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需給動向 1 (野菜情報 2019年12月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和元年10月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が13万5007トン、前年同月比100.5%、価格は1キログラム当たり217円、同82.4%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万5737トン、同104.7%、価格は1キログラム当たり189円、同77.1%となった。
 10月12日に関東地方に上陸した台風は、各地に浸水やハウス損壊などの被害をもたらしたが、生育が前進傾向であったことや蒔き直しが間に合ったことなどから野菜生産には大きな影響はなく、順調な入荷が続いた。価格も前月からの安値傾向をひきずったまま推移した。

(1)気象概況

上旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変化したが、東・西日本太平洋側や沖縄・奄美では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。期間の前半は、台風第18号と台風第18号から変わった温帯低気圧が、沖縄・奄美付近から日本海、北日本を通過し、広い範囲で大雨、大荒れとなった。また、北・東・西日本では、期間の前半を中心に暖かい空気に覆われて気温が上昇し、多くの地点で真夏日を観測するなど、かなりの高温となった。

中旬は、期間の中頃は高気圧に覆われて晴れた日もあったが、台風や低気圧、前線、湿った空気の影響を受けやすく、東・西日本太平洋側や沖縄・奄美を中心に、広い範囲で曇りや雨の日が多かった。12日には台風第19号が伊豆半島に上陸し、関東甲信地方と東北地方を通過したため、1113日にかけて東日本から東北地方を中心に、広い範囲で大雨、暴風、高波、高潮となった。箱根(神奈川県)では12日の日降水量が歴代の全国で1位となる922.5ミリ、ひっ(宮城県)でも558.0ミリを観測するなど、多くの地点で記録的な大雨となり、13都県で大雨特別警報の発表に至った。この大雨の影響で、広い範囲で河川の氾濫が相次いだほか、土砂災害や浸水害など大きな被害が発生した。また、江戸川臨海(東京都)で観測史上1位となる最大瞬間風速43.8メートルを記録するなど、記録的な暴風となった所もあった。その後も、1819日にかけて南から湿った空気が流れ込んで前線の活動が活発となり、東・西日本太平洋側を中心に大雨となった所があった。北・東日本太平洋側の旬降水量平年比は、それぞれ523%、677%と、1961年以降で1位の多雨となった。各地域の気温は、期間のはじめと終わりは南から暖かい空気が流れ込んだため平年を上回ったが、期間の中頃は大陸から冷たい空気が流れ込んだため、北日本を中心に平年を下回る時期もあり、札幌(北海道)では初霜と初氷をいずれも平年より9日早い16日と18日にそれぞれ観測した。

下旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変化したが、台風や低気圧が本州南岸から日本の東をたびたび通過したため、北・西日本太平洋側と東日本では曇りや雨の日が多かった。また、南から暖かく湿った空気が流れ込みやすく、太平洋側を中心に大雨となる日もあった。2122日は、台風第20号や台風第20号から変わった温帯低気圧と活発な前線の影響で東日本太平洋側を中心に、大雨となった所があった。また、2426日にかけては、西日本、東日本、北日本の太平洋沿岸を進んだ低気圧に南から湿った空気が流れ込み、台風第21号周辺の湿った空気の影響も受けて、大気の状態が非常に不安定となった。このため、北・東・西日本太平洋側の広い範囲で大雨となり、佐倉(千葉県)では25日の日降水量が観測史上1位となる248.0ミリを観測した。この影響で、関東地方や東北地方では河川の氾濫や土砂災害などの大きな被害が発生した所があった。一方、北日本日本海側と沖縄・奄美では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。気温は、北日本を中心に暖かい空気に覆われやすく、南からも暖かく湿った空気が流れ込んだため、北・東・西日本ではかなり高く、北日本の旬平均気温平年差は+2.5度と、1961年以降で1位の高温となった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

10月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万5007トン、前年同月比100.5%、価格は1キログラム当たり217円、同82.4%となった(表1)。

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根菜類は、北海道、東北産地が終盤となり、千葉などへ産地が移行した。台風の影響が心配された千葉産のだいこんは、き直しが間に合ったこともあり入荷は順調であった。にんじんは前年が数量不足から高値傾向となったため、前年の半値近くまで価格が下がった(図2)。

葉茎菜類は、夏秋産地である長野産、群馬産に加え、後続の関東産が加わる展開となった。千葉産のキャベツは生育が前進傾向であったため、台風によって出荷量は平年並みになったものの、価格は下旬にかけて下落した(図3)。

