野菜需給部 調査情報部
上旬は、北日本では、寒気や低気圧の影響を受けやすく、旬平均気温は低く、旬間日照時間が少なかった。8日に札幌付近の上空約1500m の9時の気温が1957年の統計開始以降最も低いマイナス24.4度となるなど、旬の終わりは北日本を中心に非常に強い寒気が流れ込んだため、気温は北日本を中心にかなり低くなった。特に北海道地方では、9日の日最低気温が4地点(アメダス)でマイナス30度を下回るなど、厳しい寒さとなった。一方、東・西日本では寒気の影響は弱く、旬平均気温はかなり高かった。冬型の気圧配置は長続きせず、本州南岸を低気圧や前線が通過しやすかったため、西日本と東日本太平洋側では旬間日照時間が少なかった。旬の終わりは東・西日本にも寒気が流れ込んで気温が低く、9日に本州南岸を低気圧が通過したときには、日本海側に加えて東日本太平洋側でも各地で雪となった。
中旬は、北日本では、冬型の気圧配置になりやすく、日本海側は曇りや雪の日が多く、太平洋側はおおむね晴れた。東・西日本では、冬型の気圧配置は長続きせず、低気圧や湿った空気の影響で旬間日照時間が少なかった。気温は、北・東・西日本では旬の中頃にかけて断続的に寒気が流れ込んで気温の低い日が多かったものの、旬の終わりは上空から暖かい空気に覆われて気温がかなり高くなった。
下旬は、上空から暖かい空気に覆われ、旬平均気温は全国的に高く、北日本はかなり高かった。大陸から北日本へ高気圧が張り出しやすかったため、北日本と東・西日本日本海側では旬間日照時間が多く、北・東日本日本海側ではかなり多かった。一方、本州の南を低気圧が通過しやすく、東・西日本太平洋側では旬間日照時間が少なかった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
2月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が11万4138トン、前年同月比106.1%、価格は1キログラム当たり232円、同74.0%となった(表1)。
根菜類は、千葉産、神奈川産が中心となったが暖冬の影響で肥大がよく、だいこんの入荷は前年をかなりの程度上回った。価格は高騰した前年の半値近くなった(図2)。
葉茎菜類も暖冬の影響で生育が良く、特にキャベツ、レタスは前年を大幅に上回った。前年の高騰から一転した安値で、どの品目も下旬にかけて下落した(図3)。
果菜類は、九州などの暖地と関東の促成が中心となり入荷・価格共に平年並みで安定して推移した。(図4)。
土物は、ばれいしょが北海道産の不作から数量が少なかったものの、九州産が前進傾向だったことから価格は前年を大幅に下回った(図5)。
2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8562トン、前年同月比117.8%、価格は1キログラム当たり204円、同71.8%となった。(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
3月初旬にはまとまった降雨があって、野菜の生育は勢いづいている。全国の産地から10日程度の前進が報告され、採り遅れの状況で4月を迎えるのではないかと心配されるところである。
東京都中央卸売市場の2月入荷は前年の106.1%、1キログラム当たりの価格は232円で前年比74.0%と安値の展開となった。
小売業界の話を聞くと、良いお客様の奪い合いが始まっているとのこと。野菜・果物を選ばせる楽しみを提供しているのはターミナル駅のデパートで、確かに高齢者が多いが品物を見る目がある。西日本のある大型農協がCMを通じて流しているが、仕入れのバイヤーもそういったCMと連動した仕入れでお客様に選んでもらえるようにするのも一手ではないか。ブランド力を高めると同時に品質を保証することになるのではないか。
