野菜需給部 調査情報部
上旬は、北日本から西日本にかけては、高気圧に覆われやすく晴れたところが多かったが、東日本太平洋側は近傍が気圧の谷となりやすく、雲が広がりやすかった。9日から10日かけては低気圧が発達しながら日本海を通過したため、局地的に激しい雨の降ったところがあった。北日本は寒気の南下が弱く、日本海側ではしぐれる日が少なかった。気温は、旬のはじめは平年を下回ったところが多かったが、全国的に次第に昇温して旬の後半は北・東日本を中心にかなり高くなった。特に、北日本では、旬平均気温の平年差が+2.3℃とかなり高く、11月上旬としては第2位タイの高温となった(統計開始は1961年、なお第1位は2004年で平年差+2.5℃)。
中旬は、全国的に、天気は数日の周期で変化したが、北・東日本は低気圧や前線の影響を受けにくく、降水量は少なかった。
下旬は、全国的に、天気は数日の周期で変化したが、高気圧に覆われて晴れた日が多かった。旬の前半はこの時期としては強い寒気が南下したため全国的に気温が低く、北日本日本海側を中心に雪が降り積雪となったところがあった。(図1)
11月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万6889トン、前年同月比103.4%、価格は1キログラム当たり224円、同83.0%となった(表1)。
根菜類は、関東産が中心となるだいこんは好天により生育が回復し入荷が増え、前年の半値近くまで値下がりした。一方、にんじんは北海道産が早く切り上がったことや千葉産の病害などから価格は前年比129%となった。(図2)。
葉茎菜類は、暖冬傾向で生育が進み、全体的に安値傾向だったが、特にほうれんそうは入荷量が前年比231.4%、価格が同39.2%と大幅に値を下げた。(図3)。
果菜類は、トマトは天候回復で下旬にかけて増量したが、10月の日照不足から着色が悪かったため入荷が伸びず、価格は前年を上回った。ピーマンは夏秋の産地である茨城県に加え後続の宮崎県からの入荷も多く、価格が下落した(図4)。
土物は、どの品目も入荷量は前年を下回り、価格は前年が高かったさといもは前年を下回ったものの、ばれいしょ、たまねぎは大幅に前年を上回った。(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
11月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万604トン、前年同月比105.1%、価格は1キログラム当たり214円、同86.6%となった。(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
11月の東京都中央卸売市場の野菜価格はキログラム当たり224円で10月の264円よりも40円安くなった。売上金額の前年比は10月が前年の126%、11月が86%と急にしぼんだ形になった。この落差は高値疲れによる反動安との解釈もできるが、10月中旬から11月まで好天が続いて回復が早まったことによる。気温もこの時期としては高く、台風後に植え直したものが前進して出回りが急増した。昨年は11月から寒気団が次々日本列島全体を覆い、大幅に生育が遅れた。今年は逆の展開で12月5日の段階で九州の関係者から半そでシャツで過ごしていると異常天候を心配しているとの声も聞いた。市場価格も11月下旬には200円を割り込むような急落ぶりで、低迷から抜け出すのに時間がかかると予想される。
ハウス野菜は新物のシーズンであるが、九州では気温高からまだ露地作が出回っているとされる。全国的に台風が通過後に急いで定植したものと、通常の作の物と重なり団子状態になった。この傾向は12月から年明け1月まで続き、出回りは引き続き多いであろう。特にハウスの果菜類がこの時期に急増すると、3~4月には病気に遭い易く切り上がりが早まると先々を心配する声もあった。
農協、市場もさまざまな媒体を通して「おいしくできた野菜を食べよう」とキャンペーンを展開し、消費拡大を呼びかけて欲しい。
だいこんは、千葉産が現状の肥大は良好で、年明けの1月についても落ち込みなくほぼ同じペースで推移する見込み。収穫量は、少なかった前年を大幅に上回ることが見込まれ、天候にも恵まれている中、大豊作でこのままのペースでは農家は赤字転落である。徳島産は台風の影響もなく平年並みの出荷となっている。年末が最大のピークでその後、1月から3月にかけて徐々に減りながら推移する見込み。1月については少なかった前年を大幅に上回ると予想される。肥大も良好であり、太物中心の見込みである。
神奈川産は台風の影響が心配されたが、暖かさから生育は回復しており、早播きと通常作の出荷が重なり、採り遅れの状況にある。昨年は寒さで小振りであったが、今年は大振りの出荷が続いており、1月についても12月に引き続き平年を上回る入荷を見込んでいる。
にんじんは、千葉産の生育が平年より早く、予想以上に回復が早まっている。出荷のピークは年内から4月いっぱい続くが、年末年始については例年より多いと予想している。作付けは昨年と変わらず、1月についても平年並みの出荷が予想される。
埼玉産の出荷は、1月中旬でほとんど切り上がる。台風で割れなどが多く、圃場に物はあるが出荷量は平年を下回る見込み。
ごぼうは、青森産が中心となるが、作付けの増大もあって量的に問題はない。九州産の短根タイプについては、7月に宮崎に上陸した台風15号とその後の21号、24号、25号の台風の影響を受けた影響で不作となっている。そのため全国的に青森産への依存度が高まっている。
れんこんは、茨城産の年明けに出荷物については台風による葉の損傷による影響が顕在化し、出荷は減ってくると予想している。ここ2~3年不作が続いたが、今年は作柄としては平年作である。
はくさいは、茨城産の潤沢な出荷が続いており、生育も順調で株が大きくなるため供給過剰の一因になっている。高温傾向から積算温度は平年以上であり1月についても状況は変わらない見込み。
