野菜需給部 調査情報部
上旬は、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化したが、北日本や東・西日本日本海側では気圧の谷や寒気の影響で曇りや雨の日が多かった。2~3日や7~9日は、低気圧が日本付近を通過して、西日本から北日本の広い範囲で雨となり、大雨となった所があった。低気圧が通過した後は、日本付近に寒気が流れ込んだため、期間の後半は全国的に気温が平年を下回った。
中旬は、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化したが、東・西日本太平洋側は高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。期間の中頃は、北日本から西日本を中心に暖かい空気にも覆われ、16日は多くの地点で真夏日となった。西日本の旬平均気温平年差は+1.8度となり、5月中旬としては昭和36年の統計開始以降で1位の高温となった。一方、18日頃は、東北地方を中心に上空の寒気や前線、湿った空気の影響で局地的に大雨となり、浸水などの被害も発生した。このため、北日本日本海側の旬降水量平年比は266%となり、5月中旬としては36年以降で1位の多雨となった。
下旬は、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化したが、北日本では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かった。東日本太平洋側や西日本では、期間の後半を中心に本州南岸の低気圧や前線の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かった。九州南部で26 日頃、九州北部地方(山口県を含む)と四国地方では28日頃に梅雨入りした(速報値)。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
5月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が14万2138トン、前年同月比98.4%、価格は1キログラム当たり230円、同96.9%となった(表1)。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、だいこんは前進出荷気味で切り上がりが早かったことから、かなり大きく前年を下回った。にんじんは低温で遅れていたが生育が回復し大幅に前年を上回った。
価格は、だいこんは前半が安値だったことからかなり前年を下回った。にんじんは増量から値を下げ前年比でかなり下落した(図2)。
入荷量は、前進気味だったはくさいは数量が多かった前年並みとなった。キャベツ類は多かった前年をやや上回った。ほうれんそうはやや前進傾向で前年を下回った。ねぎは春ねぎの切り上がりが早く前年をやや下回った。レタスは茨城産の切り上がりが早く前年をやや下回った。
価格は、はくさいは消費が伸びず前年を2割程度下回った。キャベツ類も軟調な展開となり前年比3割下落と大幅に前年を下回った。ほうれんそうは、中旬の数量減からやや前年を上回った。レタスは安かった前年をかなり上回った。ねぎは夏ねぎの割合が高く、上中旬にかけて前年をかなりの程度上回った(図3)。
入荷量は、順調な出荷だったきゅうりは前年並み、なすは順調な入荷で多かった前年を下回った。トマトは気温の上昇に伴い着色も早まっており前年をかなり上回った。ピーマンは前年を下回ったが、トマトはかなりの程度、上回った。
価格は、きゅうりは品薄感があり前年を1割程度上回った。なすは需要が安定していたことから前年並みとなった。トマトは安かった前年をやや下回り、ピーマンも下旬に向けて入荷増から前年をかなり下回った(図4)。
入荷量は秋の不作が響きさといもは前年をかなり下回った。ばれいしょは九州産が少なく前年を大きく下回った。たまねぎは前年が多かったことから前年をかなり下回った。
価格は、ばれいしょは消費低迷から前年比3割弱の安値となった。さといもは数量減から前年をかなり上回った。たまねぎは動きが悪く前年を大きく下回った。(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
5月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万2586トン、前年同月比102.7%、価格は1キログラム当たり201円、同93.5%となった(表3)。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、西日本の産地から潤沢な入荷が続いたが、後続産地が遅れたもののだいこんは前年並となり、生育が回復したにんじんも前年並みとなった。
価格は、だいこんは品質低下からかなり下回ったが、にんじんは前月までの高値もあり前年並みとなった。
入荷量は、はくさいが生育順調だったことから前進し前年をかなり上回った。キャベツ類は潤沢な入荷となったが高温の影響で一部圃場廃棄となった産地もあったが前年を上回った。ほうれんそう、ねぎは前年並みとなったが、レタス類はサニーレタスが少なかったことから前年をかなり下回った。
価格は、はくさい、キャベツ類ともに前月までの輸入物の残量もあり前年をかなり下回った。ほうれんそうは前年並み、ねぎは高値で推移し、レタス類は数量減から前年をかなり上回った。
入荷量は、トマトは冬春の産地がピークを迎えたところに夏秋ものがスタートしたことから前年をかなり大きく上回った。九州産の入荷が潤沢だったピーマンは前年を上回った。なすは前年並み。きゅうりは前年をかなり下回った。
価格は、きゅうりが前年比14%高とかなり大きく上昇したが、なすは前年が高かったことから前年を下回った。入荷量が多く、品質の低下が見られたトマトも価格が下落した。ピーマンは、前月からの安値を引きずってかなり下落した。
入荷量は、九州産の入荷となったさといも、ばれいしょは前年をやや上回り、たまねぎは生育期の低温と収穫時期の降雨の影響から遅れ気味で大幅に下回った。
