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需給動向 1 (野菜情報 2018年11月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成30年9月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万1299トン、前年同月比88.5%、価格は1キログラム当たり282円、同117.8%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9366トン、同94.1%、価格は1キログラム当たり257円、同114.7%となった。
 立て続けに襲来した台風は、西日本から北海道まで広範囲にわたり大雨や日照不足、倒伏などの被害をもたらした。さらに、北海道における地震の影響で根菜類を中心に物流が滞り入荷量は全体的に落ち込んだ。価格は、入荷量の減少で多くの品目で前年を大きく上回った。

(1)気象概況

上旬は、北・東・西日本では、台風21号や低気圧、秋雨前線の影響で、曇りや雨の日が多かった。4日には台風21号が徳島県に上陸し、東・西日本で大雨となった所があったほか、近畿地方を中心に記録的な暴風となり、沿岸では高潮による被害も発生した。期間の後半は、秋雨前線が本州付近に停滞し、前線に向かって南から湿った空気が流れ込んだため、東・西日本を中心に大雨となった。気温は、期間の中頃は、北日本を中心に暖かい空気が流れ込んだが、期間の終わりには、大陸から日本付近に寒気が流れ込んだため、西日本で低くなった。

中旬は、北日本は移動性高気圧に覆われやすく、北海道地方を中心に晴れた日が続いた。北日本日本海側の日照時間は平年比で153%となり、統計を開始した1961年以降で1位の多照となった。また、北日本太平洋側の降水量は平年比で11%となり、1961年以降で1位の少雨となった。一方、東・西日本では、天気は数日の周期で変化したが、前線や湿った空気の影響を受けやすかったため、西日本と東日本太平洋側では曇りや雨の日が多かった。20日は西日本付近に停滞した秋雨前線に南から湿った空気が流れ込んだため、広い範囲で雨となり、九州北部地方では大雨となった所があった。北・東・西日本の気温は、期間のはじめと終わりに大陸の寒気が南下して平年を下回った一方、期間の中頃は南から暖かい空気が流れ込んで平年を上回った。

下旬は、北・東・西日本では、天気は数日の周期で変化したが、秋雨前線や低気圧、台風24号の影響で、曇りや雨の日が多かった。台風24号は、30日に和歌山県に上陸し、東日本を強い勢力で通過したため、東・西日本の広い範囲で大雨となったほか、記録的な暴風となった所もあり、被害が発生した。気温は、南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、北日本は高かったが、本州付近には期間の後半に寒気が流れ込んだため、東・西日本では平年並だった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

9月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万1299トン、前年同月比88.5%、価格は1キログラム当たり282円、同117.8%となった(表1)。

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根菜類は、北海道が中心の入荷となったが、台風による天候不順で生育が進まなかったことに加え、地震による停電で物流が滞ったことから価格が上昇し、前年が安かったにんじんは前年比で2倍以上に上昇した。(図2)。

葉茎菜類は、はくさい、キャベツ類以外の品目で入荷量が伸び悩んだ。特に、ねぎは各産地とも台風により倒伏、病害などの被害が発生したことから、価格は大幅に上昇した。(図3)。

果菜類では、夏秋の産地では生育期の日照不足と低温の影響が残り、後続の秋冬の産地では台風による被害を受けたことから、全ての品目で入荷量が前年を下回り、価格は大幅に上昇した。(図4)。

土物では、北海道産が中心となるばれいしょが生育期の降雨の影響で小玉傾向となり、入荷は伸びなかった。価格は、昨年が単価安だったばれいしょ、たまねぎともに前年を大幅に上回った(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(執筆者:東京シティ青果株式会社 平田実)


(3)大阪市中央卸売市場

9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9366トン、前年同月比94.1%、価格は1キログラム当たり257円、同114.7%となった(表3)。

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品目別の詳細については表4の通り。

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(執筆者:東果大阪株式会社 新開茂樹)


