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需給動向 1 (野菜情報 2019年7月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和元年5月)

野菜振興部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が13万6302トン、前年同月比95.9%、価格は1キログラム当たり223円、同96.9%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9910トン、同93.7%、価格は1キログラム当たり200円、同99.5%となった。
 産地が切り替わる品目が多いなか、暖冬により前進出荷の影響で入荷量が減少する産地や、干ばつの影響で生育が伸び悩む産地などがみられたが産地リレーはおおむねスムーズであった。

(1)気象概況

上旬は、北日本から西日本にかけては、天気は数日の周期で変化したが、高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。このため、旬間日照時間は、北日本太平洋側と東・西日本でかなり多く、北日本日本海側で多かった。また、日本付近では低気圧の発達が弱く、湿った空気の流れ込みも弱かったため、旬降水量は西日本でかなり少なく、東日本で少なかった。一方、低気圧はサハリンから千島近海を通過することが多く、北日本は西から暖かい空気が入りやすかったため、旬平均気温は高かった。

中旬は、日本の東で高気圧が強く、北日本から西日本にかけては暖かい空気が入りやすかったため、旬平均気温はかなり高かった。西日本では平年より2.2度高く、1961年の統計開始以来、5月中旬として1位の高温となった。また、北・東日本を中心に高気圧に覆われやすかったため、北日本日本海側と北日本太平洋側では、旬間日照時間の平年比がそれぞれ187%、157%となり、1961年の統計開始以来、月中旬として位の多照となり、旬降水量はかなり少なかった。一方、18日は九州南部付近に湿った空気が入り、大気の状態が不安定となった影響で、屋久島で大雨となり土砂災害が発生した。

下旬は、全国的に高気圧に覆われやすく、北日本日本海側を除き旬間日照時間はかなり多かった。また、低気圧は沿海州付近で発達することが多く、北日本から西日本にかけては暖かい空気が流れ込んだことや、高気圧に覆われて晴れて強い日射の影響を受けたため、気温はかなり高くなった。特に、北日本は平年より4.3度高く、1961年の統計開始以来、5月下旬として1位の高温となった。地点でみると、26日に佐呂間(北海道)で日最高気温が39.5度となり、5月として歴代全国1位を更新するなど、全国の観測点926地点のうち、36地点で通年の日最高気温高い方から1位の値を記録した。また、全国の観測点のうち、半数以上の492地点で5月の日最高気温高い方から1位の値を記録(タイを含む)するなど、北・東日本を中心に記録的な高温となった地点が多かった。

21日は前線が北・東日本を通過したため、北日本太平洋側と東日本を中心に広い範囲で大雨となった。また、九州南部で31日頃に梅雨入りした(速報値)。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

5月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万6302トン、前年同月比95.9%、価格は1キログラム当たり223円、同96.9%となった(表1)。

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根菜類は、だいこんおよびにんじんの主産地である千葉県が、天候に恵まれ温暖な気候から生育が進み、数量は不足感なく出回ったこともあり価格は伸び悩んだ(図2)。

葉茎菜類は、茨城産、群馬産、千葉産など関東の産地が中心の出回りとなったが、適度な降雨と暖冬により生育は順調で、特にキャベツでは各産地で前進傾向となったことから総入荷量が大幅に減少し、価格は安かった前年を5割以上も上回った(図3)。

果菜類は、産地が切り替わる時期となるが、価格は全般的に伸び悩んだ。高知産など西南暖地が産地の中心となったなす、ピーマンは温暖な気候と日照に恵まれ入荷量が増えたが、トマトは愛知産の前進傾向から入荷量が伸びず、また、きゅうりは多かった前年を下回った(図4)。

土物類は、さといもが小玉傾向から入荷が伸び悩み、価格が大幅に上昇した。ばれいしょ、たまねぎは、各産地とも大玉で豊作傾向ということもあり、入荷が伸びた(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

5月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9910トン、前年同月比93.7%、価格は1キログラム当たり200円、同99.5%となった。(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした7月の見通し

5月は全国的に晴天が続き気温高で、野菜栽培にとって非常によい状況が続いた。全国的に出回りが多かったが、入荷量は前年の95.9%、価格は同96.9%と入荷減の価格安の展開であった。

前年の7月は、梅雨明けが大幅に早く猛暑が続き、きゅうり、なすを除いて主要野菜は軒並み入荷が少なく高値となった。今年は、適度朝晩冷え込んでいるため潤沢な出荷が続いているが、価格が期待したほどでないことから出荷が減少していることもあり、7月は平年並みかやや高めの価格で推移すると予想される。

根菜類 根菜

だいこんは、青森産は干ばつの影響で肥大悪いが生育は順調で、7月以降は2L中心になり、7月いっぱいまで出荷が続く見込み。北海道産は平年並みに7月中旬から出荷が始まると予想している。干ばつ環境ではあったが播種作業は順調に終了した。全体としてみれば生育遅れはあるものの、ピークのお盆前後に向け徐々に増えながら推移しよう。当面L・2L中心で、出荷に影響するような気象災害はない。

