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需給動向 1 (野菜情報 2017年12月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成29年10月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が13万9763トン、前年同月比107. 6%、価格は1キログラム当たり201円、同63.6%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万4755トン、同109.8%、価格は1キログラム当たり182円、同64.1%となった。
 下旬には台風の影響により広範囲の品目の入荷量が減少したものの、月計では両市場とも前年をかなりの程度上回り、価格は月間で前年を大幅に下回った。

(1) 気象概況

上旬は、北日本は、気圧の谷や寒気の影響を受ける日が多かった。3~4日は11月並みの寒気が流れ込んで標高の高い峠や山間部では雪が降り、5日は八甲田山で平年より12日早い初冠雪を観測するなど、北日本の7個所で初冠雪を観測した。東・西日本の天気は数日の周期で変わった。6~7日は前線を伴った低気圧が通過し、西日本で局地的に非常に激しい雨となり道路が冠水するなどの被害があったほか、伊豆諸島でも大雨になった所があった。沖縄・奄美は高気圧に覆われて晴れた日が多く、気温が平年を大幅に上回り、上旬の平均気温は平年差プラス2.4度と、昭和36(1961)年の統計開始以来、10月上旬としては最も高かった。

中旬は、日本の南に停滞した秋雨前線や南からの湿った気流、あるいは北から流れ込んだ寒気の影響で、全国的に曇りや雨の日が多かった。特に東日本の太平洋側と西日本では旬間日照時間が平年を大幅に下回り、東日本の太平洋側は37%、西日本の太平洋側は28%、西日本の日本海側は31%と、昭和36年の統計開始以来、10月中旬の平年比が最も少なくなった。気温は、寒気の影響を受ける日の多かった北日本はかなり低かった。東日本の太平洋側は中旬の後半に北東から冷たく湿った空気が流れ込みやすく、19日は東京の最高気温が12.3度に留まり、10月中旬としては79年ぶりの低温となった。

下旬は、北・東・西日本では数日の周期で天気が変わり、沖縄・奄美は湿った気流や台風の影響で曇りや雨の日が多かった。超大型のまま23日に静岡県へ上陸して関東地方を北東へ進んだ台風第21号と秋雨前線の影響で、21~23日は西・東日本を中心に広い範囲で大雨や暴風となり、河川の氾濫や土砂災害などによる人的被害や高潮による被害の発生した所があった。特に紀伊半島は記録的な大雨となり、22日の1日の降水量が尾鷲(三重県)では586.5ミリメートル、新宮(和歌山県)では532.0ミリメートルを観測し、尾鷲は昭和13(1938)年、新宮は昭和51(1976)年の統計開始以来、10月としては最も多くなった。台風第21号から変わった低気圧に伴って、寒気が流れ込んだため、北日本では23~24日に吹雪や大雪の所があった。23日の1日の降雪量が阿寒湖畔(北海道)では23センチメートル、陸別(北海道)では14センチメートルを観測し、昭和61(1986)年の統計開始以来、10月としては最も多くなった。2729日は、沖縄・奄美から西・東日本南岸を北東へ進んだ台風第22号により、沖縄・奄美から西・東日本の各地で大雨や暴風となった。特に九州南部は記録的な大雨となり、赤江(宮崎県)では28日の1日の降水量391.0ミリメートルを観測して平成15(2003)年の統計開始以来、最も多くなった。30日は、台風第22号から変わった低気圧が千島近海で更に発達して日本付近は一時的に冬型の気圧配置となり、北・東日本では非常に強い風の吹いた所があった。北・東・西日本では下旬の降水量がかなり多く、北日本の太平洋側は422%、東日本の日本海側は373%、東日本の太平洋側は748%、西日本の太平洋側は817%と、昭和36(1961)年の統計開始以来、10月下旬の平年比が最も多くなった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2) 東京都中央卸売市場

10月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万9763トン、前年同月比107.6%、価格は1キログラム当たり201円、同63.6%となった(表1)。

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主産地は北海道産、東北産および関東産の一部を中心に西南暖地産が出回り開始となった。入荷量は、根菜類では、だいこんが前年並みに落ち着き、葉茎菜類ではねぎが、前年をかなりの程度下回り、果菜類は一部の産地で台風第21号、22号の影響がみられたものの、なすを除いて前年を上回り、土物類ではさといもが前年を大幅に下回ったことから、野菜全体では、前年をかなりの程度上回った。

価格は、すべての品目で、前年を下回ったが、曇天および台風21号、22号による強風、降雨および台風以降の低温により、下旬は葉茎菜のねぎ、果菜類のきゅうり、なす、土物類のさといもは前年を上回った。その他の品目は月を通して、前年を下回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

入荷量は、だいこんは、北海道産が台風の影響は小さく、千葉産は台風21号の塩害が発生し正品率に影響したものの、前年並みの入荷となった。にんじんは、北海道産は台風の影響は小さく、台風による作柄不良で少なかった前年をかなり大きく上回る入荷となった。価格は両品目とも前年を大幅に下回った(図2)。

