野菜振興部 調査情報部
上旬は、北・東日本では、低気圧や前線、湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かったため、旬間日照時間は北・東日本でかなり少なかった。また、台風第14号が10日頃にかけて本州の南海上をゆっくり東進し、本州南岸に停滞する前線の活動が活発化した影響等で、伊豆諸島南部に一時大雨特別警報が発表されるなど、東・西日本太平洋側を中心に大雨となった所があったため、旬降水量は東日本太平洋側でかなり多く、西日本太平洋側で多かった。一方、西日本と沖縄・奄美を中心に、湿った空気の影響を受けにくかったため、旬降水量は西日本日本海側と沖縄・奄美でかなり少なく、旬間日照時間は沖縄・奄美で多かった。
気温は、暖かい空気が流れ込みやすかった北・西日本と、高気圧に覆われて晴れた日の多かった沖縄・奄美で高かった。
中旬は、北・東・西日本では、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変化した。高気圧が日本海から北日本を進んだため、旬降水量は東日本日本海側はかなり少なく、北日本日本海側で少なかった。また、西日本日本海側の旬間日照時間は多かった。一方、東日本太平洋側では、前線や湿った東風の影響を受けやすかったため、旬間日照時間は少なかった。
気温は、北・東・西日本では、前半は暖かい空気が流れ込みやすかったが、後半は寒気の影響を受けやすかったため、平年並だった。
下旬は、22日から23日にかけて、前線を伴った低気圧が日本列島を発達しながら通過した影響で全国的に天気が崩れ、東日本日本海側や西日本、沖縄・奄美では大雨となった所があったため、旬降水量は西日本日本海側でかなり多く、東日本日本海側と西日本太平洋側、沖縄・奄美で多かった。北日本日本海側では、その後も低気圧や前線の影響を受けやすく、旬間日照時間は少なかった。一方、東・西日本では24日頃からは移動性高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かったため、旬間日照時間は西日本日本海側でかなり多く、東日本と西日本太平洋側で多かった。
気温は、低気圧に向かって暖かい空気が流れ込みやすかったため、北日本では高かったが、東日本以西では25日頃を中心に寒気の影響を受けたため、気温は平年並だった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
10月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万6996トン、前年同月比101.5%、価格は1キログラム当たり245円、同112.9%となった(表1)。
根菜類は、だいこんは千葉産の出荷が始まり、前年よりもやや数量は増えたが、価格は安値だった前年を大幅に下回った。にんじんは北海道産のみの入荷となったが、前年が大幅な安値だったものの、数量増の価格安となった(図2)。
葉茎菜類は、長野産や群馬産から後続の茨城産や千葉産などの関東産へ移行する時期となったが、残量も潤沢で全体的に入荷量が前年よりも多かった。はくさい、キャベツは下旬にかけて値を下げたが安かった前年を上回った(図3)。
果菜類は、7~8月の曇天、低温の影響から着色、生育が悪く、全体的に入荷量が伸び悩んだ。東日本から西日本へ産地が以降する時期も重なり、大幅な高値となった(図4)。
土物類は、ばれいしょ、たまねぎは北海道産の順調な生育を受けて入荷量が増えた。たまねぎは荷動きが悪く、安値だった前年をさらに下回ったが、ばれいしょは家庭需要の引き合いが強く安定した価格で推移した。さといもは輸入もあり入荷増となったが、需要が高く価格高となった。(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
10月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万7590トン、前年同月比104.1%、価格は1キログラム当たり214円、同113.2%となった(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
