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需給動向 1 (野菜情報 2020年6月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和2年4月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

⃝東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万4597トン、前年同月比96.6%、価格は1キログラム当たり258円、同106.4%となった。

⃝大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8145トン、同95.5%、価格は1キログラム当たり229円、同104.1%となった。

⃝東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、たまねぎ(平年比53.4%)、ばれいしょ(同87.4%)、ねぎ(同93.7%)、にんじん(同98.8%)、平年を上回ったものは、はくさい(平年比196.1%)、ピーマン(同139.1%)、キャベツ(同128.4%)、だいこん(同112.2%)ほうれんそう(同111.1%)、トマト(同109.8%)、きゅうり(同107.4%)、なす(同107.4%)、さといも(同107.3%)であった。

(1)気象概況

上旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わったが、東・西日本では、高気圧に覆われて晴れた日が多かった。東日本太平洋側と西日本日本海側の旬間日照時間平年比は、それぞれ144%、148%となり、4月上旬としては1961年の統計開始以降で最も多かった。一方、低気圧は、北日本付近を発達しながらたびたび通過したため、北日本の旬降水量はかなり多かった。気温は、北日本は低気圧に向かって暖かい空気が流れ込みやすく高かった一方、西日本と沖縄・奄美は寒気を伴った移動性高気圧の影響を受けやすく低かった。

中旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わり、本州付近を低気圧が発達しながらたびたび通過したため、北日本太平洋側と東・西日本では大荒れの天気となり、まとまった雨や雪となった所もあった。東日本太平洋側と西日本の旬降水量はかなり多く、東日本太平洋側の旬降水量平年比は305%となり、4月中旬としては1961年の統計開始以降で最も多かった。一方、北日本日本海側と沖縄・奄美では高気圧に覆われて晴れた日が多く、沖縄・奄美の旬降水量はかなり少なかった。気温は、大陸からの冷たい空気が流れ込みやすかったため、全国的に低くなった。

下旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わったが、西日本では移動性高気圧に覆われて晴れた日が多く、旬間日照時間はかなり多かった。西日本太平洋側の旬間日照時間平年比は139%となり、4月下旬としては1961年の統計開始以降で2005年と並び最も多かった。東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美の旬降水量はかなり少なかった。一方、関東甲信地方を中心に上空の寒気の影響で大気の状態が不安定となり、雷雨となった所もあった。気温は、大陸からの寒気の影響を受けやすく、東・西日本と沖縄・奄美でかなり低くなった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

4月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万4597トン、前年同月比96.6%、価格は1キログラム当たり258円、同106.4%となった(表1)。

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根菜類は、千葉産が中心となっただいこんの入荷量が平年を大幅に下回ったことから下旬に向けて価格が上昇した。にんじんは、徳島産が中心で前年に比べて入荷が多く、平年並みの価格となった(図2)。

葉茎菜類は、関東産が多く出回り気温が高かったことから前進した品目が多かったが、病害も散見され入荷量は前年並み、価格は家庭での需要が増えたことで堅調に推移した。特にはくさいは前進出荷が進んだことから数量が伸びず加工用需要の高まりとともに平年の2倍近い価格まで上昇した(図3)。

果菜類は、西南暖地から関東へ産地が移行する時期となったが、前月までが前進出荷傾向であったことから入荷量は前年をかなり下回り、価格も高めだった(図4)。

土物類は、北海道の貯蔵物が潤沢であったことから、前月に引き続きばれいしょ、たまねぎの価格は低迷した(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

 4月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8145トン、前年同月比95.5%、価格は1キログラム当たり229円、同104.1%となった。(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした6月の見通し

4月の東京市場の野菜の入荷は12万4597t(前年比96.6%)、価格は258円(同106.4%)となった。新型コロナウィルス感染症対策による外食店の休業や在宅勤務の推進など、これまで経験したことのない事態のなか、高級食材の落ち込みが特に目立った。主要野菜の価格を見ると、安かったのはたまねぎおよびさといものみで、その他はいずれも前年の110%以上としっかりとした価格推移となった。3月から4月の寒の戻りや強風が春野菜の生育を抑え込んだことも大きく影響した。

6月の価格予想について、西日本の露地野菜と促成物が平年より早めに切りあがる中、東北・北海道産がどこまで順調に入るかが鍵を握ってくる。今のところ前年のような前進出荷はなく平年並と予想される。そのため、市場価格が全体を引っ張る展開となり、さらに学校や経済活動の再開があれば、やや強めの価格推移が予想される。