4月の動きを読むと「安くなっても消費の動きは良くならない」と安値疲れの声も出てくるのではと予想している。人気商材のさばの缶詰などの値上げを公表しているが、食品全般が増税前の便乗値上げでないとの意思表示であるとされる。消費者は価格の変化に敏感になっている時期であり、市場としては極端な上げ下げのない平年並みの現状維持が望ましいと思う。
だいこんは、千葉産が現状例年並みの出荷が続いており、3月末からから4月が出荷のピークとなろう。3月上旬はやや少なめとなるが、中旬以降は順調である。2L中心と仕上がりは良好である。大型連休明けから少なくなり、5月末までとなる見込み。神奈川産は春だいこんが4月にはかなり少なくなるが、平年並みである。
にんじんは、徳島産は、出荷が一部始まったところであるが、平年より10日前後早まっている。3月下旬からピークとなり、5月15日前後まで量的にまとまった出荷になる見込みである。昨年11~12月の播種時期から順調に推移している。当初、サイズはM中心だが、今後はL・M中心の出荷になる見込み。
キャベツは、愛知産が4月上旬までは冬キャベツが残るが、春系が主力である。全般に前進気味に推移している。4月の出荷量は、冬系が前年並みであるが春系は植え直し分もあって平年より2~3割多くなる見込みである。5月上旬まで多く、中旬以降は平年のペースに戻る見込み。千葉産が1~2月の前進化の影響で3月はやや少なめで、4月に平年並みに戻ると見込んでいる。5月に最大のピークになる見込み。神奈川産が3月中旬から本格化し、最大のピークは4月10日ごろから5月上旬までの見込み。3月に入ってからの降雨で肥大が進み、ほぼ平年並みの仕上がりで量的にも平年並みの出荷を見込んでいる。
はくさいは、茨城産の秋冬はくさいが終盤を迎えているが、春はくさいが前倒し気味に始まってきている。ピークは4月上旬からで、減り始めるのは5月中旬に入ってから。生育は順調である。
ほうれんそうは、群馬産は年間を通して出荷できるが、3~4月は減りながら推移する。引き続きハウスもの中心で、生育は順調である。現状は露地ものも始まったところで、3月中旬から4月がピークとなろう。
ねぎは、千葉産は3月20日まで秋冬物で、その後4月20日まで春ねぎとなる。年明け後好天が続き、適度な降雨もあって肥大良好である。
茨城産は4月まで春ねぎであるが、現状秋冬の残量もある。適宜な降雨もあるなど天候に恵まれ、ピークに入りつつある。新物の初夏ねぎについては例年より早く4月下旬から始まってこよう。いずれも品質は良好である。
にらは、高知産は平年の流れでは4月に急減して9月まで少なく、10月以降に増えて来るのが通常のパターンである。現状、前進しているが4月については後作が追いついてきて大きな減少はないが出荷が切れる時期もある見込み。
レタスは、茨城産が天候に恵まれ、10日程度、前進化しており北つくば産は3月下旬から4月にピークになると予想される。4月後半にやや減る可能性もあるものの、5月いっぱいまで出荷が続く見込み。兵庫産の生育は順調で、現状2週間程度早まっている。ピークは4月末頃で、4月としては少なかった前年を上回ると予想している。
ブロッコリーは、愛知産が前年の台風で蒔きなおしの影響が残り3月上旬は少なめで中旬に入って増えたが、4月に入り平年並みの出荷に戻り、5月後半には減ってくる見込み。
きゅうりは、埼玉産が12~1月の低温と干ばつで遅れたが、量的にはまずまずの状況である。3月の降雨で伸び悩んだが、今後は無加温が始まるため、増えながら推移し5月上旬に最大のピークを迎える見込み。品種は味の良い「ズバリ163」と耐病性の「兼備2号」で、量的には前年並みの見込み。宮崎産は平年は3月20日頃から4月上旬に最大のピークが来るが、今年はやや後ろにずれると予想される。5月いっぱいまで潤沢に出荷できる見込み。
なすは、高知産が4月初め頃にピークが来る見込みで、その後4月末か5月の連休に最後のピークが来ると見込んでいる。
