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需給動向 1 (野菜情報 2021年1月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和2年11月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量12万3828トン、前年同月比99.5%、価格は1キログラム当たり209円、同87.1%となった。
大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1912トン、前年同月比99.7%、価格は1キログラム当たり187円、同91.2%となった。
〇東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、はくさい(平年比46.4%)、レタス(同51.7%)、キャベツ(同59.8%)、だいこん(同67.9%)、ほうれんそう(同80.3%)、きゅうり(同81.5%)、にんじん(同89.4%)、たまねぎ(同90.4%)、なす(同93.6%)、ねぎ(同95.6%)、ピーマン(同96.1%)、さといも(96.6%)、平年を上回ったものは、ばれいしょ(平年比118.3%)、トマト(同103.0%)となった。
〇首都圏を中心とした1月の価格見通しは、好天が続き生育が良好な中で業務筋の牽引力が決定的に弱いため年内いっぱいは安値基調が続くが、1月は天候次第で価格が高騰することも想定される。

(1)気象概況

上旬は、低気圧と高気圧が交互に通過し、期間の終わりは冬型の気圧配置となり、日本付近に寒気が流れ込んだ。このため、全国的に天気は数日の周期で変わり、北・東日本日本海側では曇りや雨の日が多く、北日本では9日から10日にかけて、山沿いを中心に積雪となった所や平地でも初雪となった所があった。

中旬は、期間の中頃までは、東・西日本を中心に移動性高気圧に覆われて晴れた日が多く、東日本日本海側の旬間日照時間は平年比216%となり、11月中旬としては1961年の統計開始以降で最も多い記録となった。期間の終わりは、北日本を通過した低気圧や、そこから伸びる前線の影響で全国的に天気が崩れ、特に19日は、北海道地方でこの時期としては記録的な大雨となった所があったほか、九州北部地方でも非常に激しい雨の降った所があった。また、日本付近に南から暖かい空気が流れ込んだため、旬平均気温は全国的にかなり高く、特に、18日から20日にかけては本州の広い範囲で夏日となり、11月の日最高気温を更新した所もあった。

下旬は、低気圧が北日本付近を通過し、低気圧の通過後は北日本を中心に冬型の気圧配置となり、本州以南では高気圧に覆われる日が多かった。このため、全国的に天気は数日の周期で変わり、北日本では曇りや雨または雪の日が多く、西日本日本海側でも寒気の影響で曇りや雨の日が多かったが、その他の地方では晴れの日が多かった。旬降水量は全国的に少なく、西日本太平洋側ではかなり少なかった。気温は、期間の中頃までは東日本を中心に暖かい空気が流れ込みやすく、東日本の旬平均気温はかなり高くなったが、期間の終わり頃は大陸からの寒気が流れ込み、全国的に平年を下回る所が多かった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

11月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万3828トン、前年同月比99.5%、価格は1キログラム当たり209円、同87.1%となった(表1)。

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根菜類は、にんじんは北海道産から千葉産に産地の移行がスムーズに進んだことから入荷は順調で、価格は平年をかなり大きく下回った。だいこんは千葉産、神奈川産が大きな天候被害もなく生育が順調に進み、中旬以降、価格が下落した。(図2)。

葉茎菜類は、台風の襲来もなく生育が順調だったことに加え、業務需要の伸び悩みから価格を大幅に下げ、特にはくさい、キャベツ、レタスで平年の半値近くまで下落した(図3)。

果菜類は、関東から西南暖地へ切り替わる時期となったが、全般的に生育は順調で安定した入荷が続き、特にきゅうりは大幅に値を下げた(図4)。

土物類は、さといもは埼玉産、たまねぎ、ばれいしょは北海道産が安定した入荷を続けた。たまねぎは業務需要が少なくかなり安値となったが、ばれいしょは家庭需要が堅調だったことから、平年を大幅に上回る価格となった(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

11月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万1912トン、前年同月比99.7%、価格は1キログラム当たり187円、同91.2%となった(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした1月の見通し

11月の東京都中央卸売市場の価格は、前年、平年ともに下回り低迷した。半年以上続いた高値の反動安とも考えられるが、10月11月に好天が続き、干ばつ気味のなか充実の仕上がりであった。この年末年始は、業務筋の牽引力が決定的に弱家庭需要だけでは価格を引っ張り上げることは期待できない。1月については、天候次第で価格が高騰することも想定されるところである。

根菜類 

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だいこんは、千葉産は12月から1月中旬までピーク続く。降雨も適度にあり、2Lサイズ中心である。全年は暖冬で前進して多かったことから、生育は順調であっても前年を下回ると予想している。神奈川産も12月とほぼ同じペースでの入荷を予想している。好天が続いて生育順調であるが、採り遅れはない。2Lサイズ中心に、前年並の入荷が予想される。徳島産は、生育は順調で当面は年末にピークとなり、年明けは月の終わり頃から月にかけてピークとなる。

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にんじんは、千葉産の生育は平年並の状況で、少なかった前年を上回っている。月についても同様に前年を上回る見込み。Lサイズ中心で肥大良好である。

葉茎菜類

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キャベツは、愛知産の最大のピークは3月である。前年は大幅な前進により2月に多く出荷された。今シーズンは台風などの自然災害がなかったことから生育が順調で、大玉傾向で平年を上回る出荷量を見込んでいる。神奈川産は1月にかけて徐々に数量が増え、Lサイズ中心に平年並みの出荷を予想している。千葉産1月は減り気味で推移し、後半に少なくなると予想している。定植の時期の天候不順が影響しているが、月間では前年並を予想している。