果菜類は、夏秋産地である東北や関東の残量の出回りとなった。トマトは後続の熊本産も入荷し下旬にかけて入荷量が増え、前年を下回った(図4)。

土物類は、千葉産のさといもは台風による被害が見られ、中旬に入荷が減ったことから、価格は平年を2割ほど上回った。北海道産が中心となったばれいしょの入荷量は前年を1割近く上回ったが、単価は2割近く前年を下回った(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

10月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万5737トン、前年同月比104.7%、価格は1キログラム当たり189円、同77.1%となった(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした12月の見通し

9月の台風15号と10月の台風19号は関東地方を直撃し、さらにはるか沖合い北上した台風21号の影響も受け、関東・東北地方は大雨による甚大な農業被害を受け、やや窪地になっている畑は水没の憂き目に遭った。いちご類や果菜類のハウスが強風で損壊し、後々になって影響が出るのではないかと懸念される。

このような農業被害はテレビを始めとするメディアで大々的に報道され、価格高騰を懸念する内容であった。ところが、実際市場の価格推移は平常であり、10月の東京都中央卸売市場の入荷は前年の100.5%、価格は21782.4%とやや低迷といって良い。特に中旬は入荷減の価格も前年より安く、低迷といって良い状況であった。産地サイドから、高値警戒から該当品目を使うメニューが外されている嘆く声も聞かれた。経済情報番組では、10月以降の消費意欲減退を分析していたが、いよいよ買い控えが食料品まで影響を及ぼしている。

12月については、仕入れのお客様に迷惑をかけないような産地の配慮が強く働いて、数量は揃えて出荷してくると思われる。しかし、本当に出回り不足になるのは年明け以降ではないかと予想している。12月の価格については、前年並かやや安い水準を予想している。11月の好天で葉物は急ピッチで回復するなど、出回り不足を招く要因は見当たらない。

根菜類 

だいこんは、千葉産の生育は問題なく順調である。11月に入りピークとなり年明けも横ばいで続く。神奈川産は台風の影響が多少あるが、11月に入り回復して平年並みの水準を見込んでいる。12月も2L中心で平年並みで、年明け2月までピークが続く見込み。また、年末に欠かせない野菜である「三浦大根」については122527日の3日間の販売であるが、作付けは前年の80%と減っている。

にんじんは、埼玉産が始まったところであるが、尻づまりの傾向で遅れている。12月中旬までが最大のピークとなる見込み。前年は太物が多かったが、今年は若干細めである。そのため前年よりやや少なめで、平年並みの出荷となろう。千葉産は7日~10日程度の遅れはあるが、生育は全般に順調に推移している。台風により被害を受けたのは一部で、11月下旬から本格化して12月については平年並みの出荷を予想している。

葉茎菜類

キャベツは、千葉産は台風よりも大雨の影響を受けて、生育遅れや根の傷みで出荷に影響が出たが、12月には回復し、例年通りの出荷と予想している。神奈川産は台風の影響で定植が遅れた。そのため数量的には伸び悩み、当初は少ない出荷が続き、12月下旬ごろに例年並に追いついて来ると予想している。作付けについては例年通り行われた。

はくさいは、茨城産のうち北つくば地域で台風や大雨の被害を受けているが、年内についてはそこそこの出荷ができると予想している。常総ひかり地域では、作型により台風とその後の大雨の影響を受けているが、しっかり管理できているじょうは問題なく、現状はかなり回復しており12月は平年に近い水準で出荷の見込み。

ほうれんそうは、群馬産のハウス物については大雨の被害なく、平年並みの出荷が期待できる。露地については冠水した圃場もあり、ほとんど出荷できず、特に「ちぢみほうれんそう」はしゅができなかったこともあり、トータルで前年の8090%の出荷と予想される。埼玉産は、台風とその後の大雨、曇天の影響で播種作業が遅れていたが、12月は回復して平年の80%程度と予想している。主力となる露地(小トンネル)栽培は、天候の影響を受け易いが、年末については平年並みの出荷を見込んでいる。

ねぎは、茨城産が台風による風と降雨の影響で平年の9095%程度で推移しているが、圃場は原状回復しており、年内いっぱいかかって平年並みに戻る見込み。千葉産は台風15号および19号の強風で倒されたが、一定の方向に吹いたため首の部分の損傷や病気が少なく、年内については大きく減ることなく、平年並みの水準の見込みを維持できると予想している。

