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需給動向 1 (野菜情報 2019年2月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成30年12月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が13万891トン、前年同月比104.7%、価格は1キログラム当たり230円、同73.2%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万2134トン、同109.3%、価格は1キログラム当たり208円、同72.7%となった。
 11月に引き続き12月上旬までは気温高が続き異常な暖冬となったため、野菜全体で前進出荷傾向となり上旬に入荷が集中することとなった。中旬以降は平年並みの気温となったが、九州では大雨に見舞われるなど月間では日照不足となる地域が多く、根菜類は肥大が促進して影響を受けにくかったが果菜類、葉茎菜類は下旬にかけて入荷量が減少し前月の安値から一転して価格が上昇する品目もあった。

(1)気象概況

上旬は、北~西日本は数日の周期で天気が変化したが、東日本太平洋側と西日本では12月上旬としては晴れた日が極端に少なく、日照時間がかなり少なかった。特に西日本太平洋側は、1961年の統計開始以降で旬間の日照時間が最も少なかった。日は動きの遅い湿った空気が流れ込み、阿久根(鹿児島県)では降水量が85.0ミリに達して1939年の統計開始以来12月としては最も多くなるなど、九州では大雨の所があった。東・西日本は旬の中頃にかけて気温の高い日が続いて旬の平均気温がかなり高かった。北日本は寒暖の変動が大きく、旬の平均気温は平年並だった。日は日本海の低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んで全国的に季節外れの暖かさになり、全国の観測点926地点のうち352地点で12月としては最も高い気温を観測した。旬の終わりは強い寒気が流れ込んだため、北~西日本は低温となったほか、北日本日本海側では大雪になった所もあった。

中旬は、日本付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、全国的に数日の周期で天気が変化した。西日本太平洋側は低気圧や前線の影響を頻繁に受けたため、降水量がかなり多く、日照時間がかなり少なかった。東日本太平洋側でも降水量がかなり多く、日照時間が少なかった。低気圧の通過後は、それぞれ一時的に冬型の気圧配置となった。このうち18~19日は北日本を中心に強い寒気が流れ込み、富良野(北海道)で18日の降雪量が41センチメートルに達して1979年の統計開始以来12月としては最も多くなるなど、北日本では大雪の所があった。全国的に、寒気が流れ込んで低温になった日もあった一方、低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込むことなどにより顕著な高温になった日もあり、寒暖の変動が大きかった。

下旬は、旬の前半は中旬に続いて日本付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、全国的に天気は周期的に変化した。低気圧や前線の影響で、21日は西日本太平洋側で、22日は東日本太平洋側で大雨の所があった。また、暖かい空気に覆われて気温の高い日が全国的に多かった。後半は冬型の気圧配置が強まって強い寒気が流れ込み、夕張(北海道)では30日に積雪が137センチメートルに達して1979 年の統計開始以来12 月として最も大きくなるなど、27~30 日は北・東日本日本海側を中心に暴風雪や大雪となった所があった(図1)

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(2)東京都中央卸売市場

12月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万891トン、前年同月比104.7%、価格は1キログラム当たり230円、同73.2%となった(表1)。

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根菜類は、日照不足の影響を受けにくく、気温高と適度な降雨から肥大が促進して太物傾向となり前進出荷傾向もあって潤沢な入荷となった。だいこん価格が前年比32.6%と大幅な安値となった(図2)。

葉茎菜類は、生育が順調で潤沢な入荷となったが気温が高いことから鍋物需要が伸びず、特にはくさいは入荷量が前年よりもやや少なかったにも関わらず価格は前年比35.9%となり大幅に値を下げた(図3)。

果菜類は、特にきゅうり前進出荷からの成り疲れと中下旬の日照不足から収穫量が減少し、下旬にかけて価格が高騰した(図4)。

土物は、夏場の高温と多雨の影響で北海道産のばれいしょ、たまねぎが小玉傾向で収量が少なくなった。さといもは千葉産が生育不良だったことから入荷数量が不足し、年末需要から価格は前年を上回った。(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

12月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万2134トン、前年同月比109.3%、価格は1キログラム当たり208円、同72.7%となった(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした2月の見通し

