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需給動向 1 (野菜情報 2018年9月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成30年7月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が11万7735トン、前年同月比94.0%、価格は1キログラム当たり269円、同119.4%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は万6053トン、同94.2%、価格は1キログラム当たり246円、同124.9%となった。
 甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨や東から西へと逆ルートで日本を横断した台風第12号、さらに高温と干ばつなどの天候不順が重なったことにより、中旬以降の品不足や品質低下を招き野菜の総入荷量は激減し、土物以外の品目で価格は下旬にかけて高値となった。

(1)気象概況

上旬は、ごろにかけては、梅雨前線は日本海北部から北日本付近に停滞し、台風第号が沖縄・奄美付近から九州の西海上を北進して日本海へ進んだため、東日本の一部を除いて曇りや雨の日が多かった。特に、西・北日本では大雨となった所もあった。日から日にかけては、梅雨前線が西・東日本付近に停滞し、南から多量の水蒸気が長時間にわたり流れ込んだため、西日本を中心に広範囲にわたる記録的な大雨となり、土砂災害や河川の氾濫など甚大な被害が生じた。この期間に観測された48時間降水量は、広島(広島県)や高山(岐阜県)などアメダスの124地点で観測史上の最多降水量を更新した。上旬の降水量平年比は、西日本では372%、北日本では322%となるなど、月上旬としては1961年の統計開始以来、それぞれ最多の値を更新した。日から10日かけては太平洋高気圧の勢力が強まり、東・西日本では晴れた所が多く、九州北部、中国、近畿、東海、北陸の各地方はごろに、四国地方は10日ごろに梅雨明けした(速報値)。一方、台風第号が先島諸島付近を進んだため、また、上旬後半はオホーツク海高気圧が出現し、北日本では顕著な低温となった時期もあった。

中旬は、太平洋高気圧の勢力が日本付近で強く、東・西日本では太平洋高気圧に覆われ、晴れて厳しい暑さの日が続き、記録的な高温となった。東日本の月中旬の平均気温は平年差+3.8度と、1961年の統計開始以来、月中旬としては最も高い値を更新した。一方、北日本では低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多い所があったが、太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多い所もあった。東北南部は14日ごろ、東北北部は20日ごろに梅雨明けした(速報値)。

下旬は、東・西日本は、中旬に引き続き太平洋高気圧に覆われて、晴れて厳しい暑さの日が続き、23日には熊谷(埼玉県)で日最高気温が41.1度となり、歴代全国位を更新した。下旬後半は寒冷渦や台風第12号の影響で曇りや雨の日があり、大雨や大荒れとなった所もあった。また、日本海側ではフェーン現象のため気温がかなり高くなった。東日本と西日本の7 月下旬の平均気温は、平年差がそれぞれ+2.3度、+1.7度と1961年の統計開始以来、月下旬としては最も高い値を更新した。北日本は、高気圧に覆われて晴れた日が多く、旬のはじめと終わりは気温がかなり高かった。旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

7月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が11万7735トン、前年同月比94.0%、価格は1キログラム当たり269円、同119.4%となった(表1)。

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類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

入荷量は、だいこん、にんじんともに主産地の青森、北海道が、4月から5月の低温および6月下旬~7月上旬の豪雨や長雨の影響を受けたことから前年を大きく下回った。

価格は、数量が少なかったことから下旬になるにつれ上昇し、だいこんで前年比160.6%、にんじんで同144.4%とともに前年を大幅に上回った(図2)。

イ 葉茎菜類

入荷量は、主産地である長野、群馬、茨城、栃木などで適度な降雨と気温の上昇で、生育は順調でやや前進出荷気味であったが、下旬にかけて高温・干ばつによる品質低下や病害虫の発生が見られ、総入荷量は前年を下回る品目が多かった。

価格は、数量減の影響から下旬にかけて上昇し、特にはくさい、キャベツ、レタス類で大幅に前年を上回った(図3)。

ウ 果菜類

果菜類は、関東から東北へ産地の切り替わり時期となった。きゅうりは、遅れていた東北産が回復し、ほぼ前年並みの入荷となった。なすは、関東中心の入荷であったが、生育は順調で前年を上回った。トマトは、東北産が前進し、さらに群馬産も生育順調となったが中旬が高温と干ばつの影響で数量が減少したことから前年を下回る入荷となった。

価格は、前年が安値だったことから全体的に大きく前年を上回った。特に、きゅうりは関西方面からの引きが強く中旬に大幅に値を上げた。(図4)。

エ 土物類

入荷量は、さといもは小玉傾向であったことなどから前年をわずかに下回った。ばれいしょは価格が出ないことから出荷を抑制した産地があり前年並みとなった。たまねぎは、九州産は収穫が終了しており、上旬は潤沢な入荷となったが、後続産地である関東で高温・干ばつの影響から作柄が悪く前年並みとなった。