10月の東京市場の野菜の入荷量は13万6996トン(前年比101.5%)、価格は245円(同112.9%)となり、平年と比べて10円程高かった。昨年は台風で千葉県中心に被害が出て、中心産地が減量し、価格は高めに推移すると予想した。実際は暖冬になったことで全国的に出回りが多く、さらに消費税増税後で一般の消費が大幅に落ち込んだこともあって10~12月の市場価格は低迷した。
今年は、関東の露地野菜の播種時期がばらついて当初は遅れたが、12月には追い付いて問題ないと予想している。今年は台風の上陸もなく10月に入り天候が安定し、全国的には順調で豊作傾向と予想される。それでも各産地が慎重なのは、9月の播種時期の天候が悪かったこと、さらに昨年のような暖冬でなく、平年並みの長期予報が出ており寒波がブレーキをかけることも想定している。ねぎについては栽培期間が長く、7月の長雨と8月の高温干ばつの影響を受けてやや不作気味と報告されている。
価格面では、10月と同様に平年、前年ともに上回る展開を予想している。家庭からの需要が引き続きしっかりしていることが支えになるとみている。
だいこんは、神奈川県の三浦産の生育は順調でピークは12~翌1月となる。前年は前進したが今年は平年並みで、12月としては前年並みかやや多い程度を見込んでいる。「三浦大根」の出荷日は12月24~26日と前年と同様である。千葉産は、12月についても潤沢な入荷が予想されるが、前年のような急増はなく前年を下回ると予想している。
にんじんは、千葉産の出荷の始まりは平年どおり11月5日販売から。当面のピークは11月下旬~12月を見込んでいる。定植は順調に終了し、発芽も問題なかった。作付面積についても前年並みであるが天候が悪く、出始めはやや小ぶりと予想している。埼玉産は天候不順で播き時期が遅れ、11月に入って始まった。11月下旬にピークとなり、その後12月に入り一旦減って、12月中下旬に盛り返してくると予想している。前年は前進して12月はやや少なかった。今年は少なかった前年並みと予想している。
キャベツは、千葉産は生育が順調である。始まりの物がやや遅れたが回復し、前年は台風の影響で遅れて12月はやや少なかったことら、前年比110%程度の入荷量と予想される。愛知産は豊作基調で推移している。出荷量としては前進した昨年が上回っている。前年の12月は大幅に多くなったことから、そこまでは多くなく、平年並と予想している。品種は寒玉の8玉サイズ中心の出荷と予想される。神奈川産は台風の影響もなく、生育は順調である。現状は前進気味を予想しているが、播種開始が9月の多雨で10月初めにずれ込んだ影響も考慮すると、集中することなく1月が当面のピークと予想している。
はくさいは、茨城産は平年より1週間~10日程度遅れて始まった。定植は順調に行われたこともあり、当面のピークは12月となるが、そのまま3月まで続く見込みである。作付面積はやや増えているが、12月は前年並と予想している。
ほうれんそうは、群馬産は台風の影響を避けるために播種を遅らせたことから生育がやや遅れ気味である。本格的に伸びてくるのは露地ものが本格的に増える11月下旬から。ハウスも露地も年末近くにピークになるように播種している。後継者が揃っており、作付面積は微増である。埼玉産は寒さの影響でやや遅れていたが12月には回復し、当初の遅れをカバーできるように前年より多くなると予想している。
ねぎは、千葉産は年内12月までは平年より少なめと予想されるが、前年は台風の影響で出荷が後半に大幅にずれ込んで少なかったことから、前年より多い見込み。茨城産は12月については前進出荷により多かった前年を下回る出荷と予想される。
レタスは、静岡産は生育が順調で11月末から本格的に増え、12月に関しては数量、サイズともに前年並みと予想される。兵庫産も生育が順調で12月は潤沢な入荷となり、上中旬にピークとなり、下旬はやや減りながら推移すると予想される。特に今年は害虫の被害が少なく、多かった前年並の出荷を予想している。茨城産は、12月に入ると来年の準備のため減ってくるが、天候に恵まれ生育は順調であり、12月の出荷はほぼ平年並で前年を上回ると予想している。
きゅうりは、宮崎産が増えてくる。生育は天候に恵まれ順調で、年明けも潤沢ペースと予想している。作付面積が前年並みであることから、数量も前年並みと予想される。
なすは、高知産の生育は順調で10月下旬に一回ピークが来たが、11月に入りやや落ち着いている。11月中旬から再び増え始めるが、12月に入り冷え込むと伸び悩むことも予想される。作付面積は前年並み、12月の数量は前年並を予想している。福岡産は順調な出荷が続いているが12月に入り寒さが強くなるにつれて減ってくると予想している。作付面積は前年並みで、若手が就農してきて、面積が維持できるようになってきた。
