野菜振興部 調査情報部
上旬は、北日本から西日本にかけては、高気圧に覆われ晴れて厳しい暑さの日が多く、東日本太平洋側と東日本の日本海側では、旬間日照時間の平年比がそれぞれ151%、159%となり、1961年の統計開始以来、8月上旬として第1位の多照となった(東日本日本海側は1位タイ)。また、旬平均気温は、東日本は平年差+2.6度、西日本は平年差+1.5度と1961年の統計開始以来、8月上旬としては1994年に次ぐ第2位の高温となった。6日は台風第8号が宮崎県に上陸した影響で西日本を中心に広い範囲で雨が降り、大荒れとなった所もあった。また、北海道地方は、8~9日にかけて台風第8号から変わった低気圧の影響で大雨となった所があった。7~10日にかけては、台風第9号や湿った空気の影響で曇りや雨となり、8日を中心に大荒れとなった所があった。
中旬は、北日本は低気圧や前線の影響で、天気は数日の周期で変わった。東・西日本は、13日ころまでは上旬に引き続き、高気圧に覆われ晴れて厳しい暑さの日が続いた。14~16日にかけては台風第10号の影響で広い範囲で曇りや雨となり、高知県安芸郡馬路村の魚梁瀬で、48時間降水量859.0ミリを観測するなど、四国地方や近畿太平洋側を中心に広い範囲で大雨となった。また、フェーン現象の影響で、日本海側を中心に気温が上がり、新潟県や山形県、石川県など6つの地点で日最高気温が40度を超える厳しい暑さとなった。また、15日は日最低気温も新潟県を中心に記録的に高くなった地点があり、糸魚川では31.3度と全国の日最低気温の高い記録を更新した。その後は高気圧に覆われた日もあったが、湿った空気の影響で曇りや雨の日が多かった。
下旬は、北日本から西日本にかけては低気圧や前線の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かった。西日本太平洋側と西日本日本海側では、旬間日照時間の平年比がそれぞれ47%、42%となり、1961年の統計開始以来、8月下旬として西日本太平洋側は第1位、西日本日本海側は第2位の寡照となった。23日ころにかけては、オホーツク海高気圧の影響で北日本では気温が平年を下回る所が多かった。また、24~26日は前線が本州の南まで南下したため、北日本から西日本にかけては気温が平年を下回る所が多かった。27日以降は前線が日本海沿岸へ北上したため、太平洋高気圧縁辺の湿った空気が入りやすかった西日本を中心に大雨となった所があった。特に、28日は対馬海峡付近の前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため、九州北部地方では記録的な大雨となり、佐賀県、福岡県および長崎県に大雨特別警報が発表された。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万6330トン、前年同月比106.4%、価格は1キログラム当たり240円、同82.8%となった(表1)。
根菜類は、北海道産の生育不良が解消し順調に入荷した。だいこんも下旬にかけて入荷が増え、価格は前年を大きく下回った(図2)。
葉茎菜類は、7月以降の低温と長雨の影響で生育遅延や病害などが発生し、入荷は平年並みとなる品目が多かった。はくさいは生育が回復し、入荷が多かったことから中旬にかけて価格は低迷したが、下旬には回復した(図3)。
果菜類は、梅雨明け後から東北産や関東産の生育が回復し、なす以外は入荷量が前年を大きく上回った。なかでもトマトは前年が少なかったことから、価格は前年の半値近くまで下落した(図4)。
土物類は、さといも、たまねぎは入荷が少なかったが、ばれいしょが下旬にかけて北海道産の出回りが順調だったことから入荷量は前年を2割近く上回り、それに伴い値を下げた(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
8月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万1632トン、前年同月比107.6%、価格は1キログラム当たり213円、同79.8%となった(表3)。
1品目別の詳細については表4の通り。
8月の東京市場は入荷量が12万6330トンで前年比106.4%、価格は240円で同82.8%と平年並みの展開となった。遅い梅雨明けとその後の猛暑に見舞われ、さらに北九州では豪雨被害があり、関東ではお盆明けから猛暑は一旦途切れ、雷雨が多い不安定な天気が続いた。平野部では夜温が下がって一安心となったが、山間部では日照不足が続いた。東海から関東地方ではお盆前後の播種作業は順調に乗り切ったと思われる。
『干ばつに不作なし』の喩えどおり、果菜類を中心に潤沢な出回りが続き、市場では夏の時期に起こりがちな急落や急騰もなく、店頭では買い易い価格での販売が続いた。高温で前進した影響で、きゅうり、トマトなど一部の品目で9月に入り一転して高値傾向になった。昨年は、6~7月の北海道の長雨や地震による混乱が続くなど、市況では予期せぬ出回り不足に直面したが、今年も、8月までの潤沢供給の反動で10月は出回り不足から、一時的に高騰する場面も予想される。
