野菜需給部 調査情報部
上旬は、北日本は広く晴れた日は少なかったが、北海道地方では旬の中ごろにかけて晴天の続いた所があった。東北地方では、秋雨前線や台風第13号の影響で曇りや雨が多くなった所もあった。5日は東北地方に秋雨前線が停滞し、金山(山形県)で日降水量が302.5ミリと1976年の統計開始以来、1日での最多を記録するなど、記録的な大雨になった所があった。旬の中ごろ以降は、寒気が流れ込んで気温の低い日も多かった。7日は厚床(北海道)で日最低気温が3.6度まで下がり、8月としては1978年の統計開始以降で最も低くなった。東・西日本は晴れて気温が顕著に上昇した日が多く、東海地方では日最高気温が40度を上回る地点もあり、美濃(岐阜県)では40度以上の日が3日間に及ぶなど、10日間すべて猛暑日になった。8~9日は、台風第13号が暴風域を伴ったまま関東地方の太平洋側に接近して東北地方の太平洋沿岸を北へ進んだ影響で大雨となった所があった。
中旬は、北日本は、秋雨前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が多かった。旬の中頃は深い気圧の谷の通過に伴って秋雨前線の活動が活発になり、記録的な大雨の所があった。東・西日本は日本海側を中心に高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、旬の中頃は南からの湿った気流により大気の状態が不安定になって局地的な大雨の所があった。旬前半は西・東日本では引き続き気温が顕著に高く、13日には日田(大分県)で日最高気温が1942年の統計開始以来最高の39.9度となり九州の歴代1位を更新した。深い気圧の谷が通過した後の旬後半は、大陸から東進した冷涼な高気圧に覆われて全国的に気温が平年を下回る日が多かった。18日は、糠内(北海道)で日最低気温が4.2度まで下がって、8月としては1979年の統計開始以降で最も低くなった。
下旬は、北日本は秋雨前線や低気圧の影響を受けやすく、日本海側を中心に曇りや雨の日が多かった。東・西日本は高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、台風第19号、20号や秋雨前線の影響で曇りや雨の日もあった。23~24日には台風第20号が徳島県に上陸して西日本を縦断し、23日は上北山(奈良県)で日降水量449.0ミリ、友ケ島(和歌山県)で最大瞬間風速52.3m/sを記録するなど大雨や暴風に見舞われた所があったほか、日本海側ではフェーン現象により気温が顕著に上昇して中条(新潟県)で日最高気温が40.8度に達するなど北陸地方で統計史上初めて40度以上を記録した。このほかも、東・西日本は気温が顕著に上昇した日が多かった。30~31日は秋雨前線の活動が活発になって北・東日本日本海側は大雨に見舞われ、31日は志賀(石川県)で日降水量が161.5ミリと1976年の統計開始以来、1日での最多を記録した。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)
8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が11万8693トン、前年同月比94.7%、価格は1キログラム当たり290円、同117.0%となった(表1)。
根菜類は、北海道からの出荷が中心となったが、だいこんは初夏の降雨とその後の高温により、病害の発生もみられ入荷量は前年を大きく下回り、価格は前年を上回って推移した(図2)。
葉茎菜類は、長野産、群馬産、茨城産が主産地で降雨と気温上昇から前進出荷傾向の品目が多く、特にキャベツは月間を通して入荷量が前年を上回り、価格は下旬にかけて急落した(図3)。
果菜類では、岩手産、青森産、福島産などの東北の産地で日照不足や干ばつにより品質の低下が見られ、きゅうりは総入荷量が前年を下回り、価格は前年を2割以上上回った(図4)。
土物類は、北海道産のばれいしょが降雨の影響で作業が停滞する地域もあり、入荷が伸び悩み、価格は下旬にかけて上昇した(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
8月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8683トン、前年同月比97.9%、価格は1キログラム当たり267円、同121.4%となった(表3)。
品目別の詳細については表4の通り。
8月の東京市場は入荷量が前年比94.7%、価格は同117.0%となり、この時期としては難しい展開となった。根菜類やトマトの価格が特に高くなったが、これは主要産地が不作になったためである。10月についても台風第21号による被害も加わって、出回り不足が続き、価格高で推移すると予想される。
この夏の関東以北の天候を概括すると、関東は干ばつ、東北・北海道は多雨と日照不足に見舞われ、さらに、異常高温と台風がかく乱要因になった。今後、西南暖地産については残暑から、出荷が早まることはないと予想している。全般的に不作傾向の中で、生産が順調で安定したのはかんしょである。もともと、救荒作物で江戸時代には庶民にとっては大事な食料でもあったかんしょだが、政府が品種改良に乗り出したのは米に次いで2番目と早く、百年と少し経った現在では食味抜群の品種が揃い、救荒のイメージはない。新品種について農林水産省の研究機関が果たしてきた役割は大きかったという印象である。
だいこんは、青森産は今後、平年並みに回復し、10月から11月上旬まではの出荷分は作付けも前年並みとなり、平年と同様の出荷を見込んでいる。中心産地はおいらせ町である。北海道産は、干ばつの影響で少ない出荷が続いているが、今後は、播種が終わっていることもあり、終盤の10月中旬までは平年並みに回復する見込みであるが、この先、雨が多くなるようであれば病気の発生も予想され、平年に届かない可能性もある。
