の出荷となる見込み。青森産は、例年どおりなら6月25日収穫開始で、市場販売は6月末頃からである。今年はやや早まる傾向にある。作付けも前年の105%程度と増えている。
葉茎菜類
キャベツは、茨城産の出始めで、生育順調で前倒し気味である。ピークは5月下旬から6月いっぱいで、7月上旬に切り上がる見込み。作付け、出荷量ともに前年並が予想される。千葉産の出荷は例年どおり7月上中旬までであり、現状の生育は順調である。一時、干ばつから生育が停滞したが、全体では2週間程度前進している。その影響で5月中下旬にやや品薄となり、6月は例年並の出荷となる予想している。群馬産は例年と同じ6月上旬からのスタートであるが、特別低温の影響はなく、適度の降雨があって順調である。前年は6月~7月の長雨の影響で小玉傾向であったが、平年並の天候であれば前年を上回る出荷が予想される。
はくさいは、長野産の夏はくさいが5月20日頃から始まり6月いっぱいがピークとなる。7月に入って減り9月まではキャベツがメインとなるが、10月に再びはくさいがメインになってこよう。例年初夏の時期に干ばつに見舞われるが、今年は適度の降雨により順調で、作付けは前年並である。
ほうれんそうは、群馬産は現在露地ものとなっているが、6月20日頃から雨よけものに切り換わる見込み。生育や作業は順調に進んでおり、例年どおりの出荷と予想される。作付けは前年並である。岩手産は暖かくなってスリップス(害虫)などの発生も散見されるところである。年間で6月は最も多くなる時期であるが、作付けの減少もあってやや前年を割り込むことも予想される。生育は問題なく順調である。岐阜産は現在本格出荷となっているが、当面のピークは5月下旬から6月上旬となる。その後、盛夏期はやや減って9月下旬から再び増えてくる見込み。作付けは微減となっているが、出荷量に影響はない。
ねぎは、茨城産が5月に入ってピークとなっているが、6月いっぱいは潤沢に出荷される見込み。量的には前年比微増で、7月上旬には例年より1週間早めに切りあがる見込み。千葉産の夏ねぎの出荷は始まっており、6月中旬をピークに7月いっぱいの出荷となる見込み。例年とほぼ同様の動向と予想される。
レタスは、長野産が5月に入りマイナスの気温を記録するなど、若干の干ばつもあり遅れる心配はある。出荷開始は6月に入ってからとなり、作業は順調に終了し、5月の遅れは回復可能である。
また、長野以外の産地でも一部苗が霜害を受けたが、出荷に影響はなく生育順調である。6月は1週間程度出荷が早まると予想している。作付けは前年並である。群馬産は4月下旬から5月初め頃まで低温となり、生育が停滞した。その影響が5月中旬や6月初めに端境となることも懸念される。その後は回復して通常ペースに戻り、引き続き7月も潤沢に入荷すると見込まれる。
果菜類
きゅうりは、宮城産の主力の促成物は5月上中旬に1回目のピークが来て、6月上中旬に2回目のピークが来ると予想している。6月下旬には雨除けハウス栽培の夏秋物も始まるがいずれも生育順調である。埼玉産は現状順調でピークとなっているが、6月上旬まで続くと予想している。切り上がりは、例年どおり7月初め頃を予想している。福島産は5月定植の露地栽培ものは6月に入ってから出荷が始まる。雨除け物はゴールデンウィーク明けから本格的に始まり、これに長期採りの三つ作型での出荷となるが、ほぼ例年どおりで順調である。当面のピークは7月、8月で、9月も引き続き多いと予想している。6月については前年並の見込みである。
トマトは、北海道産の現状は寒波の影響はなく順調で、平年並のペースと予想される。6月に入り1回目のピークが来ると予想している。熊本産の冬春トマトは豊作基調で推移し、昨年実績の110%を超えている。出荷は例年どおり6月20日までとなる。朝晩の冷え込みで木に疲れがなく、最後まで充実した物が前年を上回るペースで出荷される見込み。栃木産も5月下旬から6月が最大のピークとなるが、4月に曇天が続いたこともあり病気も増えている。それでも少なめの出荷となった昨年を上回ると予想している。寒暖の差が大きく、果実は充実している。山形産は例年並に5月末から出荷が始まり、7月いっぱいまでの出荷となる見込み。6月は増えながら推移しピークとなろう。作付けは減少傾向にある。
ミニトマトは、北海道産の出始めは6月20日頃からのほぼ例年同様と見込まれる。作付けは前年並で品種は「アイコ」と「モテモテ」シリーズとなる。