昨年12月の東京市場の野菜の価格は230円(前年同月比73.2%)と大幅に安くなった。ここ数年では平成27年の223円に次ぐ低迷といって良いレベルである。目立って安かった品目は、だいこんが49円(同32.6%)、はくさい38円(同35.9%)、レタス156円(同28.4%)、キャベツ72円(同46.5%)でいずれも前年の価格をかなり大きく下回ったが、品質は抜群に良好であった。はくさいは価格が低迷すると市場に集まらなくなる傾向があり、入荷は前年比95%となっており、収穫の遅れもあると思われるがじょうで廃棄された可能性もある。一方、レタスの入荷量は前年比157.1%と潤沢で、農家の沢山食べてとの願いが感じられる。野菜栽培は天候に大きく左右されるが、需要量に少しでも足りなくなれば価格は高くなり、豊作で供給過剰になれば価格の下げ足を早めてしまう。

市場はいわば天と地を結ぶ場であり、農家はあるがままの自然を受け入れるということでもある。かつて市場には「半年高ければ、半年安い」と格言があったが、この10年程は安い期間が短くなる傾向が見られる。

年明け後の気象展開について、「春の訪れは早い」「厳冬は長く続かない」「北国の降雪量はそれほど多くない」と長期予報されている。春の新物は早まると楽観視もできるが、実際のところ干ばつだと地温が上がらないため、意外と前進化しないのではないかと見ている。月は在圃性の良い品種が多く、農家はあわてずゆっくり収穫できるため価格は徐々に上向くと予想される。

根菜類

だいこんは、千葉産については平年並みを予想している。12月にピークが来て月に一旦落ち着くのが通常のパターンだが、昨年は特に出荷数量が少なかったことから、今年は前年を上回る見込み。秋冬だいこんとトンネル栽培の物が半々の出荷となるが、月以降、トンネル栽培の春だいこんが出荷されると再びピークとなる。

神奈川産は、定植時期に一部に台風被害があったが、回復が順調に進み月も月と同様に2L・L中心となり潤沢な出荷を予想している。月以降は乾燥の影響から肥大は抑制されてくる。

にんじんは、千葉産が暖冬で生育が順調に進んでいる。台風による被害は解消し、肥大も良好でMA・L中心で2Lも多く月についても月に引き続き平年並みと予想している。秋冬にんじんの出荷は月いっぱいの見込みである。

埼玉産は最大のピークである12月末を越して減少傾向で推移しながら月末まで出荷が続く。当初は小振りで始まったが、年末が温かかったことから生育が順調で太物が多くなった。

徳島産の生育は順調で平年並みかやや早いペースで進んでいる。東京市場への入荷は、前年は大幅に遅れて数量も少なかったが、今年は3月の上旬から開始する見込み。

葉茎菜類

はくさいは、茨城産は暖冬の影響で生育は非常に良好で月の出回りについても潤沢ペース続く見込み。

キャベツは、愛知産が干ばつ気味のなか生育は順調であるが、若干、遅れており大豊作ではない見込み。月は平年並みかやや少なく、植え直したものが本格的に増えるのは月下旬~月と予想している。千葉産は前進傾向が、12月下旬からの干ばつで生育は止まっている。それでも畑には十分あるので、出荷は平年並みで大幅に少なかった前年を上回る見込み。静岡産のキャンディーキャベツは生育が遅れており、台風の直前に植えた物は全滅に近く、台風後に植えた物は干ばつで遅れており、雨待ちといったところであるが月にはピークとなると見込んでいる。神奈川産は月は早春物であるが、年内と同様に潤沢ペースが続く見込み月前半は干ばつとなったが、今後も月まで乾燥気味だと、やや小振りになる可能性もり、今後の降雨次第で大きさが変わってくる見込み。

レタスは、静岡産が年末に引き続き、年明け以降も潤沢な出回りとなっているが、全体的に前進化していることから月も月と同様のペースでスタートし、その影響で後半には少なくなってくる見込み。月はさらに少なくなるものと予想している。長崎産は、通常は年内から月にかけて徐々に減量し、月からは春レタスに切り替わる。現状、前進傾向から出荷は例年の半分程度と少なく、月としても前年を下回る出荷が続くと予想している

