野菜需給部 調査情報部
上旬は、台風第5号が4日に奄美地方に接近し、7日には和歌山県北部に上陸して、9日には山形県沖で温帯低気圧に変わった。この影響で、5日には奄美大島、喜界島、屋久島で記録的な大雨となるなど、東・西日本や奄美地方で大雨となった所があった。また、東日本日本海側の旬降水量はかなり多かった。台風第5号によるフェーン現象の影響で、旬の中頃に北・東・西日本日本海側では真夏日や猛暑日となった所が多かった。北日本太平洋側では、オホーツク海高気圧による北東からの冷たく湿った気流の影響で曇りの日が多く、旬間日照時間がかなり少なかった。
中旬は、オホーツク海高気圧による北東からの冷たく湿った気流の影響で曇りや雨の日が多かったため、北・東日本太平洋側で旬間日照時間がかなり少なく、北日本太平洋側を中心に気温が低くなった。北日本太平洋側の旬間日照時間の平年比は34%で、1961(昭和36)年の統計開始以来、8月中旬では一番少なかった。東・西日本では南からの湿った空気が入りやすく、また気圧の谷や寒気の影響で大気の状態が不安定となったため、大雨となった所があった。
下旬は、北・東・西日本での天気は数日の周期で変わった。日本海に延びる前線に向かって南から暖かく湿った空気が入り込んだため、旬の中頃に北・東・西日本日本海側では大雨となった所があり、25日には秋田県の雄物川が7月に続き再び氾濫した。日本の南海上では太平洋高気圧の勢力が強く、旬平均気温はかなり高かった。東・西日本では、南からの暖かい空気の影響で旬平均気温が高く、24日には全国929地点のうち152地点で猛暑日となり、今年一番多かった。30日には台風第15号が小笠原諸島へ接近した。旬の終わりには大陸から冷たい空気が流れ込んだため、北日本を中心に気温の低い日が多かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万5300トン、前年同月比97.5%、価格は1キログラム当たり248円、同105.5%となった(表1)。
主産地である北海道産、東北産および関東産の一部を中心に出回った。根菜類および土物類のさといもやたまねぎは前年を上回ったものの、はくさい以外は、降雨により収穫が遅れたねぎ、ほうれんそうなどの葉茎菜類は前年を下回り、果菜類は曇天などの天候不順による生育遅れや着果遅れによりすべての品目で前年を下回ったことから、野菜全体では前年をわずかに下回る入荷となった。
価格は、8月に入って低温、曇天が続き、東北産の果菜類などを中心に、中旬の入荷は前年を下回り、下旬の出荷にも影響し、根菜類および土物類以外のすべての品目で、前年を上回ったことから、野菜全体では前年をやや上回った。
類別の動向は以下の通り。
だいこんおよびにんじんは、どちらもおおむね生育は順調で、中旬に盆をはさんでの入荷減があったものの、大きな入荷量を占める北海道産が潤沢な入荷となったことから、入荷量は、だいこんは、前年をかなりの程度上回り、にんじんは前年をかなり大きく上回った。価格は両品目とも前年を大幅に下回った(図2)。
はくさいは、干ばつ傾向で一部に巻きが甘いものがあったものの、総体ではおおむね生育は順調で、入荷量は前年をかなり大きく上回り、キャベツは、7月の降雨により生育は回復し入荷量は前年並み、ほうれんそうは、干ばつ傾向で、産地に生育の差がでていることもあり、入荷量は前年をかなり大きく下回った。ねぎは、おおむね作柄は良好だったものの、入荷量は前年をかなりの程度下回った。レタスは、おおむね順調な生育となったことから、前年並みの入荷量となった。価格は、はくさいは安かった前年を大幅に上回り、その他のすべての品目で、価格は前年を上回った(図3)。
入荷量は、すべての品目で前年を下回った。日照不足などによる天候不順により、生育遅れ、着色遅れなどが発生し、ピーマンは前年をかなりの程度で下回り、トマトは前年を大幅に下回った。価格はすべての品目において、前年を大幅に上回った(図4)。