(4)首都圏の需要を中心とした11月の見通し

9月の東京市場は入荷量が前年比88.5%、価格は282円で同117.8%となった。東北および北海道産がピークを迎えるこの時期は、国産野菜が豊富なシーズンだが、残念な展開となった。全国的な夏の天候不順で、各産地ともおしなべて不作傾向にあり、また、強い勢力のまま2つの台風(21号および24号)が上陸したことから、特に露地の果菜類に決定的なダメージを与えた。キャベツは今年の12月以降の出荷分の被害が大きいと報告されている。思ったほど肥大せず、『予想したほど入荷量が増えませんでした』といった展開が予想される。全国的に根の張りが弱いとの報告もあり、来年の4月頃まで終始出回り不足の状況が続くことも想定しておく必要があるかと思う。

世界経済の中心である米国は経済が好調で株高となっており、また、多くの新興国で地政学的なリスクが高まりからドル高が続き、少なくとも年末までは円安傾向が予想されている。このままの傾向では、輸入商社は値段が高い青果物を仕入れざる得なくなり、必然的に値段が高い荷をさばける市場に荷が集まってくると予想される。消費者はあくまで品質重視であり、品質が良ければ北米産でもオセアニア産でも迷うことはなく購入する。その結果、国内産の高値は冷まされることになると思われる。逆に円高の際は輸入品が安くなり、青果物の場合『安かろう悪かろう』といった流れに支配されがちである。

9月に発表された長期予報ではエルニーニョの影響で暖冬傾向が予想されている。暖冬の年は秋冬野菜は前進し年内は価格が安く、年明けの2月頃に物が無くなり高いといったお決まりのパターンがある。

根菜類 

だいこんは、千葉産が11月の出荷分は大きく成長しており、ほぼ問題なく出荷できる見込みだが、小さいに台風による塩害の影響を受けた12月から1月の出荷分については少なくなると予想している。青森産は、10月いっぱいの出荷が予想され、関東市場からの要請があれば、11月中旬まで出荷が可能である。

にんじんは、埼玉産が台風24号の影響で葉が損傷しさらに欠株も見られ、当面の出荷は例年に比べて10~20%程度減少すると予想している。ハウスの倒壊も見られるなど、強風の被害もあり出荷は遅れ気味で、出荷開始は通常は10月末だが、今年はやや遅れて11月上旬ころと予想している。出荷のピークは11月の終わりころから12月中旬までを見込んでいる。千葉県では、台風による被害はじょうによってかなり程度が異なり、水をかぶってしまった場所や倒木といった被害も散見される一方で、被害のない圃場もあり、12月には回復し前年並に出荷できる見込み。

ごぼうは、青森県の新物が10月から始まり、本年産の出荷ピークは11月から12月となる。生育は順調で2L中心で豊作傾向である。

葉茎菜類

キャベツは、千葉産では9月下旬に降雨が多く停滞気味であったため、11月の出荷分には影響はないが、12月から1月の出荷が20%から30%程度減少すると予想される。10月上旬から出荷が開始した茨城産は、ピークが11月で12月上旬に切り上がる平年並みの展開を予想している。品種は寒玉系で、台風24号による大きな影響はなかった模様である。愛知県産は、台風24号で外葉が風スレし、小玉に仕上がることも予想される。さらに蒔き直しが必要な圃場もあり、定植した100%の出荷はできないことが予想される。昨年は10月下旬の台風とその後の寒波および干ばつにより出荷が10%から20%減少したが、今年は暖冬で挽回できる部分もあると予想している。

レタスは、栃木産で台風の影響でマルチのがれなどもあったが、徐々に回復して今後11月まで大きな落ち込みはないと予想している。茨城産における台風対策としては、小さな苗についてはほぼ全てネットで防護できたものの、10月は少なめ11月については平年並みに回復してくると見込んでいる。長崎産の出荷は10月中旬から3月まで続くが、台風による大きな被害はなく作付けも前年並みで今のところ順調である。

ブロッコリーは、埼玉産が台風24号の影響で葉の損傷や倒伏被害を受けたが、11月には急回復してくると予想している。

ほうれんそうは、群馬産の主力である露地もので10月中下旬出荷分が台風の暴風であおられ、出荷できなくなった。11月出荷分は小さく、良くて半分程度と予想される。岩手産の雨除けものは10月分は台風24号の影響で少なかったが、11月分については回復して12月には前年並みとなる見込み。

ねぎは、茨城産が台風で倒され斜めになっている圃場が多く見られる。白い部分は土に埋まっており、11月には量的にも回復してくると見込んでいる。青森産は、前年同様の傾向でピークとなる11月中旬まで多く、11月いっぱいでほぼ切り上がる。品種は「夏扇」で2L中心である。

