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需給動向 1 (野菜情報 2020年4月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和2年2月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万2038トン、前年同月比106.9%、価格は1キログラム当たり216円、同93.0%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8506トン、同99.9%、価格は1キログラム当たり186円、同91.2%となった。
 東京都中央卸売市場における指定野菜14品目の価格のうち、平年を下回ったものは、キャベツ(平年比50.1%)、ばれいしょ(同60.4%)、はくさい(同61.6%)、レタス(同61.6%)、ねぎ(同66.5%)、だいこん(同68.9%)、たまねぎ(同70.5%)、ほうれんそう(同82.7%)、にんじん(同96.5%)、さといも(同98.9%)、なす(同99.6%)、平年を上回ったものは、きゅうり(同118.7%)、ピーマン(同117.7%)、トマト(同101.8%)となり、平年を下回った品目が多かった。

(1)気象概況

上旬は、北日本では、旬のはじめは寒気の影響を受けにくかったが、旬の中頃からは冬型の気圧配置となり、強い寒気が流入したため旬平均気温は低く、特に、北海道地方では、9 日に旭川市江丹別で36.0を観測するなど厳しい冷え込みとなった。一方、東・西日本と沖縄・奄美では、寒気の影響を受けにくかったことや、低気圧や前線の影響を受けにくかったため、晴れた日が多く、東日本で旬平均気温が高かったほか、旬降水量は、東日本太平洋側と西日本日本海側でかなり少なかった。特に、東日本太平洋側では、旬間日照時間が平年比124%となり、1961年の統計開始以来月上旬として1 位タイの多さとなった。

中旬は、冬型の気圧配置が続かず、日本付近を前線や低気圧が通過することが多かったため、北日本太平洋側では曇りや雨または雪の日が多く、西日本太平洋側では曇りや雨の降る日が多かった。16日から18日にかけては、発達する低気圧の影響や、その後の一時的な冬型の気圧配置の強まりにより、北・東・西日本日本海側を中心に、大荒れや大雨、大雪となった所があった。上空まで暖かい空気に覆われやすかったことや、低気圧に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んだ時期もあったことから、平均気温は全国的に高く、特に、北・東日本では平年差がそれぞれ+3.5、+3.7と、月中旬として1位の高温となった。また、旬降水量は北日本太平洋側と東日本日本海側、西日本で多く、旬間日照時間は北・西日本太平洋側で少なかった。

下旬は、全国的に高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わった。北日本では、冬型の気圧配置となる日が少なく、低気圧の影響も受けにくかったため、旬間日照時間が多かった。西日本から沖縄・奄美にかけては、低気圧の影響により、西日本日本海側で降水量が多くなったものの、高気圧に覆われて晴れた日が多かった。特に、沖縄・奄美では旬降水量がかなり少なく、旬間日照時間はかなり多かった。また、全国的に寒気の影響が弱かったことや、南から暖かい空気が流れ込んだ日もあったことから、旬平均気温は全国的に高かった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

2月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万2038トン、前年同月比106.9%、価格は1キログラム当たり216円、同93.0%となった(表1)。

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根菜類は、にんじんは千葉産が中心となり、台風の影響が残っていることから入荷は伸びず、価格は安かった前年を大幅に上回った神奈川産が中心となった一方、だいこんでは、暖冬の影響で出荷が前進し潤沢な入荷が続いていることから価格は低迷した(図2)。

葉茎菜類は、全品目ともに暖冬と適度な降雨により生育がよく、平年を上回る入荷となったため価格は平年を下回り、特にキャベツが低迷した(図3)。

果菜類は、きゅうりの入荷量は伸び悩んでいたが、中旬以降の天候回復により入荷量も回復し、価格も落ち着きをみせた。トマトとピーマンは生育期の日照不足から着色が悪く、入荷量は少なめで価格は平年を上回って推移した(図4)。

土物類は、ばれいしょ、たまねぎは北海道の貯蔵ものに加え新物が入荷し潤沢な入荷となったことから、価格は引き続き低迷した(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8506トン、前年同月比99.9%、価格は1キログラム当たり186円、同91.2%となった。(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした4月の見通し

