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需給動向 1 (野菜情報 2017年7月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成29年5月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が14万4436トン、前年同月比107.1%、価格は1キログラム当たり238円、同91.8%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は4万1449トン、同104.3%、価格は、1キログラム当たり216円、同90.8%となった。
 5月に好天が続いたことなどから、順調な生育となった品目が多く、ほとんどの品目が前年を上回る入荷量となった。価格は、前年を下回る品目が多かった。

(1)気象概況

上旬は、本州付近では、移動性の高気圧に覆われて晴れる日が多く、北日本では降水量がかなり少なく、北日本太平洋側では日照時間がかなり多かった。旬の後半は日本の南海上を低気圧が通過し、西日本を中心に雨が降った日があった。空気の乾燥や強風によって、8日には岩手県や宮城県などで山火事が発生した。

中旬は、の前半は低気圧や前線の影響で曇りや雨の日があり、12日にはなかこしき(鹿児島県)で昭和51年(1976年)の観測開始以降1位となる1時間降水量107.5ミリメートルを観測するなど、大雨となった所があった。また、オホーツク海高気圧の影響で北海道地方を中心に気温が低い日があった。の後半は、本州付近は移動性高気圧に覆われて晴れる日が多く気温が高くなった。20日には北・東・西日本を中心に各地で真夏日となった。

下旬は、本州付近は移動性高気圧に覆われ、晴れて気温が高い日が多かった。特に21日には北・東日本を中心に各地で真夏日となり、館林(群馬県)では35.3度を観測して全国で今年初めての猛暑日となった。東日本では旬平均気温がプラス2.4度となり、昭和36年(1961年)の統計開始以降、5月下旬として1位となる高温となった。の中頃には日本付近を低気圧が通過して、全国的に曇りや雨となった。の終わりには寒気を伴った低気圧が通過し、北・東日本を中心に雨が降った所があった。沖縄・奄美では梅雨前線の影響で曇りや雨の日が多かった。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。

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(2)東京都中央卸売市場

5月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が14万4436トン、前年同月比107.1%、価格は1キログラム当たり238円、同91.8%となった(表1)。

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四国、九州を中心とした西南暖地産および関東産が主体に出回った。4月の曇天などの天候不順の影響があったものの、5月に好天が続いたことから、順調な生育となった品目が多かった一方、アスパラガスなど4月の低温で生育が遅れ気味になった品目もあった。トマトなどの品目は、昨年秋の天候不順による影響などが引き続き残ったものの、いも類で前年を上回る入荷となり、野菜全体の入荷量は前年をかなりの程度上回った。

価格は、はくさいやたまねぎで前年を上回ったものの、ほかの品目が、前年を下回ったことから、野菜全体では前年をかなりの程度下回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

だいこんおよびにんじんは、いずれも入荷量は前年を上回った。特にだいこんは、天候に恵まれ生育は順調で、入荷量は前年をかなりの程度上回ったことから、価格は前年をやや下回った(図2)。

イ 葉茎菜類

はくさいは、天候に恵まれ生育は順調で、肥大も良好なことから、入荷量は前年を大幅に上回ったものの、価格は前月までの高値もあったことから、安かった前年をかなりの程度上回った。また、ほうれんそうは、天候に恵まれ生育は順調で、入荷量はかなりの程度上回ったことから、価格は前年をかなりの程度下回った(図3)。

ウ 果菜類

なすは、天候に恵まれ生育は順調で、入荷量は前年をかなり大きく上回り、価格は前年をかなりの程度下回った。一方、トマトは、熊本産が4月の低温、曇天の影響が残り、入荷量は前年をわずかに下回ったものの、価格は前年をやや下回った(図4)。

エ 土物類

さといも、ばれいしょおよびたまねぎは、いずれも入荷量は前年を上回った。特にたまねぎは、佐賀産が病気の発生で少なかった前年を大幅に上回り、北海道産も、出荷の終盤の中、前年を大幅に上回ったものの、価格は4月までの高値もあり、下げ基調となったものの、安かった前年をかなり大きく上回った(図5)。

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※1 卸売価格とは、東京都中央卸売市場の平均卸売価格で、平均価格、保証基準額および最低基準額とは、関東ブロックにおける価格である。

※2 平均価格とは、指定野菜価格安定対策事業(以下「事業」という)における、過去6カ年の卸売市場を平均した価格を基に物価指数等を加味した価格である。

※3 事業における価格差補給交付金は、平均販売価額(出荷された野菜の旬別およびブロック別の平均価額)を下回った場合に交付されるため、上記の各表で卸売価格が保証基準額を下回ったからといって、交付されるとは限らない。

なお、品目別の詳細については表2の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

5月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万1449トン、前年同月比104.3%、価格は1キログラム当たり216円、同90.8%となった(表3)。

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えだまめが干ばつと朝夕の冷え込みの影響で大幅に出遅れたことなどを除き、多くの品目は4月以降の好天によって生産量が増え、入荷量は前年を上回った。主な品目の価格は、たまねぎを除き、前年を下回った。

全体の入荷量は前年をやや上回り、価格は前年をかなりの程度下回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

だいこんおよびにんじんは、いずれも入荷量は前年を上回った。中でもにんじんは、長崎産の順調な入荷により、総入荷量は前年をわずかに上回った。にんじんの価格は、前年を大幅に下回った。

イ 葉茎菜類

葉茎菜類は、主な品目のすべてにおいて、入荷量は前年を上回った。中でもねぎは、白ねぎの鳥取産や群馬産、青ねぎの徳島産や香川産などの入荷により、総入荷量は前年を大幅に上回った。ねぎの価格は、前年を大幅に下回った。

