[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

需給動向 1 (野菜情報 2019年9月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和元年7月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万302トン、前年同月比102.2%、価格は1キログラム当たり243円、同90.2%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万8580トン、同107.0%、価格は1キログラム当たり210円、同85.4%となった。
 関東、東北、北海道産が中心の出回りとなったが、前年は価格が高めに推移した品目が多かったことから、多くの品目で前年に比べて価格が下回った。一方、生育期に日照不足、気温変動、干ばつなどの影響を受けた果菜類では入荷が平年を下回り、価格は平年を上回った。

(1)気象概況

上旬は、梅雨前線が日本の南海上から本州の南岸に停滞し、オホーツク海高気圧も出現して湿った気流の影響があったため、北日本日本海側で晴れの日が多かったほかは、全国的に曇りや雨の日が多く、沖縄・奄美や西日本太平洋側を中心に所々で大雨となった。九州南部・奄美地方の旬降水量は平年比374%となり、1961年の統計開始以来、月上旬としては最も多くなった。気温は、東・西日本では曇りや雨の日が多かったことや寒気の影響で低くなった。

中旬は、梅雨前線が東・西日本付近に停滞する日が多く、オホーツク海高気圧も出現することが多かった。また、18日から20日にかけては台風第号が東シナ海を北上した。このため、北日本太平洋側から東・西日本にかけては曇りや雨の日が多く、20日には長崎県の五島市と対馬市に大雨特別警報が発表され、20日の降水量は長崎県五島市福江で294.0ミリ、長崎県対馬市厳原で288.5ミリを観測するなど記録的な大雨となった。また、太平洋側では日照時間がかなり少なくなったところがあり、九州南部・奄美地方では平年比47%となり、1961年の統計開始以来月中旬としては1982年と並んで最も少ない記録となった。一方、北日本日本海側では高気圧に覆われて晴れた日もあり、天気は数日の周期で変わった。

下旬は、中頃まで太平洋高気圧の本州付近への張り出しが弱くて、湿った空気が流れ込みやすく、また台風第号が27日に三重県南部に上陸し、その後熱帯低気圧に変わって東日本を東進したため、近畿地方から東日本を中心に所々で大雨となった。旬の終わり頃は太平洋高気圧に覆われ全国的に晴れて気温が上がったため、多くの地点で真夏日となり、猛暑日となったところもあった。なお、九州南部、九州北部、四国、近畿、北陸の各地方では24日頃、中国地方は25日頃、東海地方は28日頃、関東甲信地方は29日頃、東北南部は30日頃、東北北部は31日頃に梅雨明けしたとみられる。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

008a

(2)東京都中央卸売市場

7月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万302トン、前年同月比102.2%、価格は1キログラム当たり243円、同90.2%となった(表1)。

009a

根菜類は、だいこん、にんじん共に主産地の北海道と青森で干ばつの影響があるものの、入荷量は平年並みとなった。価格は天候不順による高値だった前年を大幅に下回った(図2)。

葉茎菜類は、はくさい、レタスは春の低温等の影響により生育が遅延していたものの、6月以降天候に恵まれたことから、長野産を中心に順調な出荷となり、レタスについては出荷調整が入った。他の品目も関東産を中心におおむね順調な生育となり、出荷量は少なかった前年を上回り、価格は下がった(図3)。

果菜類は、関東、東北、北海道からの入荷となったが生育期の激しい気温変動や日照不足により遅れや品質低下が見られた。不安定な入荷から価格は高めに推移し、全ての品目で平年比を上回る結果となった。特にきゅうり、なすは中旬に急騰した(図4)。

土物類は、九州産が終盤で数量を減らした。たまねぎは後続の兵庫産の作柄が良好で大玉となったことから、入荷量は前年をやや上回り、価格は前年をかなり下回った(図5)。

010a

なお、品目別の詳細については表2の通り。

010b011a012a

(3)大阪市中央卸売市場

7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8580トン、前年同月比107.0%、価格は1キログラム当たり210円、同85.4%となった(表3)。

012b

品目別の詳細については表4の通り。

013a014a015a

(4)首都圏の需要を中心とした9月の見通し

7月の東京市場における野菜の販売実績は、入荷は年比98.2%の12万302トン、価格は同96.4%の243円となった。入荷量は平年並み、価格はやや安いといったレベルである。前年は北海道の長雨から、だいこんなどの生育が遅れて全国的な出回り不足を招いた。今年は東日本の梅雨明けが遅れて、野菜の価格高騰を懸念する声が大きかったが、実際はキャベツやブロッコリー、トマトなど潤沢な出回りで、普段通り買いやすい価格であった。

猛暑により買い物客の出足が鈍ることが懸念材料ではあるが、9月以降は学校が再開し、外食メニューの変更もある。関東では稲刈りも忙しく、また秋冬物の播種や定植にも忙殺される時期でもあることから、猛暑に区切りがつく盆明けから、市場価格は徐々に高くなりながら推移すると予想している。