根菜類 

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だいこんは、青森産は4月の低温で生育はやや遅れ気味だが、6月初めから露地物が始まってピークとなる。千葉産は6月以降、減りながら推移し上旬いっぱいで切り上がる見込み。全体としては前進気味であるが、切り上がり時期は平年並み。北海道産は、融雪は早かったが、地温が上がらないなどの影響で定植は遅れ気味である。前年は出荷のスタートが早く6月からだったが、今年は平年並みに7月の初めからの出荷を見込んでいる。

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にんじんは、千葉産が3月の多雨が影響し、出荷が遅れ気味だが最大のピークは5月下旬から6月上旬と平年と変わらない見込み。作付面積は、昨年の台風の後始末が影響して前年の90%と減少している。埼玉産の春にんじんの出荷のピークは6月中旬頃を予想している。作付面積は前年並みであるが、2月下旬の降雪の影響でやや少ない圃場もある。M中心でスタートしたが、ピークにはL中心になると予想している。

葉茎菜類

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キャベツは、群馬産のトンネル物が6月初めから出荷スタート、露地物中旬頃からスタートすると予想される。高原地帯の物が始まるのは7月に入ってから。現状の進捗状況は平年並みであり、適度の降雨もあって順調である。9月のピークに向けて徐々に増えながら推移する見込み。茨城産は、気温が高く若干進んでいる。連休明けから出荷が始まるが例年並かやや早い。ピークは5月20日から6月いっぱいの見込みである。品種は寒玉系であり、平年作を期待している。千葉(ちばみどり)4月の出荷は前年を下回ったが気温の低下や強風が影響した。例年は5月20日過ぎからピークになるが今年はだらだらとした出荷が続き、6月20日頃に切りあがると予想している。

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はくさいは、長野産が4月の低温により遅れ気味であるが、5月下旬以降、平年並みに出荷がスタートする見込み。作付面積は前年並みで当面のピークは6月まで。7月以降は数量が減り、さらに標高高い長野八ヶ岳方面に移っていく。

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ねぎは、茨城産の生育が順調で6月もピークが続き、前年比微増ペースでの出荷が予想される。

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レタスは、長野産が4月の降雪により2週間ほど出荷が遅れているが、定植は順調に行われており作付面積も前年並みである。出荷のピークは7月上旬から海の日頃と予想している。同県の準高冷地の産地では6月は平年並みの出荷が見込まれ、作柄は順調で減りながら推移し、7~8月はいったん減少して谷間になり、9月以降に再び増えてこよう。群馬産は暖冬で出荷が早まると予想されたが、4月以降の低温により遅れている。それでも6月にはピークになると予想される。

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アスパラガスは、佐賀(三養基)立茎物となるが、今年は基本的に悪くないと予想している。6月中下旬に増えてきて7月15日頃まで多い。その後は細物が多くなるが10月末までシーズンは続く。量的には空梅雨だと収穫量は少なめとなるが、梅雨の熱帯夜が続くほうが多くなる。

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ブロッコリーは、青森(つがるにしきた)早い生産者は6月初めからとなるがピークは6月15日~20日と予想している。生育は順調で、ピーク時には一層品質が向上してくる。作付面積は前年と変わらない。北海道十勝地域の産地では平年どおり月中旬から始まり、ピークは7月上旬と予想している。最初の品種は「ピクセル」や「ファイター」である。ようていは、道南の産地で前年は月20日から始まった。今年はやや早く10日前後からと予想している。ピークは7月下旬となろう。作付けは前年比微増である。

018c

ほうれんそうは、群馬産の6月の出荷は平年並みで一部雨除け物もあるが露地ものが中心であるため、急増はないと見込んでいる。

果菜類

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きゅうりは、群馬産の出荷は徐々に切り上がっていくが、6月はほぼ横ばいで推移すると予想される。気象の変化は激しいが、生育は順調である。宮崎産の冬春物は暖冬とその後の天候不順で過去4年において、最も少ない生産となっている。6月下旬を目途にやや早めに切り上がると予想している。福島産のハウス物は平年並みで生育は順調である。6月は屋根掛物も本格化してきて、最大のピークとなろう。7月以降の出荷となる露地ものの定植作業もピークとなっている。

