野菜振興部 調査情報部
上旬は、日本の南東から東海上で太平洋高気圧が強く、高気圧の縁辺を回って湿った空気が流入しやすかったことや前線の影響で、北・東・西日本太平洋側と沖縄・奄美を中心に曇りや雨の日が多かった。1日から2日にかけては、大型で非常に強い台風第9号が沖縄地方を通過し、東シナ海を北上した。また、5日から7日にかけては、大型で非常に強い台風第10号が奄美地方を通過し、勢力を維持したまま九州の西海上を北上し長崎県を通過した。これら相次ぐ台風の影響で、6日には西米良(宮崎県)で日降水量が364.5ミリ、7日には野母崎(長崎県)で日最大瞬間風速が秒速59.4メートル と、ともに観測史上1位の値を更新するなど、西日本と沖縄・奄美を中心に大雨や大荒れとなった所があった。また、上空の寒気の影響で大気の状態が不安定となり、北・東日本日本海側でも大雨となった所があった。旬降水量は、東日本と西日本太平洋側、沖縄・奄美で多かったが、低気圧の影響を受けにくかった北日本太平洋側では少なかった。旬間日照時間は、北・東・西日本太平洋側と沖縄・奄美で少ない一方、湿った空気の影響を受けにくかった北日本日本海側でかなり多く、東日本日本海側で多かった。気温は、暖かい空気が流入しやすかったことや台風に向かって強い南風が吹き込んだ影響で、北・東・西日本でかなり高く、北日本では平年差+3.7度で1961年の統計開始以来、9月として1位の高温となった。また、北陸地方を中心にフェーン現象が発生し、3日には三条(新潟県)で日最高気温が40.4度と、全国の気象官署及びアメダスで9月として初めて40度を超えた。
中旬は、北・東・西日本では、前線が本州付近に停滞しやすかったほか、前線上に発生した低気圧が北日本をゆっくりと北東進した。また、オホーツク海をゆっくり南東進した高気圧からの湿った空気が流入しやすい時期もあった。このため、曇りや雨の日が多く、西日本日本海側や北日本を中心に大雨となった日があった。旬降水量は、西日本日本海側でかなり多く北日本で多かったが、前線や湿った空気の影響を受けにくかった東日本太平洋側では少なかった。旬間日照時間は、北日本日本海側と西日本太平洋側でかなり少なく、北・東日本太平洋側と西日本日本海側で少なかった。気温は、北・東日本では、南からの暖かい空気が流入しやすかったため高かったが、大陸からの寒気の影響を受けた時期もあった西日本では平年並だった。
下旬は、東・西日本と沖縄・奄美付近では、旬の中頃にかけて前線が停滞しやすかったほか、低気圧や湿った空気の影響を受けやすかったため、太平洋側と沖縄・奄美を中心に曇りや雨の日が多かった。また、日本の南から北上した台風第12号が、24日には関東の南東海上で温帯低気圧に変わり、27日にかけて北海道の東海上へ北上したほか、24日から26日には本州南岸と日本海を低気圧が東進した影響で大雨となった所があった。旬降水量は、東日本日本海側と西日本太平洋側で多かったが、低気圧や前線の影響を受けにくかった北日本日本海側では少なかった。旬間日照時間は、北日本太平洋側と沖縄・奄美で少なかった。気温は、北日本では暖かい空気が流入しやすかったため高かった。東・西日本と沖縄・奄美では、大陸や北からの寒気の影響を受けた時期があったため平年並だった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
9月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万742トン、前年同月比96.8%、価格は1キログラム当たり249円、同97.2%となった(表1)。
根菜類は、だいこん、にんじんともに、北海道における干ばつの影響で生育が安定せず、入荷量が伸び悩んだ。だいこんは前年が安値だったことから、前年を大幅に上回る価格となった(図2)。
葉茎菜類は、レタス以外の品目は入荷量が前年よりもかなり少なかった。価格は、気温の低下とともに、ねぎが旬を追うごとに上昇し、キャベツは絶対量不足から大幅に値を上げた。(図3)。
果菜類は、夏場の日照不足による生育不良から回復し順調な入荷となった。前年が豊作だったきゅうりは入荷量が前年を割り、価格もかなり大きく前年を上回った(図4)。
土物類は、さといもの入荷量は増えながら推移したが前年を下回り、中国からの輸入は前年よりも増えた。北海道産が中心となったばれいしょ、たまねぎは順調な入荷が続き、価格は平年を下回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万1039トン、前年同月比98.1%、価格は1キログラム当たり220円、同98.7%となった(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