根菜類 根菜

だいこんは、北海道産は播種作業の遅れと7月の曇天と降雨、下旬の干ばつから出荷量は9月上旬に谷間となる見込みだが、後半には生育回復により急増し、10月20日ごろまで出荷の見込みである。

にんじんは、北海道産の出荷のピークが続いているが、今後は徐々に歩留まりが低下し、漸減しながら、10月いっぱいまで出荷の見込みである

葉茎菜類葉茎菜類

キャベツは、群馬産は定植作業の遅れと7月の長雨から生育が遅れ、大きいサイズが少なく、9月についても8月と同じ傾向となり横ばいで推移し、平年を下回ると見込んでいる。

はくさいは、長野産がには出荷のピークを迎えるが、作付面積は前年を上回っている。9月は標高1000メートル前後のじょうからの出荷となるが、高温でダメージを受けているものの前年並みの出荷は確保できよう。

ほうれんそうは、岩手産の生育が順調でピークは気温の下がる8月末頃から9月中旬と予想される。梅雨時期の天候不順で病害の影響も散見されるが出荷に影響はない。群馬産は、作柄としては梅雨明け後の高温でそれ程良くないが、8月下旬から9月はやや増加する見込み。

レタスは、長野産は二期作の定植は順調に出来ているが、日照不足と長雨で活着が悪いことから、9月には大きな出荷のピークはないと予想している。群馬産は長雨の影響で品質は良くないが9月中旬から再び増え、切り上がるのは10月中旬である。

ブロッコリーは、北海道産は干ばつが続いていたが、7月に入り適度の降雨もあって生育順調で、10月まで出荷は続く見込み。

果菜類

きゅうりは、福島産は9月からハウスの抑制物となるが定植も計画通り終了し、生育は平年並みに回復し9月中旬から10月中旬まで出荷量が多い見込み。

なすは、群馬産は、出荷のピークが8月で9月は下旬に向けて減少しながら推移する見込み。栃木産は、病気の発生や花が落ちるなどの影響から収量は平年を下回っているものの、9月いっぱいは順調な出荷が続く見込。出荷量については、前年が豊作であったことから前年の80~90%程度で推移すると見込んでいる。

トマトは、北海道産がほぼ平年並の状況だが、今後、7月の低温の影響が出ることが予想される。品種は桃太郎系が中心となる。青森産は産地が日本海側のためカラ梅雨傾向から、全般に大豊作となっている。盆明けから9月についても着果は問題なく、当面平年を上回る出荷が続くと予想される。サイズもLとMが中心で良好と予想している。群馬産は7~8月の曇天長雨の影響などから遅れていたが、9月中旬以降から再び増えて平年並みの見込み。茨城産は抑制トマトが、盆明けから本格出荷となり11月までの長期販売である。品種は「りんか」で、ミニトマトは「サンチェリー」である。

ピーマンは、茨城産の秋ピーマンは生育期の日照不足で遅れが心配されるが、9月には出荷が本格化し、下旬から10月初め頃にピークが来ると予想している。作付けは前年並かやや多い見込み。

かぼちゃは、北海道の上川地区で露地物が9月中旬にピークとなる見込み。干ばつ気味であったが、降雨もありさらに気温も高くなって生育順調である。11月上中旬に一旦出荷は終了するが、冬至需要に合わせて貯蔵品を12月に再び出荷する。

スイートコーンは、北海道産が前進傾向から9月上旬の出荷となり、減少しつつ推移すると見込む。

土物類土物類

ばれいしょ類は、北海道の後志地区では、男爵がほぼ平年と同様のペースで8月から選別が始まっている。干ばつ気味であったが適度な降雨に恵まれ、大きさは大振りである。9月が最大のピークで、雪の降る時期まで出荷は続く見込み。十勝地方のメークインは東京市場での販売は8月下旬からの見込みで、玉数は少ないが肥大がよく豊作傾向を予想している。猛暑で地上部の弱りは日々甚だしくなり、肥大が止まってしまうとの懸念が高まっている。

たまねぎは、北海道のオホーツク地区では早生品種については大豊作であり、L大中心となっている。晩生品種については干ばつが続いている影響で肥大が遅れている。仮にこのまま小玉に仕上がると、トータルの生産量は平年作をやや上回る水準に抑えられる可能性もある。

その他 その他

アールスメロンは、7月から出荷がスタートしている茨城産が~10月に特に多くなると予想している。中心品種は「雅」で、現状生育は順調である。メロン農家は最盛期の3分の1に減っているが、残っているのは名人のみで、品質に外れがない。

えだまめは、山形産のだだちゃまめ8月にピークを迎えているが、9月上旬についても最終の品種が順調に出荷され、最終の販売は9月中旬ごろまでと見込んでいる。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

クリックすると拡大します。

クリックすると拡大します。


元のページへ戻る


このページのトップへ