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トマトは、熊本産の冬春トマトは6月以降Sサイズ中心のM玉となるが数量的には平年を下回り月末いっぱいで切り上がる見込み。栃木産は引き続き春トマトと半促成中心に越冬物である。5月はだらだらペースが続くが、6月には回転が早まってやや増えてくるが、引き続き前年を下回と予想される。愛知産は6月以降、徐々に減りながら推移し、7月いっぱい平年並みの出荷となる見込み。中心サイズはL・Mで、品種も変わらない。

ミニトマトは、北海道産が前年は気温が高かったために出荷が早まったが今年は平年並みに6月下旬から出荷がスタートし、7月中旬から本格化する見込み。外国人実習生に期待できないことから、トータルの作付面積は微減の状況にある。

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かぼちゃは、神奈川産が平年通り6月中旬から出荷がスタートする。寒暖差が厳しいが、トンネル栽培で保温されており問題はない。ピークは6月下旬から7月上旬で、作付面積は前年並みである。

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なすは、高知産の出荷は平年並みの出荷となっており、天候の大きな崩れがなければ6月上旬前半までは増えながら推移する見込み。中旬から減り始め7月一週目に切り上がると予想している。栃木産は昨年の9月から始まったハウス物も順調で、全体として6~7月と増えながら推移し、ほぼ平年並みの出荷を見込む。

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ピーマンは、茨城産の春ピーマンは平年並みの出荷となっており5~6月にピークとなる。夜温の低下が心配されるが、4月の強風の被害もなく生育は順調である。

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豆類 

えだまめは、群馬産は県下各産地ともにしゅ作業も順調で、適度な雨量もあり気象災害もなく順調である。平野ではハウス物、トンネル物ともに本格出荷は6月に入ってから。高冷地産は6月上旬のトンネル物から出荷が始まり、最大のピークは7月下旬を見込んでいる。茶豆系が70%となっており、平年並みの出荷を予想している。千葉産はトンネル物で6~7月がピークとなる。作付面積は前年並である。

019c

スナップえんどうは、福島産は平年に比べて若干早く始まり、出荷は5月末頃から6月いっぱいを予想しているが、高温で推移するとやや切り上がりが早まると予想している。

土物類  

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ばれいしょは、静岡産のうち三島函南地域のメークインは6月の1週目から始まるが、出荷は平年より若干早く、出荷量は平年並みの見込み。作柄は病気がなければ平年作でピークは6月下旬から7月いっぱい。同県のとぴあ浜松地域のピークは平年通り6月上旬、出荷は7月いっぱいを予想しているがやや早まっている。前年は大玉が多かったが、今年はそれ程でもない。病虫害の被害が少なく、品質は良好である。長崎産は、10日程度前倒しで出荷されており、平年より早く6月中旬で切り上がる可能性がある。やや小ぶりの仕上がりで、2Lサイズの引き合いが強まっている。降雨が欲しいところだが、干ばつ傾向の年は収量的には悪くない。

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たまねぎは、佐賀産の5月下旬から中晩生となって出荷のピークとなる。収穫は6月上旬で終了し田植に入るため出荷はやや減ってくるが、8月いっぱいまで貯蔵物を販売していく。前年はかなりの豊作であったが、今年も前年に近い水準と予想される。兵庫産は生育順調で6月に入って晩生となる。本年産の作柄は平年並みとを予想している。早生は即売のみであるが、晩生は即売のほかに吊玉もあり、年内いっぱい貯蔵品として販売するが、適度の雨もあって肥大も悪くない。

その他

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メロンは、茨城産の県西のプリンスメロンは5月下旬から6月上旬ピーク。貴味メロンは前年より2~3日早く6月中旬にピークになると予想される。いずれも着果時期の好天に恵まれ、生育順調と予想している。作付けは両品種とも前年並である。

019g

梅は、和歌山産が5月の末頃から出荷が徐々に始まってくるが、じょうによりばらつきが大きく、数量は平年作をやや下回ると予想される。出荷のピークでは10日~20日でほぼ平年並みを見込んでいる。

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らっきょうは、鳥取産の生育は順調で前年に続き今年も豊作傾向を予想している。前年より3日程出荷が早いが、始まると同時にほぼピークとなり6月上旬まで出荷の計画である。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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