ほうれんそうは、10月から出荷が始まった栃木産が年末に引き続き月中旬~月上旬にもう一回ピークが来ると予想している。当初、採り遅れから蒔き直した圃場もあったが、その部分が1月下旬に増えてくると予想している。作型として露地とトンネルが半々である。茨城産は、ハウスよりも露地が中心になっているが、寒さから生育に時間がかかるようになった。月から出荷が増え、月にピークとなる。同時に出荷されているちぢみほうれんそうは月初め頃がピークとなる。

ねぎは、茨城産は秋冬ねぎのピークが月いっぱい続く。自然災害の影響もなく、数量的にも問題ない。月以降は春ねぎに切り替わり、さらに月下旬から初夏ねぎ(新物)となるがいずれも順調である。

ブロッコリーは、愛知産の生育が順調で月下旬から月初めには台風後の植え直しの分と通常の出荷分が重なり出荷量は平年より多いと見込んでいる。その後は通常のペースに戻るが、少なかった前年との比較では大幅増と予想している。

カリフラワーは、福岡産が通常、月下旬から月の初めにかけてピークとなるが、若干前進気味で推移している。今年の特徴は花蕾が美しく仕上がっていることである。今後、月には急減し、月上旬で切り上がると予想している。

セルリー(セロリ)は、順調な出荷が続く静岡産については、月下旬から月が出荷の底と予想している。この時期の生産者数は5~6年前の3分の2に減っており、他の時期に比べると少ないが前年並みを見込んでいる。一部に生理障害があるが、暖冬もあって生育は順調でほぼ平年通りの出荷パターンとなっており、4月中旬に再びピークを迎える。

果菜類

きゅうりは、年末の曇天と夜温の低下により回復が遅れている宮崎産の作柄は良くなく、平年は月末頃から増えるが、今後の天候によっては月にずれ込むことも予想されており、月としては平年を下回る出荷が予想される。群馬産は平年通り月中旬から始まり下旬に出そろって、2月は増えながら推移すると見込んでいるが、晴天が長き、さらに干ばつとなっているため、生産環境は万全と言い切れず、日照過多も懸念材料である。

なすは、高知産は台風による被害の後遺症もなく、月は前年並みかやや多い入荷を予想している。

トマトは、年末から年明けにかけて出荷が多かった熊本産は月中旬から月にかけて減ってくるが、ほぼ平年並みの出荷を見込んでいる。愛知産は11月~12月前半は台風や高温の影響で少なめだったが、年末から年明けは順調な出荷が続き、月も定量ペースでの出荷が続くと見込んでいる。月下旬から月上旬は植替えの時期となって出荷の谷間となると予想している。

ピーマンは、12月まで前年を上回る出荷が続いていた宮崎産はやや減少しているが、2月は徐々に増えながら推移しピークは3~4月となり、ほぼ平年並みの入荷を予想している。

土物類

かんしょは、茨城産の「はるか」は月で終了し、月は焼き芋に適している「べにまさり」、月は「ベニアズマ」の計画である。18年産としては平年並みであり、食味はいずれも良好の仕上がりである。

たまねぎは、北海道産が月も平年通りの出荷が続く見込み。小玉ばかりではなく、大玉もあり品質は良好となっており、月の初め頃まで出荷が続く見込み。

静岡産は、前年は遅れて始まったが、量的に中心の「黄たまねぎ」は月中心の出回りとなる。「白たまねぎ」の出荷は月に入り始まっており月末まで。台風で若干、少な目となっており、黄たまねぎに播き直しをしている。

ばれいしょは、北海道産の収量は平年の80%と平成29産は不作であったが、月以降4月末まで計画出荷される見込み。鹿児島産は月末から出荷が始まるが、平年よりやや早い。若干雨が多かったが、作柄はまずまずである。芋の数は少ないが、その分肥大は良好である。ピークは月中旬で月上旬まで。量的には豊作となった前年を下回ると予想している。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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