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需給動向 1 (野菜情報 2020年3月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和2年1月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が11万9512トン、前年同月比103.4%、価格は1キログラム当たり234円、同96.7%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万6475トン、同106.3%、価格は1キログラム当たり188円、同88.3%となった。
 根菜類は、平年を上回る気温と適度な降雨でだいこんは平年に比べ安値、にんじんは入荷減から高値となった。果菜類は日照不足の影響で品質が悪く入荷減からきゅうり、ピーマンは平年に比べて高値であったが、トマトは生育順調で安値となった。葉茎菜類は、暖冬により生育が前進したことから入荷が多かったが鍋物需要などが落ち込み、キャベツ、はくさい、レタスは平年を大幅に下回る安値となった。土物類は、ばれいしょ、たまねぎは、引き続き安値で推移している。

(1)気象概況

上旬のうち期間の前半は、北日本では冬型の気圧配置となる日が多かったが、東・西日本では高気圧に覆われる日が多かった。期間の後半は、冬型の気圧配置は長続きせず、7 ~8 日にかけては低気圧が日本海を発達しながら通過したため、東・西日本を中心に大荒れの天気となった。また、南からの暖かく湿った空気が流れ込んだため、東・西日本を中心に気温は平年を大きく上回った。

中旬は、全国的に寒気の南下は弱く、低気圧と高気圧が本州付近を交互に通過したため、冬型の気圧配置は長続きしなかった。低気圧や前線の影響で太平洋側でも雲の広がる日が多かったが、南からの湿った空気の流れ込みは弱く、降水量は少ない所が多かった。北日本日本海側では、旬降水量平年比が55%となり、1 月中旬としては最も少ない値を更新した。

下旬のうち期間の前半は、低気圧と高気圧が本州付近を交互に通過したため、冬型の気圧配置は長続きしなかった。期間の後半は、本州の南に前線が停滞し、低気圧が日本付近をゆっくりと通過したため、東・西日本を中心に曇りや雨の日が多かった。26 ~29 日にかけては太平洋側を中心に大雨となり、屋久島(鹿児島県)では24 時間降水量が284.5ミリ を観測するなど、6地点で1 月の月最大24 時間降水量を更新した。旬降水量は、西日本太平洋側で平年比352%、西日本日本海側で同325%となり、1 月下旬としては最も多い値を更新した。また、低気圧に向かって暖かい空気が流れ込んだため、全国的に気温はかなり高くなり、北・東日本ではそれぞれ平年差+2.8度、+3.7度と1 月下旬としては過去最高の高温となった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

1月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が11万9512トン、前年同月比103.4%、価格は1キログラム当たり234円、同96.7%となった(表1)。

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根菜類は、だいこんは暖冬と適度な降雨により肥大が進み前進傾向となったが、入荷量、価格ともに平年を下回った。にんじんは、台風の影響から回復し、肥大も順調だったものの、品質が良くなかったことから入荷が伸びず価格は高めに推移した(図2)。

葉茎菜類は、温暖な気温により生育が順調に進み全般的に安値傾向とな、特にキャベツは1月中旬から入荷量が増加し、価格が低迷した(図3)。

果菜類は、日照不足で作柄がよくなく、全般的に高値だった特にきゅうりは入荷量が少なかったことや恵方巻需要から価格が高騰した(図4)。

土物類は、北海道産の潤沢な入荷により、ばれいしょ、たまねぎは引き続き低調に推移した(図5)。

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 なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

1月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万6475トン、前年同月比106.3%、価格は1キログラム当たり188円、同88.3%となった。(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした3月の見通し

1月の東京中央卸売市場の入荷量は11万9512トン(前年比103.4%)、価格は234円(同96.7%)となり、若干安めで過去5年間の1月の平均価格261円を大きく下回った。特にキャベツ、ブロッコリー、レタス、ばれいしょ類、たまねぎの大幅安の影響が響いた。いずれも暖冬による気温高で、生育が大幅に前進し潤沢な出回りとなったためである。

暖冬といっても、全ての野菜で生育が良かったという訳ではない。12~1月に晴天が平年のように続かず日照不足の影響で、きゅうりやピーマン、なすでは花が落ち生産力を低下させた。その結果、1月の果菜類の入荷量は1万6778トン(前年比95%)、価格は469円(同111%)という結果となった。この果菜類の高値が全体の低迷に歯止めをかけたことが、230円台という10年前位の平年価格に落ち着いた理由である。業界内では外食産業からの注文が例年ほど伸びず、実際の情勢ではもっと下がっても不思議でない感覚であり、下げ渋りの状況にあるとの見方もある。