トマトは、熊本産は天候が良好で生育は順調である。年内は12月がピークで、サイズはL中心、増量しながら推移する。作付面積は98%で、ミニトマトに移行している。愛知産は始まりの時期は遅れたが生育そのものは順調で作付面積も前年並み、11月中下旬のピークから12月以降もそのままのペースで推移する見込み。
ミニトマトは、熊本産のピークは大玉より早く11月中下旬からからとなり、生育・着果とも良好で年明けまで安定した出荷が期待できる。作付面積は前年の104%となっている。和歌山産は生育順調で、作付面積は前年並み、年末から徐々に減って2月までが底になり、4~5月が最大のピークである。
ピーマンは、宮崎産は好天が続き生育は順調である。12月は年末に向けてさらに大きなピークになる見込み。茨城産の温室ピーマンは天候不順が影響してやや遅れているが、12月には台風で少なかった前年を上回ると予想している。作付面積は減少しており大幅に増えることはない見込み。千葉産の「赤ピーマン」は周年で出荷しており、8~9月がピークで12月には減ってくる。「京鈴」と「ピクシー」を通常の2倍の期間をかけて着色を待つため、栄養価が高い。
ばれいしょは、北海道のようてい地区では人手不足から作付面積は前年の97%と減っている。「男爵」が減って「きたあかり」が増えており、収量は平年並みである。玉数の少なさが心配されたが、肥大は良好でM・Sサイズが少ない。「男爵」は4~5月初め頃まで、「きたあかり」は1~2月初め頃までの計画である。
たまねぎは、北海道産の収穫は平年を上回る豊作と予想している。前年比でもやや多い見込みである。L大中心に年明け5月まで計画的に出荷しよう。
さといもは、埼玉産が天候不順の影響で球数少なく、さらに小ぶりの仕上がりで、予想収穫量は80~90%程度と予想される。全体のピークは12月であるが、貯蔵物を4月まで販売していく。中心サイズは例年と変わらずLである。新潟産の「五泉のいも」は平年作を予想しており、台風やフェーン現象の影響で少なかった前年を上回る見込み。肥大も良好で2L・L中心である。26日で年内の販売は終了である。
かんしょは、千葉産がやや遅れ気味である。出荷のピークは12月上中旬であるが、ほぼ前年並の出荷が予想される。昨年は台風の影響でそれ程多くなかったが、今年も「べにはるか」「シルクスィート」は2Lが少なく、やや小ぶりの仕上がりである。後半に多い「ベニアズマ」になって2Lが増えてくる見込み。
かぼちゃは、北海道産の貯蔵量は前年並みであるが、過去数年の平均より多い。冬至に向けて12月中旬までの出荷となろう。
ブロッコリーは、愛知産の生育は自然災害の影響なく、すこぶる順調である。最大のピークは年明け2月であるが、12月も潤沢ペースと予想される。それでも昨年は暖冬で前進して特に多くなったことから、前年ほどの急増はないであろう。今年は9月に雨が多く定植のタイミングがばらついき、若干の出遅れも心配されるところである。熊本産の作付面積は前年の110%と増えている。12月にはピークとなり、収量は前年を上回ると予想している。年明けも5月まで長いスパンでの販売となろう。香川産の生育は天候に恵まれ順調である。12月には出荷が本格化して年明け1月までピーク続く。作付面積は微増で、12月も好天が続けば前年を上回ろう。
カリフラワーは、福岡産の生育は順調で作付けも増えている。12月は増えながら推移し、最大のピークは年明けの1~2月、9玉サイズが中心の出荷となろう。
ごぼうは、青森産は7月の日照不足や多雨が影響し、平年の物よりやや細く短く、作柄は良くない。収穫は長芋の始まる前までに終了し、春掘りにまわす畑もある。
ながいもは、青森産はやや小ぶりで、今のところ平年作を下回ると予想している。出荷は11月から始まっているが、貯蔵物を計画的に出荷していく。
スナップエンドウは、鹿児島産が12月に量的に中心となる。定植が早かったことに加え、自然災害がなかったこともあり、前年を上回ると予想している。その後年明け2月まで出回りが多い予想。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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