野菜振興部 調査情報部
上旬は、北日本では寒気の南下が弱く、低気圧がサハリン付近を通りやすかったため、南から暖かい空気が入りやすかった。このため、気温はかなり高く、降水量はかなり少なく、日照時間はかなり多かった。北日本の旬平均気温は平年差プラス3.3度、北日本日本海側の旬降水量は平年比35%、旬間日照時間は平年比157%となり、1961年の統計開始以来3月上旬として、高温、少雨、多照のそれぞれの記録を更新した。
東・西日本では、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わった。また、暖かい空気に覆われやすかったため、気温は東・西日本ではかなり高かった。3日から4日と6日から7日、および10日から11日にかけては南岸低気圧が通過した影響で広い範囲で雨が降った。特に、10日から11日は低気圧が発達しながら進んだため、大荒れとなったところもあった。このため、東日本太平洋側と西日本では降水量がかなり多かった。
中旬は、北日本では、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わった。低気圧に向かって暖かい空気が流れ込んだ影響で、気温はかなり高くなった。東・西日本では、低気圧や前線の影響で曇りや雨の日もあったが、高気圧に覆われて晴れた日が多かった。
また、2月後半以降、気温が平年を上回る日が多かったが、中旬は、大陸からの冷涼な高気圧の影響で、気温が平年を下回る時期があった。
下旬は、北日本では、低気圧や寒気の影響で、日本海側を中心に曇りや雨または雪の日が多く、気温が低かった。東日本以西では、高気圧と低気圧が交互に通過したが、東日本日本海側では、寒気の影響も受け曇りや、雨の日が多かった。東日本太平洋側、西日本では、天気はおおむね数日の周期で変わったが、21日に低気圧が日本海を発達しながら北東に進んだほかは、低気圧の発達は弱く、降水量は少なかった。また、東日本以西では、日本海の低気圧に向かって暖かい空気が流れ込む日があり、旬平均気温は高かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
3月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万3182トン、前年同月比94.2%、価格は1キログラム当たり230円、同89.0%となった(表1)。
根菜類は、だいこんは好天により前進出荷傾向だったことから残量が少なかったにもかかわらず、価格は低迷した。にんじんは関東の産地が前進傾向で入荷が少なかったが、後続の徳島産が中旬以降に入荷し、前年に比べて入荷量が大幅に増えたため価格は低迷した(図2)。
葉茎菜類は、はくさい、キャベツともに天候に恵まれ生育は順調であった。はくさいの入荷量は前年よりも少なかったものの、順調な入荷に加え歩留まりが良かったことから、価格は低迷した(図3)。
果菜類は、きゅうり、トマト、ピーマンが曇天雨の影響で数量が伸びない産地もあり前年よりも高値で推移した。なすは、高知産の生育が順調だったことから前年に比べてかなり入荷が多かった(図4)。
土物類は、北海道産のばれいしょ、たまねぎは生育期の天候不順により作柄が悪く、引き続き入荷が少なかった。さといもも作柄不良で入荷が少なく価格は前年に比べてやや高めとなった(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8500トン、前年同月比93.4%、価格は1キログラム当たり204円、同88.7%となった(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
前進出荷傾向で採り遅れが心配された春野菜ではあるが、3月下旬~4月上旬の寒波によって足踏み状態になっている。長期予報では4~5月も気温が平年より高いと予想されていることから、盛り返してくると見ている。春野菜の多くで連休の頃にピークを迎える見込みだが、5月上旬の需要動向が懸念事項である。10連休による学校や官庁の休業が消費動向にどのような影響があるのか、相場の混乱がないように流通現場での手腕が試される。
年明け以降続く相場の低迷により生産者の意欲が低迷してしまうことも心配しているが、関東は田植えの時期であり、野菜類全般の出荷がそれ程多くない時期でもある。
だいこんは、千葉産のピークはほぼ平年並みの5月上中旬で6月上旬に切り上がる見込み。生育は今のところ問題なくL中心の見込み。青森産は、雪解けは早かったが、4月に予想外の積雪があり、出荷開始は平年並みの6月上旬を予想している。高温が続けば5月末ごろからハウス物が東京市場へ出荷される可能性はある。
にんじんは、徳島産が潤沢な出荷が続いており、ピークは4月中旬から5月上旬を見込んでいるが、5月中旬以降じわじわ減ると予想している。前年は10~12月までに播種できたことから、最終の出荷は6月上旬を見込んでおり、出荷量は豊作ではないものの不作であった前年を上回ると見込んでいる。
ごぼうは、中心となるのは青森産の秋掘りの貯蔵品で、新物については九州各産地からの出荷となる。宮崎産や鹿児島産は低温の影響はなく、5月から活発な出回りが予想される。供給は多めと予想され、相場は軟調に推移する見込み。