価格は、ばれいしょで在庫過剰に加え、暑さで消費が伸びなかったことから前年比53.6%と半値近くまで下落した。さといもも消費不振から前年をやや下回り、たまねぎは需要の伸びから、旬を追うごとに値を上げたものの前年並みとなった。(図5)。なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万6053トン、前年同月比94.2%、価格は1キログラム当たり246円、同124.9%となった(表3)。

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類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

入荷量は、だいこん、にんじんともに、北海道と青森県が主産地であったが、北日本に停滞した梅雨前線の影響で生育遅れがみられ、前年をかなり下回った。

価格は、野菜全体の値動きを反映し旬を追うごとに上昇し、だいこんで前年比164.3%、にんじんは前年が安値だったこともあり同166.7%と大幅に上昇した。

イ 葉茎菜類

入荷量は、長野産や群馬産のほか、豪雨や長雨の影響があった九州や中四国を主産地とすることから全品目で前年を下回り、特にはくさい、ほうれんそうで大幅に落ち込んだ。

価格は、入荷減からどの品目も下旬にかけて上昇し、特に前年が安値だったはくさいおよびレタス類は下旬の価格が上旬の2倍近くまで上昇した。

ウ 果菜類

果菜類は、西日本の産地の高温・干ばつ、九州および中四国における豪雨と長雨の影響で入荷が少なく、トマト以外は前年を下回った。

価格は、全ての品目で前年を上回り、特にきゅうりは中旬に急騰したことから前年比154.8%となった。ピーマンも東北産の入荷が少なく品薄感から堅調のまま推移した。なすは悪天候により主産地である大阪産が減量し、中旬以降高騰した。価格低迷していたトマトは夏秋トマトに切り替わったが、高品質だったことからを追うごとに上伸した。

エ 土物類

入荷量は、宮崎産のさといもが小玉傾向ではあるが生育が良好で前年並みとなった。ばれいしょは、記録的な高温が続いたことから消費が鈍く、前年を下回った。たまねぎは、豪雨や長雨の影響で前年をかなり下回った。

価格は、さといもは前年並みであったが、ばれいしょは消費減や品質低下から前年の半値近くまで下落した。たまねぎは、安値だった前年を大きく上回った。

なお、品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした9月の見通し

月の東京市場の野菜は入荷量が前年比94%、価格は1キログラム当たり269円で同119.4%と、この時期としては異例の高値となった。全国的な高温と北日本と東日本の干ばつが野菜の生理を狂わせた。特に果菜類では関東以北の物は尻腐れや着果不良が多発した。西南暖地産は西日本豪雨の影響もあり、切り上がりも大幅に早まった。一方、だいこんなどの重量野菜は雨不足が影響して肥大不足となり、出回りが大幅に減って前年を上回る価格となった。本来月、月の東京市場は学校が休みに入り、需要が減退する時期である。そうした中での平年を上回る269円という高値だったが、西日本の市場が東京市場などへの依存度を高めたことも影響している。

9月には学校始まることから、再び業務需要が盛り返してくることもあり、出回り不足は解消されることなく、市場価格は強めの展開が予想される。台風は破壊の脅威もあるが、恵みの雨もたらしてくれるもろつるぎでもあり、これから9月にかけての秋冬野菜のしゅ時期を前に、適度な湿り気も期待したい。

根菜類  014b

だいこんは、北海道産の一部で、月上旬に播種したものがちゅうたいして少なめの出荷となっている。月は、6月下旬から月上旬前半にかけて降雨が続いて播種ができず、また肥料が流亡するなどの影響もあり肥大が悪い。そのため本格的に増えるのは月中旬以降と見込んでいる。

にんじんは、北海道産の道南で、長雨で水没したじょうもあったが被害は大きくなく、生育に必要な日数は100日から120日と幅があって柔軟に対応できるのではと予想している。美幌では、最大のピークである月下旬に向けて増える見込みで、平年並みの数量を確保できると見込んでいる。品種は「向陽号」で玉サイズは平年並みとなっている。

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キャベツは、群馬産が7月に入り台風第7号の影響で降雨があり、生育が回復し前年並みの出荷になっている。最大のピークはお盆明けから9月で、圃場にしっかり植えてあって平年と同様の出方となろう。ただ今後干ばつが続けば、小玉傾向から減収の可能性もある。

はくさいは、長野産が8月初めごろに降雨があり、レタスほど早くないが徐々に回復している。9月に入り遅れていた作と後からいたものが重なり、上旬に一気にピークが来ると予想している。農家の生産意欲が旺盛で11月上旬まで量的にある見込み。

ほうれんそうは、群馬産が9月中旬から雨除け物が再びピークとなろう。露地については10月初めごろから始まり下旬にピークとなろう。月は平年並を予想している。

レタスは、長野産の一部で高温による結球障害はあるものの、現状は平年並みの出荷となっている。ピークは月いっぱい続き、涼しくなる9月には減ってくる見込み。天候が良ければ、順調な出荷が続くと予想している。群馬産は、高温の被害が出ており、9月は年をかなり下回ると予想される。出荷は10月まで続く見込み。