イ 葉茎菜類

入荷量は、はくさいは、長野産は、一部に生育が緩慢な産地があったものの総体ではおおむね生育は順調で、入荷量は前年を大幅に上回り、キャベツは、群馬産の一部の産地で出荷終盤を迎え天候不順で切り上がりが早まったものの、総体ではおおむね生育は順調で、入荷量は前年をかなりの程度上回り、ほうれんそうは、10月に入ってからの曇雨による日照不足などにより生育に影響がでたものの、9月の好天により中旬までは前年に比べて出荷増となり、前年を大幅に上回った。ねぎは、9月の台風などにより生育遅れがみられたことが影響し、台風21、22号の影響はわずかだったものの、入荷量は前年をかなりの程度下回った。レタスは、豊作傾向で、一部関東産で台風による被害で冠水・傷みなどが発生したものの、前年を大幅に上回る入荷量となった。価格は、すべての品目で前年を下回った(図3)。

ウ 果菜類

入荷量は、なすは、10月に入ってからの曇雨天により、下旬は前年を大幅に下回ったが、月計では前年並みとなった。関東産および西南暖地産とも生育はおおむね順調で、他のすべての品目は、前年を上回った。価格は、すべての品目で、前年を下回った(図4)。

エ 土物類

入荷量は、さといもは台風および曇雨天で肥大遅れが発生し、箱数が伸びなかった。入荷は月を通して前年を下回り、前年を大幅に下回った。ばれいしょおよびたまねぎは、主産地である北海道産が作柄も良く平年並みの計画出荷となった。ばれいしょは前年をわずかに下回り、たまねぎは前年並みとなった。価格はすべての品目において、前年を下回った(図5)。

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なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

10月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万4755トン、前年同月比109.8%、価格は1キログラム当たり182円、同64.1%となった(表3)。

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上中旬は多くの品目において潤沢な入荷が続いたが、下旬には台風などによって広範囲の品目に被害が出て順次入荷量が減少し、価格は上伸傾向となった。

野菜全体の入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は前年を大幅に下回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

だいこんおよびにんじんは、いずれも入荷量は前年を上回った。中でもにんじんは、北海道産の生育が良好で太物の発生比率も高く、総入荷量は前年を大幅に上回った。にんじんの価格は、前年を大幅に下回った。

イ 葉茎菜類

葉茎菜類は、主な品目すべてにおいて、入荷量は前年を上回った。中でもレタスは、長野産や群馬産などの生育が順調で安定した入荷が続き、総入荷量は前年を大幅に上回った。レタスの価格は、前年を大幅に下回った。

ウ 果菜類

果菜類は、主な品目すべてにおいて、入荷量は前年を上回った。中でもトマトは、夏秋産地の残量が多く秋冬産地の出遅れを補充する形となり、総入荷量は前年をかなり大きく上回った。トマトの価格は、前年を大幅に下回った。

エ 土物類

土物類は、主な品目すべてにおいて、入荷量は前年を下回った。中でもさといもは、愛媛産および宮崎産が小玉傾向の入荷となり、総入荷量は前年を大幅に下回った。さといもの価格は、前年をやや下回った。

なお、品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした12月の見通し

10月27~29日の22号台風は、関東・東海地方において、秋冬野菜の最終の定植直後を襲った。秋雨前線を刺激し、10月中旬に続き下旬も曇雨天が続いた。その前の21号は、関東地方を縦断して強風と豪雨をもたらした。現実には東北・北海道産や高原産地の大型野菜も潤沢で、台風による大きな混乱はなかった。それでも、この台風と長雨は、これから徐々に効いてくると各産地の担当者は見ている。例えば、果菜類では年末年始ごろまで出回り量が少ない状況が続くこと、キャベツなどは品質低下品も含めた出荷が当面続くことなどを予想している。また10月は、年末年始から月にかけてのほうれんそうやこまつなの播種時期であったが、多くの産地が露地物は播まけなかったと話している。今後、全国的に葉物類などの不足が懸念される。

年末を迎え、おせち料理全般に挑戦する家庭は徐々に減ってきて、デパートの提案を受け入れるとか、近くのコンビニエンスストアを試してみるかというように、外部への依存割合が徐々に増えてきているようである。それでも、特定の料理は自宅でそろえるという家庭は多いのではないか。れんこんを使った料理や、さといもの煮っころがしといった単品料理での「わが家のおせち」への挑戦は、日本料理の良さを再認識させてくれる。テレビなどの生活情報番組ではさまざまなれんこん料理が紹介されており、中華系ではせきを鎮める効果があると調理の先生が強調していた。

個々の品目を見ていくと、だいこんは、千葉産や神奈川産などの関東産のシェアが高まる時期で、当初関東産は前進傾向であったが、長雨で生育が抑えられ、ほぼ例年並みの動きとなろう。三浦だいこんは、12月25日から3日間の出荷で、今のところ前年並みの予想である。里浦(徳島県)は、11月中旬から出荷が始まり12月がピークとなるが、長雨の影響で秀品率の低下が懸念材料となっている。

