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需給動向 野菜情報 2021年5月号

1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年3月)

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野菜振興部 調査情報部

【要約】

●東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は12万1378トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり238円、同97.9%となった。
●大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9289トン、前年同月比104.9%、価格は1キログラム当たり214円、同98.2%となった。
●東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、はくさい(同41.0%)、キャベツ(同61.6%)、レタス(同68.2%)、ほうれんそう(同77.2%)、だいこん(平年比83.2%)、トマト(同84.3%)、なす(同90.6%)、たまねぎ(同91.2%)、きゅうり(同96.9%)、平年を上回ったものは、ばれいしょ(同179.6%)、ねぎ(同156.6%)、にんじん(同138.2%)、さといも(同116.7%)、ピーマン(同100.9%)となった。
●首都圏の需要を中心とした5月の見通しは、関東の春野菜がピークを迎え、西南暖地産の果菜類もピークを迎えることから、引き続き潤沢に入荷する見込み。

(1)気象概況

 上旬は、低気圧と高気圧が日本付近を交互に通過したため、全国的に天気は数日の周期で変わった。本州の南岸をたびたび低気圧が通過したため、東・西日本太平洋側では曇りや雨の日が多かった。一方、高気圧は北日本付近を通過することが多かったため、北日本では太平洋側を中心に晴れの日が多かった。気温は、北からの寒気の影響が弱く、暖かい空気に覆われる日が多かったため全国的に高く、北・東・西日本ではかなり高かった。旬平均気温は、北・東・西日本ではかなり高かった。旬降水量は、北・西日本で多く、東日本日本海側で少なかった。
 中旬は、高気圧と低気圧が本州付近を交互に通過したため、北日本から西日本の天気は数日の周期で変わった。12日から14日にかけては、低気圧が発達しながら本州付近を通過したため、北・東・西日本太平洋側を中心に大雨となった所があった。気温は、暖かい空気に覆われたため全国的にかなり高かった。旬平均気温は、全国的にかなり高かった。旬降水量は、北・東日本太平洋側で多かった。一方、北日本日本海側で少なかった。東日本日本海側と西日本では平年並だった。
 下旬は、低気圧と高気圧が本州付近を交互に通過したため、天気は全国的に数日の周期で変わった。21日は前線を伴った低気圧が日本海を通過し、また28日から29日にかけては、本州の南岸と日本海を前線を伴った低気圧がそれぞれ通過したため、全国的に雨が降り、北・東・西日本太平洋側の所々で大雨となった。低気圧の通過後は、移動性高気圧が西日本付近を通ることが多かったため、西日本日本海側では旬間日照時間がかなり多くなった。気温は、暖かい空気に覆われる日が多く、また、日本海の低気圧に向かって南から暖かい空気がたびたび流れ込んだ影響で、本州で夏日を観測するなど北日本から西日本にかけてかなり高く、北・東・西日本では平年差がそれぞれ4.5度、4.2度、2.8度高くなり、1961年の統計開始以来3月下旬として最も高くなった。
 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

図1

(2)東京都中央卸売市場

 3月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、12万1378トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり238円、同97.9%となった(表1)。

表1
 

 根菜類は、にんじんの価格が堅調な需要から平年を4割近く上回った(図2)。

 葉茎菜類は、潤沢な入荷からはくさい、キャベツ、レタスの価格が低迷し、特にはくさいは平年より5割以上の安値となった(図3)。

 果菜類は、きゅうり以外の品目で入荷量が平年を上回り、特にトマトは業務需要低迷と低温で厳しい販売となった(図4)。

 土物類は、全品目で入荷量が平年を下回り、ばれいしょの価格は絶対数不足で月間を通して高騰した(図5)。

図2
 

 なお、品目別の詳細については表2の通り。

表2表2-2

(3)大阪市中央卸売市場

 3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9289トン、前年同月比104.9%、価格は1キログラム当たり214円、同98.2%となった(表3)。

表3
 

 品目別の詳細については表4の通り。

表4表4-4

(4)首都圏の需要を中心とした5月の見通し

 3月に入って定期的に降雨があったこと、さらに5月並の気温高となったことから、全国的に生育順調で重量野菜中心に潤沢な出回りとなった。長引くコロナ禍で、ある部分ではデフレ圧力が高まっているとうかがい知れる。特に果菜類はほぼ前年並の入荷に対して、価格は90%と低調であった。本来3月は年度末で業務需要の高まる時期であるが、外食産業の不振が需要に影を落としている。5月は関東の春野菜がピークを迎えて引き続き潤沢に入荷し、西南暖地産の果菜類もピークを迎えるため、量販店サイドには引き続き棚を広げて買いやすい価格で売ってもらいたい。
 

根菜類

 だいこんは、千葉産が5月20日頃までまとまった量を出荷できると予想している。6月も出荷は続くが、全体が前倒しで、その分切り上がりが早まる可能性がある。青森産は例年6月に入ってから出荷が始まるが、今年は出荷開始時のトンネル栽培ものが早まると予想される。市場から要請があれば5月20日以降出荷が開始できる。