9月の東京市場の野菜価格は、価格は249円(前年比97.2%)、入荷量は12万742トン(同96.8%)で価格、入荷量ともに前年を下回った。平年比でもやや安く、8月まで長く続いた高値の反動もあると思われる。特に、業務需要の減退が影響したレタスの価格が122円(同61.2%)と下げが目立った。
関東産のだいこん、にんじん、キャベツ、はくさい、レタスについては、台風の上陸や接近もなく定植作業は順調に行われた。今年はレタスなどが大豊作との声も聞かれる。『半年高ければ、残りの半年安い』という市場の格言が脳裏をかすめる。10月出荷分については猛暑の影響を受け、仕上がりや出荷にばらつきが見られ高値傾向となったが、11月には立ち直ると産地から報告されている。
昨年は、定植後に台風が通過し秋冬野菜の出来が心配されたものの、暖冬によって後作が前進し、予想された出荷の谷間もみられず、価格は平年並となり高騰もなく、大人しい展開であった。今年は関東産の本格化がやや遅れ、東北・北海道産は早めの切り上がりで、産地リレーの谷間が生じる心配が残る。11月には関東産の急増で、軟調に推移する場面も予想される。西南暖地の果菜類は台風の被害もなく11月には本格化するが、やや遅れ気味と予想される。価格は11月としては平年並みと予想される。
だいこんは、青森産の出荷は11月の初め頃までであるが、平年より早めの切りあがりを予想している。千葉産の当面のピークは平年並に11月中旬から年内いっぱいを見込んでいる。気象災害なく生育順調で、収量は前年より多いと予想している。神奈川産のスタートは11月中旬頃で平年並みである。高温時期の定植となったが、問題なく、当面のピークは12月上旬を見込む。
にんじんは、北海道産の斜里で、8月の干ばつの影響で不作気味となったが、出荷は当初の計画どおり、11月上旬までと見込む。千葉産の出荷は、若干遅いと予想される。播種時期の猛暑の影響であるが、さらに潅水できない園地では成り込みが薄くなる可能性もある。当面のピークは11月下旬から12月となる見込み。埼玉産は発芽が不ぞろいであったことから、ピークは平年の11月上中旬からやや後ろにずれ込む可能性がある。順調だった前年を下回る出荷が予想される。
キャベツは、千葉産が11月に入りピークとなるが、適度の降雨で肥大も問題なく前年を上回ると予想している。群馬産は7月の長雨とその後の高温が影響し不作であったが、終盤に向かい平年並みにもどり、標高の低い地区から11月前半まで出荷が続く。茨城産は根の張り良く、降雨も適度で病虫害の影響もなく豊作傾向で11月いっぱいの出荷となる。11月としては平年を上回ると予想している。愛知産は9月前半の降雨で、圃場によっては定植が遅れており、出荷は11月に入ってから始まると予想している。冬系で出荷がスタートし、12月から春系も始まる。神奈川産の早い物は11月上旬から出荷が始まるが、本格的なスタートは11月下旬からとなる。
はくさいは、茨城産は前年より出荷がやや遅い地域もあるが10月下旬以降から年内いっぱい、さらに年明け2月までピークが続くと予想している。レタスが終わってから注力する地域では、ピークは11月下旬から12月上旬が出荷のピークとなるが、平年作で適度な降雨もあり生育は順調である。長野産は10月に入り増えてきたが、減りながら推移し、平年通り11月上旬までの出荷と予想している。
ほうれんそうは、群馬産のピークは10月からで、11月には露地も始まってくる。作付面積は前年並みで生育は順調である。埼玉産はこのまま台風などの災害がなければ、11月には増えてきて12月が当面のピークである。作付面積は前年並である。
ねぎは、青森産は稲刈りやにんにくの作業に忙しく出荷は少なくなっているが、10月後半には回復し、ピークは11月上旬までで、中旬にはほぼ切り上がり、一部、12月上旬まで出荷する。梅雨明けの遅れや9月の曇雨天で品質は低下したが、終盤に向けて回復してくる。茨城産は7月の長雨・日照不足の影響で不作だったが回復に向かい、11月の出荷量は平年の90%程度と予想している。千葉産の秋冬ねぎのピークは12月~翌2月である。11月については高温障害がみられ、前年は台風被害で少なかったため前年並みと予想している。