昨年10月からの消費税率アップや新型コロナウィルスによるインバウンド需要の冷え込みにより、外食産業に価格の牽引が期待できなくなっている。特にトマトの不振が長引いており、昨年の価格は上回ったものの平年比ではかなり下回っている。野菜全般では、3~4月は業務需要が旺盛となる時期で価格が高値に振れる時期である。しかし、今年の場合は特殊で、数量が少ないから価格が高くなるといった展開ではなく、数量が少なくても平年並みかやや高い水準に収束すると予想している。

根菜類 根菜

だいこんは、神奈川の三浦産は暖冬の影響で前進しており、採り遅れの状況にある。出荷量はまだ多くはないが、春系も順調に始まってきており、3月も平年を上回る出荷が予想される。千葉産トンネル栽培の春だいこんは若干早めに始まっている。平年は4月にピークとなるところであるが、今年は3月にピークが来ると予想している。作付面積は前年並みで、サイズは2Lが中心で生育は順調である。

にんじんは、徳島産が10月中旬にしゅしたものになるが生育は順調で10日程度前進化しており豊作傾向で推移している。3~4月いっぱいがピークの見込み。千葉産のピークは2月までだが、出荷は3月いっぱいの見込み。台風の影響は12月出荷までは少なかったが、年明けの1月以降はほぼ前年並みの出荷となっている。

葉茎菜類葉茎菜類

キャベツは、愛知産が2~3週間の前倒しで平年を上回る出荷となっているが、2月に引き続き3月も潤沢なペースが続く見込みである。中心は「冬のぼり」などの冬系であるが、春系が徐々に増えてくる。神奈川の三浦産の生育は順調で、全体的に前進している。今後の出荷は平年を若干、上回ると予想している。今春は昨年と同様に出荷スタートが早めで2月下旬からとなり、3月下旬から4月にピークとなる見込み。千葉産は、暖冬の影響で前進しており、2月に引き続き3月もこのまま前進傾向で推移し、3月としては平年並みの入荷を予想している。

はくさいは、茨城産の一部の圃場で品質低下により廃棄するものもあるが、かなり回復してきている。それでも今冬の出荷量は少なく、3月はかなり少なくなると見込んでいる。兵庫産の冬採りのピークは平年だと2月だが前進しており後半は減少してくる。3月は冷蔵品のみとなり数量的には前年並みで3月いっぱいの出荷となろう。3月の出荷量は前年を下回る見込みである。

ねぎは、茨城産は潤沢な出荷が続いているが、数量的には平年並みか微増となっている。出荷ペースについては、大幅な前進はなく、ほぼ平年並みとなっている。今後、晴天が続けば徐々に増えながら推移し、3月は平年を上回る見込みである。埼玉産は前年の台風の被害を若干引きずって出荷は遅れている。それでも暖冬による気温高と降雨もあって太物が中心になっている。3月の彼岸過ぎに春物に切り替わるが、今のところ病害の発生も少なく生育は順調で3月とすれば平年並みに切れ目のない出荷が出来ると予想している。

ほうれんそうは、埼玉産が播種作業も順調に終了し、潤沢な出荷が続く見込みである。3月は前倒し出荷の影響と他の作物の準備作業によりなだらかに減ってくるが、天候に恵まれれば平年並みかやや多くなると予想している。

セルリー(セロリ)は、静岡産は端境期で少ないが、作柄は良好で4月に入り再びピークとなる見込み。

レタスは、茨城産は全てトンネル栽培のため生育は順調であり、前進気味に出荷が始まってきている。4月末までが数量のピークとなるが、4月に端境期が生じる可能性もある。静岡産も生育が大幅に前進しており、3月は前年と同様に平年と比べて大幅に少ないと予想している。品質的には、大玉で高品質物の出荷となる。香川産は、気温が平年より高く、雨も適度にあって一週間程度の前進傾向となっている。ピークは2月末頃から3月で、冷え込みが続くとL中心になるが、おおむね2L中心になると予想される。兵庫産は3月までは少なめの出荷となる見込み。前進気味ではあるが、出荷ペースは暖冬であった前年並みと予想される。 