 にんじんは、千葉産が例年は5月から出荷開始となるが、今年はゴールデンウィーク前頃から始まる可能性がある。出荷は6月末までと予想されるが、現時点での生育は順調で、当面Lサイズ中心と予想される。徳島産は、天候による生育の前進もあるが、農協サイドでは早めの出荷を農家にお願いしている。そのため、量販店で売りやすいMサイズ中心の出荷と予想される。4月から5月のゴールデンウィーク明け頃までが出荷のピークと予想される。茨城産は、平年並みに5月20日前後から始まり7月上旬までで、量的には前年並を予想している。

 

葉茎菜類

  キャベツは、愛知産は5月としては前年並の出荷と予想される。前年は6月いっぱい出荷が続いたが、今年は下旬にはかなり少なくなると予想される。千葉産は現状では前倒し気味の出荷となっており、5月は前年並の出荷と予想し、6月いっぱい続く見込みである。茨城産は5月中旬から出荷開始の見込みであるが、平年より早いと予想される。特別早い農家はゴールデンウィーク明けに出荷が始まると見込まれる。作付けも前年並で、出荷のピークは6月初め頃、品種は寒玉系品種のみである。

 はくさいは、茨城産は天候に恵まれ順調で、例年より10日ほど早く出荷が始まった。5月中旬をピークに5月いっぱいの出荷の見込み。長野産は例年5月20日過ぎからの出荷となるが、今年はやや早まる可能性がある。出荷のピークは6月中旬となるが、その後減りながら盛夏期を迎える。今年の作付けは前年並である。

 ほうれんそうは、群馬産の露地ものの出荷となるが、生育は順調で、ピークは4月20日頃から5月いっぱいを予想している。岩手産はゴールデンウィーク前頃から本格的に増えてくると予想される。

 ねぎは、茨城産が5月に量的にまとまって、7月まで潤沢に出荷できると予想している。千葉産は春物のピークが5月いっぱい続くが、5月後半から「坊主知らずねぎ」も始まり6月いっぱいまでとなる見込み。

 レタスは、長野産は晴天が続いて気温が高かったことなどにより7日程度の前進が予想されている。ピークは4月下旬から6月上旬頃を予想している。群馬産の現状は干ばつも解消され、生育は順調である。最大のピークは6月下旬から7月にかけて、増えながら推移する見込み。茨城産は3月の高温傾向から肥大は良好であり、2Lサイズ中心の出荷となっている。5月に入って結城地域の潤沢な出荷ペースが続くと見込まれる。
 

果菜類

 きゅうりは、群馬産が引き続き5月も潤沢で前年を上回ると予想している。6月10日過ぎには減り始めるが、例年より急減の可能性もある。宮崎産は4月~5月はほぼ横ばいで推移し、6月いっぱいの出荷計画である。
 なすは、高知産が5月に最大のピークとなり、6月に入って徐々に減りながら推移する見込み。栃木産は早いところで5月20日過ぎに始まるが、梅雨入りのタイミングが早ければ量的に少なめとなる見込み。5月は施設ものが中心となる。
 トマトは、熊本産は4月、5月も端境はないと予想し、切り上がりは例年同様6月下旬で、ほぼ前年並を予想している。天候に恵まれ生育順調で、着果も問題なく豊作型となっている。栃木産も6月いっぱいまでで、少なかった前年を上回る見込み。愛知産はゴールデンウィーク明けがピークと予想される。量的には前年並と予想され、6月末頃までの出荷を予想している。
 ピーマンは、茨城産は生育順調で5月の最も多くなる時期に向け増えながら推移しよう。宮崎産も天候に恵まれ、累計でも前年を上回る出荷となっている。4月に入って増加し、5月がピークと予想される。6月上旬から減りながら推移する見込み。
 

土物類

 たまねぎは、佐賀産の中晩生が5月20日頃から開始。平年並の肥大と予想している。兵庫産の肥大は平年並で、Lサイズが中心。晩生は5月末頃から始まり、6月上旬に最大のピークと予想される。
 ばれいしょ類は、静岡産がゴールデンウィーク明けから出荷が始まり、生育は順調でピークは例年通りの6月中下旬の見込み。作付けは前年並。長崎産は早いところが4月に入って出荷開始の見込みで、5月は前年並の出荷を予想しているが、農家の高齢化で作付けは前年を下回っている。
 
その他

 すいかは、千葉産が好天で順調に推移し、例年より早くゴールデンウィーク明けから出荷開始の見込み。ピークは5月下旬から6月初め頃。

 ブロッコリーは、香川産が4月に入って一旦は減るが、5月に入りもう一度数量的に持ち直してくる見込み。茨城産が4月下旬から5月初め頃から出荷開始となり、ピークはゴールデンウィーク中の5月上旬と予想される。生育は順調で切り上がりは6月初め頃となる見込み。

 らっきょうは、鳥取産の出荷が例年は5月21日頃から始まるが、今年はまだ確定していない。生産者の戸数は変わっておらず、量的には前年並と予想している。例年のピークは5月末から6月上旬いっぱいである。

                             (執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)



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