野菜需給部 調査情報部
上旬は、旬のはじめは梅雨前線が日本海に停滞し、暖かく湿った空気が流れ込んだため、東日本日本海側を中心に大雨となり、土砂災害や浸水害などが発生した。2日に沖縄の南で発生した台風第3号は、3日に先島諸島に接近し、4日に長崎県に上陸した後は西日本から東日本へ進み、大雨や暴風となったところがあった。旬の後半は西日本へ南下した梅雨前線の活動が活発となり、5日から6日には島根県、福岡県、大分県などで記録的な大雨となり、5日の日降水量は朝倉(福岡県)で516.0ミリメートルメートル、日田(大分県)で336.0ミリメートル、波佐(島根県)で320.0ミリメートルを観測した。5日から6日の福岡県と大分県を中心とした「平成29年7月九州北部豪雨」では、土砂災害や河川の氾濫などによる甚大な人的被害が発生した。北日本は西から暖かい空気が流れ込みやすく、旬の後半は高気圧に覆われて晴れる日が多かったため、気温がかなり高くなった。
中旬は、北日本では、気圧の谷や前線の影響で北海道地方の旬降水量は多かったが、梅雨前線の活動は弱く、晴れた日が多かった。東・西日本と沖縄・奄美では、太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったが、東・西日本では寒気を伴った気圧の谷や梅雨前線の影響で雨が降った日もあり、激しい雷雨や突風となったところもあった。九州南部では13日ごろ、関東甲信、東海、近畿、中国、四国では19日ごろ、九州北部では20日ごろに梅雨明けした。北・東・西日本では晴れて日射が強く、また西から暖かい空気が流れ込みやすかったため気温がかなり高くなり、15日には北海道の25地点のアメダスで猛暑日を観測するなど、各地で真夏日や猛暑日となった。
下旬は、梅雨前線が北陸地方から東北地方付近に停滞しやすかったため、旬降水量は東日本日本海側でかなり多く、北日本で多かった。23日には秋田県で雄物川などが氾濫し、24日には新潟県佐渡市で記録的な大雨になるなど、各地で大雨となった。21日に南鳥島近海で発生した台風第5号は28日に小笠原諸島に接近し、26日にフィリピンの東で発生した台風第9号は29日に先島諸島に接近するなど、6個の台風が発生した。九州付近から沖縄・奄美は太平洋高気圧に覆われやすかったため、西日本と沖縄・奄美の旬平均気温はかなり高くなった。東日本では梅雨前線や湿った気流の影響で曇りや雨の日が多かった。東・西日本では大気の状態が不安定となって雷雨となったところがあった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
7月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万5225トン、前年同月比104.7%、価格は1キログラム当たり226円、同85.2%となった(表1)。
北海道産、東北産および関東産の一部を主体に出回り、一部の品目では、中国・四国産および九州産なども出回った。気温上昇が6月下旬から続き、高温が続いたものの、6月の干ばつ傾向で病害の発生は少なく、主要品目のほとんどが順調な出荷となった。一方、ほうれんそうは、高温により品質の低下がみられ、いも類では低温の影響が残り、ばれいしょの肥大が遅れ、出荷に影響したものの、果菜類、葉茎菜類および根菜類で前年を上回る入荷となり、野菜全体の入荷量は前年をやや上回った。
価格は、はくさいでわずかに前年を上回ったものの、他の品目が前年を下回ったことから、野菜全体では前年をかなり大きく下回った。
類別の動向は以下の通り。
だいこんおよびにんじんは、どちらも6月までの低温および日照不足で生育が遅れていたものの、7月の気温の上昇に伴い生育は順調で、入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は大幅に下回った(図2)。
キャベツ、はくさいおよびほうれんそうは、干ばつ傾向の影響で出荷のずれ込みや、産地に生育の差がでているものの、おおむね生育は順調で、肥大も良好なことから、入荷量は前年を上回り、価格は、はくさいはわずかに安かった前年を上回ったものの、キャベツおよびほうれんそうは前年を下回った。一方、ねぎおよびレタスは、天候に恵まれ生育は順調だったものの、干ばつ傾向の影響が残り、入荷量は前年を下回ったものの、価格は前年を下回った(図3)。
