[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

需給動向 1 (野菜情報 2018年4月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成30年2月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が10万7526トン、前年同月比91.7%、価格は1キログラム当たり314円、同122.6%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万2740トン、同92.6%、価格は1キログラム当たり284円、同120.3%となった。
 一部、果菜類で回復がみられるものの、引き続き昨秋10の台風とその後の低温の影響が残っており、全般的に生育不良となったことから入荷量は前年をかなりの程度下回った。

 価格は、トマト、ばれいしょ以外は、総じて前年を上回って推移した。

(1)気象概況

上旬は、1日から2日は日本の南を低気圧が東北東進し、西日本の山沿いを中心にまとまった雪が降ったほか、関東甲信地方では広い範囲で積雪となった。その後は冬型の気圧配置が強まり、東日本以西を中心に強い寒気に覆われた。東・西日本の日本海側では大雪となり、九州や四国の平地でも積雪の所があった。福井(福井県)では7日の最深積雪が147センチメートルに達し、昭和56(1981)年以来37年ぶりに140センチメートルを超えるなど、発達した雪雲が日本海から集中的に流れ込んだ北陸地方は、多い所で平年比6倍超の積雪を観測する記録的な大雪となった。この影響で福井県と石川県を結ぶ国道8号線では約1500台の車両が立ち往生するなど、交通網が大混乱した。農業用ハウスが倒壊するなどの農業施設被害も発生した。また、東京(東京都)では9日までの17日間連続で最高気温が10度を下回った。

中旬は、初めは冬型の気圧配置が強く、全国的に顕著な低温となった。日本海側は発達した雪雲が日本海から断続的に流れ込んで広い範囲で大雪となり13日には、最も深い積雪がひじおり(山形県)で445センチメートル、九頭竜(福井県)で301センチメートルに達し、昭和57(1982)年11月(九頭竜は同年10月)の統計開始以来の記録した。また、九州や四国でも山地を中心に大雪となり、福岡(福岡県)で3センチメートル、高知(高知県)で2センチメートルの積雪を観測するなど、平地でも積雪の所があった。大阪(大阪府)では14日までの22日間連続で最高気温が10度を下回ったが、14日は日本海を東進した低気圧に向かって西・東日本の広い範囲に南から暖かい空気が流れ込み、九州北部・中国・北陸地方で春一番を観測した。その後は、北日本と東日本の日本海側は気圧の谷や寒気の影響を受けることが多く、17日から18日は急速に発達した低気圧の影響で暴風雪や大雪となった所があった。一方、東日本太平洋側と西日本および沖縄・奄美は気圧の谷の影響が弱く、晴れの日が多かった。

下旬は、北から西日本は低気圧と高気圧が交互に通過して数日の周期で天気が変化し、日本海側は、この時期としては晴れの日が多かった。東日本太平洋側は低気圧の影響を受けることがほとんどなく、降水量がかなり少なかった。北日本は強い寒気に覆われて気温の低い日が多く、23日から25日は発達しながら通過した低気圧の影響で暴風雪や大雪となった所があった。中旬までの降雪で積雪が310センチメートルを超えていた日もあったほろない(北海道)では、昭和56年10月の統計開始以降、25日の最深積雪が324センチメートルに達し、北海道内での観測史上最深を記録した。28日は低気圧が発達しながら東シナ海から日本海へ進み、西日本では暴風や大雨となった所があったほか、四国地方で春一番を観測した。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

009a

(2)東京都中央卸売市場

月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が10万7526トン、前年同月比91.7%、価格は1キログラム当たり314円、同122.6%となった(表1)。

009b

果菜類が西南暖地および関東の産地が中心となったがいずれも低温で肥大が進まず入荷量は前年を下回った。葉茎菜類は東海から関東の産地で生育は回復傾向だが、全体的に品質低下がみられた。根菜類は主産地である千葉県で昨年の台風の影響が残っており肥大が進まなかった。土物類では、前年が不作だったばれいしょは入荷量が増えたが関東から東海の産地で秋以降の天候不順の影響から肥大が進まず小玉傾向であった。

価格は、昨秋の台風被害やその後の曇雨天、11月以降の低温により、果菜類のトマトと、貯蔵もののばれいしょを除き、全般で、前年を上回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

入荷量は、だいこんは生育不良で入荷量が大幅に下回り、にんじんも昨年10月の台風の影響から少なかった前年並みとなった。価格は、だいこんが前年比2倍近くとなり、にんじんもかなり大きく前年を上回った。(図2)。

イ 葉茎菜類

入荷量は、はくさいは小玉傾向で品質もよくなかったが少なかった前年をかなり上回った。キャベツ類、ほうれんそう、レタスは低温による生育遅延や凍害、降雪などの影響から大幅に下回った。ねぎは回復傾向だが少なかった前年をやや下回った。