2月の東京中央卸売市場の入荷量は12万2038トン(前年比106.9%)、価格は216円(同93.0%)となり、この時期として大幅安値となった。消費税アップによる外食需要の不振が、昨年からずっと尾を引いていることに加え、新型コロナウィルスによる業務用需要の不振が価格下げの要因となっている。その後、3月に入っての学校休業で業務用需要の柱の一つである学校給食がストップし、さらに需要が失われた。さらにインバウンドの減少や会合の自粛でホテルなどからの需要も大幅に減少した。まさに泣きっ面に蜂といった状況にある。4月には経済活動が再び活発化し、青果物も動き出すと期待している。

産地からの報告では、重量野菜や葉物野菜は引き続き潤沢と予想されている。果菜類は寒暖の差が激しいことや日照不足が影響し、良くて前年並と予想される。価格安から出荷意欲減退の声も聞かれ、市場サイドとしてはしっかりとした価格で荷物を引っ張りたいところである。

根菜類 根菜

だいこんは、千葉産が4月も順調に出荷されると予想している。前進出荷の影響で、若干、少なくなることがあっても、次の作が始まるため出荷ペースは安定して続くと予想している。

 根菜

にんじんは、徳島産のピークは3月下旬からゴールデンウィークまで続く。気温が高く生育は前進化しているが、生産量は前年を上回ると予想される。

葉茎菜類 葉茎菜

キャベツは、愛知産が平年だと4月は減少してくる時期であるが、今年は3月がそれほど多くなかったことから横ばいで推移する見込み。前進化の影響は薄れ、春キャベツや夏タイプも平年並みに始まり、各品種とも生育順調である。千葉産は前進出荷により少なくなることはなく、後作も追いついてほぼ平年並みの出荷が続くと予想している。5月まで潤沢ペース続く見込みである。神奈川産の春キャベツは前年と同様に早めに始まっている。ピークは3月中下旬から4月で、前年並みの出荷と予想される。


はくさいは、茨城産の春はくさいの出荷のピークは3月下旬から4月いっぱいで、5月下旬頃まで続く見込みである。肥大は良好である。


ほうれんそうは、群馬産はハウス物となるが3月後半から4月にかけては出荷量が増えて平年並みの出荷を予想している。畑作が中心の産地であるため田植え作業などで作業が滞ることはないが、大型連休後は徐々に減少しながら推移していく見込み。


ねぎは、茨城産が4月下旬に秋冬物の出荷から初夏ねぎに切り替わる。レタスの収穫作業が早めに終了することが見込まれ。ねぎの収穫調製作業に集中できるため平年を上回る出荷が見込まれる。気温が高く太りも順調である。埼玉産は3月下旬から春ねぎが少しずつ出始め、暖冬ではあるが、4月は平年並みのペースでほぼ3月と同じ数量で横ばいに推移する見込み。


ブロッコリーは、香川産の春作は3月中下旬から徐々に増えて4月がピークになるが、ほぼ平年並みのペースで大型連休には減ってくると予想している。愛知産は平年通りの春ブロッコリーの入荷となろう。定植も順調に行われた。


レタスは、茨城産が前進気味で推移しており、3月に引き続き4月もピークが続き、5月の切り上がりが一週間程度早まって4月末で終わる可能性もある。兵庫産は生育が3週間ほど前進しており、大玉傾向で豊作である。3月下旬から4月にかけて本格的に増え、最大のピークは大型連休明けごろと予想している。


パラガスは、栃木産は生産者数も作付面積も増えており、量的にも前年を上回ると予想している。出荷は、2月初めから始まっているが、ピークは4月からで5月まで続く見込みである。長崎産は県北の産地となり、出荷開始は3月中下旬で4月は減りながら推移し、夏芽が6月から出荷が始まり7月がピークとなる。今年はL中心とやや細めであるが、夏芽は太めを予想している。