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はくさいは、茨城産の生育は順調であるが、1月の出荷については価格によって平年を下回ることも予想される。

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ほうれんそうは、群馬産がハウス物と露地物の両タイプの出荷となるが、いずれも生育順調である。年末から年始の1月は前年並の出荷を予想している。埼玉産は年明けも潤沢ペース続く見込み。前進気味に推移すると、寒波によって1月前半に出荷が薄くなる心配もある。

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ねぎは、茨城産がレタスの作業が落ち着き12月から本格化してきた。出荷量はやや少なかったが、1月は平年並みに回復してくると予想している。埼玉産は一部で黒腐れは見られるが、生育は全般に良好である。12月中旬から1月がピークであるが、1月は平年を下回ると予想している。千葉産の作付面積は前年並みとなっており、年明け1月がピークとなりほぼ前年並を予想している。

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レタスは、静岡産は年末に向けて気温が下がると数量が減ってくると予想しているが、1月についてはほぼ12月と同程度で順調と予想している。香川産は12月初めにピークとなっているが、生育順調で1月も引き続き多い見込みである。干ばつが続いてLサイズ中心であるが、内容は充実しており、数量的には前年並を予想している。長崎産は12月下旬までピークとなっており、天候に左右されるものの年明けも年内と同様に多いと予想している。

果菜類

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きゅうりは、千葉産が定植時期の天候不順の影響で7~10日遅れていたが、作付面積が前年並であることから、月については前年並を予想している。

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なすは、高知産の生育は順調で、年明けは12月よりもやや増え、1月としては前年並を予想している。福岡産は年明けの1月も引き続き出荷は順調と予想している。作付面積はそれ程落ち込んでいない。

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トマトは、熊本産で若干の前進傾向はあるが、1月いっぱいは冬春物の出荷となり、前年並みの出荷を予想している。栃木産の越冬物は出始めが遅れたが、生育は順調で1月下旬から徐々に増え、2月にかけて大幅に増量すると予想している。愛知産も生育順調で、平年並の出荷と予想している。

ミニトマトは、熊本産12月中旬に一旦ピークが来てその後減り、1月については特別厳しい寒波が来なければ平年並・前年並と予想している。11月までの多日照で着果は良好である。

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ピーマンは、宮崎産年内のピークは12月20日前後で、やや暖冬気味の中で山が前進気味に来ている。12月よりも減るが、1月下旬に再びピークとなろう。成疲れから芯止まり傾向が心配される。11月の好天で生育は順調であるが、1月とすれば前年を下回るのではないかと見ている。高知産は、11月下旬に入り順調に出荷できるようになったが、前半は伸び悩んだ。8月10日前後に定植した苗の質が悪く、さらに10月の寒暖差が大きかったことが影響した。ここに来て木がしっかりしてきており、年明けについても前年並に出荷できると予想している。

土物類

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さといもは、埼玉産の収量は前年より少ない。大きさは中心で、最終販売は月のゴールデンウィーク頃まで。

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たまねぎは、北海道産は豊作傾向で、中心サイズはLとなっており、年明けについても12月と同様に潤沢な出荷と予想される。静岡産は平年並みに年明け1月上旬の販売から「ホワイト」「黄玉」が同時に始まる見込みである。ホワイトは1月にピークとなり、黄玉は2月がピークとなる見込み。

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ばれいしょは、北海道の道南地区にある有力産地、今金で「男爵」の玉着きが少なく前年の85%となっており、平年は1月末まで出荷されるが今シーズンは1月中下旬で切り上がると予想している。中心サイズはLで大玉傾向である。芽室地区のメークインは天候不順と作付減少が影響し、収量は前年の90%となった。平年より早めに2月中下旬に切り上がる見込み。玉は大きくL中心である。鹿児島産は徳之島で植え付けの段階から遅れており、平年よりやや遅れて1月末から始まる見込み。ピークについても1旬遅れて3月中旬となる見込み。品種は全て「ニシユタカ」であるが、種いもの確保が難しかったことから作付けは前年の80%にとどまっている。

その他

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かんしょは、千葉産の「ベニアズマ」は通年の出荷で、「シルクスイート」は1月~2月が中心となる。「べにはるか」の出荷は年明けから始まる。サイズが中心で、生産量は平年並である。徳島産は気象災害もなく、豊作傾向で月については前年並の出荷と予想される。

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ごぼうは、青森産は細物が多く予想したほど良くなく、収量はダウンすると見込んでいる。九州の新物の短根物は遅れており、年明けは少ない。そのため野菜全般の価格が安い中で、前年を大幅に上回ると見込んでいる。

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なばなは、千葉産が年明けの月~月がピークとなる。台風被害で少なかった前年を大幅に上回る見込み

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ブロッコリーは、愛知産12月に入り一気に数量が増え、1月以降もほぼ同じペースでピークとなる見込み。気温の変化と雨で数量は変わるが、基本的には順調と予想している。香川産は生育が順調で品質が向上してきた。年内にピークとなった後、1月としては前年並み、2月まで出荷が続く見込み。熊本産は気温が高かったために11月中下旬に一気に出荷され、12月はピーク時の3分の1まで減っている。年明けはだらだらと推移するが、作付面積は増えており潤沢な出荷ペースを維持する見込み。

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いちごは、栃木産の20年産が1月には本格的なピークとなり、2月までなだらかに数量が増えると予想される。福岡産は雨が少なく干ばつ気味となっているが、大玉果となっている。クリスマスにピークがあるが、県南の産地は遅い作型が増えており、本格的なピークは1月上旬と見込んでいる。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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