野菜振興部 調査情報部
上旬は、北・東日本と西日本日本海側では、高気圧に覆われて晴れる日が多かった。このため、旬降水量は、東日本太平洋側と西日本日本海側でかなり少なく、旬間日照時間は、北日本太平洋側と東日本日本海側でかなり多かった。北日本太平洋側の旬間日照時間は平年比154%で、1961年の統計開始以来、6月上旬として1978年と並び最も多かった。その一方で、低気圧や前線が沖縄・奄美から西日本の南岸に停滞したため、沖縄・奄美と九州南部では、活発な梅雨前線の影響を受けた時期があり、8日には沖縄県で浸水害が発生するなど、大雨となった所があった。気温は、日本の南海上で太平洋高気圧が強く、中国東北区からオホーツク海南部付近を低気圧が通過しやすかったため、日本付近に暖かい空気が入りやすかったことや、北・東・西日本では、晴れて強い日射の影響を受けた日もあり、全国的にかなり高かった。特に、東日本の旬平均気温は平年差+2.8度で、1961年の統計開始以来6月上旬として最も高かった。なお、10日ごろには中国地方、近畿地方、東海地方で梅雨入りしたとみられる(速報値)。
中旬は、梅雨前線が本州付近に停滞しやすく、また、沿海州から北海道付近を低気圧が通過しやすかったため、北・東・西日本では曇りや雨の日が多く、大雨となった所もあった。このため、旬降水量は東・西日本ではかなり多く、西日本日本海側では、平年比329%で1961年の統計開始以来6月中旬として1位の多雨となった。また、旬間日照時間は、西日本太平洋側でかなり少なかったが、沖縄・奄美ではかなり多かった。太平洋高気圧の縁を回って、暖かい空気が日本付近に入りやすかったことから、気温は全国的にかなり高く、特に、北日本では、期間のはじめに太平洋側を中心に晴れて、強い日射の影響も受けたこともあって、旬平均気温は平年差+2.5度で、1961年の統計開始以来6月中旬として2010年などと並び最も高かった。なお、12日ごろには沖縄地方で梅雨明けしたとみられる(速報値)ほか、11日ごろには九州北部地方、関東甲信地方、北陸地方、東北南部で、14日ごろには東北北部で梅雨入りしたとみられる(速報値)。
下旬は、太平洋高気圧が日本の南海上で西へ張り出し、オホーツク海でも高気圧が明瞭だった。梅雨前線は期間のはじめは奄美地方付近に、その後は本州南岸付近に停滞しやすかった。太平洋高気圧の縁を回って湿った空気が入り、梅雨前線の活動が活発となって25日には長崎県で土砂災害が発生するなど、大雨となった所もあった。また、北日本では北からの湿った空気や低気圧の影響を受けて曇りや雨の日が多かった。このため、旬降水量は北日本と東日本太平洋側、沖縄・奄美で多かった。旬間日照時間は、北日本と沖縄・奄美でかなり少なかったが、北日本太平洋側は平年比43%で、1961年の統計開始以来6月下旬として1位の寡照となった。一方、東・西日本日本海側では前線や湿った空気の影響を受けにくく晴れた時期があったため、旬降水量は東日本日本海側で少なく、旬間日照時間は東・西日本日本海側でかなり多かった。気温は、太平洋高気圧の縁を回って暖かい空気の入りやすかった東・西日本と沖縄・奄美では高かったが、北からの冷たい空気の影響を受けた日もあった北日本では平年並だった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
6月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万5334トン、前年同月比100.2%、価格は1キログラム当たり265円、同111.1%となった(表1)。
根菜類は、だいこん、にんじんは千葉産の出荷が前進した影響で入荷が伸びず、特に、にんじんは後続の北海道が遅れたことから下旬に向けて価格が上昇した(図2)。
葉茎菜類は、関東の産地が入荷の中心となり、どの品目も天候に恵まれ生育良好であった。安定した入荷量だったが、前年が安値だったことに加え、家庭需要の伸びから価格は前年を上回る品目が多かったが、レタスは販売が伸びず前年を下回る価格となった(図3)。
果菜類は、4~5月の曇天・低温から樹勢が悪く、前月まで前進気味で推移していたこともあって、端境が生じた品目が多かった。下旬に向けて価格は上昇し、全般的に前年を上回る価格となった(図4)。
土物類は、どの品目も入荷量がかなり前年を下回っており、特にたまねぎは各産地とも大玉傾向で箱に数が入らず、安値だった前年を3割近く上回る価格となった(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
6月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8100トン、前年同月比97.5%、価格は1キログラム当たり239円、同116.0%となった。(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