ウ 果菜類

きゅうりは、日照量が多く生育が順調であったことから、総入荷量は前年を大幅に上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、トマトは、熊本産の入荷量減少の影響により、総入荷量は前年をやや下回り、価格は前年をやや下回った。

エ 土物類

たまねぎは、佐賀産や兵庫産、大阪産などの順調な入荷により、総入荷量は前年をわずかに上回り、価格は前年をやや上回った。一方、ばれいしょは、北海道産の残量が少なかったことなどにより、総入荷量は前年をやや下回ったものの、価格は高値で推移した前年を大幅に下回った。

なお、品目別の詳細については表4の通り。

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(4)首都圏の需要を中心とした7月の見通し

7月の野菜の出回り量は全国的に平年並みで、前年を上回る見込みである。前年は九州産の春野菜が全般的に不作で、4月から6月まで高値傾向が続き、7月に入って一服した。今年は6月まで波乱がなく、7月も前月に続いて平年並みの展開が予想される。

「干ばつに不作なし」の例えもあるように、平穏に推移した6月までの余韻が残り、出回り不足となることはないであろう。ただし、高温すぎてハウスに入れない、人手不足で収穫ができなかった、といった声も聞かれる。さらに、市場価格の低迷が続けば早めに切り上がる産地もあり、市場への出荷量は統制がとれた展開となることが予想される。

本格的な需要期を迎える高原レタスは、ほぼ6月の価格のまま推移する見込みである。豆類のさやいんげんやスナップえんどうは、産地の切り替え時期を迎えて高値が続くと予想される。

個々の品目を見ていくと、だいこんは、青森産が引続きピークで北海道産の出荷も始まるが、6月までの低温の影響もあり、生育の遅れと肥大不足から、前半は量的には平年を下回る見込みである。そのため、価格は高めであるが品質が良好で、安心して購入できる。

にんじんは、主力である青森産の作柄は平年並みである。前年は後続の北海道産が少なく、7月としては高値であった。今年もやや似た展開となり、出回り量は少なめで、価格は平年を上回ると予想している。梅雨終盤の降雨が北日本に偏るようであれば、ダメージ品が増えることを警戒したい。

キャベツは、ピークを迎える高原物が、5月から6月にかけての干ばつの影響で肥大不足が予想される。7月に入っても出荷量は平年を下回り、価格は平年を上回ると予想される。

ほうれんそうは、主力である岩手産などは当初の出遅れから回復してくる見込みである。5月終盤の高温や7月に予想される多雨の影響により、出回り量は例年を下回るであろう。学校給食が休みになることなどから相場の急騰はないが、外食部門の需要から価格は堅調に推移すると予想される。

ねぎは、夏ねぎは茨城産および千葉産が中心だが、生産者の管理も行き届き、量的な落ち込みはない。引き続き品質良好で、価格は平年並み・前年並みが予想される。

レタスは、高冷地物がピークを迎えるが、梅雨終盤の集中豪雨が唯一の懸念材料だ。7月いっぱいは順調で潤沢な出荷量が続く見込みである。7月に平年並みかやや安値が続くと、翌8月は一転して高値となることもある。今年のレタスはおいしく、7月いっぱいはサラダの中心商材として、好印象を保つと予想される。

きゅうりは、今年の5月までの天候は晴天が多かったものの夜には気温が下がり、樹の疲れは例年より激しい。6月の後半から7月にかけては、東北産の出荷量が伸びを欠く時期があって、一時的に価格が上昇すると予想される。品質の格差が広がることも想定しておくべきであろう。

なすは、西南暖地産はめりはりの効いた天候の影響で、7月までの出荷量は例年より多いと予想している。関東産は、遅れはあっても、出荷量の大きな落ち込みはないと予想している。猛暑となれば、なすは売れ筋であり、販売拡大のチャンスとなる。

トマトは、主力である青森産は作付面積の若干の減少はあるものの、5月までの好天により着果は良好である。当初の遅れは回復して7月には出荷量が急増し、8月上旬にかけてピークとなる。食味の充実した東北産、北海道産が価格を引っ張り、6月までのやや沈滞ムードを打破できるであろう。

スイートコーンは、関東産の露地物が中心となるが、3月の低温や4月から5月にかけての強風などの影響で、やや小振りで先端不稔も懸念される状況にある。出荷量の減少はないが、産地によっては品質のバラツキなどが懸念される。夏休みが始まる時期であり、家庭で過ごす子どもたちにとって、スイートコーンは絶好のおやつである。

えだまめは、群馬産の銘柄品が中心となるが、今後、極端な干ばつにならなければ、順調に出荷されると予想している。寒暖の差があったことで、今年のえだまめは出来がよい。主要産地には、積極的な販促活動をお願いしたい。

たまねぎは、関東産が切り上がり、兵庫産や佐賀産の貯蔵物が中心となる。今年のたまねぎは品質が安定し、購入頻度が高まっている。

ばれいしょは、九州産と北海道産の端境期を迎え、静岡産や関東産、青森産が中心となるが、引続き順調である。おいしい銘柄品が価格をリードする展開となる。

メロン類は、千葉産のタカミメロンは5月の好天により着果が順調で、高品質物の荷が期待できる。東北産などはやや遅れており、安定した価格が続く見込みである。

すいか類は、山形産や長野産が中心となる展開だが、新潟産なども内容が良い。仕上がり時に産地で豪雨が発生しないこと、気温が下がって消費が落ち込まないことを願いたい。

(執筆者:千葉県立農業者大学校 講師 加藤 宏一)

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