入荷量は、さといもおよびたまねぎは前年を上回ったものの、ばれいしょは前年をやや下回った。価格はすべての品目において、前年を下回った。特にたまねぎは、出荷終盤の兵庫産の入荷により大幅に下回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
8月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9528トン、前年同月比98.4%、価格は1キログラム当たり220円、同99.1%となった(表3)。
日照不足などの天候不順の影響で、東北産や北海道産が主力を占める果菜類などを中心に入荷量が前年を下回る品目が多くあり、旬を追って価格が上伸する品目が多く見られた。また、にんじんは、加工筋の荷動きが全くと言ってよいほどなく、価格は低迷した。
野菜全体の入荷量は前年をわずかに下回り、価格は、旬を追って上げ基調で推移したものの、月間では前年をわずかに下回った。
類別の動向は以下の通り。
だいこんは、天候に恵まれた北海道産の入荷量が前年を上回ったことなどにより、総入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、にんじんは、総入荷量は前年をわずかに下回り、価格は前年を大幅に下回った。
レタスは、長野産の生育が良く順調な入荷となったことなどにより、総入荷量は前年をやや上回り、価格は前年をかなり大きく上回った。ほうれんそうは、岐阜産が日照不足などにより入荷量が前年を下回ったことなどにより、総入荷量は前年を大幅に下回り、価格は前年を大幅に上回った。
果菜類は、主な品目すべてにおいて、入荷量は前年を下回った。中でもピーマンは、北海道産や青森産などの天候不順などによる入荷量の減少により、総入荷量は前年を大幅に下回り、価格は前年を大幅に上回った。
さといもは、宮崎産の生育が良好であったことなどにより、総入荷量は前年をかなり大きく上回り、価格は前年をかなりの程度下回った。ばれいしょは、北海道産が順調な入荷となったものの、総入荷量は前年をわずかに下回り、価格は前年を大幅に下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
8月は、東日本を中心に異例の日照不足に見舞われた。もともと低温で結実が悪かった果菜類を中心に供給が追いつかず出回り不足となり、東京都中央卸売市場の野菜全体の入荷量は前年比で97.5%と、前年を下回った。価格は1キログラム当たり248円で、前年比105.5%と前年を上回った。メディアでは野菜の高値を心配する声が大きかったが、近くの小売店を見た限りでは、特別高いと感じさせる野菜はなかった。東北産が遅れている影響で、唯一ねぎだけが質が悪い割に価格が高かった。
8月下旬には再び夏の太陽が戻ったものの、9月に入ると涼風が吹き始め、今年は秋の訪れは早いようだ。稲刈りは例年より後ろにずれており、東北産の夏秋物は不作傾向で締めくくることになろう。
10月は行楽シーズンであり、晴れの日が続くことが望ましい。月末にハロウィンがあるが、正月やクリスマスに劣らぬ年中行事になってきている。市場には全国からさまざまなタイプのかぼちゃがそろう。昨年は北海道の天候不順の影響で特別多いということはなかったが、今年は高原の産地や東北、北海道からおいしいかぼちゃが出回るであろう。「バターナッツかぼちゃ」や岐阜産の地方野菜「宿儺かぼちゃ」はおいしくて、飾っても楽しい。味を重視するならば、青森産の「一球入魂かぼちゃ」も逸品だ。
地方野菜で言えば、熊本産の「大長なす」やえだまめの「小糸在来」が市場での人気が高い。
個々の品目を見ていくと、だいこんは、8月の冷夏の影響でコンビニエンスストアのおでんのスタートが早く、市場で引き合いが強まると予想したが、出回り量が多かったこともあり、8月の平均価格は84円(東京都中央卸売市場)と平年並みであった。9月に入り気温が低下して心配したが、病気の発生もなく生育は順調で、北海道産や東北産を中心に出回り量は10月も潤沢なペースが続くであろう。
にんじんは、北海道産が全般に豊作となっている。今年は、にんじんの生育に適した天候が続いた。前年は不作で高値となったが、今年は正反対の年となろう。品質もすこぶる良好である。
