野菜需給部 調査情報部
上旬は、9月終わりから10月上旬にかけては、台風24号と25号が相次いで日本付近に接近した。1日には、台風24号が本州から北海道南東海上を北東に進み、東日本で記録的な暴風となったほか、北日本太平洋側を中心に大雨となった。また、台風25号は、4日から6日にかけて沖縄地方から九州の西を経て日本海に北上、その後温帯低気圧に変わっても強い勢力を維持して7日に北海道地方を通過した。この影響で、西日本や北海道地方を中心に大雨となり、九州や東北地方を中心に記録的な暴風となった所もあった。旬降水量は、北日本太平洋側では台風や低気圧の影響で、かなり多かった。一方、東日本では台風や湿った空気の影響を受けにくく、旬降水量は少なかった。気温は、北・東・西日本では、本州の南東海上で太平洋高気圧が強いことや相次ぐ台風の通過に伴って暖かい空気が流れ込み、旬平均気温はかなり高かった。特に6日には、三条(新潟県)で日最高気温が36.0℃で10月として歴代全国1位の高温となるなど、旬の中頃は、東日本と西日本日本海側を中心に台風による暖かい空気の流入に加えてフェーン現象の影響で顕著な高温となった。
中旬は、北日本から西日本では天気は数日の周期で変化したが、北日本では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。一方、西日本の南海上から東日本の南岸には前線が位置しやすく、前線に近かった東日本太平洋側では曇りや雨の日が多く、旬間日照時間はかなり少なかった。また、西日本では、北から冷たい空気が流れ込みやすく、旬平均気温は低かった。
下旬は、旬の終わりに北・東日本の日本海側で気圧の谷や寒気の影響で曇りや雨となったほかは、全国的に高気圧に覆われやすかった。また、北・東日本では、旬の中頃にかけて南から暖かい空気が流れ込みやすく、旬平均気温は北日本でかなり高く、東日本でも高かった。(図1)
10月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万4292トン、前年同月比96.1%、価格は1キログラム当たり264円、同131.3%となった(表1)。
根菜類は、入荷量は主産地である北海道の天候不順の影響でだいこん、にんじんともに前年を下回った。価格については、前年、安値だったにんじんが前年比2倍以上の高値となった(図2)。
葉茎菜類は、ハウス物に加え露地物の出荷が開始したほうれんそうで台風による葉痛みがみられ、入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、台風の影響を受けた、ほうれんそう、ねぎ、レタスの価格が前年を大幅に上回った。(図3)。
果菜類は、夏秋なすの産地である関東地方は終盤に台風の影響があったことから出荷量は前年を大幅に下回り、不足感から価格は堅調に推移した。夏秋トマトは北海道と東北が終盤となり、後続の熊本産は台風により生育が遅れて小玉傾向となったことから入荷が少なく、安値だった前年を2割以上上回った(図4)。
土物では、年末需要に欠かせないさといもが台風の影響から、生育遅延や病害の発生が見られ、前年に引き続き入荷量は少なかったが業務需要が安定しており価格は前年をかなり上回った。(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
10月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万3674トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり245円、同134.6%となった(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
10月の東京市場は、数量96.1%、価格264円131.3%とこの時期としてはかなり価格高の推移となった。北海道の切り上がりが早く、秋冬の中心である関東産の始動が遅れて依然として出回り不足となっている影響だ。定植時期に東海地方や関東を襲った台風は、作業の遅れを余儀なくさせた。作付けは前年並みに終了していると報告される。それでもこうした蒔き時のズレは、結果として不作というか『予想したほど出なかった』といった結果が予想される。12月も出回り不足は続き、価格は平年より高いと予想される。