だいこんは、青森産が順調な生育から9月に入り本格化し、10月までピークが続く見込み。サイズは、2Lが中心になっていくと思われる。北海道産は前進しており、平年では10月20日前後に切り上がるが、今年は10日ほど早まる可能性もある。出初めは大きかったが、L中心とやや小さくなっている。
にんじんは、北海道産の収量は平年を10%程度上回ると予想している。干ばつ気味の中での生育となったが、平年より長めで大振りになった。出荷は11月上旬まで。
キャベツは、群馬産は9月以降、10月までピークが続くが、ほぼ平年並みの出荷が予想される。
はくさいは、長野産は平年を下回る出荷となっている。この夏の日照不足の影響で、終盤となる11月上旬まで少なめの出荷が続く可能性が大きい。
ねぎは、青森産が降雨が少なく細めでLサイズ中心の見込みである。出荷のピークは9~10月であるが、稲刈と重なる9月下旬以降はやや少なくなると予想している。茨城産は9月から秋冬ねぎとなるが、引き続き順調で10月中旬以降増えて、レタスが終了次第ピークとなってくる見込み。
ほうれんそうは、群馬産は株が細く苦戦したが9月に入り徐々に回復し10~11月が最大のピークとなる見込み。10月に入り露地が始まってくるが、播種作業は順調で平年並みの出荷が期待できよう。
レタスは、長野の高冷地では二期作物となるが、日照不足の影響で病気の発生も見られる。10月については例年より少なめの状況続くと予想している。標高の低い地域では気温も下がってきており、平年並みの出荷が期待できる。10月いっぱいの出荷となるが、前年は9月の台風で数量が少なかったことから、前年を上回ると予想している。茨城産は8月初旬の定植物が10月上旬から予定どおりの出荷となる見込み。9月に入り夜温が下がってきて、10月中旬ころからピークに入ると予想しており、前進出荷はない見込み。面積はほぼ前年並みか微減といった状況である。群馬産は10月後半には急減してくるが、価格が思った程でないことから定植が控えられた可能性もある。
ブロッコリーは、長野産が病気の発生もあり遅れが出たが10月以降については、8月定植であり平年並みに回復の見込み。最終は11月中旬で終始氷詰めで品質は良好である。青森産は秋ブロッコリーとなるが、9月とほぼ同じ数量が続く見込み。数量的には前年並みを予想している。
きゅうりは、福島産の露地もので病害の発生が多いが10月中下旬までの出荷を見込んでいる。施設ものは多湿の生産環境で苦戦している。抑制は順調であるが10月としては平年を下回る見込み。
なすは、高知産は8月上旬の台風10号とその後の長雨の影響で平年より遅れている。前年も豪雨被害で出遅れがあったが、今年の場合は全県的レベルの遅れとなっている。本格出荷は9月中旬からとなろう。栃木産は10月まで緩やかに減りながら推移する見込み。現状までの状況では前年を下回る出荷になっている。
トマトは、茨城産の抑制トマトの出荷が10月中旬までは多い見込み。最終の出荷は12月上旬の霜が降りる頃と予想している。青森産は高温と干ばつの影響で前進気味で、収量も大幅に伸びたが、その反動と高温によるダメージが重なり、10月は少なめと予想される、11月上旬まで品質がよいと見込んでいる。北海道産は10月についてはダラダラと出荷が続き、切り上がりは平年どおり11月中下旬を予想している。
ピーマンは、茨城産の6月中旬~8月に定植した秋ピーマンが中心の入荷となる。最初のピークは9月中下旬と予想されるが、10月についても平年並みの出荷が予想される。温室ピーマンも10月に始まってくるが、まだまだ少ない。福島産は9月以降は樹がバテ気味で、例年を下回る出荷となり、最終は10月いっぱいで平年並みを予想している。
いんげんは、福島産の6月定植の夏秋採りは、高温が長く続いたこともあり順調である。蔓ありのどじょうインゲンタイプであり、10月いっぱい出荷が続く。
ばれいしょ類は、北海道の道南では収量は平年をやや上回ると予想している。Lサイズが中心であり、ライマン価も平年並で高く内容充実している。9月下旬から出荷のピークに入り、年明けまで出荷の見込み。
かんしょは、千葉産が「ベニアズマ」「シルクスイート」がスタート時期は小振りであったが、9月に入り回復しており、作柄も平年並みで、引き続き11月上旬までは収穫しながらの出荷を見込んでいる。徳島産は肥大が良好で豊作傾向である。10月以降、出荷が本格化し、11月がピークとなる見込み。台風の直撃を受けたが、程良い湿り気となって生育は順調である。
たまねぎは、北海道のオホーツク地方で9月の初めにたまねぎの水害が報道されたが、北見は順調で問題ない。収穫は引き続き10月いっぱい続き、生産予想量は平年より多い見込み。天候に恵まれ肥大順調で、L大中心となっている。出荷は来年の5月まで続く見込みである。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
クリックすると拡大します。
クリックすると拡大します。