野菜需給部 調査情報部
上旬は、北日本を中心に強い寒気が流れ込み、全国的に気温が低かった。日本海から千島近海を低気圧が数回通過し、その後は冬型の気圧配置が強まって、北海道や東・北日本海側では降雪量が多く、東日本日本海側では降水量がかなり多かった。一方、東・西日本太平洋側では、日本の南を通過する低気圧の影響を受ける日もあったが、高気圧に覆われる日や冬型の気圧配置の日が多く、降水量は少なく、日照時間も平年を上回る所が多かった。
中旬は、冬型の気圧配置が強く、大陸から高気圧が張り出した西日本を中心に強い寒気が流れ込んだ。北日本や東・西日本日本海側では降雪量も多く、12日頃は日本海から千島近海を低気圧が発達しながら通過し、北日本や東日本日本海側を中心に大雪や暴風雪となった。日本海側では曇りや雪または雨の日が多く、気圧の谷の影響も受けて北日本日本海側では降水量がかなり多かった。一方、東北地方から近畿地方にかけての太平洋側では晴れる所が多く、東日本太平洋側では日照時間がかなり多かった。
下旬は、前半は冬型の気圧配置が弱まり、本州付近は高気圧に覆われ、日本海側でも晴れた所があったが、中頃には日本付近を低気圧が発達しながら通過し、西日本や東日本太平洋側ではまとまった雨となり、北日本では南からの暖かい空気が流れ込んで気温が上昇した。低気圧の通過後は冬型の気圧配置が強まり、再び強い寒気が流れ込んで、27日頃は北日本や東日本日本海側を中心に大雪や暴風雪となった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
12月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万4957トン、前年同月比94.4%、価格は1キログラム当たり314円、同115.5%となった(表1)。
主産地は貯蔵出荷の北海道産を除き、関東産、東海産および西南暖地産が主流となった。入荷量は、根菜類では、だいこんが前年を大幅に下回り、葉茎菜類では、はくさいを除いて前年を下回り、果菜類はトマトが前年並みであったものの、きゅうり、なすおよびピーマンは前年を下回り、土物類ではばれいしょが前年をかなりの程度上回ったものの、さといもが前年をかなりの程度下回り、たまねぎが前年をやや下回ったことから、野菜全体では、前年をやや下回った。
価格は、秋以降の曇雨天、台風による強風、降雨やその後の低温により、根菜類のだいこん、葉茎菜全般、果菜類のきゅうり、なすおよびピーマン、土物類のさといもおよびたまねぎは前年を上回った。にんじん、トマトおよびばれいしょは、おおむね月を通して、前年を下回った。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、だいこんは、千葉産および神奈川産が、天候不順による生育や肥大遅れにより、月間では前年を大幅に下回る入荷となった。にんじんは、主産地の千葉産が、11月の好天で肥大遅れなどが回復傾向し、一部他関東産も順調であったことから、総量としては前年をわずかに上回る入荷となった。
価格は、だいこんは前年を大幅に上回ったものの、にんじんは曇雨天などで高かった前年をかなりの程度下回った(図2)。
入荷量は、はくさいは、年内に出荷が前倒しされたことから、前年をかなりの程度上回り、キャベツは、千葉産が前年並みとなったものの、愛知産の根張りが弱く小玉傾向となったことから、入荷量は前年をかなりの程度下回り、ほうれんそうは、秋の断続した曇雨天による日照不足などにより、生育に遅れがでたことから、月を通して前年を大幅に下回り、月間でも前年を大幅に下回った。ねぎは、茨城産が前年を大幅に上回ったものの、他関東産に台風による折れなどがみられたことから、入荷量は前年をわずかに下回った。レタスは、主産地の静岡産および茨城産が秋の天候不順により、小玉傾向となり、入荷量は前年を大幅に下回った。
価格は、ねぎは前年をかなりの程度上回り、他葉茎菜類全般で前年を大幅に上回った(図3)。
入荷量は、関東産が秋の断続した天候不順により、また西南暖地産が12月の低温による生育遅れで、ほとんどの品目で出荷量が伸び悩んだ。きゅうりは、埼玉産が順調な入荷であったものの、他主産地が前年を下回ったことから前年をやや下回り、トマトは、関東産が順調な出荷となったものの、主産地の熊本産が前年をかなり大きく下回ったことから、前年並みの出荷となった。なすは、高知産が11月の好天により回復傾向だったものの、12月に入ってからの低温で生育が伸び悩み、月間では前年を大幅に下回った。ピーマンは高知産が下旬に入荷量が回復したものの、茨城産や宮崎産など主産地の秋の天候不順などによる生育遅れで前年をかなり大きく下回った。