青森県は台風25号が日本海で温帯低気圧となった後、10月中下旬は晴れて穏やかな天候が続き、夏秋野菜の終盤物は格好がついた。10月の東京市場入荷量をみると、根菜類については出荷量1位の北海道は前年比95%と切り上がりが早まったが、2位の青森県は同117.3%となり、3位千葉は同65.4%と大きく遅れた。
関東は10月下旬から11月上旬にかけて晴れの日が続いた。10月の降雨量は平年を下回り、干ばつ気味であった。生育初期の露地野菜はもう少し雨が欲しいところであるが、12月以降に馬力がついて味の良い物が入荷してこよう。エルニーニョの発生で暖冬予想であるが、11月上旬は欧州、特にイタリアが雨が多く、極東のわが国は雨が少ない状況である。少雨で推移するほうが、野菜の出回りにとって好都合となろう。
だいこんは、神奈川産が現状はやや遅れているが、今後は回復し例年並みに追いついてくると予想している。主力の春系大根は前年よりも減っている。三浦大根は栽培する人が減っているものの、年末の風物詩ともなっている三浦大根の競売は例年通り25~27日に計画されている。千葉産は、苗不足で作付けは平年を下回ったが、出荷量は作柄が悪かった前年並みとみている。12月の出荷については平年を下回ると予想している。
にんじんは、千葉産の出荷が始まっており、ほぼ例年並みのペースである。発芽時期の干ばつや台風による風害を受けているが、播種は盆前に終わっており、蒔きなおしは行っていない。現状は試し掘りを行っていないため予測は難しいが、昨年と同様に小振りと予想している。最大のピークは11月末から年末までとなる。埼玉産は、8~9月の日照不足と、台風の強風で遅れている。12月はピークとなる。品種は「愛紅」「紅ひなた」、作付けは前年並み、サイズについてはL中心になるのかM中心か今後の天候次第である。
れんこんは、茨城産が成長終盤の9~10月に断続的に到来した台風による風に煽られ、元あがりが早まると予想されている。年内の出荷については潤沢なペースが続き問題はないが、年明けは、徐々に長さが短い2節のものが増え、減量しながら推移すると予想している。
はくさいは、茨城産が台風による遅れはあるが、10月は雨が少なく天候が安定していたことから、かなり回復してきている。現状までの早生品種はやや小振りで収穫されたが11月中旬から平年並みの大きさが見込まれる。量的には前年に届かないが90%を下回ることはないであろう。
ほうれんそうは、埼玉産は、昨年が10月末の台風と12月の度重なる寒波により出荷が少なかったが、今年は順調に出荷されており、暖冬予想もあることから前倒し気味の展開で11月下旬から年内いっぱい潤沢に出荷が続くと予想している。
キャベツは、愛知産が前年は台風の被害や低温により出荷量が少なかったが、今年は生育は遅れ気味だが年内の出荷は前年より多いと予想している。しかし、台風の影響から年明けの2~3月には減収になると予想している。千葉産は、10月が大幅に少なく、11月には回復したが12月下旬~1月は台風の影響で少なくなると予想している。神奈川産は、台風による塩害で傷んだが回復してきている。植え直しも行われたが、遅れはなく出荷に影響はない。最大のピークは12月下旬から1月中旬である。作付けは前年をやや上回っており、前年を上回ると予想している。
ねぎは、千葉県内で台風で倒される圃場もあったが、現状は回復している。当初は、前年を下回ったが12月には病気の発生も少ないことから前年並みの出荷を予想している。ただし、栽培農家が減っているため、その分、減量することも見込んでいる。