にんじんは、青森産は平年並みにトンネル物が6月下旬始まるが、降雪のあった4月初旬に播種した物はやや発芽が悪く、干ばつも影響して遅れている圃場もある。出荷のピークはべた掛け物となる7月中下旬で出荷量は平年並みの見込み。

葉茎菜類 葉茎菜類

キャベツは、群馬産が現状は平年並みの出荷となっており、前年よりはやや少なめであるが7月に入り出そろってくる。平地の産地では干ばつ気味だったが、適度の降雨もあって肥大については心配ない。岩手産に関しては、4月中旬に定植した部分で晩霜の被害を受けているものの、高温や干ばつなどの問題はない。出荷は平年並みに6月中下旬に始まり、7月初めごろにややピークがあるが、総じてだらだらとした出荷が続く見込み。高齢化で作付面積は減っているが、出荷については前年並みを予想している。青森産は、水分が不足気味ではあるものの、虫の発生も無く順調だが、全般に小玉傾向である。

はくさいは、長野県の標高900メートル付近の産地では7~10日ほど遅れているが6月中旬以降は出荷が本格化し、7月は横ばいで推移すると見込んでいる。8月には川上村など標高1200メートル地帯まで産地が上っていく。

ほうれんそうは、群馬産が7月に入ると雨よけ栽培となるが、平年と同様に生育は順調で、出荷のピークは7月で、8月以降は減りながら推移する見込み。岩手産の出荷は7月いっぱいまで、8月以降はいったん減少した後、秋に再び増える。栽培面積は減っているが、病害もなく生育は順調である。

ねぎは、茨城産が6月に続き7月も潤沢な出荷が続く見込み。7月の学校給食が休みに入る時期から出荷が減り、8月上中旬にはかなり減る見込み。目立った気象災害はなく、生育は順調である。千葉産の夏ねぎの作柄は平年並みで、出荷は6月後半から始まり、ピークは7月初めごろを見込んでいる。福岡産の博多万能ねぎ(小ねぎ)は6月よりも減ってくるが、生育そのものは問題なく順調である。

レタスは、長野産が7月上旬からピークとなるが、4月の干ばつや5月に入っての霜害などで生育のバラツキが見られ、平年を下回ると予想している。群馬産は、ほぼ平年並の出荷ペースとなっており、7月いっぱい多く、盆明けには少なくなる見込み。

ブロッコリーは、北海道産の生育が順調で、7月に入り本格化してくる見込み。作付面積は前年比110%と増えている。干ばつや強風など気象は目まぐるしく変化したが、生育には大きな影響はない。1回目のピークは7月下旬ころ、2回目はお盆明けを予想している。出荷は10月末まで続く見込み。品種は前半については「ピクセル」「おはよう」が中心である。

果菜類 果菜類

きゅうりは、福島産はほぼ平年と同様の出回りを予想している。6月に露地ものに切り替わるが、気象災害もなく順調である。7月は増えながら推移し、ピークは8月上中旬を見込んでいる。

かぼちゃは、神奈川産は当初の予定通り6月中旬から始まり、ピークは6月下旬から7月上旬、終わりは平年と同様で8月上旬までと見込んでいる。

なすは、栃木産は生育順調で6月から露地に切り替わっているが、6月下旬から量的にまとまってくる見込み。干ばつ傾向だが着果に問題はない。

トマトは、北海道産が好天に恵まれ前年を上回る出荷が続いている。青森産は、生育が順調で7月には3~4段の出荷となりサイズはL・M中心と見込んでいる。品種は「桃太郎ワンダー」中心に「桃太郎ネクスト」も増えてきている。

ピーマンは、茨城産の春ピーマンの出荷が終盤を迎えているが、漸減しながら7月いっぱい出荷の見込みである。春先の低温の影響で少なくなる時期もあったが、現状量的には持ち直している。温室ピーマンは7月上旬まで出荷があるが、平年より少なめである。岩手産が6月から出荷が始まったが、4月の低温の影響で前年よりやや遅い。7月は徐々に増えながら推移し、ピークは8月となる。

えだまめは、群馬県の標高300~700メートル地帯の産地で、7月上旬までは3~4月の低温や凍霜害の影響で不作が見込まれる。中旬以降は、その後の気温高と十分な日照時間により前進気味に回復してくると予想している。

土物類 土物類

ばれいしょは、静岡産の「メークイン」は4~5月の低温もあり、収穫が後ろにずれ込む可能性もあるが、6月下旬には出荷が始まりピークとなる見込み。今後の肥大次第で収量も増える可能性もある。静岡産の「男爵」は6月が出荷ピークで7月末まで出荷は続く。当初、作柄は心配されたが、玉の肥大も回復して平年作をやや上回ると予想している。長崎産の19年産は豊作で、「ニシユタカ」の掘り採りは終了しており、出荷は7月上旬までとなる。

たまねぎは、兵庫産は天候に恵まれ豊作で、出荷のピークは7月を見込んでいる。早生は2L、中生はL中心である。

果菜類

すいかは、長野県のハウス物は6月から、主力のトンネル物は7月の第1週から出荷が始まる。着果時期の天候に恵まれ、平年どおりの出荷と予想される。ピークは7月中旬の海の日あたりからと予想している。作付けは前年並である。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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