れんこんは、茨城産が10月から本格的な出荷となるが、春先の低温や8月の日照不足の影響で、平年作を下回ると予想している。
ねぎは、山形産は天候不順による減収が心配されたが、影響については若干の生育遅れにとどまった。9月中旬からピークを迎え、2Lサイズが中心である。圃場管理の徹底で、欠株が生ずることもなく、肥大も順調である。
ほうれんそうは、埼玉産は10月に入ると稲刈りも終わり本格化するが、例年通りで特に問題はない。
キャベツは、群馬産は6月の干ばつや8月の長雨など気象が不安定な中で、9月の店頭ではやや小ぶりであった。作柄としては平年並みであり、出回り量は10月いっぱい潤沢なペースが続くであろう。愛知産は10月後半から出荷が本格化するが、キャベツにとって最適な環境が続いたことで、後半に入って急増する見込みである。
ブロッコリーは、長野産は生育にやや遅れはあるが順調である。出荷の最大のピークは9月下旬から10月上旬で、場合によっては11月まで続くことも見込まれる。
レタスは、高原産は8月に降雨が多く、その後の低温と干ばつの影響で9月に入って生育が遅れ、10月中旬までは少なめの出荷が予想される。茨城産は9月に稲刈りも終了し、10月には出荷が本格化するであろう。定植に遅れが出たが、現状では問題ない。茨城産についても例年通りの販売となろう。
きゅうりは、東北産は露地物が不作で、切り上がりが早い。群馬産は順調で、例年並みの出荷見込みである。
かぼちゃは、主力の北海道産は春に降雨が多く、7月には干ばつとなり、寒暖の変化が激しかったことなどもあり、気象条件が100%ではなかった。そのため、良くて平年作で、若干小ぶりの仕上がりになると予想される。出荷のピークは9月下旬から10月となろう。品種は、くりゆたか、くり将軍が中心となっている。
なすは、栃木産は8月の日照不足の影響で着果が増えず、9月に続き10月も出荷量は例年を下回る見込みである。霜別れ(収穫の終わり)は、例年どおり11月に入ってからと予想している。9月前半の価格は特別高くはなかったが、10月にはじりじりと価格を上げてくると予想される。
トマトは、青森県や北海道の夏秋産地はやや不作気味であり、例年より一旬早めに10月中旬に切り上がるであろう。抑制物の産地は夏の天候不順で着果が悪く、例年より少なめの出荷が続く見込みである。愛知産はミニも含めて生育が順調で、11月には急増ペースの出荷が予想される。
ピーマンは、終盤となる福島産は8月の日照不足や低温の影響で出荷量が例年の80%程度と少なく、ほぼ10月いっぱいの出荷となろう。最大産地である茨城産は、9月から10月が年間を通して出荷のピークとなるが、8月の曇天が影響し、9月に入った時点では平年の60%程度と少ない。8月下旬の晴れの時期に花が咲いた分が9月中旬から10月上旬に収穫期となり、出荷量は本格的に増えてくると予想している。
かんしょは、7月に干ばつの影響を受けたほかは、例年通りの高品質な仕上がりである。べにはるかは順調であるが、べにあづまは果形に乱れが出ている。出荷量は前年並みと予想している。
さといもは、主力の埼玉産は8月の日照不足が心配されたが、やや生育に遅れがあるものの順調である。出荷は9月末ごろから徐々に増えてくるであろう。
ばれいしょは、北海道産の男爵を中心に、メークイン、とうや、きたあかりなどが出荷の見込みである。小売店には、きたかむい、さやか、はるか、ピルカなどの新品種について、特徴や調理方法などのコメントをお願いしたいところ。今年は種いもの供給が厳しい状況であったため、肥大にバラツキが出て、小粒のものも多いとされる。それでも、基本は豊作であると報告されている。
たまねぎは、北海道産は前年に続き平年作を上回る見込みである。前年については、湿害で出荷量が少なかった産地があったが、今年は全道的に生育が順調で、品質の良いたまねぎの出回りが期待できる。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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