果菜類果菜類

きゅうりは、群馬産の生育は順調で3月に引き続き、4月も徐々に増えながら推移し、ほぼ平年並みの出荷と予想される。今のところ大きなマイナスとなる要因は見当たらない。宮崎産は4月が最大のピーク時期であるが、年内から樹の状態がそれ程良くないため、4月は平年を下回る可能性がある。大型連休明けには減ってきて、6月下旬には切り上がる見込み。埼玉産は、定植を後ろにずらした影響で当初は遅れたが、生育は順調である。最大のピークは4月20日過ぎから大型連休にかけてとなろう。前年は4月後半に少なくなったが、今年は天候に問題なければ前年並かやや多いと予想している。


なすは、高知産が1~3月初めまでの夜温が高く、いつも以上に温度管理が難しかったことから出荷は平年を下回っている。今後、好天が続けば徐々に回復に向かい、4月以降は入荷が増え始めるが、平年並みに回復するのは5月に入ってからと予想している。

長なすは、福岡産は順調な出荷が続いている。2~3年前から品種を『PC筑陽』に替えたことが功を奏している。4月から6月がピーク月となるが、花付きもよいことから前年並かやや多いペースを維持できる見込み。


トマトは、熊本産は4月に1回目ピーク、5月上旬に2回目のピークが来ると予想している。やや小ぶりでSサイズが多かったが、4月以降はM~Lサイズが中心になる見込み。愛知産は、順調な出荷が予想され前年並みを見込んでいる。栃木産は、花の質が悪いことから、不作気味で出荷量が少ない。さらに気温の変化が激しく蒸散が間に合わず葉が萎れ、そこから病気が入り易くなっている。1月下旬の天候不順の影響で3月下旬から4月上旬はかなり出荷が少なくなると予想している。

ミニトマトは、熊本産がやや少なめの出荷であったが、4月には前年並みに回復し、作付面積も伸びていることから前年を上回る見込み。中心となる品種は小鈴である。


ピーマンは、茨城産の春ピーマンの入荷が本格化してくるが、露地、温室ともに作付面積が減少しており、前年を下回ると予想している。宮崎産は数量が減少していたが月中旬から再び増え、農家によりバラツキはあるものの樹の状態は悪くなく、前年並みの出荷を予想している。


かぼちゃは、沖縄産が交配時期の悪天候の影響で生育が遅れており、4月については平年並みかやや少ないと予想している。月にはやや多いが週目か週目で切り上がるとみている。

土物類土物類

ばれいしょは、鹿児島産のピークは月中下旬で、月下旬には切り上がる見込み。生育は順調で多かった前年を若干上回ると予想している。品種は、ニシユタカが中心となるが、L~2L中心で肥大も良好である。長崎産は一部で霜害があったが、全般的に順調で出荷に影響はないと予想している。ピークは月下旬から大型連休明けまでとなる。品種はニシユタカで、アイマサリが増えている。さらに病気に強いサンジュウマルも平年通りの作付けとなっている。


たまねぎは、佐賀産が平年よりやや早く始まっており、月に入り本格化し増えてくる見込みである。早生たまねぎは下旬ごろから月上旬まで出荷の見込み。月の天候が収量を左右するが、今のところ順調である。

かんしょは、徳島産の令和元年産は相場が高く、前倒し出荷されたことから、4月は平年をやや下回ることが予想される。最終の品種である里むすめが平年通り月いっぱい出荷される見込み。

豆類豆類

スナップえんどうは、鹿児島産の最大のピークは月で、4月については月の数量の半分程度となり大型連休明けには切り上がる見込み。


そらまめは、鹿児島産は気象災害もなく生育順調で、平年より10日程度早く3月下旬から出荷が始まっており、月中下旬にピークとなり大型連休明けには減ってくる見込み。作付面積は増えているが高温気味で樹が徒長気味である。

その他 その他

たけのこは、静岡産は月から始まっているが、例年より早まっている。ピークは月上旬から月末頃までとなろうが、表年で多い見込みである。

たらのめは、山形産の出荷は平年よりも少ない見込み。

ふきのとうは、山形産が今年は雪解けが早く、早く開花してしまうため4月の天然物はかなり少なくなると予想している。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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