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需給動向 1 (野菜情報 2020年10月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和2年8月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が11万8714トン、前年同月比94.0%、価格はキログラム当たり308円、同128.4%となった。
⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は万8763トン、同93.0%、価格はキログラム当たり273円、同128.2%となった。
⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、さといも(平年比93.5%)、たまねぎ(同98.1%)、平年を上回ったものは、キャベツ(平年比182.4%)、はくさい(同180.4%)、レタス(同163.4%)、なす(同138.7%)、にんじん(同130.2%)、きゅうり(同129.0%)、ばれいしょ(同128.0%)、ピーマン(同123.0%)、トマト(同113.2%)、だいこん(同107.9%)、ねぎ(同107.9%)、ほうれんそう(同102.7%)となった。

(1)気象概況

上旬は、日本の南海上を中心に太平洋高気圧の勢力が強まり、東・西日本太平洋側は晴れの日が多く、厳しい暑さとなった日があり、旬降水量はかなり少なかった。一方、日本海から北日本付近を低気圧や前線が通りやすかったため、北・西日本日本海側では、この時期としては晴れの日が少なかった。また、7日は台風第4号から変わった温帯低気圧の影響で、北・東・西日本日本海側では大雨となった所があった。

中旬は、勢力の強い太平洋高気圧に覆われ、東・西日本を中心に晴れて厳しい暑さの日が多かった。東日本太平洋側では日最高気温が40を上回った地点があり、17日には、浜松(静岡県)で日最高気温の高い方から歴代全国1位タイの41.1を観測した。東日本の旬平均気温は平年差+2.9で、1961年の統計開始以来8月中旬として最も高くなった。また、東日本太平洋側と西日本太平洋側の旬間日照時間は平年比164%で、1961年の統計開始以来8月中旬として最も多くなった。雨の日が少なかったため、東・西日本太平洋側では旬降水量がかなり少なかったが、10日から11日にかけては、台風第5号や湿った空気の影響で、西日本ではまとまった雨となった所があった。北日本では、低気圧や前線の影響で、天気は数日の周期で変わった。

下旬は、日本の東海上を中心に太平洋高気圧の勢力が強く、北・東・西日本は晴れて厳しい暑さの日が多くなり、西日本の旬平均気温は1961年の統計開始以来、2010年と並んで最も高くなった。高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、旬間日照時間は北日本日本海側と東日本でかなり多く、北日本太平洋側と西日本でも多かった。旬降水量は東・西日本日本海側で少なかった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が11万8714トン、前年同月比94.0%、価格は1キログラム当たり308円、同128.4%となった(表1)。

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根菜類は、北海道が干ばつ傾向であったことからだいこん、にんじんともに肥大不良となり、入荷量が少なく、価格は高めに推移した(図2)。

葉茎菜類は、高原ものや関東産地の出荷となったが、長雨曇天による生育遅延や作業遅れが見られ入荷量は伸び悩んだ。レタスは8月上旬に高騰したが、その後、入荷が増えるのに伴い下落した(図3)。

果菜類は、東北産は月下旬までの曇雨天、日照不足から回復したきゅうり、ピーマン入荷は前年を上回った。関東産が中心だったなすは絶対数不足から上旬は高騰したが下旬にかけて大きく値を下げた(図4)。

土物類は、さといもは中国からの輸入ものの入荷もあり、入荷増となり下旬にかけて値を下げた。北海道産が中心となったばれいしょ、たまねぎは中旬以降、入荷が増えたことから価格は下落した(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

8月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8736トン、前年同月比93.0%、価格は1キログラム当たり273円、同128.2%となった(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした10月の見通し

8月の東京市場の野菜価格は、東北・北海道産の果菜類が急増して、中旬までの加熱した相場を冷ましたことから下旬に下落したが、それでも、過去6年の平均値よりも高かった。しかし、葉物野菜は品質が悪い上に価格が高いと不評であった。潤沢に入荷した果菜類については、9月には落ち着くが、10月にはもう一ピークを期待したいところである。

10月は、関東や西南暖地の産地に果菜類は戻ってくるが、ハウス内の労働時間が厳しくやや作業の遅れも心配される。かんしょやさといもは長雨の後の猛暑で、葉が平年ほどの勢いがなく、平年作に届かないとの見方もある。キャベツも肥大は回復するも、初期の遅れがたたり伸び悩むのではないかと見ている。価格は、全体的な出回り不足の中で、平年を上回る展開が続くものと見ている。

根菜類 

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 だいこんは、北海道のしべちゃでは、引き続き生育は順調で大きさは2L・L中心、出荷は平年並みである。切り上がりとなる10月中旬までピークが続くが予想される。青森産の作付面積は前年並みで気象災害もなく生育は順調である。

にんじんは、北海道の斜里地域の出荷は平年並みで11月上旬までとなる。8月にほとんど降雨がなく、品質は良好であるがやや小ぶりに仕上がると予想している。

葉茎菜類

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 キャベツは、群馬県では植え付けが後ろにずれたことにより、10月についても数量的に大きな伸びは期待できない。キャベツそのもの出来は良い。岩手産夏キャベツは出荷量が伸びなかったが、秋キャベツの出荷量は前年並みで、11月の初め頃まで続く。

はくさいは、長野産が圃場による生育のバラツキが大きいが、生産者の意欲は旺盛で、11月上旬まで出荷できる見込み。水はけの悪い圃場は、根の張りが十分でない時に一気に高温になったことで生育は悪い。