価格は、さといもが増量から、たまねぎは前月の安値を引きずってかなり下落し、ばれいしょは前年が高値だったことから大幅に前年を下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
3月以降の天候は野菜の生育にとってコンディションが悪くなく、特に果菜類は生育が順調で前進出荷気味となっている。7月の見通しとしては、東北産、北海道産についてはほぼ平年通りのスタートとなり、関東産や平野からのリレー出荷もスムーズで、入荷や価格に大きな乱れはないものと予想している。価格的には、8月のお盆までは、平年並みかやや安めを見込んでいる。寒暖差もあったことから、全体的に野菜の出来は良く、夏休みやお盆の時期に向けて、ラジオなどで視聴者に「今がおいしく、お買い得」と伝えたり、パッケージにQRコードを貼り、スマホをかざすだけで、品種や生産者さらに栽培情報がすぐに出てくるといったプラスアルファのサービスを付加することで、より販売に弾みがつくようになるのではと予想している。
だいこんは、北海道産が7月初めから始まるが、平年並みのペースである。4月以降天候は問題なく順調な播種体系を維持できている。あえて言えばやや降雨が足りないが、6月に入り盛り返して来ると予想している。作付けは若干増えている。干ばつ気味の天候であるが、肥大は問題なく順調である。
鹿児島産、宮崎産の新ごぼうは、2月の低温の影響で2週間程度遅れている。やや作業遅れ気味であるが、最大のピークは6月~7月で、生育そのものは順調である。さといもからの転作で作付面積は増加傾向である。
にんじんは、北海道産が5月上旬の播種で、その後干ばつ気味であるが平年並の推移となっている。出荷の始まりは8月に入ってからとなろう。青森産は6月下旬から収穫で6月末ごろには市場で販売できるであろう。夏にんじんの作付けについては前年の70%台と減っている。4月に入っての降雪で作業が遅れたり、前年が価格安となったことが影響した。現状の生育は回復してきている。品種は当面「彩誉」中心の見込み。
キャベツは、群馬産が7月に入り本格化してくるが、平年並みやや前進気味である。適度の降雨もあり生育は順調である。品種は中間タイプの「初恋」中心となろう。
ほうれんそうは、群馬産の露地栽培が終盤を迎え、雨よけ栽培の物が増えてこよう。ピークは7月中旬ころからで、作付けは前年並みである。岩手産は高温期を迎え現状よりも減ってくる見込み。一番の底は盆前後となろう。生産者が減っており、例年より少なめの出荷が予想される。
ねぎは、茨城産の夏ねぎの出荷となる。生育は順調で引き続き8月盆前後まで数量は多い。前月までは茨城産の占有率が高かったが、千葉産、埼玉産も6月から本格的に入荷して、価格はやや下げて来ると予想している。青森産は、生育は順調でハウス物の出荷が始まる。露地は7月末頃からになるが作付けは増えている。品種は「夏扇パワー」など。
レタスは、群馬産がピークとなるが生育順調である。標高500~700メートルでの栽培となっており、8月の盆明けには少なくなってくる見込み。長野産は、やや早いペースで来ており、一期作のピークを迎える。標高1200メートル地帯の産地が中心になるが、天候に問題なく順調に出荷されると予想している。
ブロッコリーは、北海道産がほぼ例年並みに6月中旬から始まろう。作付けは前年並み、品種は「SK099」が当面7月に一回ピークが来ると予想される。
きゅうりは、福島産が7月から露地栽培も始まってくるが、天候に恵まれ生育は順調である。夜の温度が若干低いことから、そこまで前進していない。夏秋の最大のピークは8月10日から盆にかけての見込み。
かぼちゃは、茨城産のトンネル栽培は昨年より早く始まり、6月下旬がピークで出荷は7月いっぱいとなる。品種は「栗将軍」で、生育順調であるが、作付面積は減少している。栃木産は前年より1週間ほど早く6月下旬から始まり、7月がピークになる。品種は「ほっこり」「栗将軍」が中心だが、作付面積は前年の85%と減っている。
なすは、栃木産が6月から露地栽培の出荷となっており、8月のピークに向かって徐々に数量が増えてくる見込み。作付けは前年並みで、生育についても順調である。
トマトは、本年の北海道は寒暖の差が特に激しく、1週間程度遅れているが、生育に問題はなく7月下旬にはピークを迎える見込み。ミニトマトは6月下旬から始まり、7月上旬に本格化してくる。「もてもてトマト」「愛してアイコ」、「かぐやひめ」(中玉)といったブランド名で出荷される。青森産は5月の低温と干ばつにより若干遅れている。6月下旬から出荷開始で、ピークは8月のお盆前後と予想している。品種は「桃太郎系」の他「りんか」も増えている。同(津軽西北)生育は順調で6月20日頃から始まると予想している。作付けはミニトマトに変わるなど、減少している。品種は「桃太郎セレクト」など。ミニトマトは7月10日頃からで、ピークは7月20日以降と予想される。品種は「サンチェリーピュアー」
ピーマンは、福島産はハウス栽培(3月定植)、トンネル栽培(4月定植)、露地栽培(5月定植)と移行するが、露地が全体の60%を占める。出荷のピークは8月中旬で、7月以降増えてくる。
スイートコーンは、千葉産の露地栽培は例年と同様に7月中下旬にピーク。今年の作付けは前年を下回っている。品種はゴールドラッシュで、天候に恵まれ充実の仕上がり。群馬産は7月下旬にピークとなるが、一週間程早いペースである。作付けは前年を下回っている。
たまねぎは、兵庫産の中生の出荷が始まってきたが、2Lサイズが中心で肥大は回復してきた。全体のピークは6月中旬で7月には減ってくる見込み。全体の収量は平年並みで、8月までにほぼ終了し、9月以降はかなり減ってくる。
さといもは、宮崎産の石川早生は昨年より遅れており7月上旬にピークの見込み。トンネル作が盆前までとなるが生育は順調である。8月いっぱいは露地ものも出荷されるが、作付けは全体的に若干増えている。
すいかは、千葉産は6月下旬がピークで、その後は減少の見込み。長野産のハウスものがスタートしたが、露地ものも例年より若干早く、ピークは7月下旬までと見込んでいる。作付けはほぼ前年並みで、品種は例年どおり「祭ばやし系」である。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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