価格は、すべての品目で大幅に前年を上回り、特にはくさいは入荷量が前年よりも多かったにもかかわらず前年比1.7倍となった。(図3)。

ウ 果菜類

入荷量は、きゅうりが関東産の入荷が順調だったがわずかに前年を下回った。なす、トマト、ピーマンは低温の影響から肥大が鈍くかなりの程度、前年を下回った。

価格は、きゅうり、ピーマン、なすは前年をかなり大きく上回り、トマトは前年を下回った。(図4)。

エ 土物類

入荷量は、さといもとたまねぎは前年をかなり下回ったが、ばれいしょは不作だった前年をかなり大きく上回った。

価格は、さといもは入荷が順調だった前年を大幅に上回った。ばれいしょは暴騰した前年と比べ大幅に下回り、たまねぎは大幅に前年を上回った。(図5)。

010a

なお、品目別の詳細については表2の通り。

011a 012a

(執筆者:東京シティ青果株式会社 平田 実)

(3)大阪市中央卸売市場

2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万2740トン、前年同月比92.6%、価格は1キログラム当たり284円、同120.3%となった(表3)。

012b

全国的に強い寒気に覆われた2月は、期間を通して気温が低く日本海側では記録的な大雪となった。昨年10月の台風、その後の低温や降雪の影響から回復できない産地にとって、追い打ちをかけるような2月の低温であったため、西日本や東海地方の葉茎類、根菜類を中心に生育が進まず品不足が続いた。

価格は、関西市場に大きな影響のある徳島県、兵庫県、愛知県からの野菜の絶対量不足、さらに、低温からの鍋需要の高まりもあり高騰が続いた。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

だいこんは、出遅れていた和歌山産の入荷があったものの鹿児島産、徳島産、長崎産が低温の影響から肥大が進まず入荷量は前年をかなり下回った。にんじんは、主産地である鹿児島産、愛知産の肥大が進まず小玉傾向となり、輸入品や関東の千葉産の入荷もあったが入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、だいこんが2倍、にんじんも1.4倍と前年をかなり上回った。

イ 葉茎菜類

はくさいは春はくさいの出荷が始まったこともありわずかに前年を上回った。キャベツ類とレタス類は昨秋の台風やその後の低温なども影響し前年を大幅に下回った。ねぎのうち白ねぎについては輸入物も入荷し前年を上回ったが青ねぎは前年を大幅に下回った。

価格は、絶対量不足から全品目で大幅に前年を上回った。

ウ 果菜類

入荷量は、きゅうりは、寒波の影響があったものの日照時間が延びたことから順調な出荷となり、前年をやや上回った。なすは、低温と日照不足から、入荷量が多かった前年をかなり大きく下回った。トマトは愛知産の集約出荷により、前年をわずかに上回った。ピーマンは九州や関西近郊産地で寒波の影響が残ったことから前年をかなり下回った。

価格は、トマトが先月から引き続き低迷し前年をかなり下回った。きゅうりは下降傾向であったが前年をかなり上回り、ピーマンは前月に引き続き高値で推移し大幅に前年を上回った。

エ 土物類

さといもは、前進出荷の影響から入荷量は前年をかなり下回った。ばれいしょは、前年が少なかったため各産地とも前年を上回り、たまねぎは北海道産は寒波による降雪の影響から入荷量はかなり前年を下回った。

価格は、さといもが前月から引き続き高値で推移し、ばれいしょは高値だった前年を大幅に下回った。たまねぎは新ものが高値だったこともあり前年を大幅に上回った。

なお、品目別の詳細については表4の通り。

013a 014a 015a

(執筆者:東果大阪株式会社 新開 茂樹)

(4)首都圏の需要を中心とした4月の見通し

冬季にじっくりと滋養が蓄えられ、さらに春の日照のもとで伸び始めて歯ざわり、香りともに極上に仕上がった野菜が出回る時期である。農家が市場に出荷されるまで手をかけて育んだたまものでもある。

年末からずっと出回り不足が続いて野菜価格が高騰していたが、4月には平年並みの買いやすい価格に戻ってくると見込んでいる。関東の産地からは、今年は平年になく日差しが強いとの報告があり、寒暖の差が大きくなりがちなので高温には注意が必要である。

高温後に樹がばてると、5月、6月の切り上がりのタイミングが早まる可能性もあるので考慮したい。また、ピーマンは、快晴よりも花曇りを好むとされており、天候によっては収量の予想が難しい。

2月末に、コンビニの大手業者が健康志向の高まりから弁当に野菜を多く使って、質を高めるとの報道があった。これから夏にかけて、弁当に使用されるピーマンやミニトマト・かぼちゃなどの果菜類、ほうれんそうやブロッコリーなどの葉物野菜の需要が高まると予想している。

根菜類

だいこんは、千葉産の春だいこんが3月中旬から本格化し、トンネル栽培のため肥大は良好である。

ごぼうは、青森産が2月から価格が上向いてきたが、青森産の春堀りごぼうは特に2Lおよび3Lが少なく細めである。九州産が遅れていることから前年を下回る入荷と予想される。