かぼちゃは、鹿児島産が大型連休明けの5月上旬からハウスものの出荷が始まる見込み。6月以降は露地ものとなり、中旬からハウスの2番手が始まり7月上旬で切り上がる見込み。品種は「えびす」中心で、今のところ気温高から生育は順調である。
トマトは、熊本産が3月に入り出荷の谷間に入っているが、3月20日頃から着果の良かった段に入って徐々に増えてこよう。一番のピークは5月となるため、4月は増えながらM・S中心に推移しよう。
愛知産は、2月下旬から天候が崩れてきたが、それまでは好天できたこともあり、植え替えた物を始め回復して順調である。3月中旬から数量はグッと伸びて最大のピーク5~6月に向けて増えながら推移しよう。
栃木産は、4月に入り越冬物が8~9段となり、やや大玉中心になって箱数が伸びてこよう。「麗容」や「マイロック」中心。一方「桃太郎」中心の促成ものは4~5段になるが、着果は問題ないが今後は小玉傾向になることが予想される。いずれの作も生育は順調である。
ピーマンは、宮崎産が3月に入り着果は悪くはないが、小振りの仕上がりである。3月末には生育が回復してくるが今後の天候によっては4月に伸び悩む可能性もある。
茨城産の春ピーマンは出荷が開始しているが前年並みで、暖冬の割りに伸び悩んでいる。温室ものの出荷実績は前年を下回っているが、ハウス内の空気が乾き過ぎて授粉が上手くいかなかったため。今後は無加温ものも始まって平年並みに回復してくると見込んでいる。
オクラは、沖縄産が天候に恵まれ生育が順調で、高温傾向で平年よりも早めに出ており出荷量は前年並みで6月のピークまで増えながら推移する見込み。
そらまめは、鹿児島産のピークは4月中旬と予想されるが、平年より10日程度進んでいる。天候に恵まれ順調であるが、3月に入っての降雨や朝夕の温度差が大きく曲がりなど品質に影響が出ているものの、少なかった前年を上回る出荷となろう。
スナップえんどうは、鹿児島産では冬作と春作があるが4月は春作の露地ものとなる。昨年は春作が遅れて4月の入荷が多かったが、今年は前進しており4月は前年を下回り、出荷は5月中旬までの見込み。
さやいんげんは、沖縄産がここ数年は気候の変化で3月の出荷の比重が高まり、最初のピークが3月中旬で4月はややだらだらペースでの出荷となる見込み。作付けは平年通りである。
えだまめは、静岡産に昨年の台風の影響が残っており、作付けは前年の90%と減っている。出荷ペースは通常と同じで4月から増えて5~6月がピークとなろう。生育については順調である。
ばれいしょは、鹿児島産の春ばれいしょ(ニシユタカ)の出荷が始まるが、計画では前年並みを予想している。ピークは4月中旬から5月上旬で、順調な生育から豊作傾向と見込んでいる。
長崎産は早いものは3月下旬に出荷が始まるが本格的にスタートするのは4月10日過ぎを見込んでおり、最大のピークは5月の連休明け頃となる見込み。今後、肥大はまだまだ進み、豊作傾向と見込んでいる。新品種では「アイマサリ」がデビューするが、当面は「ニシユタカ」中心に、「サンジュウマル」も出荷される見込み。
たまねぎは、佐賀産が極早生から早生となり本格化してくる見込み。平年に比べると7~10日早まっており、4月としては前年を上回ると見込まれる。栽培面積はほぼ平年並みである。
すいかは、熊本産の栽培面積は高齢化による自然減や震災若干により減少している。出荷は12月から始まっているが、3月中旬から増えて4月には出荷が本格化する。S中心のMと昨年より一階級大きくなっている。当面のピークは前年より一週間早まり大型連休の前頃に来ると予想している。
たけのこは、静岡産が今年は裏年であり、多かった前年の半分に達しない可能性もある。3月は少なく、4月上中旬に急増しピークになり4月30日で切り上がる見込み。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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