入荷量は、すべての品目で、前年を上回った。主な品目のうち、なすは天候に恵まれ生育は順調で、入荷量は前年をかなり大きく上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、トマトは、関東産が終了に向かうなか、岩手産が6月の低温および曇天の影響が残ったものの、北海道産および青森産の生育が順調なことから、入荷量は前年をかなり大きく上回り、価格は前年をかなり大きく下回った(図4)。
さといもおよびばれいしょは、いずれも入荷量は前年を下回ったが、価格は前年を下回った。一方、たまねぎは佐賀産が病気の発生で少なかった前年の入荷量を大幅に上回り、価格は4月までの高値に反発し、高かった前年を大幅に下回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万8291トン、前年同月比101.3%、価格は1キログラム当たり197円、同81.7%となった(表3)。
夏野菜の中心産地のひとつである北海道産・東北産は、気温高と豊富な日照時間により果菜類中心に潤沢な入荷が続き、高冷地中心にはくさい、キャベツ、レタスなども生育が良好であった。多くの品目で入荷量が前年を上回り、価格は前年をかなり下回る品目が目立った。
野菜全体の入荷量は前年をわずかに上回り、価格は気温高による消費減退などもあって前年を大幅に下回った。
類別の動向は以下の通り。
だいこんは、青森産の生育が良く順調な入荷となったことなどにより、総入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、にんじんは、長崎産および青森産の入荷が前年を下回ったことなどにより、総入荷量は前年を大幅に下回り、価格は前年を大幅に下回った。
ねぎは、鳥取産の入荷が前年を上回ったことなどにより、総入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は前年を大幅に下回った。ほうれんそうは、岐阜産の入荷減などにより、総入荷量は前年をわずかに下回り、価格は前年をやや下回った。
果菜類は、主な品目すべてにおいて、入荷量は前年を上回った。中でもトマトは、熊本産や愛知産、北海道産などが入荷増となったことにより、総入荷量は前年を大幅に上回った。トマトの価格は、前年を大幅に下回った。
たまねぎは、兵庫産の順調な入荷などにより、総入荷量は前年をかなり大きく上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、ばれいしょは、北海道産の入荷減などにより、総入荷量は前年をかなり大きく下回ったにもかかわらず、価格は前年を大幅に下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
7月の関東地方は晴天が支配的で、梅雨明け宣言はあったものの全般的には空梅雨であった。6月から7月にかけては、高原産地のレタス類、茨城産や群馬産のキャベツが大幅に安く、野菜全体の販売を重くした。「干ばつに不作なし」の例えの通り出回り量は多く、市場価格は低迷した。昼の気温は高かったが夜温は適度に下がり、野菜全般の生育を促進した。7月の東京都中央卸売市場の入荷量は前年の104.7%と特別多くはないが、価格は同85.2%と低迷した。この要因は、主要産地が豊作で、市場出荷を控えて地元販売に振り向けたためと思われる。
昨年は北海道へ台風がいくつか向かい、これから出荷を迎えるというたまねぎなどが水没する映像をテレビが伝えた。今年は福岡県や大分県に集中豪雨の被害があり、さらに台風5号が列島を襲った。宮崎県の沖合を北上して和歌山県北部に上陸し、近畿・北陸地方を縦断した。生産者によると50年に1度あるかないかの強風と雨で、圃場に残ったさといもなどの葉が千切れる被害があった。今後、秋冬野菜の播種が遅れ、11月、12月以降に影響が出てくると予想される。それでも当面は、前年の8月や9月に比べると、おとなしい展開と予想される。ただ、市場の仲卸からは、かつてない販売不振との声も聞かれる。久々の野菜価格の低迷という事態に、生産者も市場も試練の時を迎えている。
9月に入ると意外に秋が早く来て、高原物や東北産が早めに切り上がるといった展開も考えられる。秋雨前線がどの地域に居座るかでも状況が違ってくるが、米の収穫と絡んで野菜の出荷量がかなり少なくなる時期があると予想している。