にんじんは、当初は作柄が良好で、豊作と予想されたが、台風の返しの風に煽られて葉が損傷するなどの影響が見られ、12月から年明けにかけてはやや小ぶりとなり、下位等級も増えてくる見込みである。2月以降出荷の四国産は、播種のタイミングが遅れており、出回り量はかなり少なくなると懸念されている。

ごぼうは、主産地の青森産は肥大不足により細物が多く、価格は前年を下回っている。過去2年が高すぎたのであり、ようやく正常に戻ったともいえる。青森産は肉付きが悪いため、太ければ九州産の貯蔵物でも良いとオーダーが入り、どれが新物でどれが貯蔵物か区別がつかなくなっている。いずれにしても、香りの強い物を入手したいものである。

れんこんは、本年産については小ぶりで出荷の減少が懸念されたが、主産地である茨城産の作付けが増えていることから、平年並みの出荷が予想される。れんこんは、部位(節)によっておいしさの特徴が違うということを、テレビの人気番組が取り上げていた。

はくさいは、茨城産は長雨の影響で年内は小ぶりの仕上がりと予想される。年内に出荷のピークを迎えるが箱数が伸び悩み、平年を下回る出荷となるであろう。

レタスは、香川産は9月の定植は問題なかったが、10月中旬の長雨で根傷みが発生し、病気の懸念が残る。そのため、11月中旬から12月にピークを迎えるが、思ったほど出荷量は伸びない可能性もある。さらに、年明けには急減も予想される。

キャベツは、愛知産、千葉産ともに年内については品質がやや低下した物が含まれるなど、長雨の影響は確実に出てくると予想される。

ほうれんそうは、埼玉産は10月上旬に定植した12月出荷用のものが、長雨と台風による強風でダメージを受け、例年の70%程度の出荷に留まる可能性も考えられる。風で葉先が損傷して黄変が発生し、11月も出荷量はかなり少なかった。

ねぎは、11月の十和田産(青森県)は前年より出荷量が多く、12月は上旬までだが、台風で少なかった前年を上回る見込みである。千葉産は、これから長いピークシーズンに入るところであるが、台風や長雨の被害を受けている。風による葉の損傷や一部冠水、さらに畝が崩落するなど、問題が残っている。それまでは豊作の予想であったが、生育が遅れたり下位等級が増えたりと、年内については平年をやや下回る出荷が予想される。

ブロッコリーは、埼玉産は10月の長雨の影響で、平年より少ない状況が続いている。寒暖の変化が激しく、12月も回復は難しい可能性が高い。

きゅうりは、宮崎産は台風の影響はなかったものの、10月の長雨で11月に入り出荷量が大幅に少ない状況が続いたが、11月中旬には回復し、12月は問題のない出荷量と予想される。

なすは、高知産は10月の曇雨天の影響で年内は前年と同様に少ない見込みである。10月中旬に特に降雨が続いて花落ちした。樹はできあがっており、回復は期待できるもののいつの時点から増えるか、予断を許さない状況にある。

トマトは、全国的に出遅れがはっきりしてくると見込まれる。特に年末年始は、全国的に出回り不足と予想される。

ピーマンは、宮崎産は長雨の影響で出遅れはあったものの、11月後半から量的には回復し、12月は例年どおりの出荷と予想される。

かぼちゃは、美深町(北海道)では、12月上中旬が出荷のピークとなる。少なかった前年を上回り、ほぼ平年並みである。品種は「くりゆたか」「くりゆたか7」「くり将軍」である。

かんしょは、10月の多雨で関東産をはじめ掘り取りに遅れが出た。11月上旬まで市場での出回り不足が続いたが、徐々に増えてきている。「鳴門金時」は2つの台風が通過したが問題はなく、豊作傾向である。

さといもは、埼玉産は出荷のピークに入ったところである。3Lサイズが少なく、全体に小玉傾向となっている。そのため、生産量は前年の90%に届かない可能性もある。大田市場での販売は24日までである。品質そのものは問題ない。

ばれいしょは、ようてい農業協同組合の「男爵」は1株当たりの玉数が多く小玉傾向であるが、収量は台風で少なかった前年を上回っている。管内で次にくる品種は「とうや」「キタアカリ」「きたかむい」の3つで、各数量は同程度である。

たまねぎは、きたみらい農業協同組合は今年は平年作を若干上回る程度で、大豊作の前年を下回る。前年は全道が悪かったが、北見地区は例外であった。

切りみつば(軟白)は、茨城産は面積の減少のほかに、本圃での発芽が悪く、例年の半作程度の見込みである。かんしょの取り入れが半月以上遅れており、それに連れてみつばの作業が遅れていることも響いている。順調なのはせりで、これは水田の中にあって収穫を待っている。

くわいは、福山産(広島県)は10月の曇天でやや小ぶりと予想される。大田市場には12月22日まで出荷される。土・日曜を除きほぼ連日の出荷で、出回り量は前年並みと予想している。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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