キャベツは、愛知産は台風後の植え直し分の出荷があり、平年は減量する時期にも出荷が続き前年並みの出荷が続いている。5月出荷の作付けは平年並みを見込んでおり、今後緩やかに減りながら推移する見込みだが、大玉の比率が高ければ前年を上回ることも予想される。神奈川産は三浦産が中心で平年並みなら4月下旬からピークで、連休中も多く5月下旬頃には切り上がるがやや早めになると予想している。千葉産は4月に品種の切り替わり、5月の連休時期にピークとなる見込み。6月まで出荷が多く続き、品種は春系品種からやや巻きの硬い「初恋」となる。
はくさいは、茨城産の春はくさいは3月後半の冷え込みで生育が遅れていたが、出荷は順調で平年並みに5月末に向けて減少の見込み。圃場でのロスは少ないものの、作付面積の減少や価格低迷の影響で前年を下回ると見込んでいる。
ほうれんそうは、群馬産が主力の露地作は順調で、連休ごろにピークとなり、6月中旬まで出荷が続く。
ねぎは、千葉産の夏ねぎが5月の中旬から出始め、ピークは5月末から6月中旬を予想しているが、全般に平年並みのペースである。茨城産の初夏ねぎの出荷は平年通り始まっており、連休明けに一回目のピークがくると予想している。生育は順調で7月いっぱいまで出荷される見込み。全般に乾燥気味できており、締まりが良い。
レタスは、長野産がほぼ平年並みで5月初めから出荷が始まる。朝晩が寒く、さらに降雨が少なく肥大が遅れている。そのため後作と大きさが同じになり、5月の終わり頃の出荷物と重なる可能性もある。ピークは5月下旬で6月中旬には減り始め6月いっぱいで切り上がる見込み。それ以降は、高地ものになる見込み。
群馬産は4月から入荷が増え、徐々に増えて最大のピークは6月10日過ぎから。現状降雨が少ないのが心配であるが、平年並の展開が予想される。作はここ数年早まる傾向である。
アスパラガスは、長野産が4月に入ってからの積雪により当初の出荷予想より遅れが出ている。平地の物は4月中旬から出荷が始まり、連休の頃にピークが来ると見ている。高地の物は5月下旬にピークとなる見込み。前年秋の天候不順で株の力が心配されるが、糖度が高く充実したものになると思われる。
きゅうりは、群馬産はハウスもので気象の影響はほとんどなく、5月の連休から中旬にピークとなり、早い人は6月いっぱいで切り上がると見込んでいる。宮崎産は4月上旬がピークとなり、その後、減りながら推移し5月いっぱいの出荷となる見込み。天候不順が影響し、3月までの実績では前年の90%となっている。
なすは、2~3月の天候不順の影響で、高知産は平年より少なめの出荷が続いていたが、樹勢に問題はなく、天候に崩れがなければ5月は平年通りピークが来ると見込んでいる。
トマトの熊本産は、天候が悪く遅れ気味で平年より少なく、本格的なピークは5月の連休明け頃から中旬にかけての見込み。愛知産は3月の冷え込みにより着色が遅れ、予想より少なめの出荷となった。草勢や着果には問題がなく、生育そのものは順調である。トマトの生産者が減っていることも前年を下回る理由になっている。数量は、前年並みの水準まで伸ばしてくると見込んでいる。一方、ミニトマトの生産者は増えており、微増で推移する見込み。栃木産は促成物になるが、9段10段の出荷が中心になってくる見込み。生育は順調で、中心サイズはS・Mの見込みである。
ピーマンは、茨城産が3月後半からの低温で、生育は遅れたが回復している。春ピーマンの出荷は2月から始まり、5月がピークである。作付面積が増えており、前年を上回る出荷が予想される
にがうり(ゴーヤ)は、沖縄産は生育順調で、5月後半から6月にかけて出荷のピークが予見込まれる。5月8日のゴーヤの日に向けて数量は十分対応できる見込み。
そらまめは、千葉産が昨年とほぼ同じ4月1日から始まった。1~2月が暖かく、今年は生育順調で豊作型である。出荷ピークは連休ごろで5月中旬までの出荷と見込まれる。
えだまめは、千葉産のハウス物は4月下旬から出荷が始まるが、天候に恵まれ順調である。トンネル物は5月後半に始まり、出荷のピークは6月15日前後と見込まれる。品種は「福だるま」など。
グリーンピースは、鹿児島産の出荷ピークは4月であるが、晩生の物が4月20日ごろから始まり5月15日ごろに切り上がる見込み。今年は過去数年と比べると出来が良く、量的にも期待できる。
ばれいしょは、静岡産の三方原男爵が平年並みの5月の連休明けから始まるが、収穫作業の進展は早目となっている。出荷の増量ペースは速く、6月中旬にピークとなろう。前年に続いて作柄は良好で順調な出荷が予想される。長崎産は3月の低温の影響もなく1週間程度、前進気味で豊作傾向である。ピークは5月上旬と見込んで、品種は「ニシユタカ」中心に「アイユタカ」「サンジュウマル」も多くなっている。
たまねぎは、兵庫産が2~3月の天候が安定していたことから品質が良く仕上がっている。連休明けから本格化してピークは6月を見込んでいる。L、2L中心で肥大も問題なく、量的には平年作と豊作の間位と見込まれる。佐賀産が5月に露地早生のピークとなるが、生育は順調である。適度の降雨と日照も問題なく、現状はL中心だがこの後2L比率も高くなって、トータルでは豊作型と予想している。
メロンは、茨城産のオトメメロン、アンデスメロンは平年よりも早く4月から出荷が始まっている。アンデスメロンのピークは5月中下旬、赤肉のクインシーメロンのピークは6月中旬からと平年並みを見込んでいる。天候が不安定で着果に苦戦したことから、大玉傾向であった前年に比べると小さめとなる見込み。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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