ブロッコリーは、香川産は生育が順調で2週間近く前進しており、3月以降はいったん減少するものの4月にもう一度ピークが来ると予想している。愛知産は冬ブロッコリーの収穫作業と並行して春ブロッコリーの定植作業が行われ、3月の出荷はやや落ち着いた展開が予想され、4月中旬からまとまった数量になる見込みである。

アスパラガスは、佐賀産のハウス物は2月下旬から3月上旬がピークだが、今年は冷え込みが足りず、やや細めで平年作を下回る可能性がある。

かぼちゃは、沖縄産は定植の遅れや開花時期の天候不順で例年より2~3週間の遅れとなっており、出荷のピークは2月下旬から3月の下旬までの見込み。作付面積の減少で前年を下回ると予想している。

果菜類果菜類

きゅうりは、群馬産は平年と同様、3月にはピークになるが、今年は暖冬の割に日照不足が続いたことや寒暖の差が大きいことから、晴天が続かなければ前年を下回ると予想している。宮崎産は天候不順が続いた影響で、当面平年を下回る出荷が3月まで続くと予想している。千葉産は花付きが悪く実のふくらみも悪い。そのため少な目の出荷が続いている。3月は2月の天候にもよるが、前年9月の台風被害で生産をあきらめた人もいるため、平年に近い水準に留まる見込み。

なすは、高知産は1月の長雨の影響で減少傾向のなか3月中旬以降は数量が増えてくるが、3月としては前年を下回る見込み。

トマトは、熊本産は2月に数量が減少したが3月に入り再び増えてくる見込み。病気の発生もなく、生育は順調で平年並みの出荷を予想している。栃木産は年明け後、晴れの日はあるものの、雪や雨の日と寒暖の変化が激しいく、3月中下旬に少なくなって平年を下回ると予想している。愛知産は2月は産地の切り替わりで一旦出荷は減るが、3月に再び増えて前年並みとなる見込み。

ピーマンは、宮崎産の出荷数量は少なめだったが3月には平年並みまで回復してくると予想している。茨城産の春ピーマンは越冬物の出荷量は天候不順の影響でかなり少ない。春物は3月には回復してくるが、昨年の台風で施設が倒壊して作付けは80%となっており、平年より少なめの見込み。

土物類土物類

ばれいしょは、鹿児島産はすでに出荷が開始しているが、最も出荷の遅い出水地域では平年では4月初めからであるが、今年は1週間から10日程度早まって、3月下旬から出荷される見込みである。自然災害もなく生育は順調である。

たまねぎは、静岡産の黄たまねは豊作傾向で、3月もピーク続くが20日を目途に出荷していくが、前年と同様の出方と予想している。品質は良好で、サイズはLが30%、2Lが20%となっている。熊本産は『サラたまちゃん』の出荷となるが3月以降は葉付きのものから葉切りのものに切り替わる。前年に続き暖冬のため、生育は順調で通常は4月がピークだが、若干早まっている。病害が平年より早く出ている点が懸念材料であるが前年並みの出荷を予想している。

豆類 ほか豆類

そらまめは、鹿児島産に関しては自然災害もなく順調で、最大のピークは3月中下旬と予想しているが、長期予報から一旬前倒しの可能性もある。そのため平年より早く4月初めに切り上がる見込み。

スナップえんどうは、鹿児島産が3月以降、やや減りながら推移し、3月いっぱいで切り上がる見込み。生育は順調であるが、今後虫害と降雨が続けば病気の発生も懸念される。愛知産は安定した天候であれば3月上旬からまとまった量の出荷となる見込み。

グリーンピースは、鹿児島産は気象災害がなく生育が順調で、前進傾向もあり月に入り急増し、例年より早く月前半で切り上がる見込み。

たけのこは、福岡産、鹿児島産は表年で豊作傾向の産地が多く、熊本は裏年の産地が多い。ピークは月下旬から月上旬である。

なばなは、台風被害後に蒔き直した千葉産の作付けは70%程度と少なくなっているが、暖冬と好天で生育が前進化しており、月のひなまつりまでがピークとなるが出荷は月いっぱいでほぼ終了する見込みである。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

農林水産省、農畜産業振興機構は暖冬の影響ではお手頃価格となっている野菜の消費拡大を図るため“『野菜を食べようプロジェクト”を展開しています
  ALIC https://www.alic.go.jp/content/001173976.pdf
  農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/2ibent.html

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