価格は、トマトは年末需要期に高値となった前年をかなりの程度下回ったものの、きゅうり、なすおよびピーマンは、前年を上回った(図4)。
入荷量は、さといもは埼玉産および千葉産とも曇雨天で肥大遅れが発生し、出荷量が伸びなかった。11月からの好天により、中下旬は前年を上回った産地があったものの、月間では前年をかなりの程度下回った。ばれいしょおよびたまねぎは、主産地である北海道産が作柄も良く計画出荷となった。ばれいしょは前年をかなりの程度上回り、たまねぎは前年をやや下回った。
価格は、ばれいしょを除き、前年を上回った。(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
12月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8549トン、前年同月比97.2%、価格は1キログラム当たり286円、同113.5%となった(表3)。
10月下旬の台風や悪天候の被害から回復ができない産地や回復が遅れた産地があり、特に冬場の大阪市場に大きな影響がある徳島産の入荷が少なかった。また、12月の寒波により全国的に気温が下がったことによる生育不良で年末需要に応えられるだけの数量を確保できず、総入荷量は前年比、平年比ともに下回った。
価格は、上旬から堅調に推移し年末需要の影響もあり下旬はさらに値を上げた。
類別の動向は以下の通り。
だいこんは低温の影響で肥大が悪く入荷量は前年を下回った。にんじんは長崎産、鹿児島産は順調であったが鳥取産が大幅に前年を下回り入荷量は前年を下回った。
価格は両品目とも前年をかなり上回った。
10月下旬の台風に加え12月の寒波の影響を受けた産地が多く、ほうれんそう、レタスの入荷量は前年を大幅に下回り、価格は前年を大幅に上回った。はくさいは、前年より入荷量が上回ったが鍋需要などもあり価格は高値で推移した。
きゅうり、なす、ピーマンは主力産地の生育不良と寒波の影響から入荷量は前年を下回り、価格は前年を大幅に上回った。
さといもは、国内産地が前進出荷傾向であったことから入荷量は前年をかなり下回り、価格も前年を上回った。ばれいしょは北海道産、長崎産が順調で入荷量は前年をかなり上回り、価格は高かった前年を大幅に下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
平成29年の年末の野菜価格はかつてない高値となった。年明け後1月上旬も引き続き“強烈な高値”が続いており、注文を断らざるをえないと話す仲卸業者もおり、市場からは危機的状況が伝わってくる。
2月後半には追い蒔きした品目が入荷してくるため出回りは増えるのではないかとみる産地関係者もいる。しかし、毎年2月上旬は野菜の価格が高くなる時期でもある。一方、生産面では収量は減少傾向であり、生産者としては喜んでいられない状況が続く見込み。
通常、この時期の関東産のほうれんそうは肉厚で甘いが、低温と干ばつの影響により生育に時間がかかっていることから、いつも以上に食味が良い。店頭価格は決して安くはないが、滋養豊富なのでさまざまな料理に利用して楽しみたい野菜の一つである。最近の傾向として、販売店との信頼関係や品質で野菜を選ぶ消費者も増えており、例年の倍以上の価格になる品目に対しても受け入れられているようである。
28年の高値は12月までの暖かさから一転し、12月後半から厳冬となったことで出荷が追いつかず、出回り不足による価格高であった。一方、29年の高値は10月の天候不順と2つの台風で定植や播種時期を逃したことが大きな要因である。播種のタイミングの微妙なずれは大きな影響をまねき、後から遅れた分が計画通り出荷されるといったことは期待できない。ましてや本年の寒波は非常に厳しく、平年の12月は表日本の岩手県や宮城県の平野部では降雪はあるが積雪にはいたらないのだが、今年は一面、銀世界となっている。そのため関東産の葉物野菜に対する要望は高く、高値でも断っているといった状況になっているようだ。
『戌年の気象は荒れる』という格言もあり、十分な対策を講じなければと警鐘を鳴らず農家もいる。この後南関東の降雪、夏の干ばつ、台風の上陸、冬が早く来る等大荒れの一年との予報である。