にんじんは、北海道産が干ばつの影響で少なめの出荷が続いているが、生育期間中の天候が終始良くなかったため、計画通りに播種できなかった。10月上中旬は、北海道各産地からのものが出揃い、平年並みの見込みだが、下旬は播種ができない時期の出荷となり少ない見込み。
れんこんは、茨城産は台風第21号の前までは平年作を予想したが、強風で葉が損傷した影響が年明けの出荷物に出ると予想している。年内出荷については9月以降も順調で、最大のピーク12月に向けて増えながら推移しよう。昨年はやや不作年であり、10月については前年をやや上回る見込み。
キャベツは、群馬産は台風第21号の影響もなく、計画通りの出荷となっている。肥大には十分すぎる降雨もあり大玉傾向となっている。10月いっぱいはピークが続き、11月上旬には終盤を迎えよう。
はくさいは、長野産が10月に増えてくるが、適度の降雨もあって肥大も良くなってくると予想している。台風第21号で揉まれたが生育は改善に向かい、平年と同様に9月下旬から10月中旬にピークとなる見込み。
ねぎは、青森産のピークは9月下旬~10月で、潤沢な出荷が続く見込み。出荷は11月いっぱいを予想している。北海道産は、9月6日の地震や台風第21号の影響で圃場での倒伏も見られるため、9月については出荷の伸び悩みが見込まれるが、10月以降、11月10日ごろまでは平年並みの出荷ができると見込んでいる。
ほうれんそうは、群馬産が台風でハウスの天井がはがされたことから、9月は少な目となっているが、9月下旬から出荷が始まり10月下旬以降はピークを迎える見込み。
レタスは、茨城産の出荷が9月5日から始まった。10月が本来のピークであるが、台風に叩かれて葉が傷み、中旬ごろに少なくなる可能性もある。好天が続けば、平年に近い水準を維持できる可能性もある。長野産は、南佐久の高冷地で台風で揉まれたことに加え、前後の降雨もあり9月から10月は計画通りに出荷できない可能性がある。特に、リーフ系はダメージ大きく、台風の前よりも小振りとなっており、今後の天気次第では大幅にダウンする可能性がある。
ブロッコリーは、長野産が定植時期の干ばつでやや遅れた影響で、平年は9月下旬がピークだが一週間程後ろにずれ込み、10月にピークとなる見込み。切り上がりは、平年通り11月10日ごろの見込み。
セルリー(セロリ)は、長野産が10月で露地物の最終を迎える。干ばつの影響で少なくなっており、10月には回復はするものの90%程度と見込まれる。
かぼちゃは、北海道産が昨年に続きやや不作である。生育期間全般の天候不順が影響し、今年はピークが9月下旬とやや後ろにずれ込む見込み。出荷は10月も多く、11月いっぱいまでの見込み。「くりゆたか」はやや小振りである。
きゅうりは、群馬産の抑制物の生育は順調で、9月下旬には生産者が全員がそろって出荷開始となり、10月前半に当初のピークが来ると予想している。その後は秋の寒さもあって増え方は鈍くなると予想される。
なすは、群馬産が台風第21号で擦れや傷果が多く、A品は減ってくる見込み。10月いっぱいは量的にまとまった出荷の見込み。今シーズンは始まりの時期が少なかったが、後半の作は平年並みとなった。高知産は平年並みに出荷は始まっている。台風第21号については、昨年のようなハウスの倒壊といった被害は報告されていない。年内のピークは10月後半から11月上旬で、生育は問題なく順調である。
トマトは、青森産が8月の出荷は少なかったが、9月から10月には平年並みに回復すると予想している。10月に入り1日おきの摘果になることから減少しながら推移し、L・M中心に10月いっぱいまで出荷の見込み。青森県のつがる西北の出荷は9月から10月には回復し、最終の11月15日までは平年並でL中心の見込みである。北海道産は、夏がなく春からいきなり秋が来たような気候であった。台風第21号ではハウスがはがされる被害があったが、実はしっかりついている。本来のピークは8月中下旬から9月上旬にずれ込んでいる。10月については夜温が下がり着色まで時間がかかるものの、出荷は多いと予想している。茨城産は、抑制トマトが夏の猛暑の影響で作柄はそれ程良くない。ピークは9月であるが10月いっぱいは出荷が多い見込み。
ピーマンは、茨城産の夏ピーマンが高温の影響で平年より少なめとなった。10月の秋ピーマンは7月中旬以降に定植したので、ほぼ平年並みの出荷を予想している。今のところ、樹のバランスも問題なく順調である。福島産は、台風第21号で花落ちし樹も傷んだが、希望的観測では今後、生育は回復し、不作気味だった前年並みまで回復し、11月下旬まで販売が続くと見込んでいる。
たまねぎは、北海道産の収穫作業はまだ続いているが、生産予想量は平年並みとなっている。肥大は良好で大玉傾向であるが、小玉も混じっている。本格的な出荷は始まっており。10月も前年並みの入荷を予想している。
ばれいしょは、北海道産の収穫期であるが、台風の襲来など(被害ない)もあり作業は遅れている。7月上旬まで断続的に大雨があり、その後、最大の肥大時期に干ばつが続いたことから前年と同様に小玉傾向である。10月についても平年を下回る出荷が予想される。
かんしょは、徳島産の鳴門金時は9月上旬の段階で60%ほど収穫が終了しているが平年並みのペースである。だいこんの作業と重なるため9月の出荷量は少なめだが、10月にはピークを迎える。かんしょへの台風の影響はなく、平年並みとなっている。千葉産は、9月から「シルクスィート」「ベニアズマ」の出荷が本格化している。肥大も良好で豊作傾向である。10月も平年を上回る出荷と予想される。
さといもは、埼玉産の出荷が9月10日からスタートしたが、平年並みで品種は「土垂」である。最大のピークである12月に向けて増えながら推移し、不作であった前年を上回る出荷が予想される。静岡産は、石川早生が9月上旬に出荷のピークに入り、10月いっぱいまで続く。前年は小玉傾向であったが、今年は16年産と同様の流れを見込んでおり、出荷は12月いっぱいまで続く見込み。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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