6月の東京市場の野菜の入荷量は12万5334トン(前年比100.2%)、価格は265円(同111.1%)となった。一部の野菜を除き全面的高値といってよい状況である。
小売り現場からの報告によると、売れているから価格が高いという実感はないという。やはり梅雨入り直後から雨の日が多く、さらに東北・北海道の低温や曇天で遅れ気味で、全般的に出回り不足になっている。そのため市場は価格を高くして荷を集めている。
前年は梅雨前半に晴れの日が続き、終盤に雨が多く梅雨明けは平年より大幅に遅れて7月29日に夏の到来となった。今年は梅雨入り以降、ずっと雨の日が続き、7月上旬には豪雨に見舞われた。熊本県ではかつてない大雨で球磨川が氾濫し、トマトなど果菜類の切り上がりが早まると見込んでいる。北海道産は今までのところ遅れはあるがおおむね生育は順調で、8月には出揃ってくると予想される。東北各県や高原産地も同様に大きな災害がなく果菜類やねぎ、さらに高原のキャベツやレタスが潤沢に入荷すると予想している。
いつもの年なら8月は、首都圏の人口が少なくなるが、今年は学校の夏休みが短く、東京の人口はいつもより多いと予想される。業務需要よりも家庭からの需要が強く、7月に続いて平年を上回る価格推移が予想される。
東京市場では、特にばれいしょ類の高値が目立ったが、盆前まではこの逼迫する状況が続くと予想している。
だいこんは、北海道東部の標茶で平年よりやや遅い選果スタートとなった。当面出荷のピークは8月から9月を予想しているが、6月中下旬の播種が少なく8月中旬から9月上旬にかけて荷が薄くなると心配している。梅雨がない北海道だが、今年は太平洋側で雨の多い蝦夷梅雨の傾向になっており、このことが選果開始を遅らせた理由である。道南のようてい地域でも、前年より数日遅く出荷が始まった。低温の時期もあったが抽苔も見られず、肥大良好である。ただ初期の干ばつの影響で先端部分の品質の悪い物が散見される。7月中旬にピークが来て、盆前には減ってくると予想している。
にんじんは、北海道のようてい地域で平年並みの8月上旬から始まるが、初めは5月の干ばつの影響が残りやや荷が薄めである。ピークは9月中旬を予想している。北海道の斜里地域では低温の時期もあったが、生育は順調である。前年が豊作だったため、8月は前年を下回る可能性あるが、それでも平年並みを予想している。サイズはL・M中心で、11月初めまで定量での出荷が続く。品種は「晩抽天翔」中心である。
ごぼうは、7月上旬の南九州の大雨で、8月以降の九州産の出荷は大幅に減ると予想される。出荷があっても細物が中心になろう。関東は全般に作付面積が減少傾向で、以前のような高品質物が少なくなっている。青森産の新物が中心となってくるが、今年も順調である。
キャベツは、群馬産は播種作業から順調に推移しており5月は低温となったが、それ程影響はなく、適度な雨もあって今後の肥大も順調と予想される。当面は8玉中心で、8月も順調に出荷できると予想している。
岩手産は、今年は始まるのが遅かったが増え始めるのが早く、ピークはお盆ごろまで続き、9月に入り気温の低下とともに減り始める。現状は雨が多いが干ばつよりは順調である。作付面積は前年並みである。
はくさいは、長野産は8月には圃場の標高が1100~1200メートルと7月よりも若干上昇する。前月よりも生育は順調であるが、7月上旬の長雨の影響が心配される。農家の生産意欲は旺盛で、前年を上回る出荷が予想される。
レタスは、長野産は引き続き8月も出荷は順調と予想される。二期作の定植も順調で農家は生産意欲旺盛である。人手不足の心配もない。梅雨明けが早いと前進し、海の日を境にやや出荷は少なめと変わる可能性もあるが、大幅な減少はないであろう。群馬産の生育は順調で、8月初旬に増え、下旬にかけて減りながら推移しよう。ほぼ平年並みの展開を予想している。
ほうれんそうは、栃木産の産地は鶏頂山(標高1200メートル)、那須高原(標高500メートル)、塩原高原(標高800メートル)といった高原地帯でハウス栽培されている。出荷は6月上旬から始まったが、5月の低温の影響で平年よりやや遅い。作付面積は前年の95%程度で作業する人員が足りていない。岩手産は生産者の人数は減っているが、小規模な生産者が生産をやめたことから生産量的には5%減程度に留まっている。7月下旬以降の出荷ペースはそれまでの70%程度と減り、8月下旬まで少なく、回復は9月以降となる見込み。群馬産は露地が終わったところで、標高300~700メートル付近の産地で雨よけ物が増えてきている。8月は盆明けには減ってくるであろう。
ねぎは、青森産が既に出荷が始まっているハウス物に加えて、露地物が7月末頃から出荷が始まる見込み。盆明けごろにピークになり一定量で11月初旬まで出荷される。作付面積は前年を若干、上回っている。生育は順調である。青森の十和田地域では前年は6月に干ばつが続き、出荷はやや遅れたが、今年は順調で9~10月がピークと予想される。作付面積は前年並みである。