ほうれんそうは、埼玉産が月に蒔き始めたものの出荷が10月中旬から始まる見込み。残暑の影響が心配され、10月としてはそれ程多くない可能性もある。岩手産の生育は順調だが、10月は稲刈りに忙しく、月に比べるとやや減ることも予想される。群馬産は露地物の出荷が始まり、下旬から11月中旬までピークとなる見込み。

ねぎは、茨城産は月の長雨で軟腐が発生したが、8月には回復。ただ土寄せには降雨が必要であり、やや後ろにずれ込むことが予想されるため9月はやや少なめだが、10月には回復し平年並みに追いつく見込み。青森産の生育は順調で、9月下旬に稲刈りの影響でやや減るが、10月いっぱいまで潤沢ペース続く見込み。秋田産の生育は順調で稲刈り終了後の10月中下旬がピークになる見込み。その後、途切れることなく出荷が続き、雪中栽培を経て年明け3月まで出荷する。作付面積は前年の110%と伸びている。

レタスは、茨城産が気象災害もなく生育が順調で、10~11月いっぱいはピーク続く見込み。作付面積は前年並みである。長野産は10月には回復に向かうが、高温下での定植となったため、圃場によりバラツキが出ている。標高1000メートル地帯は10月中旬までの見込みである。

群馬産は10月第2週までピーク続く見込み。10月いっぱいは潤沢であるが、11月は相場を見ながらの出荷と予想している。

果菜類

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 きゅうりは、福島産は10月に入りハウス物が中心になるがピークが終わっており、無加温であるため降霜で終了する。露地物については病気の発生もあって切り上がり早まると予想される。群馬産は定植が順調に終了しており、10月から出荷が本格化するが、前年並みと予想している。

なすは、高知産の出荷は平年だと10月からであるが、一部で早まっている。10月としては平年並みの出荷が予想される。

トマトは、北海道産は大きな山はなく、ほぼ平準で出荷され、切り上がりは11月中旬を予想している。福島産は引き続き順調な出荷が続き、切り上がりは11月第一週頃と予想されるが、味の充実した物が出荷されている。青森産の生育は順調で、むらのない出荷が続いている。10月に入り8月の高温の時期の着果物となってやや減る可能性があり、出荷は10月いっぱいとなろう。熊本産の出荷は10月から始まると予想している。7月の洪水についてトマト産地は影響なく、台風9号の影響もなかったことから、10月としては平年並みの出荷を予想している。群馬産は、今後の天候次第であるが、前進傾向で10月下旬には減ってくる。

ミニトマトは、北海道産が前進気味であったが、前年並みの豊作で10月にかけてもう一ピークが来ると予想している。切り上がりはやや早く、10月いっぱいの出荷見込んでいる。

ピーマンは、茨城産の無加温物は10~11月がピーク、温室物は平年並みに10月中旬から出荷が始まるが、いずれも生育順調である。岩手産は花落ちが見られることから、10月についてはピーク無く11月中旬までの出荷を見込んでいる。作付面積は前年の110%と増えており、10月としては前年を上回る可能性も残されている。福島産は出始め遅れたものの、ここまでは豊作傾向である。10月は終盤だが、新芽から花が付くことも予想され、前年並みの出荷を予想している。宮崎産は平年通り10月上中旬から始まる見込み。一部で高温により枯れて定植しなおしたが、おおむね生育は順調に来ている。年内のピークは11月中下旬で、10月は増えながら推移しよう。作付面積は前年並み、品種は例年と同様に「京鈴」である。

土物類  

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 ばれいしょは、北海道のようてい地区の作柄は玉付きは少ないが大玉傾向で、やや豊作傾向である。来年の4月まで計画出荷していく。

たまねぎは、北海道産の収穫作業は10月初め頃まで続くが、収量は平年を上回ると予想しているが、前年ほどの豊作にはならないと予想している。中心はL大で売り易い。

さといもは、埼玉産が7月までの長雨とその後の高温の影響を受けている。平年よりも葉の勢いが弱く、孫芋の付きが悪いため、小玉傾向と予想される。最大のピークは12月であるが、10月については前年を下回る見込み。品種は「土垂」である。愛媛産の「女早生」の出荷は、玉数が少ないが肥大は良好である。西日本ではさといも産地として存在感が増しており、年内もさることながら年明け5月まで出荷される。

その他 

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 ブロッコリーは、埼玉産がスタートするが平年より遅れ気味。定植後に雨がなく、枯れる畑もあったため10月に出荷できなかった分が11月に出る可能性もある。長野産は梅雨が長く定植が遅れたが、10月上旬まで出荷のピークが続く。干ばつ傾向だが、量的には作付面積が微増しており、平年を若干上回ると予想している。北海道産の秋ブロッコリーは干ばつの影響で落ち込んでいるが、出荷は10月いっぱいで前年並みの出荷を予想している。

かぼちゃは、北海道の富良野地区の最盛期が始まる。スタートは遅れたが7~8月の天候に恵まれ、前年を上回る出荷が予想される。中心品種は「くりゆたか」、その他「くり将軍」など。貯蔵はなく、青果のみの出荷となり、11月初め頃に切り上がる。

かんしょは、千葉産の出荷が8月末から始まっており、品種は「ベニアズマ」「シルクスイート」が中心でやや小ぶりの仕上がり。今後台風の襲来がなければ、ほぼ平年作と予想される。石川産の「五郎島金時」の収穫は11月初めまで続き、前半の物についてはやや小ぶりである。気象災害なくはなく順調であるが、干ばつの影響がみられる。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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