セルリー(セロリ)は、長野産の露地ものが10月中旬までで、その後はハウス栽培なる。猛暑の影響で傷みも見られる。8月に入り夜温も徐々に下がってきており、盆明けから回復し月には前年並の出荷を期待している。

ブロッコリーの長野産は、高温によりピークは前倒し気味である。後半作のピークは9月だが、播種が上手くできておらず、9月中旬以降、入荷は不安定になると見込む。シーズン一貫して氷詰めの出荷で、品質の信頼度は高い

ねぎは、北海道産が7日から10日程度遅れているが、大雪の影響で苗が遅れたこと、6月下旬から月中旬までの曇天が影響している。最大のピークは月下旬から10月となるが、やや細身であることから、全体としては減収の可能性も残る。青森産は盆明けから月いっぱいがピークとなるが、暑さも問題なく生育は順調である。

果菜類  015a

きゅうりは、福島産が干ばつの影響が残るものの、生育そのものは順調で前進傾向となっている。ピークは盆前後だが、今後、適度な降雨があれば平年並み、干ばつが続くようであれば、9月の露地は不作になるのではと見込んでいる。群馬産は、9月以降、徐々に出荷が始まり、20日過ぎに出揃えば、ほぼ平年と同様の出荷と見込んでいる。

なすは、栃木産は高温で花落ちも散見されたが、風の被害もなく順調である。8月上旬に降雨もあり、9月も量的にしっかりある見込み。群馬産は、過乾燥からかんすいできる圃場は問題ないが、雨待ちの農家の出荷は少なくなっている。台風第13号の降雨により、10月いっぱいまで通常の出荷となると見込んでいる。

トマトは、青森産では、高温の影響もなく9月は平年並のペースで出荷される見込み。サイズはMが中心で、最終は10月下旬までとなる見込み。一部の地域で7月下旬後半から8月にかけての高温で花落ちが見られ、9月以降、入荷が少なくなるのではと予想しているが、8月の恵みの雨により、9月後半には再び増えながら推移する見込み。

ミニトマトは、北海道で急激な暑さから果肉に影響が出たが着果には問題なく、気温の低下に伴い品質は回復してきている。8月中旬から9月上旬がピークとなるが、9月後半は前年を上回ると予想している。品種は「キャロル7」中心に「アイコ」などである。

ピーマンは、岩手産が高温の影響で尻腐れが発生するなど、現時点では栽培面積増に反して出荷量はそれほど多くない。お盆ころが一番のピークとなり、9月以降、減りながら推移すると見込んでいる。福島産は、今年は雨が少なく、出荷は前倒しとなっている。尻腐れも出ているが、出荷は前年を上回っており、9月もコンスタントに出荷できる見込み。

かぼちゃは、北海道産が春先の低温とその後の長雨、日照不足により、作柄は良くない。出荷は、平年より5日程度遅れて9月初旬を予想している。販売については貯蔵物が12月10日ころまでの販売を計画している。品種は「くりゆたか」「栗将軍」である。

スイートコーンの北海道産のピークは盆明け以降で、出荷は9月いっぱい続く見込み。今年は天候不順で草丈が短く鳥獣害の被害もあり、平年を下回る可能性もある。品種は「恵味」と「味来」などとなっている。

土物類 016a

ばれいしょは、北海道産の「メークイン」の東京市場での販売は平年どおり9月に入ってからを見込んでいる。玉の数は平年並みであるが、肥大が遅れて大玉傾向であった前年を下回る見込み。「男爵」は、8月初旬より出荷開始したが、降雨で収穫が遅れたため、平年より5日程遅れている。生産量は豊作であった前年の80~70%で、平年よりも少ない見込みである。玉数は例年より少なく、その分肥大は問題ない見込み。また、「洞爺」も8月初旬から出荷が始まったが、6月の低温と7月上旬の長雨、その後の高温と干ばつにより、終盤の肥大も期待できず平年より一回り小さい見込み。機械が圃場に入れず、適期防除ができなかったことも影響した。

たまねぎは、北海道産の出荷が8月初旬から始まったが、生産量は干ばつの影響により、晩生品種の肥大が抑制されたため、当初の予想を下回っている。L中心となっているが、9月にはやや大きめとなると見込んでいる。兵庫産は、豊作傾向ではあるが、9月の貯蔵物の出荷については、平年並みを見込んでいる。

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えだまめは、7月までの早生は不作で半作となったが、8月からの中生と9月からの晩生は問題なく平年並みの作柄である。9月の晩生は茶豆風味の「あねっ娘」作付けが減少している。

にんにくは、青森産は8月上旬の段階では掘り採りが終了し、乾燥中である。生産量についてはほぼ平年並みである。「田子にんにく」は盆明けから出荷が始まるが、前年より大振りである。掘り採り時期の天候に恵まれ、仕上がりは良好である。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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