レタスは、静岡産においては台風の被害はそれ程でなく、順調に推移しており2L16玉中心と予想している。当面、12月がピークであるが、豊作であった前年は下回る見込み。茨城産は、雨が多く平年よりは大幅な減収となっている。今後も回復することなく減りながら推移する。兵庫産は10月下旬にまとまった雨があったものの生育は順調である。12月の入荷数量は前年を上回り、やや前進しており豊作気味である。長崎産は、9月の台風で強風に見舞われたが、対策は万全で問題なかった。

ブロッコリーは、埼玉産が台風や大雨の影響で少なめだったが回復し、12月については平年並みの出荷に戻ると予想している。寒波が襲来すると、その分出荷が減ることも想定されるが、品質に万全を期したい。愛知産は、自然災害がなく順調で、作付けは平年どおり行われている。若干前進気味であるが、当面のピークは12月で4月まで続く。

果菜類

かぼちゃは、北海道の上川管内は12月中旬までの出荷となるが、前年を上回る出荷が予想される。生育が順調で量的に多く、需要期に積極的に出荷してゆく。

きゅうりは、宮崎産の定植は順調で、10月の好天もあって樹がしっかり出来上がった。昨年は自然災害で少なかったが、今年は順調で年内は豊作気味に推移する見込み。

なすは、高知産が12月に入り2回目のピークが来て、年末年始については大きく落ち込むことなく、ほぼ前年並みの出荷が予想される。

トマトは、熊本産は秋口に台風などの自然災害がなく天候に恵まれたことから生育は順調で、12月は前年並みで中旬にピークが来ると予想している。品種は「桃太郎」が中心で「りんか」もある。愛知産は秋の天候不順が影響してトータルの出荷は平年を下回ると予想している。12月についてはL中心だが、小玉傾向と予想している。

ピーマンは、茨城産が12月は温室物中心となるが、台風による風と大雨により一部のハウスで損傷や冠水などの被害が出た。年内から年明けまでは例年より5~10%少なく推移する見込み。宮崎産は前年が災害で少なかったため、前年比115120%の出荷が予想される。樹勢も良好で、花も付いており順調に推移することが予想される。

土物類 

かんしょは、千葉産は香取地域で台風21号による大雨で冠水した畑もあって、生産量は平年を下回ると予想している。年内は「ベニアズマ」「シルクスイート」中心に「愛娘」となる。「べにはるか」が年明け中心である。収穫作業が遅れ気味だが、その分、肥大は良好である。

さといもは、埼玉産が自然災害の影響もなく、平年並みの出荷が予想される。サイズはL中心で平年より小振りで、単収は前年を下回ると予想している。品種は「だれ」を中心に「蓮葉」も出荷されている。新潟産は8月のフェーン現象や9月の水不足で小玉が中心で、出荷量は前年の80%程度と少ない見込み。

ばれいしょは、北海道の十勝地方の収穫は終了し豊作傾向である。全道でも前年比110%以上と報告されており、出荷は12月末までと予想している。Lサイズ中心であるが、2Lが例年より多く、その分Mが少ない。品種は「洞爺」が増えているが「マチルダ」は前年並みである。

たまねぎは、北海道産の収量は前年よりやや多めで、相場との兼ね合いはあるが、ほぼ計画的に年明けの5月まで出荷が続く。

ごぼうは、青森産は豊作で、出回りが多いと予想している。九州産の短根ごぼうは若干遅れはあるが、生育は順調である。

れんこんは、茨城産が台風の影響で平年を10%程度下回ると予想しているが、年末はある程度、前年に近い水準で出荷できると予想している。品質については何ら問題なく、安心して仕入れることができる。

その他 

いちごは、佐賀産の生育は順調で、「さがほのか」は12月中旬、「いちごさん」は年末頃にピークを迎える見込み。定植は順調に終わったが、台風による風の影響を若干受けている。栃木県は台風の被害を受けた地域もあったが、県内最大の産出量を誇るJAはがの管内では他産地ほどの被害がなく、生産量は前年に近い水準で12月がピークになる見込み。

みつばは、正月に欠かせない商材であるが、茨城県では作付けは減少傾向である。通常、9~10月は根株に養分が必要な時期であるが、今年は天候不順が続いたことから、例年を下回る出荷が予想される。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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