野菜需給部 調査情報部
上旬は、北日本付近を低気圧や前線が短い周期で通過したため、北日本と東日本の日本海側は曇りや雨または雪の日が多かった。東日本太平洋側と西日本および沖縄・奄美は、高気圧に覆われて晴れの日が多かったが、4月6日から7日にかけては低気圧や前線が日本付近を通過したため、全国的に雨が降った。また、2日から4日は南高北低の気圧配置となって南からの暖かい空気が流れ込み、東・西日本を中心に気温がかなり高くなった。
中旬は、低気圧と高気圧が交互に日本付近を通過したため、北日本から西日本にかけては天気は数日の周期で変わった。14日から15日にかけては低気圧が発達しながら日本海から北日本へ進み、全国的に天気が崩れ、大雨や大荒れとなった所もあった。
下旬は、北日本から西日本にかけては旬を通して南からの暖かい空気が流れ込みやすく、気温がかなり高くなった。特に21日と22日は、日本付近は南から高気圧に覆われて気温が上昇し、晴れて強い日射が加わり、飯塚(福岡県)など46地点で4月の日最高気温の記録を更新した。また、24日から25日にかけては低気圧が発達しながら日本付近を通過したため、全国的に雨が降り大雨となった所もあった。旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
4月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万5191トン、前年同月比96.6%、価格は1キログラム当たり226円、同86.9%となった(表1)。
入荷量は、天候の回復から果菜類は入荷が増えたが、前月の気温上昇により前進出荷気味であった品目では入荷量が前年割れする品目もあった。
価格は、冬場の高騰から一転して安値傾向となり、はくさいで前年同月の32.4%、ばれいしょで51.7%と大幅に前年同月を下回った品目もあった。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、だいこんは神奈川産が前進傾向だったことから、前年をかなりの程度下回った。にんじんは昨秋の蒔き直し分の出荷が遅れ前年を大幅に下回った。
価格は、だいこんはかなり大きく前年を下回ったが、にんじんは前年を大幅に上回った(図2)。
入荷量は、はくさいは作付面積の拡大と良好な天候から前年をかなりの程度上回った。キャベツ類、ほうれんそうは前年をやや下回り、ねぎは春ねぎが出なかったことからかなり前年を下回った。レタス類は前年並みとなった。
価格は、はくさいが前年比32.4%となったほか、キャベツ類、ねぎ、レタス類で大幅に前年を下回った。ほうれんそうは前年並みとなった(図3)。
入荷量は、きゅうり、なす、ピーマンは前年をかなり上回ったが、トマトは気温の上昇により草勢が低下しやや前年を下回った。
価格は、入荷量が増えたことから全般に前年を下回ったが、特にきゅうりは売り上げが停滞し大幅に前年を下回った(図4)。
入荷量は、全体的に前年を下回ったが、特に、貯蔵ものになるさといもは小玉傾向であったこともあり大幅に前年を下回った。
価格は、さといもは前年をかなり上回ったが、たまねぎは前年を大幅に下回り、前年に高騰したばれいしょは前年の51.7%と大幅に前年を下回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
4月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万249トン、前年同月比107.5%、価格は1キログラム当たり203円、同81.5%となった(表3)。
入荷量は、九州の産地を中心に増え、全体では前年をかなり上回った。
価格は、はくさいが輸入在庫のだぶつきや気温の上昇から家庭消費が落ち込んだことなどから、前年比32.1%と過去最低レベルになったほか、ばれいしょは九州産の入荷が始まり入荷が増えたことから前年を大幅に下回った。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、だいこんは長崎産、香川産の増量から前年をやや上回ったが、にんじんは、初期生育の遅れから前年をかなり大きく下回った。
価格は、だいこんが前年はかなり大きく下回ったが、にんじんは前年比1.3倍と大幅に前年を上回った。
入荷量は、生育が良好だったはくさいは前年比144.2%となったほかレタス類も潤沢で前年をかなり上回った。ほうれんそうは前進出荷傾向からやや前年を下回ったが、キャベツ類、ねぎは前年並みであった。
価格は、ほうれんそう以外はかなり前年を下回り、特にはくさいは前年比32.1%となった。
入荷量は、きゅうり、なす、ピーマンは前年を大幅に上回ったが、トマトはかなり前年を下回った。
価格は、全体的に前年を下回ったが、特にきゅうりは価格が低いまま推移した。
入荷量は、さといもは貯蔵の残量が少なく前年をやや下回ったが、ばれいしょは不作だった前年を大幅に上回り、たまねぎも順調な入荷により前年を上回った。
価格は、全体的にかなり前年を下回ったが、特にばれいしょは高値だった前年の52.8%となった。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
4月から市場価格は下落傾向となっているが、給食やレストランからの要望に対応できる品質の良い野菜となると価格は決して安くないという。関東地方では5月初旬まで、長く干ばつ傾向が続き、春キャベツは巻きがやや緩かったが、6月以降は高原キャベツの入荷が本格化し、好天にも恵まれ品質は改善してくると予想している。