こねぎは、福岡産が8月は多くなる時期だが、7月上旬の豪雨の影響で少なくなる可能性が高い。
ブロッコリーは、北海道産が6月の日照不足と低温で最初は大量に出たが、現状は予定よりも伸びていない。8月に入りやや減ると予想しているが、盆明けには増えてきて、月末から9月上旬に再びピークとなろう。長野産は、8月に入り徐々に増えながら推移し、9月上旬に次のピークとなり、最終は11月上旬を予想している。作付面積は前年を上回っている。
トマトは、北海道産は天気が悪いことから少なめの出荷となっている。今後の天候の回復次第ではあるが、8月については平年並みの出荷と予想される。青森産は、5月の低温さらに7月の日照不足で10日以上の遅れになっている。群馬産は生育が順調で、平年並みの出荷と予想され8月にピークを迎える。作付面積は若干の減少となり、ほうれんそうに切り替えるなどしている。
きゅうりは、福島産が露地と雨よけ・ハウスは半々であるが、露地の作付面積は若干減少している。1回目のピークは前月中旬であったが、8月の盆前後に2回目のピークとなる。トータルでは曇天雨天が続いて枝の動きはやや悪いが、早めの梅雨明けとなれば樹勢も回復して平年並みの出荷が予想される。
なすは、栃木産は平年並みの出荷が予想される。6月以降は強風に何回か見舞われているが、大きなダメージになっていない。前年は梅雨明けが遅れてやや不作になったことから、今のところ前年を上回ると予想している。
ピーマンは、岩手産の露地物の出荷は平年よりややスタートが遅く、最初のピークは8月中旬、二回目のピークは8月末~9月上旬を予想している。降雨が続いているが、生育は問題ない。品種は「京ひかり」「京まつり」である。福島産の露地物のピークは7月下旬~8月上旬であるが、出荷は11月まで続く。作付面積は微増で品種は「みおぎ」が中心である。今後の天候によって変わる可能性もあるが、今のところ順調である。
かぼちゃは、北海道産の露地物は8月末頃から出荷が始まると予想している。気温が低いこともあるが、定植時期から遅れ気味である。ピークは9月下旬を予想している。品種は「くりゆたか」「くり将軍」を中心に「ブラックのジョー」も増えてきている。作付面積は昨年をやや下回っている。
ばれいしょは、北海道の芽室地域ではメークインの出荷が早くて8月下旬からと予想しているが、平年並みのペースである。6月の日照不足、干ばつにより玉数は少ないと予想される。傾向として豊作ではない。その他の品種として「マチルダ」「洞爺」「男爵」がある。ようてい地域は平年通り8月上旬から始まるが、今のところ大きな災害がなく平年作を予想している。出始めからピークとなるが、8月中旬から特に多くなる。今金地域も8月上旬からの出荷を予想しており、ほぼ前年並みの出荷数量で、今のところ生育は順調である。前年産は豊作であったが、今年産の数は前年をやや下回ると予想している。
たまねぎは、北海道産は平年通り8月上旬から出荷が始まる見込みで、今のところ大玉傾向と予想しているが、多雨による病気の発生も懸念される。ピークは平年並みで10~11月の見込み。兵庫産は前年ほどではないが大玉傾向で、2L~Lが出荷の中心となる見込み。5月上旬に葉枯れが生じて倒伏しづらくなったため、貯蔵中に雑菌が入ってダメージなることが心配される。数量は平年並みで8月は盆前ごろまで多いが、後半は少なくなってくる。
にがうりは、群馬産の生育が順調で、7月下旬からピークとなり盆明けごろまで潤沢な出荷が続くと予想している。作付面積は前年並みである。
スイートコーンは、北海道産が日照不足の影響で出荷は8月からとなる見込み。出荷開始と同時にピークを迎える。作付面積は前年並みで、品種は「ゴールドラッシュ」でほとんど東京市場へ出荷される。千葉産のピークは7月下旬から8月上旬で、お盆前後にはかなり減ってくる。作付面積は前年並みである。群馬産は、6月までの天候不順で生育がやや後ろにずれて、ピークは7月下旬から8月上旬でお盆以降は減ってくる。品種は「恵味」である。
メロンは、北海道産の主力品種である「らいでんクラウン」は7月中旬から出荷が始まり、ピークは8月下旬。「ルピアレッド」「ティアラレッド」のピークは7月下旬からお盆にかけてと見込んでいる。メロン類の作付面積は前年並みである。
すいかは、山形産の出荷スタートは7月中旬で、ピークは7月下旬~8月初旬でほぼ平年並みの展開が予想される。6月の交配時期の天候に恵まれたたため、梅雨明け後の天候に恵まれるとほぼ美味しい西瓜に仕上がると予想される。品種は「祭りばやし777」「富士光」「夏ごのみ」で作付面積は前年並みである。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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