ピーマンは、高知産が4月に入り朝晩が冷え込んだ影響もあり、少なめの出荷となっている。今後5月の気温が上昇傾向であれば増えて年間を通して6月までがピークとなる見込み。最終出荷は7月10日~15日の例年並を予想している。茨城産は年間を通して6月が最大のピークとなろう。生育順調で、前年並の出荷と予想している。岩手産はハウス栽培ものは始まっているが、関東市場へは5月末頃からとなる。ピークは露地栽培ものも始まる7月に入ってからで、作付面積はハウス、露地ともに増えており、6月の出荷は前年を上回ると予想している。ハウスものの品種は「京鈴」、露地ものは「京ひかり」である。
土物類
たまねぎは、佐賀産は6月としては前年を若干下回ると予想している。兵庫産は現状は早生の出荷のピークを迎えているが、5月下旬はやや減り気味に推移している。6月上旬に中生品種の収穫のピークとなり、中旬から出荷はやや落ち着く見込み。生産量は平年をやや上回る程度と予想している。高品質ものの出荷が7月、8月と続く見込み。
ばれいしょ類は、長崎産は5月10日以降に本格化して、6月も多く出荷できると予想している。Lサイズ中心で出荷できる見込みである。不作ではなく後ろ倒し出荷しており、トータルでは平年と同じ程度となろう。静岡産「男爵」は例年と同様に5月10日以降本格的となろう。試し掘りでは平年並かやや良いとの結果で、大きさもLサイズ中心と予想される。ピークは5月下旬から6月初め頃と予想している。切り上がりは7月いっぱいの見込み。千葉産は5月下旬から本格出荷となるが、ピークは5月末から6月上旬で、出荷は6月いっぱいの見込み。
その他
アスパラガスは、新潟産は今シーズンは面積の減少もあり、やや少なめの年になると予想している。当面のピークは5月20日頃と、6月10日頃に2回目が来ると予想しているが、特別多くなく平均的に出荷されるであろう。北海道産の出荷は5月中旬から始まるが、外気温夜温ともに低く現状遅れている。ピークは5月20日~25日で、6月に入り減りながら推移する見込み。
ブロッコリーは、青森産は低温の時期もあったが、現状の生育は順調である。出荷は6月初めからで、6月15日前後をピークに7月10日頃までとなる。作付けは前年並である。北海道産は例年と同様に6月に入ってからの出荷となるが、今のとこと寒波の影響もなく順調である。現状の生育はやや前進気味であるが、5月後半の天候がそれ程良くないと予想されることから例年並に落ち着くと見込まれる。作付けは前年並である。
かぼちゃは、神奈川産は天候によって変化はあるが、例年と同じであれば6月初めからの出荷となる。全てトンネル栽培もので、6月中旬から7月中旬までピークとなるが、こだわり品は7月上旬までとなる。「みやこかぼちゃ」の作付けは前年並である。鹿児島産の現状はハウス栽培ものだが、5月下旬にトンネル栽培ものに切り換わり、6月上旬ピークに7月中旬までとなる。露地栽培の夏かぼちゃは7月中旬から始まる見込み。品種は「えびす」と「栗五郎」である。茨城産の「江戸崎南瓜」は5月20日からハウス栽培ものが前年より若干早く始まる見込みである。ピークはトンネルものが中心で6月中旬から6月いっぱいの見込み。「栗将軍」が中心となるが、作付けは前年の80~90%と減少している。切り上がりは7月いっぱいを予想しているが、現状交配は順調に行われている。
とうもろこしは、宮崎産は施設のミニハウス栽培ものの出荷で、5月下旬から6月上旬までとなる。生産者の高齢化で作付けはやや減少している。前年は豊作であったこともあるが、やや少なめと予想している。品種は「ゴールドラッシュ」である。千葉産は例年より若干早めの5月12日~14日に始まる見込み。ハウス栽培ものは5月いっぱい、6月上中旬はトンネル栽培ものとなろう。品種は「ゴールドラッシュ」で、全体の作付けは前年並、作業も生育も順調である。
えだまめは、千葉産が5月末頃にハウス栽培ものからトンネル栽培ものへ切り替わる。露地栽培ものは6月中旬から始まり、6月は前年並の出荷と予想される。
そらまめは宮城産が前年より早く5月下旬から出荷始まり、ピークは6月上中旬で、下旬には切り上がる見込み。作付けは微増で前年より多いと予想している。
いんげんは、福島産のハウス栽培ものの出荷が5月20日から始まる。このハウスものは6月上旬に入り出揃い、中旬にピークとなろう。露地栽培ものは6月中旬から始まり、7月上旬にピークとなる見込み。
スナップえんどうは、福島産はきぬさやの後の5月末頃から始まり、6月上旬に揃う見込み。ピークは6月中旬から7月上旬までで、作付けは105~110%とやや増えている。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)