今年は、季節の進みが早く、桜の開花も例年になく早かったが野菜の生育も全般に早まる傾向にある。また、寒暖の差がかなり激しかったことから、積算温度から想定すると、それほど生育が進むわけでもないのではないかとの見方もある。
直近の長期予報では6月から7月は気温が高いと予想されているが、猛暑が続くとハウス内で生育が停滞してしまうこともある。梅雨の始まりがいつになるかも注視したい点であるが、6月についてはバランスのとれた平年並みの入荷量と価格展開になるのではないかと見込んでいる。
だいこんは、青森産は晴天と適度の降雨で、寒暖差は大きいものの生育は順調である。作付面積が増えており、肥大も良好であることから前年を上回ると見込んでいる。北海道産は順調に作業が進んでおり、例年どおり7月初めからの出荷予定である。
にんじんは、千葉産が5月から出荷が始まるが6月が出荷のピークと見込んでいる。作付面積は前年よりも増えているが、干ばつ傾向であることからM中心のやや小振り傾向の見込み。
キャベツは、茨城産が前進しており、切り上がりは7月上旬を見込んでいる。生育は順調で8玉中心に6玉と豊作型。品種は寒玉系で品質良好である。長野産は6月前半グリーンボールで、中心の春系は下旬から増えて7~8月にピークとなる見込み。全般に生育順調である。千葉産は6月1~2週目にピークとなるが、月間では平年並と予想している。群馬産は6月以降、本格化し順調な出荷の見込み。
ねぎは、茨城産の初夏ねぎは4月下旬から始まり、5月中旬から増量しピークは7月中旬まで続く見込みで、生育は晴天と適度の降雨で順調である。
ほうれんそうは、群馬の高原地帯の露地物の生育は順調で平年並みと見込んでいる。6月中旬以降は雨よけ栽培の出荷が始まるが、本格化するのは下旬からとなる。
ブロッコリーは、福島産の露地ものは連休明けから出荷が始まったが、例年より若干早めである。切り上がりは6月20日前後と予想している。青森産の出荷は一週間ほど早く5月末から始まったが、本格的な出荷は平年通り6月下旬からを見込んでいる。面積は前年の105%と増えており、品種は「スバル」「おはよう」となっている。
レタスは、群馬産は生育初期段階での高温により、やや巻きが弱かったが生育は順調で6月には乱れも解消してくる見込み。ピークは5月下旬から7月までとなり、数量的には平年並みの見込み。長野産は6月に入り標高1100メートル台の産地の出荷がピークとなるが、生育は順調で若干前進している。
アスパラガスは、長野産は2016年の天候不順から2017年はそれ程多くなかったが、今年は株の状態も良く、前年を上回る出荷と予想され、6月も引き続きピークが続く見込み。
セルリー(セロリ)は、長野産の露地栽培の出荷が5月末から始まり、10月に再び施設ものとなるまで出荷が続く。生育は順調でピークは6月上旬となる。
きゅうりは、群馬産の生育は順調で6月以降も引き続き潤沢に出荷が続く見込み。それでも漸減傾向であり、出荷は6月中旬までを見込む。福島産の3月に定植したハウスものの出荷がやや早めでスタートしており、メインの4月定植の分は6月下旬頃にピークを迎えると予想している。露地栽培の作業も順調に始まっており、今年はハウス、露地ともに面積は増えている。
なすは、栃木産が6月以降に増える露地栽培のものは雨が少なく生育は順調である。最大のピークである海の日に向かって徐々に増えながら推移する見込み。
トマトは、栃木産の半促成物が中心となるが生育は順調で、安定した出荷の見込み。熊本産は圃場に残量があり、梅雨入り後の気温がやや涼しければ長く収穫する人が増えることも予想されるが、6月下旬には切り上がる見込み。青森(田子)産は平年通り6月下旬からの出荷の見込みだが生育は順調で、ハウス栽培なので天候の影響はそれ程受けていない。青森(西津軽)産は平年通り6月中旬の出荷の見込みだが、作付面積はミニトマトに移行し減少している。
ピーマンは、茨城産は好天が続いて前進して前年を上回る出荷となっており、花付きも良く、樹の状態も悪くないため6月も平年並の出荷が続くと予想している。
かぼちゃは、神奈川の「みやこ南瓜」は例年よりやや早めの5月下旬に始まるが全量トンネル栽培のものとなる。最大のピークは6月下旬から7月上旬であるが生育は順調で作付けも前年並みである。
ばれいしょは、千葉産はメークインが晩霜の被害もなく生育は順調で6月下旬から出荷が始まると見込んでいる。長崎産は6月中旬までの出荷を見込んでいる。新品種である「さんじゅうまる」は病気に強い品種で出荷が増えている。
たまねぎは、佐賀産は6月以降は中生の出荷が始まり、順調な出荷と見込んでいる。千葉産は遅れ気味でLM中心、平年より小振りである。6月10日ごろに切り上がる見込みだが、平年の70%前後の見込み。兵庫産は生育遅れから回復しL玉中心で平年並みとなっており、晩生は6月初旬からの出荷を見込んでいる。
えだまめは、千葉産のトンネル栽培物は例年より7~10日早く、5月下旬から出荷が始まる見込み。6月以降はトンネル栽培と露地栽培となるがいずれも生育順調である。作付けは前年並である。群馬産は例年より1~2週間ほど前進しており、山形産は平年並みの見込み。
らっきょうは、鳥取産は1月から2月の低温や3月の干ばつで10日程度の遅れとなっている。東京市場では5月最終週から始まり、ピークは6月上旬で20日頃には切り上がると予想している。今のところ平年作を予想している。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
クリックすると拡大します。
クリックすると拡大します。