レタスは、静岡産が9月に台風の襲来や曇天が続いたが、10月に入って一転好天続きであった。当初は遅れも出たが12月には回復し前年並みに出荷できると予想している。定植も例年と同様に終わり、心配される山谷の激しい出荷はないと予想している。長崎産の生育は順調で、12月上中旬に台風で定植が遅れた影響で少なくなる時期があると予想している。1月にはいったん減って2月後半に再び増えるといった出荷パターンを見込んでいる。兵庫産は定植時期の降雨とその後の乾燥で7日程度の遅れとなっている。最大のピークの12月は前年並みを予想している。香川産は、前年が10月末の台風で不作となったが、今年の台風は9月末だったので5~7日程度の遅れとなっている。作付けは前年並みに行われているため2月中旬まで切れ間なく入荷する見込み。12月の出荷は干ばつが続いている影響で不結球や小玉が多くなると予想しているが、それでも少なかった前年を大幅に上回ると見込んでいる。
ブロッコリーは、埼玉産は11月出荷の早生が出荷できる人とできない人の差が大きかったが、12月にはバラツキが解消しピークとなり、年内いっぱい潤沢な出荷が予想される。
カリフラワーは、福岡産が台風の影響で若干遅れたが12~2月がピークとなる。種子の供給が少ないため、作付けは減っている。出荷については、昨年が不作であっため、前年並みを予想している。
きゅうりは、宮崎産が台風により一部で定植のし直しや、後ろにずれ込んだ。順調に回復し11月中旬に一回目のピークが来て、12月の天候によるがこのままの好天であれば中旬にもう一回ピークがこよう。
なすは、高知産に台風で被覆が剥がされるなどの影響が出た。生育にも遅れが出たが、好天が続くようであれば、12月には回復して前年並みになると予想している。前年は、12月まで順調であったが年明けは低温の影響で収量が伸び悩んだことから、今年も燃料代の高騰が気がかりである。
トマトは、熊本産がミニトマトへ生産が移行してやや減少している。台風の影響はほとんどなかったが、黄化葉巻病の被害が出ている。抵抗性品種が栽培されてはいるが、いつもの年よりもひどくやられている。11月下旬から1回目のピーク、その後12月末から年明けに再びピークになると予想している。愛知産は、9月の日照不足や台風の影響で花付きが悪く、さらに小玉で数量が伸び悩んでいたが11月下旬には平年並みに回復し順調に入荷する見込み。前年の12月は不作で少なかったため、前年を上回り、平年作の見込み。
ミニトマトは、熊本産に生育の若干の遅れはあるものの病気の発生もなく順調である。11月中旬のピークの後も出荷が続き、年末から年明けころが2回目のピークとなる。品種は「千果」「小鈴」である。
ピーマンは、宮崎産が台風24号で圃場の冠水や被覆が剥がされるといった被害に見舞われた。一部は植え替えを行っており、栽培面積の大きな減少はない。前半に遅れが出る『後ろ倒し』で、12月には回復し順調に出荷できる見込み。台風の後の天候は安定しており、平年作に戻ると予想している。茨城産は、5月に定植する抑制ピーマンは年内が最終だが、暖冬で高温であれば12月まで続く見込み。温室物は順調で最大のピークである5月に向けて徐々に増えていくと予想している。12月とすればほぼ平年並みの出荷を見込んでいる。
かんしょは、徳島産の鳴門金時は台風の影響もなく平年作となっている。だいこんの作業もひと段落し、12月が一番出荷量が多くなり来年の4月までの出荷の見込み。
さといもは、埼玉産は不作であった前年を上回り、平年並みとなっている。土垂が中心で、蓮葉芋系の出荷もあり、年末は23日ころまで販売される。
ばれいしょは、長崎産は出島とニシユタカ中心であるが、面積は横ばいからやや減となっている。出回りは12~1月がピークで大きさも平年並みの展開を予想している。
いちごは、佐賀産は定植、生育ともに順調で、当面のピークは12月中下旬と予想している。作付けについては高齢化により5%程度減少している。品種動向では「さがほのか」の後継品種「いちごさん」が伸びてきて農家の期待を集めている。栃木産、福岡産ともに生育はよく順調な入荷が期待できる。
切りみつばは、前年は失敗した茨城産だが、今年は順調である。ただ今年は霜が降りるのが遅く、作業の開始が遅れることも懸念される。加えて生産者減少から12月は良くて前年並みの見込み。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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