にらは、栃木産がこの夏は雨が少なく猛暑となったことで、株の生育は完璧ではなかったが、気温も下がり降雨もあるため、さらに生育が進む見込み。10月末か11月初めころから出荷が本格化し年末に向けて増えながら推移していく。

果菜類 

かぼちゃは、北海道産の収穫は終わったところであるが、前年の95%とやや少ない。出荷は12月10日まで続く。品種は「くりゆたか」中心で6玉中心の見込み。

きゅうりは、群馬産が台風による被害は一部であるが、それよりも9月の曇天続きで収量がダウンしており、9月下旬は20%減となった。10月以降についても太陽が出る期間が長ければ量的には伸びてくると思われる。加温は始まっているが11月は減少に向かい、12月には植替えとなる。

なすは、高知産が台風24号で一部のハウスで損壊はあったが、前年の台風ほどの被害はなかった。10月中下旬の一回目のピーク後、11月は樹勢を戻すため、数量は一旦落ち着くが、前年は特に少なかったことから、本年については前年より多いと予想している。

トマトは、栃木産の夏秋物は前進気味で10月に入り終了。抑制は順調で10月にピークとなる。11月にはやや少なくなってくるが前年並みの見込み。品種は桃太郎系とマイロックであり、台風による被害はほとんどない。熊本産の定植は順調に終了しているが、台風25号の影響は残ると予想している。被覆を剥がす人とそのままの人が半々で、風によるスレとハウスの倒壊も覚悟の状況である。いずれにしても10月および11月については少なくなると予想している。ピークは12月の後半からと予想している。愛知産は台風の被害についてはハウスの被覆が剥がされることより、近代化したハウスが停電でかんすいができないなど、トータルの肥培管理で混乱した。今後、早出しの終盤から抑制への切り替わりの時期であるが年内は日照不足も重なり小玉傾向で、玉着きそのものも悪く当面、数量的には現状と同様に伸びを欠く展開と予想される。

ピーマンは、茨城産は月は晴れの日が少なかったことから11月前半までは少ないものの、秋ピーマンの出荷はこれから本格化し、霜が降りる12月上旬まで続く。温室ピーマンのピークは年明け月である。宮崎産は、台風24号でハウスの倒壊や冠水などもあり、回復の数字をつかむのは難しい状況で、少なくとも11月までは大幅に少ないと予想している。高知産は、台風よりも秋雨前線の影響で花落ちし少なめだったが、樹はしっかりしており11月には前年並みに回復してくると見込んでいる。

土物類 

かんしょは、茨城産の掘り採りが終わり、貯蔵に入ったところで、作業の進捗状況も生産量も平年並みで、前半は本数が多く小振りであったが、平年並みのサイズが出そろってくると予想している。品種では「ベニアズマ」が減って「べにはるか」が増えている。

ばれいしょは、北海道産の「メークイン」の出荷となるが、加工用品種の「トヨシロ」に品種が代わる産地もあった。青果用品種では「とうや」が増えている。出荷は年明け1月までを計画している。洞爺地区では、震災で2日間、果場がストップしたが大きな影響はない。6月下旬~7月上旬の長雨さらに8月初めの高温が影響し、全般に小振りで、玉数が少なく、収穫量は2割程度の減少を予想しているが、来年の4月まで計画出荷する。

ながいもは、青森産が12月上旬に新物に切り替わるが、生育は順調で、前年より多い見込み。

さといもは、新潟産の五泉の芋「きぬおとめ」の東京市場へは11月に入ってからとなるが、本年産は夏の干ばつの影響で平年より小玉で、2L中心のLの出荷となる。8月の台風で被害を受けて不作となった昨年よりは多い見込みだが、平年を下回ると予想している。

たまねぎは、北海道産の収穫量が前年より少ないものの、平年よりは多い見込み。中心サイズはL・L大で、来年の月まで計画的に出荷が続く。

にんにくは、青森産の収穫は6月から7月上旬で終了しているが、小玉傾向で収穫量は前年を下回っている。出荷量は10月後半から増えて12~1月が出荷のピークとなる。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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