個々の品目を見ていくと、だいこんは、8月下旬から業務需要が旺盛となり、価格は平年並みに戻るであろう。昨年は北海道産の減収が価格のかく乱要因となったが、今年は順調に推移し、100円を若干割り込む程度の推移と予想される。コンビニエンスストアのおでんが一番好調な月は9月であり、さらに売れ筋1位がだいこんであるという。全国チェーンといえども、当座の近隣市場での仕入れは欠かせない。家庭の主婦も忙しく、家でご飯だけ炊いておいて、おでんを家族それぞれの好みで揃える。特にだいこんは野菜であるから欠かせない。
にんじんは、北海道産の高品質物となるが、生育は順調で前年を大幅に上回る出回り量となる見込みである。価格は、8月に続き平年を下回るであろう。昨年は主産地が台風による雨で不作となったが、今年は今のところ順調である。道東産の品質の充実したにんじんが入荷するのが楽しみであり、積極的な販売を期待したい。
ねぎは、東北産が中心となるが、昨年は少なかった北海道産の出回り量が多く、価格は前年並みの見込みである。
キャベツは、9月後半になると群馬産のシェアがさらに高まって価格は徐々に上昇してくるであろうが、東北産や北海道産も引続き順調で、価格は平年並みかやや安いと予想される。今年のキャベツは例年になくおいしいが、これは干ばつ気味の気候によるものだ。価格面で言えば、今年は比較的安値で業務筋や家計を助ける年になりそうである。
ほうれんそうは、昨年は全国的に不作で価格高となった。今年は前年よりは順調であるものの、猛暑が長く続いたことで高品質の物をそろえられる産地が限られるため、価格は堅調な推移が予想される。
レタスは、高原産地は前進化の傾向にあり、準高冷地の二期作物も終盤を迎える。この時期のレタスは難しく、多くの野菜の中で価格の反発が一番先に来ると予想している。長き低迷の後の9月は、急騰の場面も考えられる。
ブロッコリーは、全国的に作付けが増えており、引き続き東北産や北海道産、長野産の高品質な物が出荷される。価格については、前年並みで安定した推移となる見込みである。
きゅうりは、引き続き東北産が中心となるが、切り上がりが早まると予想される。関東産も育苗時期の高温の影響で生育はそれほど早くなく、本格的な出荷は9月後半からとなる。価格は、出荷の谷間の期間が長くなるため、高めに推移すると予想される。
なすは、関東産が終盤となるが、高温の影響で不作傾向と予想される。本来は夏の高温に強いが、7月から8月にかけて寒暖の差が激しく、総じて樹の疲れから、出回り量は平年に届かない見込みである。価格は、豊作で安かった前年を上回るであろう。
トマトは、青森産、北海道産はここ2年、8月の豪雨の影響で作が定まらず、後半の9月から10月にかけて出荷量は大幅に少なかった。今年は天候に恵まれ、9月以降も潤沢な出回り量が続く見込みである。関東の抑制物も順調で、ファンにとっては安くておいしいトマトが楽しめる年になるであろう。そうした点を前面に出した販売企画が望まれる。
ピーマンは、福島産や岩手産が中心となる。8月後半から9月にかけてピークを迎えるが、露地物は販売期間が短く、供給が不安定になりがちである。カラーピーマンも増えており、オレンジ色の物はビタミンCなどの栄養価が極めて高いとされる。消費者にとっては、トマトと同様に充実したピーマンを手ごろな価格で購入できる年となる。
かぼちゃは、東北産や北海道産が中心となる。本年産は味のレベルが高いが、産地が北に移動してますます味が充実してくる。昨年は北海道産の出回り量が少なく高値傾向であったが、本年は平年並みと予想される。
スイートコーンは、8月に入り高原物や東北産、北海道産が本格化し、品質が向上してきた。9月になると量的には徐々に減るが、計画的な出荷が続くであろう。大振りで充実しており、昨年よりも価格は高めと見込まれる。
たまねぎは、昨年の北海道産は当初豊作と報告されていたが、8月の台風被害で出荷量が減少したものの、その後は安定した出回り量となった。今年は豊作で主産地の佐賀産や兵庫産の出荷も多く大幅に安くなっているが、今後は、北海道産の安定した出荷で平年並みとなることが予想される。
ばれいしょは、7月の入荷量は前年比98.1%、価格は136円(同78.6%)である(東京都中央卸売市場)。今年のばれいしょの特徴は、近くの店で銘柄を選ばずに購入した物でも抜群においしいことである。
さといもは、千葉産や埼玉産の石川早生が中心となるが、やや小玉傾向と予想される。高品質であり、全国的に出回り量の不足もあって価格は高めの見込みである。
(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)
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