にんじんは、徳島産が11月にいた物の出荷が3月下旬から始まり、ピークは4月20日前後と見込んでいる。生育期間の低温もありM中心のやや小振りと予想している。

葉茎菜類

キャベツは、千葉産が4月に入ると春キャベツの金系201が始まってくるが、干ばつも解消されて肥大については順調とのことである。ピークは月下旬から連休明け頃までで、切り上がりは月を見込む。愛知産は、春系は平年通り、3月がピークで4月初め頃までの出荷の見込みである。夏蒔きの寒玉キャベツ、冬のぼりなどは、小ぶりではあるがじょうにはあり、3月にやや多く4月中旬までの出荷となり、4月下旬からは夏系の初恋などに移り変わる見込みであるものの、生育は順調である。神奈川産は、低温と干ばつの影響を受けて1週間程度遅れている。増え始めるのは4月中旬で、ピークは4月下旬からの見込み。

はくさいは、茨城産の春はくさいは平年通り3月下旬から本格的な出荷となるが、寒さの影響もあり数量的には当初は薄めで小ぶりであるが、4月にはかなり回復すると見込む。

ほうれんそうは、埼玉産の作付けは平年並みだが低温の影響で2月は遅れていたが、3月に入り平年に近い水準となっており、4月には平年通り最大の出荷量を見込む。

ねぎは、千葉産の春ものが寒さからやや遅れて、3~4月に多めの出荷となる見込みだが、月末頃に田植え作業がはじまると減少する見込。千葉産の夏ねぎは月下旬から始まるが、月としては前年をやや下回ると予想している。

ブロッコリーは、香川産が定植の遅れもあり2月までは少なめであったが、気温の上昇もあって急回復してくると見込んでおり、徐々に増えて最大のピークは5月中旬となり、やや少なかった前年を上回ると予想している。

レタスは、茨城産が低温と干ばつから、小ぶりであるが生育そのものは順調である。作付け作業は順調に進んでおり、肥大についても平年並みに回復して、当面の最大のピークは4月の初め頃を見込む。

アスパラガスは、佐賀産のハウス栽培のアスパラガスは3月中旬にピークが来て、4月にはやや落ち着いた展開が続くと予想される。一昨年の天候不順の影響で昨年は不作であったが、今年は平年に近い水準までの回復を見込んでいる。

果菜類

なすは、高知産が10月の多雨の影響で前年は少なかったが、徐々に増えており4月にピークになると見込む。3日続けて降雨や曇天が続くとその後は少なくなるといった波があり、作付面積の減少もあり前年をやや下回ると見込んでいる。

きゅうりは、群馬産が年明けの寒さから少なめの出荷が続いていたが、3月の暖かい雨で一気に生育が進み、4月に出荷のピークとなると見込んでいる。作付けは前年並みで、降雪による施設の被害はない。

トマトは、熊本産が気温の低下や降雪で生育が遅れており、トータルの収量は減少すると見込んでいる。ミニトマトは、生育順調でほぼ前年並み、愛知産は、年間2作で冬トマトは3月で終了し、3月下旬からは春トマトがそろってくる。品種は7月までが桃太郎ヨークなどで、生育はほぼ順調であるが、寒波の影響で一時的に少なくなる時期もあると見込んでいる。

ピーマンは、茨城産が寒さの影響で出荷が少なかったが、4月以降については平年並みの天候になるとのことで通常通りの出荷を見込む。

かぼちゃは、沖縄産が平年より寒かった影響で遅れていたが、3月から増え始め6月まで出荷される見込み。品種はえびす南瓜が主流で、ピークは4月下旬である。

土物

ばれいしょは、鹿児島産が積雪を伴う低温の影響もあり、出荷が遅れている。5月の連休頃がピークで月15日ごろまで出荷される見込み。新品種では「ピルカ」が伸びている。

たまねぎは、佐賀産が低温の影響により遅れており、出荷の始まりは月末を見込んでいる。極早生のピークは月上旬で、その後早生、中生となる。作付けについては前年並みを見込んでいる。兵庫産は極早生が4月中旬以降に出荷が本格化する。寒さが続いた影響で小ぶり傾向である。

豆類

そらまめは、鹿児島産が低温・積雪・日照不足で生育は1カ月の遅れとなった。2月13日ごろから良い花が咲き始め、その分の出荷が4月7~8日ごろからようやく増えてくる見込み。4月初旬に強風被害がなければ前年の110120%の出荷が期待される。

実えんどうは、そらまめ同様、1月以上遅れている。出荷ピークになるのは月10日ごろで前年を上回る見込み。

その他

メロンは、茨城産が低温でやや遅れはあるが晴天もあって着果は問題ない。4月20日ごろからオトメメロンの出荷が始まる見込み。

たけのこは、静岡産の出荷が始まり、3月中旬には本格的な出荷となり4月中下旬が出荷のピークとなる見込み。今年は表年でおいしい物が潤沢に出回る見込み。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

クリックすると拡大します。

クリックすると拡大します。


元のページへ戻る


このページのトップへ