ほうれんそうは、埼玉産については、12月に入っての寒波の影響を受け、年明け以降は少なくなってくる予想している。播種は続けているため昨年のような落ち込みはなく、出荷量は平年の60~70%であるが、前年より多いと予想している。
キャベツは、愛知産が植え直して圃場にはあるが出荷が遅れている。1月には平年並みに回復し、ここ4~5年少ない年が続いたことから前年を上回ると予想している。千葉産は、当初、年明け1月は出荷が減ると予想したが、このまま高温が続くと谷間がなく、12月と同じ数量で出荷が続くと見込んでいる。昨年の1月は大幅に少なかったが、今年は平年作であり、前年を上回ると予想している。神奈川産は、9月に定植した物は出遅れたが、適度な降雨により生育が回復し出荷は増えてきており、1月は平年並みであるが少なかった前年を上回る見込み。
ねぎは、千葉産が台風の強風により曲がりが多く、気温が高めで推移していることから太りも遅れている。遅れの回復は期待できるが、曲がりは修正できず下等級が多いと予想される。量的には平年並みで前年を上回る見込みである。茨城産は、正月に合わせて出荷が増えてくるが、育苗ハウス内の生育もすこぶる良好で、引き続き定植作業も順調となっており1~3月まで潤沢に入荷すると見込んでいる。ドカ雪でもない限りこの流れは当分続くと予想している。
レタスは、静岡産は平年通り定植を終えている。台風後に播種した物についても問題なく出荷されており、7~10日程度、前進気味である。品質は良好で、1月の出荷についても大雪や低温が長く続くようなことがなければ、例年並みを見込んでいる。前年は平年比70%と少なかったことから、前年比では格段に多い見込み。兵庫産は台風21号、24号の影響はそれ程受けておらず、生育は順調である。前年は寒波や秋の台風で大幅に遅れたため、1月は前年比120~130%を見込んでいる。
ブロッコリーは、愛知産が台風で定植直後に被害を受けて播き直しを行ったが、その後の高温によって生育は早まっており、出荷は、年明けから増え始め1月下旬には平年並みの出荷に戻る見込みだが、総入荷量は少なかった前年をやや上回る見込み。
きゅうりは、宮崎産が12月に入り夜温が高く天気も良くないことから、増量できない状況。このまま暖冬で晴天が少ないと、前年並みに届かない可能性が大きい。群馬産は、1月中旬から出荷が始まり2月初め頃に出そろってくる見込み。晴天が続くことが理想であるが、降雪、積雪がなければ順調に出荷できるであろう。千葉産は、台風の影響はなく、温暖な気候から出荷が7日程度早まっており、1月についても12月と同様に潤沢な出荷が続き、3月、4月が最大のピークとなる。
なすは、高知産で台風の影響があったものの、11月には回復して増量し、12月に引き続き1月上旬まで入荷は多く、その後、減ってくる見込み。量的には平年並み、前年並みと見込まれる。
福岡産は、1月から2月はこの作型では最も少ない時期にあたり、花数は減ってくる見込み。
トマトは、熊本産で11月後半から肥大が進み、年内は計画以上の出荷が続いたが、1月には前年並みかやや少なめになると見込まれる。愛知産は、台風によりハウスが冠水したり停電で管理ができず、基本的に出遅れている。年明け以降に出荷の立て直しを図る様子で、そのため1月はやや前年を下回ると見込んでいる。
ミニトマトは、熊本産は年末から年明けには前年並みに戻り、作付面積の増加から前年を上回ると見込んでいる。
ピーマンは、茨城産で1月に入り温室物のみとなるが作柄は良好で、春に向けて徐々に増えてくるであろう。1月は年間で最も少ない時期であるが、前年が台風被害で少なかったことから前年比は上回ると予想される。宮崎産は、台風の被害はあったが全般には順調で5日程度、出荷が早まっている。1月の初旬に多く出るがその後は谷間になると予想している。圃場により樹勢にバラツキがあり、生育のバランスを崩しているケースも見られる。
かんしょは、徳島産に台風の影響はなく、平年通り良好な仕上がりとなっている。収量も平年並みであり、L・Mサイズ中心である。東京市場へは4月末から5月上旬まで計画通りの出荷を見込んでいる。
さといもは、埼玉産で1月についても 土垂を中心に平年並みの出荷が予想される。全般に大きめの仕上がりであるが、夏の時期に雨が少なく9月の雨で二次成長してひょうたん型になったA品も多い。品質については平年通り良好である。宮崎産は、ここ数年の疫病の発生で少なくなっており、本年産についても作付面積が減少している。台風で葉の損傷や茎が折れたが、芋自体はしっかり出来上がっており、年明け3月まで前年を上回る出荷を見込んでいる。
ばれいしょは、北海道の今金地域の男爵が6~7月の降雨により、収量が前年比で30%減少している。出荷は平年通り1月いっぱいまで計画通りに出荷していく見込み。ライマン価(でんぷん含有量)は平年通りで、品質は充実している。ようてい地域では、6~7月の降雨が平年の6倍と異常に多かった上に、その後7月下旬から干ばつと30度越えの日が5日も続いたことが影響し、平年比、前年比20%減収した。ばれいしょはもともと冷涼作物であるため、暑さで疲れてしまい、玉数は平年並みかやや少なく、小振りの仕上がりになった。鹿児島産のニシユタカ(新じゃが)は1月下旬から平年通りのスタートとなるが、雨が少ない影響で少なめに推移し、3月に本格的に多くなると予想される。植え付け時期に多雨であったことも影響し、大きさはほぼ平年並みである。
たまねぎは、北海道の生産量は前年比90%程度と言われているが、全道的にはこれよりも不作の産地が多い。6~7月にかけて降雨が多く、その後の高温と干ばつで後期肥大が押さえられ、小玉傾向になったことが影響した。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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