個々の品目を見ていくと、だいこんは、千葉県の最東部、銚子市、旭市、匝瑳市を含む海匝地域からの入荷が増えるのが3月からとなるため2月までは大幅に少ない見込み。徳島産は低温・干ばつ・日照不足で現状出荷は伸びていない。また、2月中旬から3月の出荷となる春だいこんの作付けは平年並に終了しているが、数量は平年を割り込むと予想している。神奈川産は10月の台風の影響もあり遅れているが1月下旬から通常通りと見込んでおり、2月、3月は平年並を見込む。切り上がりは4月上旬までとやや後ろにずれる見込み。
にんじんは、千葉産は生育不良からMサイズが中心で単収が伸びず、2月も肥大は期待できず前年を割り込む出荷を見込む。埼玉産は前倒し気味の出荷から1月で終了し、2月の出荷はかなり少ない見込み。徳島産は3月からの出荷となるが生育遅れも見られる。
キャベツは、千葉産は平年の60~70%と予想しているが、追い蒔きしたものが本格化してくる3月には平年に近い水準まで戻す見込み。愛知産は2月、3月はほぼ順調に出てくると予想しているが根の傷み等から小玉傾向で出荷は例年の80%程度と見込む。神奈川産は春タイプが主流で通常より少なめを見込んでいる。
はくさいは、茨城産が中心となるが一層小玉傾向となると予想している。2月~3月については在圃性の良いものの出荷ということになるが、量的にはかなり少ないと予想している。
ほうれんそうは、群馬産の本格出荷は4月からだが、伸びたものがSサイズでも出荷するといった状況で、2月についても出荷の伸びは期待できない。埼玉産は降雪のリスクはあるものの、11月に蒔き直した分が順調に出てくれば平年を上回ると見込む。
ねぎは、埼玉産は前年の台風や寒波の影響で葉折れやシワが一部散見されるが、販売が好調で量的には順調に出荷されている。春ねぎも順調で3月中旬に始まり秋冬ねぎとダブリながらの出荷となろう。千葉は年内については品質の低下もあって少なかったが、年明けは平年並の出荷となっている。今後2月~3月も問題なく出荷できるであろう。品種は「龍ひかり2号」中心で、正品率が高いのが特徴である。
レタスは、静岡産は2月上旬から平年通り3月いっぱいがピークである。昨秋の定植について1月出荷の部分は少なかったが、2月以降については平年並みの見込み。兵庫産は淡路からの入荷が本格化し、平年並を見込むが寒波の入り方では小玉傾向となって、箱数が伸び悩む可能性もある。
ブロッコリーは、埼玉産は年明け出荷が全体の3割で2月は平年並の見込み。愛知産は10月の降雨の影響で2月から3月分の定植が出来なかったためかなり少なくなると予想している。
きゅうりは、宮崎産は平年並みに出荷されている。気温は低いが日照は長く、樹勢も問題なく特に3月以降には本格的に増えてこよう。群馬産は平年通りのペースで増えており、特に日照時間が長く量的にも平年並の出荷となろう。
なすは、台風により高知県の芸西地域中心に被害が出て、一部ハウスの損壊もあった。そのため年内は例年の90%となった。また曇雨天が続いたことも影響した。年末年始に一つのピークが来たが、2月上旬にまた増える時期があると予想しているが、台風の被害から立ち直って6月中下旬の切り上がりの時期までは平年並みの出荷と予想される。
トマトは、愛知産が植え替えの時期に入っていることに加え、10月の天候不順の影響から脱しておらず、寒さの影響もあり、少なかった前年並みの見込み。熊本産は2月~3月がピークだが、1月上旬の寒波がどのよう影響を与えるか、というところ、栃木産は生育は順調だが寒さの影響でやや小振りだが、2月以降は増える見込み。
ピーマンは、宮崎産はやや不安定な出荷で、やや小振りであるがほぼ平年と同様で、今後は徐々に増える見込み。
さといもは、埼玉産はが10月までの降雨、その後の冷え込みから生産量はそれ程多くなかった。年内に優先的に出荷したため、今後は年明け少なめを見込み。
ばれいしょは、鹿児島産(徳之島)の「ニシユタカ」は年内の寒波で遅れているが豊作傾向である。出荷の始まりは2月中旬で小玉傾向だが回復する見込み。長崎産は天候不順の影響で30%程度の減収となったため2月はかなり少ない見込み。北海道産は2Lが少なく、LとLM中心で箱数は少なくなっている。年内に多く出荷した経過から、1月から3月の出荷は少なかった前年並の見込み。「男爵」中心であるが新品種の「きたかむい」が昨年より多く、その他「キタアカリ」も出荷される。
たまねぎは、北海道産が多かった前年を下回る見込みである。熊本産はサラダたまねぎが平年よりやや遅く2月初旬からの出荷が見込まれる。天候不順の影響はあるものの作付けは前年並みとなっている。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
クリックすると拡大します。
クリックすると拡大します。