レタスは、静岡産の育苗期間中の気温は高めであるが、大きな影響はない見込み。11月は増えながら推移し、中心サイズは2L~Lで平年並みである。香川産の生育は順調で、平年通り、既に出荷が始まっており、11月は増えながら推移し、2~3月がピークとなる見込み。茨城産は生育順調で、ピークは11月中旬まで、豊作の予想である。
きゅうりは、群馬産の初期の生育が悪く、出遅れ気味であったが前年並みに回復し、11月は徐々に減りながら推移し、15日にはほぼ切りあがると予想している。福島産は露地物が10月に終了し、ハウスは11月末まで出荷が続く見込み。現状は樹の疲れが目立って、平年を下回ると予想している。前年は台風被害で少なかったため、前年は上回る見込み。宮崎産は気象災害もなく、生育は順調である。昨年は暖冬で生育が進んだが、今年は平年並みに抑えられている。11月前半に出そろい、年内いっぱいは安定した出荷と予想される。定植を昨年より10日程度遅らせたこともあり、11月は前年を下回る見込み。
なすは、高知産が定植時期から生育初期の気象条件悪く、平年より遅めの販売開始となった。当面のピークは11月上旬を予想しており、作付面積は前年並みであった。
トマトは、愛知産が育苗中の日照不足と定植後の高温により、ここまで前年を下回る数量となっているが、11月には回復してくると予想している。栃木産の抑制物は11月上旬まで出荷が続くが、前進化により出荷量が減っている。主力の越冬トマトは病害もなく生育は順調だが、遅れる見込みである。熊本産については、9月の台風でハウスが倒壊するといった被害はなく、出荷については平年並みと見込む。
ピーマンは、茨城産の秋ピーマンが9月から出荷が始まっているが、引き続き12月初め頃まで出荷が続く。10月中旬から始まる温室物の出荷は平年並を予想している。昨年は10月の台風で施設が損壊して出荷が減ったため、前年を上回る見込み。宮崎産は台風などの災害の影響もなく、生育順調である。平年通り11月上旬から数量が増えてくる。作付面積は前年並みで樹の状態も良好である。
ばれいしょは、北海道産が水分不足から不作傾向と予想している。玉数は少ない分、大玉傾向である。出荷は、洞爺から始まって、主力のメークインと二本立てとなり、これから年内いっぱいがピークとなる。メークイン、年明け2~3月初め頃まで出荷が続く。長崎産の二科性いもは11月から徐々に増え、12月に入り本格化する。台風の影響は若干あったが現状は回復し、平年並を予想している。品種はニシユタカである。
たまねぎは、北海道産は平年を上回ると予想している。春先の定植も平年より早く行われ、適度の降雨もあって順調に生育した。来年の5月まで計画的な出荷となる。
さといもは、新潟産は梅雨時期の日照不足で生育は遅れていたが、その後の好天で平年並に回復した。昨年はフェーン現象が多発し高温となったことから不作であった。今年も高温であったがそれほどでもなく、潅水で対応できている。埼玉産は、7月の多雨、8月の干ばつからやや小ぶりの仕上がりである。11月は増えながら推移していく。
ブロッコリーは、埼玉産が夏の高温が影響して前年よりも遅めの出荷となっていたが、ピークは10月下旬から11月中旬の1カ月である。作付面積は前年並みで生育は順調である。長野産は今年は冷え込みが早く、早めに切り上がる可能性もある。11月はかなり少なくなると予想される。
かんしょは、徳島産の収穫作業はほぼ終了し、やや小ぶりであるが、徐々に増えながら推移し12月がピークとなる。台風や夏の高温による影響はなく、作柄は平年並を予想している。茨城産は8~9月の前半物は日照不足の影響で小ぶりの物が多くなった。これから掘り採りするものがどこまで回復するか、11月には判明するとみている。「べにはるか」も始まったが「ベニアズマ」が中心の出荷である。
かぼちゃは、北海道産が前年は台風の影響でJR貨物が不通になり、その影響が11月まで続いたが、今年は大きな災害もなく平年作を予想している。出荷量は11月上旬まで多く、中旬にかけて減っていく。
ごぼうは、青森産が4月に長く続いた干ばつの影響により短く、細めの仕上がりになっており、収量は、豊作傾向だった前年よりは下回ると予想している。
れんこんは、茨城産が当初は日照不足で生育が遅れ気味であったが、8月の好天により盛り返し、台風の影響もなく、出荷量は前年を上回ると予想している。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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